ゆうきみつたかの最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自動車警邏隊の女性警官クロハの日々を描く短編集。

本書は「プラ・バロック」「エコイック・メモリ」に続く第3弾であるが、時間としてはそれ以前ということで、クロハがまだ未熟な時代を描いている。短編集という事で6つの物語に別れているが、どれも読み応えがあり、また根底には一つの共通した問題があり、全体として一つの物語としても捉える事ができる。

さて、このシリーズでいつも印象的なのは、著者が現代のIT技術をうまく物語に組み込む点である。本書でも撮影された画像の位置情報や、交通事故のシミュレーションが捜査に大きく影響を与えるため、新しい知識も得る事ができる。

個人的には第二編の「二つからなる銃弾」が印象的である。射撃の優れた腕を持つクロハが射撃競技に出場する様子を描く。あまり見る機会のない射撃という競技の様子を感じる事ができるだろう。

引き続き本シリーズの続編を楽しみにしたい。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
動画投稿サイトに現れた残酷な殺人の映像。この動画の殺人は本物なのか。クロハは捜査を命じられる。

「プラ・バロック」に続く、女性刑事クロハの物語の第2弾。もはや女性刑事が活躍する物語など珍しくなんともないが、本シリーズで新鮮なのは、人によっては抵抗感を抱きそうなインターネット上の技術まで物語に取り入れている点だろう。前作ではそれは仮想現実の世界であったし、今回は、もうすでに世の中に浸透してきたであろう動画投稿サイトをその物語のきっかけとして使用している。動画投稿サイトやMMO(Massively Multiplayer Online)を絡めて犯罪を行うだけでなく、捜査する側もそれを利用するあたりは、何か、現実と非現実の境界が曖昧になっていく事に対する、著者の警告のようにも思えてくる。

そして、そんな異常な環境で育ったゆえに何かが欠けている犯罪者たち。どの部分の描写によるものなのかわからないが、前作と同様、どこか暗い都会のイメージを印象づける。煌(きら)びやかな都会のイメージがあふれる中、むしろ都会の闇を見せるような本シリーズは他の作品とは一線を画している。

次回作にも期待したい。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。

冷凍コンテナのなかで集団自殺した14人の男女。女性刑事クロハは事件の深部へと迫っていく。

女性刑事を主人公にした小説は決して少なくない。そして、そのどれもが小説という容姿を見せない媒体ゆえに、読者の頭のなかで魅力的な女性へと変わるから、強く賢く美しい女性が生まれるのだ。そんな競争率の激しい枠に本作品も挑んでいるのだが、本作品の女性刑事クロハも決してほかの作品のヒロインに負けてはいない。

クロハは捜査の第一線で働きたいがゆえに、自動車警邏隊から機動捜査隊の一員となる。事件の捜査に明け暮れるクロハの息抜きは、仮想現実の世界である。その世界は、SecondLifeと印象が重なるように思う。一般的にはいまだ抵抗があるであろう仮想現実の世界を、犯人側だけでなく、刑事である主人公の側も日常の一部として描いている点に、本作品の斬新さを感じる。

また、クロハがたまに会う精神科医の姉の存在も面白い。姉が犯人像について語る言葉はどれも印象的である。

集団に参加するのは、死ぬことの責任感を自分に植えつけて、逃げられないようにするため。

そして、次第にクロハは犯人に近づいていく。読みやすく読者を引き込むスピード感。そんな中でも見えない犯人に対する不気味さが広がってくる。非常に完成度の高い作品である。

気になるのは本作品に続編があるのか、というところ。クロハの存在が本作品だけで終わってしまうのであれば非常にもったいない気がする。

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