むらやまゆかの最近のブログ記事

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
幼なじみの弥生の母が亡くなった。彼女は亡くなる前に別れた弥生の父親について語った。父親に固執する弥生を幼なじみの「俺」目線で描く。

なにしろ短い。まれに見る薄さの本でしかも作者のあとがきが後半のかなりを占めているので内容だけに限ればもっと薄い。実際に本物語は映画「卒業」(有名なダスティンホフマンのものではなく)との合同企画の一部ということらしいので、作者自身は小説だけでも楽しめるもの、という前提で書いたようだが、映画の存在が不可欠である事も事実なのだろう。

読んだ感想としても、物語的に短すぎて記憶からすぐに消えてしまいそうである。おそらく映画とセットで評価すべきものなのだろう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第129回直木賞受賞作品。

母の死後、父重之(しげゆき)は家政婦として働いていた2人の娘を連れた女性志津子(しづこ)と結婚する。兄貢(みつぐ)、次男の暁(あきら)腹違いの妹、沙恵(さえ)と美希(みき)。そんな複雑な家庭で生活するそれぞれの思いを描く。

短編集のような体裁をとっているが、目線が違うだけでどの章も同じ家庭を描いており、全体として一つの物語になっている。最初は兄弟としらなかったゆえに愛し合ってしまった暁(あきら)と沙恵(さえ)。家族全員と血が繋がっているのは自分だけだということを誇りに育った妹の美希(みき)など、各々の深い心のうちが明らかになっていく。誰もがおもいどおりにならない人生と時の早さに迷いながら生きているのだろうか。

何かが欲しいと願いながら、そのじつ何が欲しいのかわからない。生ぬるい飢餓感ばかりをもてあまし、いつかは何かいいものが見つかるような気がして探すのをやめられないでいる。

人から見たら「なんであいつは・・・」と強く非難したくなるような言動も、本人の心の内側に触れるとなんとも理解できそうな気がするから不思議である。そして、そんな理解できそうな心を持つ人々の集まりでも、多くの衝突を生んでしまうのだ。僕らはもっと会話を重ねるべきなのだろうか。僕らはもっと人の気持ちに敏感であるべきなのだあろうか。そんな人や家族の奥深さを感じさせてくれる点が本物語の魅力なのだろう。

最終的に6人の目線で語られるが、最後を締めるのが父重之(しげゆき)である。子供や妻に手をあげる重之(しげゆき)は序盤ではもっとも理解し難い人間のようにも見えるが、その人間性もまた、その心のうちがあらわになるにつれて不思議と同情できるように思えてくる。それは太平洋戦争中のその体験と結びついていくのだ。すでに死が遠くないと悟った重之(しげゆき)の思いは、物語を締めくくるにふさわしい。

消えない罪悪感と、誰かを愛し執着しすぎることへの怖れから家族に優しくもできず、かといって失うことを思うとなおさら怖ろしくて束縛せずにはいられない。胸の内で暴れ狂う獣を自ら抱えておくことのできなかった夫の弱さを、彼女らはかわりにその背中で受け止めてくれていたのだ。

幸せとは何なのか、家族とは、人とは、心に染み入るような作品である。

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