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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
6つの物語を集めた短編集。

短編集とはいえどれも非常に質の高い物語が集まっている。最初の物語の「夜警」は殉職した警察官の話。彼はあまり警察官に向いていなかったが、その日、酔った犯人に発砲すると同時にその犯人に刺されて亡くなったのである。しかし、彼の性格やその日の様子を詳細に振り返ってみるとその裏に隠された意図が見えてくるのである。

3番目の「万灯」の物語も印象的である。プロジェクトでバングラディシュに派遣された男性は、そこでのプロジェクトの完遂のために、ある村に拠点を築く必要がある。しかしその村の権力者達は、それに反対する一人の権力者を殺すことを条件にそれを受け入れる提案をするのである。彼は仕事のためにそれを受け入れるのだが、それはやがてさらなる問題を生むことになるのである。

上記の2つ意外もどれもずっしりと印象に残る物語ばかり。著者米澤穂信は軽いミステリーを描くという印象を持っていたが、ここ最近の作品からは、雰囲気作りなど非常に優れた小説家になってきたということに驚かされる。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
毎年5月に行われる神山高校長距離走大会。これから走る20キロを前にして、折木奉太郎(おれきほうたろう)は、仮入部届けを出したにも関わらず、古典部に入部しないことを決めた新入生大日向友子(おおひなたともこ)のその理由に思いを巡らす。

本作品は著者米澤穂信(よねざわほのぶ)の古典部シリーズの第5作目であり、折木奉太郎(おれきほうたろう)や千反田える(ちたんだ)は2年生になって新入生を勧誘するという立場になっている。物語の舞台としては、長距離走大会の20キロのなかで主に、奉太郎(ほうたろう)の回想シーンで展開するというもの。恩田陸の「夜のピクニック」を思い出す人も多いのではないだろうか。

各所に散りばめられた伏線を奉太郎(ほうたろう)が真実に結びつけていくのが面白い。例によってその対象の出来事が、殺人事件などではなく、友人同士の仲違い、といったものであるから気楽に読み進められるのだろう。シリーズの他の作品と同じく、主要な登場人物のなかで繰り広げられるテンポのいい会話もまた魅力の一つである。

「折木さんって真夜中の赤信号は無視するタイプですか」
「真夜中には出歩かないタイプだ」
「お前は守りそうだな」
「わたしは、真夜中に出歩く範囲に信号がないタイプです」

物語の場面の少なさから石持浅海(いしもちあさみ)の「扉は閉ざされたまま」にどこか共通するものを感じた。この本から多くを学べる、というような内容ではないが、著者の技術やこだわりを感じさせる内容である。

ずいぶん楽をしたし、寄り道もした。けれどもいつかはゴールまで行かなくてはいけない。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
神山高校の古典部を描いた物語の第4弾。

本作品は前3作と違って、短編集となっている。古典部の4人、省エネがモットーの折木奉太郎(おれきほうたろう)、物事は広く浅く取り組む福部里志(ふくべさとし)、そして地元の名士の娘、千反田(ちだんだ)える、そして福部に想いを寄せる伊原麻耶香(いはらまやか)。

例によってあまり重要でもない日常の謎に挑み続ける4人。他愛のないことだけどどこか深みを感じさせるエピソード。印象的だったのは、6話目の「手作りチョコーレート事件」。福部里志(ふくべさとし)に想いを寄せる伊原麻耶香(いはらまやか)は毎年バレンタインデーには、福部(ふくべ)にチョコレートを渡そうとするのだが、彼はどうにかして受け取ることを回避しようとする。そこには福部(ふくべ)なりの深い理由があった...。

軽い物語の寄せ集めではあるが、だからといって読み終えた瞬間に記憶から消えてしまうようなものではなく、むしろ何か心の中に漂い続ける深みがある。悪くない一冊。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
伝統の文化祭。手違いで作りすぎた文集を売るために古典部の4人は思考錯誤する。その一方で学内で起きている連続盗難事件。そんな文化祭の3日間を描く。

古典部の物語の第3弾である。例によって物語の舞台も、そこで発生する問題も、登場人物たちの悩みも、読んでいるものの気持ちを落ち込ませるほどのものではない、という気楽な物語。お馴染みの古典部の4人を中心に物語は進む。省エネがポリシーの折木奉太郎(おれきほうたろう)、お嬢様の千反田える。漫研と古典部を掛け持ちする伊原麻耶花(いはらまやか)。楽しいことにはなんでも首をつっこみたがる里志(さとし)である。前2作と異なるのは、本作品は4人に等しく視点が移り、今まであまりその心情が表現されていなかった麻耶花(まやか)や里志(さとし)の人間性がしっかり描かれている点だろう。

特に麻耶花(まやか)が、彼女の所属するもうひとつの部活、漫画研究会において、その性格ゆえに意見の異なる女生徒と衝突するのは、比較的印象的に残るシーンである。

さて、米澤穂信作品といえば、つねに「ミステリー」について考えさえる要素を備えていて、本作品でもそういった部分がある。文化祭中に発生した盗難事件が50音順に部活をターゲットに進んでいるということで、奉太郎(ほうたろう)、里志(さとし)はアガサクリスティの「ABC殺人事件」を重要なヒントとしてあげるのだ。もちろんその本を読んでなくても本作品を楽しむのに問題ないと思うが、アガサクリスティの名作ぐらいは目を通しておくべきなのかも、と思わされてしまう。

のんびり読める1冊。古典部の前2作より完成度が高い印象を受けた。

ホイール・オブ・フォーチュン
タロットの大アルカナに属するカードの1枚。カード番号は「10」。(Wikipedia「運命の輪」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
古典部の高校生4人が2年生が作りかけたミステリーを見せられ、その続きの脚本の製作に手を貸すよう依頼される...。

「氷菓」に続く古典部シリーズの第2弾である。筆者米澤穂信の作品にいくつか触れるとわかることだが、ミステリーに対してかなりの強い思い入れがあるようだ。(特に「インシテミル」のなかでミステリーに対する言及が多かった)そして、そのミステリーにおける暗黙のルールを強調しながらも、そのルールの枠からどうにかして逸脱しようと終始試みているように感じられる。

本作品で興味深いのはその舞台設定だろう。折木ホータロー、千反田えるを含む古典部4人は素人によって途中まで映像化されて放り出されたミステリーを見せられ、続きがどうなるのか考えるよう依頼されるのだ。

つまりそれは、単純に目の前で起きた殺人事件の謎を解くのとは実はかなり異なる。彼らは常に、映像のなかで得られた手がかりのほかに「実は脚本を担当した人は、この窓が空きにくい事実を見逃していたかも?」とか「脚本担当がこの建物を下見したときは冬でここはもっと草が少なかったかも」という、そのミステリーの作成のなかで生じた見落としや誤りをつねに想定しながら、推理を進めていかなければならないのだ。

そんななか、ホータローは「これが真実」と提出される案を論破していく。では、真実は?というよりも真実として描かれるはずだった映像の脚本は?物語の出来不出来にかかわらず、この奇妙さはかなり新鮮である。結末よりもこの奇妙な設定にずいぶん魅力を感じてしまう。

全体的には前作同様、力を抜いてのんびり読める作品である。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
折木奉太郎(おれきほうたろう)は成り行きで入部した高校の古典部で、千反田える(ちたんだえる)という女性と出会う。そして、古典部の日常のなかで起きる不思議な出来事に対して不思議な才能をみせることとなる。

ほのぼのとした学園物語で肩の力を抜いて読むことができる。なぜか閉まってしまったドアや、なくなってしまった文集など、他愛もない謎を、奉太郎(ほうたろう)が友人たちと協力して解いていくうちに物語は、30年前の学園祭での出来事に向かっていく。

冒頭の軽いノリとその魅力的な登場人物によって物語に引きずり込まれて読み進めているうちに、思った以上に深い内容にまで踏み込んでいた。

軽く読めるけど決して浅くはない。そんな絶妙なバランスが評価できる。ちょっと時間があるときに読書を楽しみたい。そんな人にはおすすめできる作品である。

プリシュティナ
コソボ共和国の首都。1990年代のコソボ紛争で深刻な打撃を受け、現在も復興の途にある。(Wikipedia「プリシュティナ」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
破格の時給に惹かれて申し込んだ12人のアルバイト。その仕事は与えられたルールの元で施設内で数日間過ごすというもの。そのルールとは、人を殺せばボーナスが与えられ、施設内で起こったいかなることにもその後は責任を負わなくていいというものだった。

密閉された空間の中で数人の男女が過ごし、一人、また一人と減っていくというのは、現実味はなくても昔からよくミステリーで使われる手法である。代表的なのはなんといってもアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」だろう。本作品もそれを強く意識しているように感じられる。

そんな使い古された手法を用いてはいながらも、新しいのは、本作品がミステリーの枠から微妙に逸脱している点ではないだろうか。たとえば本作品中で登場人物たちもいっているのだが、鍵のかからない部屋というのはミステリーにおいてはタブーなのだそうだ、なぜなら密室殺人ができないから・・・。雫井脩介の「虚貌」は犯人が指紋を偽造できるという点で、ミステリーとしての評価が低かったとか。つまり、ミステリーにおいては人物Aの指紋が現場についていたら、それは人物Aがそれを触った事実でなければならないのである。

読み手にもよるのだろうが、僕にとっては本作品は、知らず知らずのうちに自分の中で築いてきていたミステリーの暗黙のルールみたいなものを考えさせる作品となった。

ちなみに同様に閉鎖空間に複数の人間を放り込んでそこにルールを設けるというパターンの物語には高見広春の「バトル・ロワイアル」、貴志祐介「クリムゾンの迷宮」などが思い浮かぶ。比較してみるのも面白いだろう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
兄を失った失意のリョウがたどり着いたのは、もうひとつの世界。その世界ではリョウは生まれずに、代わりに姉のサキが生きていた。

別の世界に飛び込んでしまうという突飛な展開ながら、決してその非現実な舞台設定で読者を遠ざけることなく、そこから描かれる世界観はむしろ妙に引き付けてくれる。なぜなら、リョウとサキはお互いの世界の違いが自分たち2人がそれぞれの世界に及ぼした影響だということに気付いていて、それが自分自身の世の中に対する存在価値だと気づいて行くからである。

1人の人間が男か女か、そしてその性格の違いだけで、少しずつ世界に違いが生じている。あるはずの木がなかったり、捨てたはずの皿が残っていたり、死んだはずの人が生きていたり...。

やがてリョウは自分がやってきたこと、やらなかったことの意味に気付いていく、ラストはもちろん読者次第だと思うが、僕の中には他の作品では味わえない感情を起こしてくれた。僕らはこんな非現実な経験をすることはまずないが、それはむしろ幸せないことなのかもしれない。また、舞台が石川、福井と北陸地方で、その観光名所がうまく物語に取り入れられている点も面白いだろう。

兼六園 石川県金沢市にある日本庭園。広さ約3万坪、江戸時代を代表する池泉回遊式庭園としてその特徴をよく残している。(Wikipedia「兼六園」

東尋坊
福井県坂井市三国町安島に位置する崖。
「東尋坊」

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