洋書の最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
湖の底で身元不明の女性が見つかった。Tracyは事件の捜査に向かう。

通常の事件解決の物語に見えたが、一人の引っ込み思案な読書女性の物語が並行して進む。その女性はやがて男性と出会い結婚して幸せな生活を築き始める。この女性がどのように事件と関係するのか、そして湖の底で見つかった女性がこの女性なのかを考えながら読み進めることになるだろう。

物語は事件解決だけの様子でなく、Tracyと恋人のDanの様子も描いている。どちらも40歳を過ぎており一度結婚を経験しているカップルということで、今後の展開は事件解決と同じぐらい気になる部分である。

残念ながら第1作目の「My Sister's Grave」や第3作目の「The Clearing」ほど印象的な展開ではなかった。シリーズ全体として楽しむためには本書も読まなければならないが、もしTracyシリーズを読んだのが本書が初めてなのであれば上に挙げた2作品を読んだ上で判断してほしい。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Maisie Dobbsシリーズの第8弾である。1932年夏、戦時中に出版した絵本が反戦運動を呼んだGrebille Liddicoteの動きを知るため、Liddicoteが学長を務める大学に潜入することとなる。一方で古くからの友人であるSandraが夫を仕事中の事故で亡くして、Maisieの元へ救いを求めてくる。

興味深いのは常にドイツのヒトラーの影が物語全体に見える部分だろう。例えばMaisieの潜入した大学ではディベートが行われており、そこで行われる議論の多くはヒトラーに関連することが多く、当時の世の中の空気をイギリス人の視点で見る事ができる。特にヒトラーやムッソリーニは教科書にも出てくるので知っているが、オズワルト・モズレーについては本書を読むまで知らなかったので、当時の人々にとって大きな出来事が忘れ去られて行く虚しさのようなものも感じてしまった。

そんな世界状況のなかMaisieはScotland Yardと協力して大学内でLiddicoteの動向を探るのだが、ある日Liddicoteが大学内で殺害される。Liddicote殺害の犯人を突き止めようとするなかで、多くの関係者に話を聞くうちに、Liddicoteの出した反戦を訴えた本が多くの人の人生に影響を与えたことがわかってくる。「良心的兵役拒否者」と呼ばれる戦争に参加することを拒否した人たちは刑務所に入れられたと言うが、日本と同様に、イギリスでも戦争に反対することは、人からの軽蔑を受け入れる勇気のいる行為であったことがわかるだろう。

今回も、捜査だけでなく、父や恋人のJamesとや親友のPrisillaなど、いろんなことを悩みながら生きて行くMaisieを見ることができる。特にJamesとの結婚を意識し、結婚と仕事との間で悩むMaisieの心は、現代の人々にも共通するような気がする。

少しずつ第二次大戦に近づく世界状況、シリーズがどこまで続くのか楽しみである。

オズワルト・モズレー Oswald Mosleys
イギリス・ファシスト同盟指導者(Wikipedia「オズワルト・モズレー」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
劇団四季の「ウィキッド」を観劇してから、オズの物語のファンである。本書は言うまでもなく「ウィキッド」の原作。後に「ウィキッド」としてオズの魔法使いでは悪の化身「西の魔女」とされる生まれながら緑の肌を持つElphabaの生涯を描く。

序盤はGlindaとElphabaの嫉妬や恋愛や意地など、どこにでもありそうな女性の成長の様子を微笑ましく描かれている。緑の肌をして社交的ではないElphabaだったが、Glindaと同じ部屋になったことで、次第にGlindaと仲良くなって行くのだ。しかし、月日が経つに従って、2人は人生の選択を迫られて行く。

おそらく本書で描かれているのは、多くの人が「オズ」という言葉から想像するよりもはるかに政治的な世界だろう。エメラルドシティを中心としたオズの国では動物たちが人間と同じように、話し、多くの職業に就き社会を構成する一部となっていたが、やがて、動物達は言葉を喋らず家畜として暮らすべき、という政策が広まる事になる。そんな政策に反対するElphabaは心を同じくするたちとともに抵抗しようとする。Elphabaの妹NessaroseもやがてともにGlindaやElphabaと過ごす事になる。物に執着しないElphabaだが、父が、妹のNessaroseだけに与えた靴にこだわりを持つ。

そして月日とともに、Glinda、Nessarose、Elphabaは別の道へ進むこととなる。父からの愛を求めたElphabaが混乱するオズの世界に翻弄されながら、やがて西の魔女になっていくのだ。やがてDrothyという名の女性がやってくる。一緒に飛んできた家でNessaroseを押しつぶすして殺す事になったDrothyはElphabaがこだわりつづけた靴をはいてエメラルドシティに向かうのである。

残念ながらハッピーエンドとは言えないが、オズの物語に深みを増してくれるだろう。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「ドラゴンタトゥーの女」という印象的なタイトルで、映画にもなったこのミレニアム3部作は、「面白い本」と聞かれたら必ずタイトルである。不幸にも著者のスティーグ・ラーションが亡くなったことで、続編を諦めていたのだが、本書によって別の著者による4作目がつくられたのである。

正直、著者が変わったことで本書は懐疑的に見ていた。実際序盤は描写がややしつこく、シリーズ三部作までに感じられたテンポの良さが失われてしまった印象を受けたが、中盤から物語が大きく動き出すとそんなことも気にならなくなり十分に楽しむ事ができた。

物語は、人工知能の第一人者であるBalderが殺害されることから始まる。しかし、幸か不幸かBalderの自閉症の息子Augustがその現場を目撃していたのである。それに気付いた犯人だが、その不自然な行動から自閉症と判断し、自閉症の子供であればわざわざ目撃者として殺す必要はないとその場を去る。実はAugustは自閉症でもサヴァン症候群という見た物を強烈に記憶し、写真のような絵を描く事のできる能力を持っていたのである。それを知ってAugustを殺そうとする犯罪集団とAugustを守ろうとするBlomkvistやSalanderを描く。

得意のハッキングで誰よりも早くAugustの危険を察知して救出するSalanderは、これまでの4作品のなかではもっともSalanderが優しくかっこいい人間として描かれている気がする。それはAugustという少年と行動することになったこの物語のせいなのか、著者が変わったせいなのかはわからないが、Salanderに対する見方が変わるかもしれない。

また、Augustの救出劇だけでなく、雑誌社ミレニアムの社員達も重要な活躍をする。特に若い優秀なAndrei Zanderは重要な役割を担う鵜。若く優秀でジャーナリズムを愛するAndrei Zanderの好きな映画、好きな小説が本書で触れられていたので挙げておく。

そして、やがて現れるSalanderの双子の姉妹Camilla Salanderの影。里親の証言からCamallaの歪んだ考え方が明らかになって行く。

今後も続編があることを感じさせる終わり方で、次回作品が楽しみである。

Elliptic Curve Method
The Lenstra elliptic curve factorization or the elliptic curve factorization method (ECM) is a fast, sub-exponential running time algorithm for integer factorization which employs elliptic curves.(Wikipedia「Lenstra elliptic curve factorization」)

レナード・ノーマン・コーエン
カナダのシンガーソングライター、詩人、小説家。日本では主にシンガーソングライターとして知られ、熱心なファンも多い。80歳を超える現在もアルバムをリリースするなど精力的に活動中。(Wikipedia「レナード・ノーマン・コーエン」

「供述によるとペレイラは... 」
ファシズムの影が忍びよるポルトガル。リスボンの小新聞社の中年文芸主任が、ひと組の若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。タブッキの最高傑作といわれる小説。

「Dark Eyes」ニキータ・ミハルコフ

1987年のイタリア語とロシア語の映画で、19世紀を舞台に、ロシア人と恋におちたイタリア人を描く。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
クリスマスの夜、足の不自由な一人の男性が、人通りの多い通りで爆弾を使って自殺した。同じ頃、脅迫の手紙が政府のもとに届き、Maisieは協力を求められる。

脅迫の手紙ではしきりに、国のために戦争に行って、大きな障害を負って働けなくなってしまった人々の救済を求める。実際、第一次大戦から数年経ったこの時代、多くの人が戦争の被害を抱えていたのである。Maisieはそんな犯人の正体を突き止めるために、多くの人と言葉を交わすなかで、自らの恵まれている状況を知るのである。

あなたは、仕事がないという状況がわからないでしょう。毎日仕事を求めてたくさんの場所を訪れる気持ちがわからないでしょう。何年も働いていないひともいるのよ。

そんななか、部下のBobbyの妻Doreenは最愛の娘を失ってから行動に支障を来たし、入院することとなる。父や友人緒Prisilaなど、周囲の人と支え合いながら混沌とした時代を生きていく様子が見て取れる。

本書は、Masieが警察と協力して捜査にあたる初めての作品ではないだろうか。Misieは捜査の協力のために、意味がないと思いながらも指示された場所を捜査したりもするのである。しかし、やがてMasieの見つけた手がかりから、戦争中に毒ガスを扱った一人の男性が容疑者として浮かび上がってくるのである。

本書の舞台はイギリスであるが、世界のどこでも戦争が不幸しか生まないことを教えてくれる。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
展覧会の準備中に組み立ててあった足場から落ちて亡くなった期待の芸術家Nick。双子の姉であるGeorginaがその死に他殺の疑いを抱いて、Maisieに調査を依頼する。

Maisie Dobbsシリーズの第4弾。探偵物語というだけではもはやありふれたものになってしまうだろう今、本シリーズは戦争の悲惨さをその物語のなかで常に訴える点が面白い。本作品はある芸術家Nickの死の謎を解くことが調査の目的であるが、彼は戦争から戻ってきた後にその悲惨な体験を絵に描くことで芸術家として開花する事となったし、依頼主でありNickの双子の姉であるGeorginaは文章を描くことに才能を持ち、戦争を描写することで評価をあげたのだった。また、NickとGeorginaの姉であるNollyも夫を戦争で失っているという過去を持つ。そして、Maisieが少しずつ真実に近づいていくに従って、各々が戦時中に受けたつらい経験や過去、知りたくなかった出来事が見えてくる事になる。

また、調査だけでなくMaisieのアシスタントのBillyの生活や、Maisieに想いを寄せる医者Andrew Deneとの関係にも変化が起きる。心に傷を抱えながらもそれぞれが少しずつ人生を歩んでいく様子が印象的である。また、一方で、ドイツでヒトラーが勢いを増しているという。今後どのように展開していくのだろうか。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金がなくて困ったStephanie Plumは法廷に現れない犯罪者を捕まえる仕事、Bounty Hunterをすることを決意する。最初のターゲットは殺人を犯して逃亡したもと警察官で、なんとStephanieの学生時代の知り合いの男Morelliだった。

ターゲットであるMorelliを追ううちに、逆にStephanieは窮地を救われることとなる。そして次第にMorelliとStephanieの間に妙な協力関係が生まれていく。

Stephanieが失敗を繰り返しながらも、少しずつBounty Hunterという仕事に慣れていく様子が面白い。Stephanieが住んでいる町が非常に狭くて、そこら中に知り合いや元同級生がいて、みんなが結婚相手を世話しようとしている点が、懐かしい温かさを感じさせる。Bounty Hunterという職業自体が日本では馴染みが薄いので、文化の違いが反映されているような気がする。そもそもなぜ日本にはBounty Hunterという職業が存在しないのだろう、と考えてしまう。

続編もあるようだが、Stephanieが成長する様子が見れるかもしれない。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スマートフォンの普及によってWebの作り方は大きく変わった。著者はMobile Firstというコンセプトでその考え方を語る。

その考え方は、Mobileという限られたスペースに情報を入れようとするために、不要な情報や要素はすべて削ぎ落とす必要がある。その上で出来上がったMobile用のWebからPC用のWebを作成する際に、本当に役立つものだけを付け加える、という、まさにMobileサイトを中心とした考え方である。

面白いのは、冒頭で著者は言っている。

今までは日本人でもない限り誰もモバイルでWebを閲覧しようなどとはしなかった。

つまり、数年前まで日本はモバイルでのWeb閲覧という分野においては世界でも進んでいたのだ。にもかかわらず、海外のWeb情報サイトではそこらじゅうで目にする「Mobile First」という言葉、日本ではまったく聞かない。すでに世界から遅れをとっているということなのか、それとも単に文化の違いなのか。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
車にひかれそうになった子供を助けたところを報道され、世間からの注目を浴びたRidleyだが、それを機にいろいろなことが起きるようになった。やがてそれは彼女自身の出生の秘密にまでおよんでいく。

本書は兄Aceと父と母の家庭に育った女性Ridleyの物語。自分の姿が報道されたあと、本当の父と名乗る人から手紙を受け取るのである。自らの出生に疑問をもつRidleyは少しずつ大きな陰謀に巻き込まれていく。実は自分は過去・・・とか、疾走したあの人が実は・・・、という流れの本が多くて読み終わってあまり時間が経たないうちに記憶から薄れてしまっている。

さて、本物語りでは、Ridleyの叔父が何年も前に行っていた福祉制度が物語の鍵となるのだが、昨今日本で議論になったことと非常に似ているため、いろいろ考えさせられる物があるだろう。子供を育てることができない母親に、「それが母親の責任」とその義務を強いて不幸な子供達を増やすのか、それとも子供を手放す自由を社会が受け入れ、子供達を育てる施設を整えるのか。

本書ではRidleyと同じように自分の出生に悩んで家を飛び出したAceもたびたび登場する。ドラッグから抜け出せなくなったAceの存在が日本とアメリカの文化の違いを際立たせているような気がする。

一度両親を、自分の本当の親じゃないかも、と思い始めたRidleyには過去のすべてのできごとが嘘っぽく見え始める。考えてみると、人は他の家庭がどのように子供に接するか、ほかの家庭の親と子供接し方が自分の家庭のそれとどのように異なるかというのは、本当に知る機会がないんだな、と考えさせられた。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Beckの妻Elizabethは8年前にが凶悪な犯罪者によって殺された。しかしある日匿名のメールを受け取り、8年経った妻の姿を目にする事となる。

匿名のメールによって妻の存在を知らされる、しかしそのことは誰にも話してはいけない、という読者を物語に引き込む手法としてはありきたりな流れである。それでもBeckに協力してくれる友人達が個性豊かで特にモデルのShaunaやBeckの妹のLindaなどは物語を現代風に印象づけている。

特に文化や歴史的な事実と物語が絡んでいるわけでもないので、気楽に読む事ができるだろう。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代と違って何年もかかる建築の過程で周囲の政治も変われば建築家も財政状況も変わる。1つの大聖堂の建築に関わる人々の物語。

物語は大聖堂の建築に関わりたいと願う建築家のTomとその家族がとある修道院を訪れてそこでPhilipと出会う事から始まる。やがてPhilippは不幸なできごとによって焼け落ちてしまった教会をTomの力で再建する事を決意する。物語の序盤はそんなTomの恋愛や家族のことやPhilipの苦悩で占められる。

そして、中盤からは様々な登場人物が生き生きと躍動してくる。一人はTomの2番目の妻Ellenの息子Jackであり、彼は彫刻に非凡な才能を見せ、やがて大聖堂の建築を担うようになる。また領主の娘に生まれたAlienaはWilliamの策略によって、その地を弟Richardと追われるが、自分たちの地位を取り戻す事を決意し強く生きていく。

大きな建物も2,3年で、気がついたら出来上がってしまっている現代の感覚だとなかなか想像できないが、政治の不安定な当時は、大きな建物を建築するためには相当の月日が必要な事がこの物語から見えてくる。次回、海外旅行で建築物を見る際はまた違った視点でみることができるだろう。

壮大な物語で読み終わるのにかなり時間がかかった。続編もあるらしいのでぜひ読んでみたい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Maisie Dobbsは食料品店のチェーンのオーナーから、家出をした娘を捜して欲しいという依頼を受ける。しかし、その消息をたどるうちに、その娘の友人の何人かが死亡していることに気づく。

Maisie Dobbsのシリーズの第2弾である。このシリーズは舞台を終戦直後に設定しており、内容も戦争体験に関わる部分が多い事は第1作「Maisie Dobbs」の感想で触れた。本作品でもその内容は単純な家出人の捜査ではなく、やがて戦時中の人々の行いにつながっていく。

また捜査とは別に、Maisieの人間関係にも問題が生じる。特に唯一の肉親である父親の素っ気ない態度に悩むのである。その感覚は父親が入院した事によってその想いはさらに加速する。そしてMaisieの元で一緒に働くBillyの振る舞いにも変化が現れるのである。

MaisieのメンターであるMauriceの存在は本作品でも大きいが、医師でありMauriceの友人のDeneの言葉もまた興味深い。

聞いた感じでは、あなたの父親はきっとすぐに回復することだろう。彼はすでに事実を受け入れて、回復した先にある未来を想像しているのだから。すでに自分が進むべきステップを意識しているのだから。

ただの探偵物語では終わらない深さがある。引き続き続編を楽しみたい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
終戦からまだまもないなか、Maisie Dobbsはロンドンで探偵事務所を始める。浮気調査の過程で、戦争で体に傷を負った人々が集団生活をしている施設に行き当たる。

体裁としては私立探偵が依頼された内容を解決する、というよくある形をとっているがシリーズ第一弾となる本作品では、Maisiの幼い頃の経験と、その後の従軍看護師として戦地に赴き、恋愛や友人達の悲劇と出会う様子が描かれている。むしろ謎を解明していく流れよりも、Maisieの過去の物語の方が本書においては重要な役割を担っているような気がする。

また、依頼された内容も、ある男性の妻の浮気調査でありながら、最終的に行き着いた先は戦争によって体に傷を負った元兵士達が集団生活を送る施設、というように戦争の悲劇に関することが多くを占めている。そのため、ただの現代を舞台とした事件解決物語とは違った雰囲気を持っている。

Maisieの考えのなかで重要なのは、MaisieのメンターであるMauriceからの教えである。Maisieは迷ったとき常にその考え方に戻って考え直すのである。そんなMauriceの言葉はどれも深く印象的である。

真実は抑圧されればされるほど強力になり、やがてわずかなひびでその壁は崩れ世に出る。

そしてラストはMaisieの過去の一部が明らかになる。シリーズ作品なのでぜひ続編も読んでみたい。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Tomとその妻Isabelはオーストラリアの無人島で灯台の光を維持することを仕事としていた。ある日その島にボートが流れ着く。そのボートにはすでに息を引き取った男と赤子が乗っていた。

戦争でのつらい経験を引きずって生きていたTomは、人のいない島で灯台の光を管理するという仕事を選ぶ。そんな折に出会ったIsabelと結婚し、2人で家族を作ろうとするがIsabelは3人の子供を流産してしまうのだ。そして、そんな失意の2人のもとに赤子を乗せたボートが流れ着く。

戦争中の自らの行いによって良心の呵責に苦しむTom。そんなTomの過去に対する言動や、自らの正義感や信念を反映した生き方が印象的である。

1920年代を舞台にした物語という事でおそらく今とはかなり異なるのだろうが、灯台を管理するという仕事やその役割、そして灯台そのものについても興味をかき立ててくれる。また、オーストラリアを舞台としている事からその時代の人々の言動に触れるうちに、オーストラリアのこの時代の歴史をほとんど知らない事に気づかされた。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
結婚目前だったDannyは親友のBernieを殺した罪を着せられて終身刑を言い渡される。Dannyの刑務所生活と真犯人への復讐の計画が始まる。

もともと読み書きのできないDannyは刑務所で同じ部屋になったNickによって多方面の教育を受けてその才能を開花させていく。そして、偶然の出来事によって刑務所の外へ出る機会を得たDannyは、真犯人グループへの復讐を始めるのだ。

やや出来過ぎの感もあるが、全体的には目覚ましく動き続ける物語は読者を飽きさせる事はないだろう。また、物語自体が、ロンドンからスコットランド、スイスのジュネーブなど、いろんな場所へ展開される点も面白い。イギリス人でもスコットランドの発音に戸惑う場面など、日本にいてはわからない現地の人々の感覚が見えてくる。

Jeffrey Archerの物語は法廷の場面が多いという印象があるが、本書も同様に緊張感あふれる法廷シーンを見せてくれる。

個人的には物語の終わり方が好きだ。もちろんここで詳しく書く事ができないのが読んでもらえればこの余韻に浸れる終わり方をわかってもらえるかもしれない。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Dark Towerシリーズの第5弾。Roland達一行はCallaという町の人々に救いを求められる。その町には何年かに一度仮面を被った「Wolves」と呼ばれるグループがやってきて、町に多くいる双子のうちの一人をさらっていくのだというのだ。

シリーズ中最長の本書。Roland、Eddie、Sussanna、Jake、Oyeは助けを求められてCallaという町に赴き、町の人々から情報を集めながら、約1ヶ月後に迫ったWolvesの来襲に備える始める。そこでは双子の一人がさらわれても残る物もいるのだからそれで甘んじようと言う人々と、これ以上今の状態を続けないために命の危険を承知で立ち上がろうとする人々がいる。

町の老人が昔のWolvesの来襲と一緒に戦って命を失った友人達について語るシーンが個人的にはもっとも印象に残った。

モリーは砕け散った夫の血と脳を浴びながらも、なお動かず。そして叫んで皿を放った。

さて、物語はWolvesの襲撃に備える一行だけでなく、夜になると不穏な行動を始めるSussannaや、Eddie達と同じようにニューヨークからやってきたCallaの町の神父Callahanにも及ぶ。Callahanの語る物語はどうやらStephan Kingの別の作品と繋がっているようで、そちらも読みたくなるだろう。

前作「Wizard and Glass」でも赤い水晶が物語の重要な役割を担っていたが、今回もCallahanが保持しているという水晶が鍵となる。今後この玉の存在が物語にどのように影響を与えていくのか、ようやく近づいてきたシリーズの終盤に対して期待感が高まる。

スピード感溢れる描写に著者の才能を感じた。早くシリーズを最後まで読みたくさせてくれる一冊。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
暴走し始めた知能を持った機関車との対決を終えたRolandは旅する3人の仲間にSusanという女性との出来事を語り始める。

前作「The Waste Lands」の最後に暴走する機関車Blaineになぞなぞ対決を挑まれたRolandの一行だが、Eddieの機転でその場を勝利する。本書はむしろその後にRolandがJake、Eddie、Susuannahの要望に答えて語る自らの過去、Rolandの14歳の時の出来事が中心となる。

Rolandは同じ訓練をつんだCuthbert、AlainとともにHambryという町の調査に赴くのだが、その町にはBig Coffin Huntersと呼ばれる3人組が権力を持っていて、やがて外部から来たRoland達3人との対立を深めていく。また、RolandはSusanという、すでに町の権力者と結婚を約束した美しい女性と出会い恋に落ちるのである。使命を果たそうとするなかで恋に溺れるRolandに、CuthbertやAlainは不信感を強めていく。

今までその過去はほとんど謎に包まれたままだったRolandだが、本書でようやくその辛い過去が明らかになっていく。あまり感情を見せないRolandだが、若き日Rolandからはその感情の揺れ動く様子が見て取れる。

SusanやBig Coffin Huntersの存在は言うまでもないが、物語を面白くしている要因の1つは、Hanbryの町に住む赤い水晶を持った老婆Rheaの存在である。本書のタイトルはまさにそれであり、おそらくシリーズの今後含めて水晶も老婆の存在も大きな鍵となっていくだろう。

今後の感動的で壮大な展開を予感させる。日本人の間にももっと読まれて欲しいと思える作品。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
20世紀初頭のスペイン、バルセロナ。David Martínは作家になるための道を歩んでいく。そんなある日、宗教を作って欲しいという依頼を受ける。

前半はMartínの作家になっていくなかで、友人であり保護者であるPedro、Martínが想いを寄せるCristina、Martínに憧れて作家を目指すIsabellaなど、読み進めていくうちにMartínの周囲にある温かい人間関係が見えてくる。そんななかMartínは宗教を創って欲しいという依頼を破格の値段で受けるとともに、周囲に不思議な出来事が起きるようになるのである。そして時期を同じくしてMartínが住んでいる古い家の部屋の中で、前の住人の持ち物にその依頼人の名前を発見するのである。

依頼人の目的は何なのか。この家には誰が住んでいたのか、そして彼には一体何が起こったのか。そんな彼の行動はさらに多くの困難を招く事にになるのである。

何よりも物語全体がつくりあげるバルセロナの当時の雰囲気がすばらしい。また、同著者の別の作品「Shadow of the Wind」にも登場した「忘れられた本の墓場」も登場し、Martínの友人として本屋の店主とその息子が描かれており、本という物の存在に対する著者の愛情がひしひしと伝わってくる。

しかし、残念ながら多くの謎を残したまま本書は終了し、今後続くであろう続編にその解決を委ねる事となっている。本書だけですべてを評価する事はできないが、ややミステリアスで超自然的な内容を含んでいるため「Shadow of the Wind」のような心地よい読後感や雰囲気を味わおうとしていると裏切られるだろう。

とはいえ次回作は読まなければならないだろう。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Aliが遺体となって発見され、犯人として疑っていたxxが殺された。一体Aとは誰なのか。不安に怯えながらAria、Spencer、Emily、Hannaは日々の生活を送る。

「Pretty Little Liars」のシリーズ第3弾である。毎度のごとく恋愛や十代の女性にありがちな女性同士の見栄の張り合いや、派閥意識のなか普段の生活を送りながらも、4人はAと名乗る人間から来るメールなどに怯え続ける。そんな中やがてEmilyは自分のAliとの記憶のなかに抜け落ちている部分があることに気づくのである。そして、両親に寄るとどうやら幼い頃にもそういう経験をしたことがあったという。どうやらその抜け落ちた記憶の部分に真相にたどり着く鍵があるようだ、と不安になっていくのだ。

大きく物語の動く第3弾。すぐに続きを読みたくさせる。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカにたどり着いたHarry、Harryの子を宿したEmma、そしてHarryの親友であるGile。それぞれの人生が分岐し始める。

前作「Time Will Tell」の続編である。結婚を約束したEmmaが実は兄妹の可能性があることを知り、戦死した事にして他人の名義を乗っ取ってアメリカに入ったHarryだが、そこでは乗っ取ったアメリカ人の罪を被って服役する事と成る。一方でEmmaはHarryの戦死という事実に疑いを持ちその事実叙調査を独自に始めていく。Emmaの兄でありHarryの親友であるGileは兵役に志願しドイツとの戦地に赴いていく。

なかなか前作を読んでいない人にとって楽しむ事は難しいかもしれない。前作を読んでいる人には、前作では脇役に過ぎなかった登場人物たちが、それぞれ活躍していく様子を楽しむ事ができるだろう。

やがて物語は後継者選びへと発展していく。Barrington家を継ぐのはその息子のGileなのか、それとも別の男の息子として育てられたが産まれるのが数ヶ月早かったHarryなのか。すぐに続編へと手を伸ばしたくなる一冊。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ロシアでKGBの一線を退いたLeoと妻のRaisa、そして容姿にとった2人の姉妹の4人は質素だが平和な生活を送っていた。教師としてArisaは国際交流のイベントのために、2人の娘を連れてアメリカにいくこととなる。

「Child44」「SecretSpeech」に続く、冷戦時代のロシアを描いた第3弾。誰もが秘密警察KGBの目を恐れて生活しているロシア。前二作品でKGBの第一線から退いて両親を殺された姉妹ZoyaとElenaとともに暮らしていた。思春期を迎えた ZoyaとELenaを連れて、妻であり教師のRaisaがアメリカでアメリカの生徒たちとの交流イベントに向かうところから物語は大きく動き出す。

アメリカ人歌手Austinは、かつて共産主義を支持していたためCIAから睨まれてその活動の場所を失ったが、ソ連は彼を共産主義の象徴として再び表舞台に立つように説得しようとする。そんな陰謀に巻き込まれるRaisaとElena。そうしてアメリカで起こった出来事がその後のLeoをアフガニスタン、アメリカへと向かわせるのである。

僕ら日本人がアフガニスタンやタリバンについて意識したのはきっと9.11テロ以降であろう。本書はそんな混沌に陥るアフガニスタン、そしてそれを引き起こした冷戦時代のソ連、アメリカの関係を見せてくれる。太平洋を越えた3国にまたがって、前2作品以上に大きなスケールで展開される物語。

おそらくシリーズラストとなるであろう、むしろ終わりに近づくにつれて、読み応えのあるシリーズが終わってしまう事にさみしささえ覚えてしまう作品。

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
映画のロケ地を探してPellamがMartyとたどり着いたのはClearyという田舎町。しかしその街に滞在している最中に、Martyが不可解な死を遂げる。PellamはMartyの死の真相を暴こうと決意する。

田舎町で退屈な生活を送っていた人々が、都会からやってきた映画関係者のPellamが来た事で、警戒したり、期待したりする様子が描かれている。きっと、若い頃は都会に出て、何かのきっかけで田舎に戻ってきて、現状に不満をいいながらも年を取っていく。そんな流れは日本もアメリカも同じなのだろう。アメリカの文化のある一面を知るという意味では悪くないかもしれない。

Jeffery Deaverの初期の作品で、現在のRincoln Rhymeシリーズにあるようなスピード感は読者を引き込むような魅力は残念ながら感じられない。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
行方不明だったAliが遺体となって発見され、葬儀で一緒になったAria、Hanna、Emily、Spencer。4人はそこでようやく、4人ともAと名乗る人物から脅迫めいたメールを受け取っていた事を知る。誰もがAliをAだと思っていたが、Aliは死んでいたという事実が分かった今、再び疑心暗鬼が始まる。

前作同様Aria、Hanna、Emily、Spencerの4人に視点を展開して進んでいく。前作から呪いの言葉のようにそれぞれが口にしていた「Jenna thing」の内容も本作品で明らかになる。それはJennaとTobyという近所に住む兄妹に関する出来事だった。ある晩のAliのいたずらによってJennaは失明することになったが、翌日にはJennaの兄のTobyがその罪を被ったのである。一体死んだAliはTobyにあの夜何を言ったのか。

そして同時に4人それぞれの日常が展開していく。1作目ではなかなか理解が、登場人物の個性を認識していなかったが2作目となると次第にそれぞれの個性を理解していくのを感じる。Hannaは、父親が再婚しようとしている先には美人で同年代のKateがいるために、自らのルックスにコンプレックスを持っている。姉の恋人を奪う事になったSpencerは家族との関係を悪化させていく。AriaはHannaの元恋人のSeanと接近していく。そしてEmilyはTobyと近づいていくのである。

まだまだシリーズ序盤らしいが、少しずつ物語が面白くなっていくのを感じる。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
幼い頃のできごとによって話す事をしなくなったMikeだが、2つの才能を持っていた。一つは絵を描く事、そしてもう一つはどんな鍵でも開けてしまうこと。そんなMikeは金庫破りになっていた。

最近よく見られる手法ではあるが、本作品もある程度のときを隔てた2つの時間を交互に描いていく。片方はまだ学生のMikeを描き、話さないがゆえに周囲の人々から孤立していながらも、その才能で少しずつ自らの存在感を示していく。もう一方では、すでに金庫破りとして仕事を受けて、犯罪者たちに加わって行動する。物語を読み進めるに従ってこの2つの時間の間の出来事が少しずつ埋まっていく。

金庫破りを描いているので、Mikeが金庫を開ける際の描写がやはり新鮮である。そもそもダイヤル錠がどのような仕組みになっているのか、どれほどの人が理解しているのだろうか。軽くでもダイヤル錠の仕組みを知ってから読むともった楽しめるかもしれない。

Mike自身もなりたくて金庫破りになったわけではなく、その過程にはいくつかの運命的出会いがある。その一つが、Mikeと同じように絵を描く事を得意とするAmeliaとの出会いである。Ameliaと話すことのできないMikeは絵でお互いの意思を伝える。小説ゆえに、そんな絵による会話が文字でしか見えないのが残念であるが印象的なシーンのひとつである。

さて、仕事中でもかたくなに話そうとしないMikeの言動から、「幼い頃何があったのか」「なぜ彼は話せないのか」という疑問が読み進めるうちにわいてくるだろう。そんな好奇心が読者の心を物語を最後まで引っ張っていくのである。

しだいに打ち解け心を許し合うMikeとAmeliaだが幼い頃のできごとを話そうとしないMikeの言動もAmeliaの心にブレーキをかける。また、Mike自身も金庫破りという仕事ゆえに次第に危険な出来事に巻き込まれるようになる。

悲しくも温かい物語。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性から見ても美しく魅力的なAlisonを中心として集まった仲良しの女子5人組、しかしある夜を境いにAlisonは行方不明になり、それから3年が経って残りの4人Aria、Hanna、Spencer、Emilyもそれぞれ少しずつ疎遠になり、それぞれ新しい友人や生活を見つけて別々の日々を送るようになっていた。

日本で言うと中学生から高校生にあたる年代なので、彼女たちの興味の対象はもちろん勉学だけでなく、部活動や女友達や恋人やパーティなど。そんななか、4人はそれぞれ実はAlisonと個別に他の人に知られたくない秘密を共有していた。そのためにAlisonの失踪を嘆きはすれど、どこかで、これで秘密が公になることはない、と安堵する思いも持っている。そんな微妙な心のうちが面白い。

そんななかAという名乗る人物からそれぞれのもとに、Alisonしか知り得ない内容のメールが届き、それぞれがAlisonの影におびえ始めるのである。これは誰かのいたずらなのか、それともAlisonはどこかで生きているのか、と。

そんな物語の進行とは別に、彼女たちの興味のあるブランドや、食べるものなど、アメリカの生活に根付いているだろうものや表現がたくさん出てくるのが個人的にうれしい。「ビバリーヒルズ青春白書」や「The O.C.」を小説で楽しめる感じである。

残念ながら本作品は物語の本当にプロローグに過ぎないという事が読み終わってわかる。多くのいくつかの謎を残して続編に引き継がれてしまうのだ。急がずに読み続けていきたいと思う。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
家庭の都合からワシントン州のForksに引っ越した高校生のBellaはそこで父親との新たな生活を始める事となる。しかし、新しい高校でBellaは他からは距離を置いているグループと出会い、次第にそのなかの一人Edwardに惹かれていく。

映画にもなった有名な物語。すでに映画を第3作まで見てしまったため、どうしても映画の印象が拭いきれないが、聞くところによると、小説が非常に美しくまとめられているということだったので読む事にした。

今更説明するまでもないが、本作品は人間と吸血鬼との恋愛物語。第1弾の本作品は基本的にはBellaとEdwardが惹かれ合い、お互いの生き方考え方の理解を深めていく様子が主に描かれているため、あまり大きな展開はない。続編に対する下準備という意味で読むべきだろう。

強いて言うなら吸血鬼という生き方に憧れるBellaの気持ちが巧く伝わってくるような描き方がされている気がする。BellaとEdwardの会話のシーンが多いので、若干退屈するかもしれない。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ベストセラー作家であるPaulはある日ドライブをしていて事故に遭う。目を覚ましたそこは、彼のファンである女性Annieの家だった。Paulはそこで監禁生活を強いられながら小説「Misery」の続編を書く事を強要されるのである。

Annieの狂気や、Paulに対する残酷な仕打ちがある一方で、小説を書くという事の難しさ、深さを感じる事ができる。例えば、Paulが書いている物語の面白さに、Annieがついに結末を教えるように迫るのだが、それに対して、Paulは、自分にも結末はわからない、と答える。いくつか候補として考えている結末はあるが、どのうちのどれを選ぶかは自分にもわからないと。また、Annieの小説に対する意見も面白い。彼女は最初にPaulが書いた内容を読んでどこか違和感を感じてそれをPaulに伝える。Paulもまた、監禁されているという環境にもかかわらず、一人の読者の意見としてそれを尊重し、物語をより矛盾のない形に修正していくのである。何かKingの物語に対する価値観が凝縮されているようにも感じる。

そして、小説云々は別にしてもその強烈な描写はやはりすごい。例えば、主人公がなにかの窮地に陥った時、僕らはどこかで、このひとは主人公だから、「きっとうまく逃れるんだ」的な考えを持っていると思うのだが、そんな楽観的な部分を見事に裏切ってくれる。日本の作家五十嵐貴久の「RICA」もまたそんな残酷な行為をする女性の物語であったがどこか似た部分を感じる。ひょっとしたら五十嵐貴久もKingの作品に影響を受けたのかもしれない。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
孤児として育ったVictoriaはいままでどんな里親の元でも一緒に暮らす事を拒んできた。10歳になったVictoriaはElizabethというワイン農場の元で生活するようになるが...。そして18歳の今。

18歳になって一人で生きていく事になったVictoriaと、10歳でElizabethと会ったときの様子が交互に展開していく。なぜ今も一人で生きているのか、一体10歳でElizabethと出会ってその後何が起こったのか、そんな間の8年間に対する疑問が、ページをめくるにしたがって少しずつ埋まっていく。

本作品の魅力は、そのタイトルからも分かる通り、Victoriaの花と花言葉に対する思い入れの強さである。しかし、彼女の花に対する情熱もまた、その10歳当時の彼女のElizabethとの生活から来ているのである。

花言葉は、辞書や時代によって意味が異なり、ときには一つの花が矛盾する2つ以上の意味を持つ事もあるのだという。Victoriaはたくさんの花言葉の辞書をつきあわせて、どれがもっともその花にふさわしいか議論し、自らの一冊の辞書を作っていくのである。

そして、そんな花に対する思い入れの強さが、彼女の周囲を少しずつ変えていく。住居、仕事、恋人、そして過去。孤児として育った故に、自らを無価値な人間と蔑むVictoriaが次第に自らの価値を見つけ生き方を見つけていくのが面白い。

本作品を読んだ人はきっと花言葉に興味を持つだろう。

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
失意のなか飛び乗った列車はサーカスの一団だった。Jacobは獣医という専門を生かしてそこで働く事となる。

サーカスで生きるという普段まず意識する事のない生き方。そんななかで同じサーカスの人々との人間関係に悩み、またサーカスという団体ゆえにそこで見せ物として活躍する動物たちとの関係も面白い。当時の上下関係や給料の支払いなどは、本物語で描かれているように、周囲が「サーカス」という言葉の華やかさに抱くほど煌びやかなものではなかったのだろう。給料の支払いが遅れる事や、支払いを諦めて団を去る者など当時のサーカス事情が伝わってくる。

あとがきを読むと、過去のいくつかの歴史的なエピソードを取り込んでいるようだ。一つの言語しか理解しないゆえに役立たづとレッテルを貼られた像。飼い主を殺してしまったゆえに電気で処刑される事になった像、など、むしろサーカスという歴史に興味をかきたてられる。

残念ながら物語自体はそれほど山あり谷ありというような面白いものではなく、もう少し読者を引き込むような展開にできなかったのかという点が残念である。

オススメ度 ★★★★★ 5/5
1945年、10歳になったDanielは父に「本の墓場」と呼ばれる場所に連れて行かれて自分だけの一冊を選ぶように言われる。そこでであった本「The Shadow of the Wind」に取り憑かれたDanielはその著者Julián Caraxの他の本を探そうとするが、その著者の本はすべて燃やされてしまったと知る。いったい著者Julián Caraxに何があったのか。

一冊の本との出会いから始まる壮大な物語。Danielの心を「本の墓場」で出会った「The Shadow of the Wind」が掴んで話さなかったのと同じように、僕の心をこの「The Shadow of the Wind」は夢中にしてくれた。主人公Danielの友情、親子の絆、恋愛だけではなく、彼をとりこにした著者、Julián Caraxの恋愛や人間関係のもつれからうまれた壮絶な人生にまでが次第に明らかになっていく。地理的にもバルセロナからパリに広がり、当時の世界情勢も反映された見事な内容に仕上がっている。

一冊の本との出会いをきっかけに始まる物語であると同時に、Daniel自身も父とともに本屋を営む故に、読書というものの人生に与える大きさを考えさせてくれるだろう。終盤に書いてある言葉が重く響いてくる。

読む人に、その人自身の内側を見せてくれるような、全身全霊をもって取り組むような、読書の美学というのは次第に失われつつあるのだろう。すばらしい読者は月日とともに少なくなっていくのだろう。

読み終えた瞬間の喪失感のなんと大きな事か。読書の大好きな人にぜひ読んでほしい。出会えた事を感謝したくなる物語。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その地域を支配していた一つの地区、その権力を誇示するために、ほかの12の地区から男女1人ずつを選び、計24人の男女による生き残りゲーム、「ハンガーゲーム」を開いていた。Katnessはクジで選ばれてしまった妹Primの代わりにHunger Gameに出る事を決意する。

一言で言ってしまえばバトルロワイヤルの焼き直し、ということになってしまうのかもしれないが、それが地域間での争いの果てに起こったという背景設定や、未来の物語であるという点が異なる。また、参加者24人それぞれが異なる地域の出身であるがゆえに、その地域の属している産業や自然環境によって、得意とするもの、知識が異なるという点も面白い。

スポンサーというシステムも物語を面白くしている要素の一つである。スポンサーは自らが勝たせたい参加者に贈り物をすることができるのだ。それは水だったり食べ物だったり武器だったり薬だったりと、ハンガーゲームの戦況を左右するものになりうる。だから、参加者たちはハンガーゲーム開始前のデモンストレーションやインタビューで、可能な限りスポンサーを得ようとアピールするのだ。ハンガーゲームの趣旨に賛同しようがしまいが、それが自らの生死を左右するからである。

さて、物語の性質上優勝するのはこのKatnessなのだろう、と誰もが予想するので、興味の対象はその過程になる。ハンガーゲームの途中で仲良くなった女性とは最終的に殺し合わなければならないのか。同じ地区から出場した男性とは恋愛関係になるのか。

最後は若干行き過ぎな印象もあるが、常にスリリングな展開で、読者を一気に読ませる力のある物語。すでに2つの続編が書かれているということなので、機会があったら読んでみたい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリに住むアメリカ人ジャーナリストのJuliaは第二次世界大戦中のパリで起こったユダヤ人迫害事件について調べ始める。やがて彼女は当時の一人のユダヤ人の女の子Sarahにたどりつく。

ホロコーストは世界史上の指折りの悲劇なだけに、それを扱った作品は世の中に多く存在している。本書もそのうちの一つだが、その舞台をパリに据えている点がやや異質かもしれない。実際僕も本書を読むまで、パリでパリの警察によってユダヤ人たちがポーランドに送られるたということを知らなかったのである。

本書では、現代のJuliaが当時を調べる様子と並行して、第二次大戦中のパリのユダヤ人たちの様子が一人の女の子目線で描かれる。彼女こそそのSarahなのである。ある朝、パリの警察によって家を出るように促されたSarahだが、すぐに迎えに帰ってこれると思って、弟を秘密の戸棚に隠して鍵をかけておいたのだ。2人はその後無事に再開を果たすことができたのか。そしてSarahのその後は。

また、物語が進む過程で、アメリカ人でありながらフランス人と結婚して家庭を築いたJulia目線でその2つの国民性の違いが見えてくる点も面白い。

大戦中の悲劇が現代によみがえる。忘れてはいけない負の歴史に目を向けさせてくれる一冊。

Vel' d'Hiv'(ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件)
第二次世界大戦下のフランスで行われた最大のユダヤ人大量検挙事件である。本質的には外国から避難してきた無国籍のユダヤ人を検挙するためのものだったとされる。1942年の7月、ナチスの「春の風」作戦として計画されたもので、ヨーロッパ各国でユダヤ人を大量検挙することを目的とした。(Wikipedia「ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件」

anti-Semtism(反ユダヤ主義)
ユダヤ人およびユダヤ教に対する差別思想をさす。(Wikipedia「反ユダヤ主義」

Drancy internment camp(ドランシー通過収容所)
ナチス・ドイツがフランス・パリの北東のドランシー市(セーヌ=サン=ドニ県)に設置したユダヤ人移送のための収容所。フランスのユダヤ人をポーランドの絶滅収容所へ移送するまで仮に収容しておく通過収容所だった。1941年8月の設立から1944年8月の解放までの間におよそ7万人のユダヤ人がドランシーからアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所などへ移送されている。フランスにおけるホロコーストの鍵となる地であった。(Wikipedia「ドランシー収容所」

Yad Vashem(ヤド・ヴァシェム)
ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の犠牲者達を追悼するためのイスラエルの国立記念館である。イスラエルの首都エルサレムのヘルツルの丘にある。(Wikipedia「ヤド・ヴァシェム」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
高校の教師のJohn Smithは幼いころの出来事によって未来が見える事がある。それでも恋人と普通の生活を送っていたが、交通事故によって4年半もの間昏睡状態に陥る。

予知能力を持った青年の物語。超能力を持つ人間の物語というのは決して珍しくない。人にはない力を持った故に起きるJohnnyの心の中の葛藤も他の多くの超能力者を扱った作品と共通する部分がある。「人には知られたくない」「普通の人間として生きたい」と思いながらも、予知能力ゆえ、知人が不幸にあうことを黙っていることはできないのだ。

本書ではそんな超能力者に対する大衆の行動も面白く描かれている。その力を利用して自らの知人や家族を捜してほしいと願うもの。スターとしてビジネスに利用しようとするもの。そのタネを見破ろうとするもの。それでも世間はすぐに忘れていくのである。

本作品で重要な役となるのは、恋人SarahとJohnnyの母Veraだろう。SarahはJohnnyが昏睡状態の間に新しいパートナーを見つけて家族を築いていたが、その後はJohnnyの良き友人となる。心身深いVeraはJohnnyのその力を見て、「神が目的を持って与えたもの」という。その言葉を強く意識するJohnnyは、最後までその力を使ってどうやって生きるべきか考え続けるのである。

そしてJohnny自身が政治に強く関心を持っていることもあり、物語は次第に大統領選へと移っていく。アメリカ国民の未来を左右しかねない大統領選。そこでJohnnyは何を見たのか。超能力者を扱った作品のなかでも傑作と言えるだろう。

Kent State Shooting
ケント州立大学で1970年5月4日起こった事件。ガードマンが67発の弾丸を放ち、4人の生徒が亡くなった。(Wikipedia「Kent State shootings」

IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)
アメリカ合衆国内国歳入庁(アメリカがっしゅうこくないこくさいにゅうちょう) またはIRS (The Internal Revenue Service)は、アメリカ合衆国の連邦政府機関の一つで、連邦税に関する執行、徴収を司る。日本でも、そのままIRS(アイアールエス)と呼称されることもあるが、内国歳入庁や米国国税庁などと翻訳される。連邦政府の機構上は財務省の外局であり、日本の省庁になぞらえれば財務省の外局である国税庁に相当する。ワシントンD.C.に本部を置く。(Wikipedia「アメリカ合衆国内国歳入庁」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1961年ピューリッツァー賞受賞作品。

アメリカ南部アラバマ州。未だ黒人差別が色濃く残る町で生活する一家を描く。弁護士のAtticusは息子Jemと娘のScoutを信念を持って育てていく。そんなある日、彼は白人女性に対する暴行の容疑を受けた黒人男性の弁護を担当することになった。

「アラバマ物語」で知られている物語で日本でも知られており、おそらくアメリカでは知らない人はいないのではないかというぐらい有名な物語。実際、先日読んだ「The Help」の物語のなかでも取り上げられている。信念を持って弁護士を務める父、いつも一緒に遊ぶJemを、娘のScoutの目線で語る。序盤は自然の豊かで毎日外で面白いことを探して過ごす兄弟と近所のDillの様子が描かれていてほのぼのと進むが、やがて物語は黒人差別へと焦点を移していく。同時に外でいつも一緒に遊んでいたJemとScoutも年齢があがるに従って、次第に異なる生活を送るようになる。そんな多感な兄弟に、黒人の弁護を引き受け町の人々から「黒人の味方」として蔑まれる父親はどう映るのか。揺れ動きながらも成長していく様子が見て取れる。

現代から見ると、その黒人蔑視の社会はいいものとは言えないが、家族を愛する父親の信念がしっかりとその子供たちに根付いていく様子が伝わってくる。

でも、これだけは言わせてくれ、そして決して忘れないでくれ。どんな時であろうと白人がそういうことを黒人に対してするとき、それが誰であれ、どんな裕福な人だろうが、どんな権威ある家系の出身だろうが、そんな白人はクズだ。

毎日家族と過ごす時間を持てる古き良き時代の理想の父親像としても本作品を楽しむことができるのではないだろうか。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Lincoln Rhymeシリーズの第9弾。今回の犯人は電気を自由自在に操る。

電気を使って感電させたりすることで殺害するという今回の犯人。読み進めていくうちに感じるのは、ものすごい効率的な殺人兵器と化すにも関わらず、人々の生活にあふれている「電気」という存在に対する違和感である。極悪非道で進出機没な犯人だが、Rhymeはいつものごとく現場に残されたわずかな手がかりから犯人を追跡していく。AmeliaやPulunskiが失敗を重ねながら悪戦苦闘する姿も毎度のことながら面白い。

さて、そんな電気使いの犯人の追跡とあわせて、メキシコでは「The Cold Moon」以来、逃亡し続けている通称「Watch Maker」の追跡も逐一連絡がRhymeの元に入ってくる。遂にWatch Makerは捕らえられるのか?そんな楽しみも味わえるだろう。

パターン化している部分も感じないことはないが、相変わらずテンポよく読めるのが辞められない一因だろう。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ある朝、14歳の少女Cynthiaが目覚めると父も母も兄もいなくなっていた。それから25年後、結婚して娘と3人で暮らすCynthiaはいまだに25年前の夜の出来事を忘れられずにいた。

物語は家族の失踪から25年後、Cynthiaの夫のTerry目線で進む。過去の経験から娘のGraceから目が離せないCyinthia。それに対して、過去を忘れて前へ進むべきだと主張するTerry。前半は、そんなぎくしゃくした家族のやり取りで展開する。

印象的なのは25年間、失踪した家族の理由を考え続けて、何度も「自分のせいかも?」と自分を責め続けたCynthiaの心のうちだろう。

家族の失踪に対して物語的に説明をつけようとすればいくらでも説明のつく出来事を考えることはできる。それゆえに期待はずれな結末を覚悟したりもしたのだが、結末に待っていた真実は予想以上に深く泣ける家族の物語だった。

おそらく今年もっとも泣かされた物語。

その後の数時間に起こったことによって、そのメモはただのメモではなく、母親が娘に遺した最後のメモになってしまった。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵のBernie Littleは行方不明になった少女Madisonを愛犬のChetと一緒に探すことになる。

本作品は徹底して、犬のChet目線で進む。彼のコミカルな語り口調が本作品の最大の魅力だろう。言ってしまえば、物語自体は、事件に巻き込まれた行方不明の少女を探すというありきたりな展開だが、Chetの目線ゆえに非常に面白く味付けされている気がする。

犬ゆえに匂いに非常に敏感で、一方で色の判別に自信がない。そして、主人のBernieがいないと、カギがかかってなくてもノブを回すことさえできないゆえに部屋から出ることもできない。重要なことをうったえようと吠えはするけれども食べ物をもらうとすっかり何をうったえようとしていたかすっかり忘れてしまう。など、そんな犬ならではの言動が非常に面白く描かれている。

展開として興味深いのが、Chetだけは早々に犯人の隠れ家に連れて行かれて、場所も犯人も知っているにも関わらずそれを人間のBernieに伝えることのできない、という点だろう。あまり海外作品でこのようなノリのものを読んだことがないので新鮮だった。シリーズ作品らしいので続きもぜひ読んだみたい。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Dark Towerシリーズの第3弾である。前作では元の世界は荒野でも舞台はそこに現れたドアが続いているNewYorkだった。しかし、今回いよいよ、Roland、Eddie、Susannahは荒野、本作品ではやがてMid-Worldと呼ばれるようになる世界の旅が中心となる。

序盤は第一弾「Gunslinger」で登場した少年、JakeをNewYorkからMid-Worldへつれてくることが山場となる。そして4人となった彼らは引き続き、DarkTowerを目指す。

さて、そんななか本作品はなぞなぞが鍵となる。引用される英語のなぞなぞはどれも興味深いものばかり。例えばこんななぞなぞである。。

What is the difference between a cat and a complex sentence?
これに対する答えはこうなのだそうだ。
A cat has claws at the end of its paws, and a complex sentence has a pause at the end of its clause.

日本のなぞなぞとは少し異なり、答え方が韻を踏む、というのがあるようだ。本作品中で4人はなぞなぞについて繰り返し語り、そんななぞなぞが4人の冒険を大きく左右することになる。

やや終わり方が中途半端な気がするが、今までおぼろげだった世界の全貌が少しずつ明らかになってくる、シリーズの展開を一気に加速させてくれる一冊である。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Rhymeのもとへ長い間連絡を取っていなかった叔母から電話があった。従弟のArthurが殺人の罪で逮捕されたと言う。しかし、Arthurは人を殺せるような人間ではない、調べていくうちに、無実の人間を容疑者に仕立て上げ、自分はのうのうと生きている人間がいることがわかる。

犯罪学者Lincoln Rhymeシリーズの第8弾。今回の相手は「すべてを知る男」。情報化された個人情報を利用し他人になりすまし、その人間の前科、習慣、趣味、商品の購入履歴などを基に、もっとも犯人にしやすい人間に狙いを定めて、その家や車に犯罪の起きた場所とつながる証拠をおく。

捜査の過程で浮かんできたデータマイニングという業界。その業務は人々のすべての情報をたくわえ、整理しそれを企業に提供するというもの。むしろそれは近い未来への僕らの生活に対する警鐘のようだ。犯人によってクレジットカードを勝手に使用され、犯罪にりようされて生活を破壊された元医師の言葉など、ただフィクションという言葉で済ませられないものを感じる。

人々はコンピューターを信じるんだ。コンピューターが、あなたはお金を借りていると言えば、あなたは金を借りているということになるし。あなたは信用に値しないと言えば、たとえ億万長者だろうが、信用されない。人はデータを信じて、事実なんて気にしないのさ。

それでもいつものように次第に犯人を追い詰めていく。

さて、今回もAmelia Sachsはもちろん、ルーキーから少しずつRhymeに鍛えられて成長しているRon Pulaskiも非常にいい味を出している。無実の罪で捕らえられたArthurがRhymeの従兄弟ということで、シリーズ内であまり語られなかったRhymeの学生時代に触れられている。個人的には犯人との対決よりも、その学生時代の物語により引き込まれた気がする。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いじめられっ子だったPeterが校内で起こした銃乱射事件。両親や友人、幼馴染みなど癒えない心を抱えたまま事件は法廷へと持ち込まれる。

日本で銃乱射事件と言うととても現実味がわかないが、銃社会のアメリカでは過去のいくつもの悲しい事件の記憶が染みついている。マイケル・ムーア監督で映画になったコロラド州コロンバイン高校の事件など特に有名で、本書のなかでも触れられている。

事件が起きて町じゅう悲しみにくれ法廷にいくまでの、何人かの事件に関わる人の目線で物語は進んでいく。そのうちの一人がPeterの母親で助産婦のLacyである。誰よりもすぐれた助産婦であるという自信をもちながらも事件を境に、「殺人者を育てた手で赤子を世に送り出していいのか」と悩み始める。

また裁判官であり、娘のJosieとともに生活するAlexの悩みも興味深い。小さな町ゆえに会う人会う人が彼女を裁判官と知っていて、裁判官として接するゆえに、法廷を離れても、知らず知らずのうちに常に「裁判官」を演じるようになる。

物語のカギとなるのが、Peterの幼馴染みで、恋人のMattが銃乱射の犠牲者となったAlexの娘Josieである。事件の真っただ中にいながらも、事件で起こったことを何一つ覚えていないJosie。彼女はMattら校内の運動神経のいい中心グループとともに行動をしながらも、自分がMattの恋人でなかったらPeterと同じように空っぽな人間であることを知っている。だからこそ、Peterがいじめられているのを見て、心を痛めながらも自らも苛められることを恐れて止められないのだ。

さて、事件はJosieの空白の記憶や、現場から回収された弾丸のみつからない拳銃がカギとなる。著者Jodi Picoultは本作品で2作目だが、過剰なまでの回想シーンや、法廷をクライマックスにする点など、前回読んだ「My sister's Keeper」と非常に似た印象を受けた。誰もが悲しみに打ちひしがれるだろう思えるほど強烈な事件を題材に選ぶあたりも2度続くと「また・・?」的な印象を持ってしまった。できればもう少し誰にでも起こりうる日常を扱った物語を描いてほしいものだ。

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