オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ある朝、14歳の少女Cynthiaが目覚めると父も母も兄もいなくなっていた。それから25年後、結婚して娘と3人で暮らすCynthiaはいまだに25年前の夜の出来事を忘れられずにいた。
物語は家族の失踪から25年後、Cynthiaの夫のTerry目線で進む。過去の経験から娘のGraceから目が離せないCyinthia。それに対して、過去を忘れて前へ進むべきだと主張するTerry。前半は、そんなぎくしゃくした家族のやり取りで展開する。
印象的なのは25年間、失踪した家族の理由を考え続けて、何度も「自分のせいかも?」と自分を責め続けたCynthiaの心のうちだろう。
家族の失踪に対して物語的に説明をつけようとすればいくらでも説明のつく出来事を考えることはできる。それゆえに期待はずれな結末を覚悟したりもしたのだが、結末に待っていた真実は予想以上に深く泣ける家族の物語だった。
おそらく今年もっとも泣かされた物語。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵のBernie Littleは行方不明になった少女Madisonを愛犬のChetと一緒に探すことになる。
本作品は徹底して、犬のChet目線で進む。彼のコミカルな語り口調が本作品の最大の魅力だろう。言ってしまえば、物語自体は、事件に巻き込まれた行方不明の少女を探すというありきたりな展開だが、Chetの目線ゆえに非常に面白く味付けされている気がする。
犬ゆえに匂いに非常に敏感で、一方で色の判別に自信がない。そして、主人のBernieがいないと、カギがかかってなくてもノブを回すことさえできないゆえに部屋から出ることもできない。重要なことをうったえようと吠えはするけれども食べ物をもらうとすっかり何をうったえようとしていたかすっかり忘れてしまう。など、そんな犬ならではの言動が非常に面白く描かれている。
展開として興味深いのが、Chetだけは早々に犯人の隠れ家に連れて行かれて、場所も犯人も知っているにも関わらずそれを人間のBernieに伝えることのできない、という点だろう。あまり海外作品でこのようなノリのものを読んだことがないので新鮮だった。シリーズ作品らしいので続きもぜひ読んだみたい。
masato (2012年1月17日 13:44) | コメント(0)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Dark Towerシリーズの第3弾である。前作では元の世界は荒野でも舞台はそこに現れたドアが続いているNewYorkだった。しかし、今回いよいよ、Roland、Eddie、Susannahは荒野、本作品ではやがてMid-Worldと呼ばれるようになる世界の旅が中心となる。
序盤は第一弾「Gunslinger」で登場した少年、JakeをNewYorkからMid-Worldへつれてくることが山場となる。そして4人となった彼らは引き続き、DarkTowerを目指す。
さて、そんななか本作品はなぞなぞが鍵となる。引用される英語のなぞなぞはどれも興味深いものばかり。例えばこんななぞなぞである。。
日本のなぞなぞとは少し異なり、答え方が韻を踏む、というのがあるようだ。本作品中で4人はなぞなぞについて繰り返し語り、そんななぞなぞが4人の冒険を大きく左右することになる。
やや終わり方が中途半端な気がするが、今までおぼろげだった世界の全貌が少しずつ明らかになってくる、シリーズの展開を一気に加速させてくれる一冊である。
masato (2012年1月10日 02:14) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Rhymeのもとへ長い間連絡を取っていなかった叔母から電話があった。従弟のArthurが殺人の罪で逮捕されたと言う。しかし、Arthurは人を殺せるような人間ではない、調べていくうちに、無実の人間を容疑者に仕立て上げ、自分はのうのうと生きている人間がいることがわかる。
犯罪学者Lincoln Rhymeシリーズの第8弾。今回の相手は「すべてを知る男」。情報化された個人情報を利用し他人になりすまし、その人間の前科、習慣、趣味、商品の購入履歴などを基に、もっとも犯人にしやすい人間に狙いを定めて、その家や車に犯罪の起きた場所とつながる証拠をおく。
捜査の過程で浮かんできたデータマイニングという業界。その業務は人々のすべての情報をたくわえ、整理しそれを企業に提供するというもの。むしろそれは近い未来への僕らの生活に対する警鐘のようだ。犯人によってクレジットカードを勝手に使用され、犯罪にりようされて生活を破壊された元医師の言葉など、ただフィクションという言葉で済ませられないものを感じる。
それでもいつものように次第に犯人を追い詰めていく。
さて、今回もAmelia Sachsはもちろん、ルーキーから少しずつRhymeに鍛えられて成長しているRon Pulaskiも非常にいい味を出している。無実の罪で捕らえられたArthurがRhymeの従兄弟ということで、シリーズ内であまり語られなかったRhymeの学生時代に触れられている。個人的には犯人との対決よりも、その学生時代の物語により引き込まれた気がする。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いじめられっ子だったPeterが校内で起こした銃乱射事件。両親や友人、幼馴染みなど癒えない心を抱えたまま事件は法廷へと持ち込まれる。
日本で銃乱射事件と言うととても現実味がわかないが、銃社会のアメリカでは過去のいくつもの悲しい事件の記憶が染みついている。マイケル・ムーア監督で映画になったコロラド州コロンバイン高校の事件など特に有名で、本書のなかでも触れられている。
事件が起きて町じゅう悲しみにくれ法廷にいくまでの、何人かの事件に関わる人の目線で物語は進んでいく。そのうちの一人がPeterの母親で助産婦のLacyである。誰よりもすぐれた助産婦であるという自信をもちながらも事件を境に、「殺人者を育てた手で赤子を世に送り出していいのか」と悩み始める。
また裁判官であり、娘のJosieとともに生活するAlexの悩みも興味深い。小さな町ゆえに会う人会う人が彼女を裁判官と知っていて、裁判官として接するゆえに、法廷を離れても、知らず知らずのうちに常に「裁判官」を演じるようになる。
物語のカギとなるのが、Peterの幼馴染みで、恋人のMattが銃乱射の犠牲者となったAlexの娘Josieである。事件の真っただ中にいながらも、事件で起こったことを何一つ覚えていないJosie。彼女はMattら校内の運動神経のいい中心グループとともに行動をしながらも、自分がMattの恋人でなかったらPeterと同じように空っぽな人間であることを知っている。だからこそ、Peterがいじめられているのを見て、心を痛めながらも自らも苛められることを恐れて止められないのだ。
さて、事件はJosieの空白の記憶や、現場から回収された弾丸のみつからない拳銃がカギとなる。著者Jodi Picoultは本作品で2作目だが、過剰なまでの回想シーンや、法廷をクライマックスにする点など、前回読んだ「My sister's Keeper」と非常に似た印象を受けた。誰もが悲しみに打ちひしがれるだろう思えるほど強烈な事件を題材に選ぶあたりも2度続くと「また・・?」的な印象を持ってしまった。できればもう少し誰にでも起こりうる日常を扱った物語を描いてほしいものだ。
masato (2011年11月24日 21:01) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Dark Towerに向かってただひたすら浜辺を歩くガンマンの目の前にひとつのドアが現れる。そのドアを開けるとどうやらそれは誰か別の人間の目で別の世界を見ているようだ。
「The Dark Tower」シリーズの第2弾である。このシリーズを読む前の予備知識として第1弾の「The Gunslinger」は非常に退屈だが、本作品以降は面白くなる、と聞いていたのだが、正直第1弾の退屈さは予想を上回る程で、続きを読もうか躊躇するほどだった。しかし、本作品。ガンマンであるRolandの旅が今後も不毛な大地を舞台に続くのかと思いきや、突然現れたドアによって、突然現代と繋がって非常にスリルあふれる展開になる。
最初のドアから見つめる世界は、飛行機に乗って、これから麻薬の密輸をしようとしている男の視点、いはゆる僕らの言う「現代」であった。そしてすぐにRolandは自分はただドアを通してその視点から世界を見つめるだけでなく、その男自身の行動を操れることを知る。そしてその世界からこちらの砂漠に物を持ってくることができることも...。
そして、そのRolandに視点を奪われながら、密輸を企てる男EddieはRolandの力を借りて危機を乗り越えながら、やがてマフィアの争いに巻き込まれていく。かなり思い切った展開で、前作と本作の間に著者のなかの本シリーズに対する大きな変化が感じら違和感もあるが、面白くなったことは間違いない。
本作品中ではそのドアが鍵になるのだが全体で3つのドアが現れる。2つ目のドアから見えるのは車椅子の女性の視点。やがてRolandは「何故、この時代なのか?」「なぜこの人間なのか?」とそのドアが自らを導く意味について考えるようになる。Rolandの過去はいまだ謎のままだが、そのドアを通してRolandが見て、ときには操作する人物達それぞれのドラマが本作品を非常に面白くしている。次回作が楽しみになる一冊。
masato (2011年10月 5日 08:31) | コメント(0)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Lincoln Rhymeシリーズの第7弾。2つの殺人現場には古風な時計が置かれていた。Rhymeと犯人、通称Watchmakerとの知恵比べが始まる。
犯罪の現場にわずかに残された微粒子から犯人につながる手がかりを見つけけだして犯人を追い詰める流れは本シリーズに共通し、本作品でも例外ではない。
そんなシリーズの中で、本作品で新しいのは、Amelia Sachsが自らRhymeとは別の犯罪捜査にも専念している点だろう。しかし、それはやがて同じく警察官だったSachsの父の過去へと繋がって行く。
また、本作品は、会話中の相手のしぐさや表情からその真偽を読むスペシャリスト、Katheryn Danceが登場し、Rhymeとの2人の主役級が登場する稀有な物語とも言える。証拠しか信じないRhymeは次第にKatherynを認め、その能力を頼るようになる。
前作「The Twelfth Card」でルーキーとして登場したRon Pulunskiが失敗しRhymeにしかられたりしながらも次第に成長していく姿も物語を面白くさせている。
一方で犯人の追跡劇は一転二転三転と引っくり返る。現場に置かれた時計は何を意味するのか。なぜこの人々が被害者として選ばれたのか。ややいろいろな要素を詰め込みすぎた感がある。そして、本作品に関してはその終わり方も少し異質である。賛否両論あるのではないだろうか。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2010年このミステリーがすごい!第1位。
1970年代から30年近くにわたり、メキシコ、アメリカ国境付近で広がるアメリカへの麻薬を密輸する組織と、それを摘発しようと奮闘するアメリカ人Artを描く。
なんといっても注目すべきはこの物語が実話をベースに描かれているということだろう。もちろん組織の名前などは架空のものが付けられているが、事実に詳しい人間が読めば、物語のなかの誰が実在した誰を描いているのかすぐにわかるのではないだろうか。。
メキシコの地名やアルファベットの頭文字だけで表現される多くの組織名など、お世辞にも読みやすいとは言いがたいが、メキシコとアメリカの国境付近の歪んだ空気が伝わってくる。
裏切りと制裁の組織のなかで地位を固めていくAdanとRaul。そしてニューヨークから成り上がったCallan。友人を拷問のすえ殺されたことで麻薬組織撲滅を使命としていきるArt。コールガールとして成功したがゆえに組織と深くかかわることになったNora。それぞれの視点からその犯罪を見つめて言うr。
平和な日本に生きている僕らには想像もできないような現実がそこにあることに驚くだろう。アメリカ、メキシコ国境で、なぜ何年もの間お金は北から南に流れ、麻薬は南から北へ流れるのか、その理由がわかるだろう。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Rhymeの手術のために訪れたノースカロライナの町で地元の保安官から誘拐事件の調査を依頼される。RhymeとAmeliaは手術までの1日、その捜査を手伝うこととなった。
事故によって四肢のマヒした犯罪学者Lincoln Rhymeのシリーズの第3弾である。普段はその操作の大部分はニューヨークにあるRhymeの部屋で多くの専用機器を用いて行われるのだが、今回は田舎町の操作ということもあり、機器を取り寄せ、またその操作をサポートするにふさわしい人材を選別するところから始まるのが面白く、シリーズのほかの作品とは異なるところである。
そして今回の追跡対象はInsect Boy。家族を交通事故で失ってから、虫に傾倒し、その習性にだれよりも詳しく、その習性から攻撃や防御の手段などを学んだ少年である。犯罪現場に残された微量な物質をてがかりに、RhymeはInsect Boyを次第に追い詰めていく。一方で、AmeliaはInsect Boyと対面し、その少年の言動から、その少年が過去に殺人を犯し、殺人を意図して今回も誘拐をしたという多くの人が語る少年のなかにある悪意の存在に疑問を持ち始める。
Insect Boyは本当に彼自信の言うように、ただ純粋に友人を守るために保護しただけなのか、それともその供述のすべてがAmeliaを導くための虚構なのか...、この謎が物語の大きな柱となる。Ameliaだけでなく、読者までもが次第にInsect Boyの無実を信じてしまうだろう。治安維持のために憤る保安官たち。報奨金目当てにInsect Boyを追う町の若者たち。物語は小さな田舎町全体を巻き込んで進行していく。そして、物語を面白くしているもう一つの要素は、その町が湿地帯に囲まれている点だろう。町では車での移動よりもボートでの移動が有効で、地図には載っていない入り江や水路が網の目のようにはりめぐらされている。Insect Boyはそんな地の利を利用して巧みに逃走していくのである。
最後まで誰が犯罪に関わっているのかわからない展開。シリーズの中でも異質な存在といえるだろう。
masato (2011年4月21日 20:03)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マンハッタンの学校で起こった殺人事件で犯人が密室から消えた、ステージマジック技術に長ける犯人はRhymeとSechsの追跡を予想外の方法でかわしていく。
法医学のスペシャリストLinkcoln RhymeとAmelia Sechsの物語の第3弾である。毎回、犯人は突出した能力を持ち、Rhymeたちと互角に渡り合う。今回の犯人はステージマジックに長けている。鏡などを用いて暗闇と同化し、どんな年齢、どんな性別の人間にも扮することができるうえ、どんな鍵でも数秒で開けることができる。読者を惹きこむ圧倒的な物語展開は本作品でも健在である。
RhymeとSechsに加えて、BellやSellittoなど御馴染みの警察関係者はいつものように活躍するが、今回はマジックのアドバイザーとして女性マジシャンKaraが捜査に加わる。犯人の逮捕のために、KaraがRhymeたちにマジックの技術について語る内容はいずれも興味深いものばかり。中でも本作品で鍵となるは「Misdirection」。つまり、どうやって観客の注意を、自分の見てほしくない部分に向けるか、という技術である。実際、本作品中の犯人はいくつものmisdirectionを行いながら目的を遂行しようとする。
そのほかにも印象的なシーンがいくつかあった。犯人と対面したRhymeをSechsが聴取するシーンなどもそんな中のひとつである。証拠至上主義のRhymeに対して、Sechsは人との対話のなかに手がかりを見出す。普段捜査の指示を出す側のRhymeがこのときだけはSechsに主導権を握られた点が面白い。
そして、なんといっても際立ったのはやはりKaraの存在だろう。入院中の母の世話をしながら、手品を勉強し、いつか大きな舞台に立つことを夢見る女性マジシャン。物語中で小さな舞台で演じるその姿は文字から伝わってくるイメージだけで魅了されてしまう。マジックという何か「古臭いもの」というイメージがついているものにたいして考え直すきっかけになった気がする。
masato (2011年4月 1日 00:39)オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
20年前に行方不明になった弟Josh。兄Orenは軍隊を辞めて、生まれ育った街に戻ってくる。
舞台となるのはアメリカの田舎町。
みんな街のすべてのひとの、仕事や人間関係や趣味まで知り尽くしているような小さい街。そんな限られた人間関係のなかで、20年前に失踪した少年の事件がふたたび街の人々を動かし始める。
前に読んだ同じ著者の作品「Judas Child」と非常に視点が似ているように思う。前作でもそうだったのだが、小さい町ゆえの人々の人間関係が物語の根底となっている。本作品では、その緊密さは、緊密さはゆえの暖かい親密さというようなポジティブな方向ではなく、緊密ゆえにすべてを知っていて、そんななかで人は人の悪いところを見ようとする余りに、生きるための窮屈さとして、ネガティブな描かれ方をしているようだ。
物語は行方不明になっているOrenの弟の骨と思われるものがときどきOrenの家のポーチに置かれていることから動き出す。真実が次第に明らかになる過程でいくつか印象的な要素が取り入れられている。たとえば、行方不明になったJoshが写真を撮ることに関しては類稀な才能を持っていたこと、一人の女性が書き続けているバードウォッチングのログブック、街の人は誰れでも一度は参加してしたことがあると言われる「死者を呼ぶ会」などである。そのログブックにはある日を境に実在する鳥は一切描かれなくなり町の人の人間性を暗示するスタイルへと変わっていた。そして、「死者を呼ぶ会」では、参加者は行方不明のJoshに毎回呼びかける話をする。これらの要素も物語を魅力的なものにしていると言えるだろう。
事件の真実よりも、その過程で描かれる、人間関係や人々の苦悩など心情に焦点がおかれている様に感じた。個人的にはもう少しスピード感が欲しいところである。
masato (2011年3月12日 17:27)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Lincoln RhymeとAmelia Sachsは中国からアメリカへの密入国を大規模に行う男、通称「Ghost」追跡の任務に就くこととなる。一方、Ghostはアメリカに到着直前に、多くの中国人を乗せたままの船を爆発させ沈没させ、自らは逃亡する。
RhymeとAmeliaの「Bone Collector」に続く物語の第4作目に当たる。現場に残されたわずかな証拠から、犯人に迫るシリーズではすでにおなじみとなっている捜査手法はもちろん大きな魅力の一つだが、本作品ではさらにいくつかの要素が加わって魅力的な作品になっている。
まずは、自ら密入国船に密入国を目論む男として潜入し、最終的にGhostに法の裁きを受けさせようとする中国人刑事、Sonny Liの存在だろう。互いに協力してGhostを捕まえようとする過程で、RhymeとLiは少しずつその実力を認めるようになり、やがて、RhymeはそのLiの人と常にまっすぐ向き合おうとする姿勢から、ほかの人にはいだかなかった親密さを感じるようになる。その2人の会話のなかからは、中国とアメリカという2つの国の文化や裕福さの違いが伝わってくるだろう。
そしてもうひとつの面白さは、中国で反体制派としての活動に従事し、アメリカへ亡命をしようとするなかで密入国船に乗り込んだSam Changとその家族の存在である。なんの基盤もない新しい国で、自らが持っている技術だけを元手に家族を養っていこうとするChang。彼が見せる葛藤や、自らの家族の命を脅かそうとするGhostに対する計画など、どれも非常にスリリングである。
そしてラストは悲しくもあり、うれしくもあり、そして予想をさらに超えてくれるだろう。まだ本シリーズは3作目だが、個人的にもっとも好きな作品である。一読の価値ありの一冊。
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
小さな町で2人の少女が行方不明になった。幼い頃双子の妹を殺害されるという経験を持つRouge Kedallは、2人の少女の失踪という類似性によって再び過去の事件と向き合うことになる。
物語は2つの側面から展開する。誘拐を解決するために動いているFBIなどの捜査側の視点と、監禁されている建物の中で、必死で生き抜こうとする2人の10歳の症状、GwenとSadieの視点である。
少女達の視点で展開される側では、それぞれの少女の個性が際立っている点が物語を興味深いものにしている。Gwenは副知事の娘で大人しく控えめである一方で、Sadieはいたずら好きで行動力があり、常にGwenをリードしていくのである、まだ10歳という年齢でありながらも固い友情で結ばれているゆえの2人の言動が見所だろう。
そんな一方で、Rouge KendallはFBIの人間と協力しながら、幼い頃に殺された妹、Susan Kendallの事件の真相を解明しようとする。一卵性双生児で常に一緒に行動し、ほかに友達を持たなかったことによって、幼い頃にRougeとSusanが見せた非科学的な行動には好奇心をかきたててくれるだろう。
物語の舞台となっているのが非常に小さな田舎町なのだろう。それぞれの立場や職業が相互に依存しあっており、その結果として登場する多くの人物名のせいで、途中、やや話についていけない感も抱いたが、最後の数ページでそんな鬱憤のすべてを吹き飛ばされてしまった。正直、もう犯人なんてどうでもよくて、公共の場所で呼んでいたために涙をこらえるのに必死になってしまった。
挑戦するひとにはぜひ、途中の中だるみで諦めずに最後まで読み切って欲しい。記憶に残る本は、読後に喜びや悲しみよりもなにか喪失感のようなものを与えてくれる気がするが本作品もそんななかの一つと言っていいだろう。
masato (2011年1月 9日 00:14)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
FBIの特別調査官であるKimberly Quencyを指名して助けを求めてきた女性は毒蜘蛛を飼いならす男性による暴力の支配から逃れたい、というものだった。
その女性によって、何人かの売春婦たちが殺されていることが告げられる。そこには、売春婦ゆえに、いなくなっても誰も気にかけない、という世の中の悲しい仕組みが指摘されているのだろう。
そして少しずつ犯人とその協力者の少年の姿が描かれていく。幼さゆえに人生の意味すら知らずにひたすら犯人に命じられるまま協力し続ける少年。その少年目線の記述もまた見所のひとつだろう。また犯人が毒蜘蛛を愛している点も好奇心を書き立ててくれる。
そんな犯人を次第に追い詰めていく、という、よくある面白さのほかに興味深いのが、物語の中心となるKimberlyが第一子を妊娠していて、これから母親になろうとしている点だ。FBIの第一線で仕事に没頭しながらも、子供を身ごもったばかりに、今までどおりに働くことができない。おなかの中の子供を危険にさらすことができない。そんな不自由や、自分の仕事を妨げる子供というわずらわしさに、自責の念を抱いたり、母親になるということに自信を持てない、そんな葛藤が物語の随所に見えて来るのである。
そんなKimberlyが同じく刑事である父親に自分が生まれたときのことをたずねるシーンが印象に残った。
そして最後はなんとも切ない展開。世の中の犯罪のいくつかはきっと、本作品の彼ら、彼女らのように、簡単に、被害者と加害者の区別が簡単にはできないものなのだ。悲しい負の連鎖、犯罪の連鎖はきっと僕らの気づかないところで進んでいるのだろう。
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
前作のラストで実の父親でありスパイであるZalachenkoとの死闘の末、頭に銃弾を浴びたSalander。本作品はまさにそのSalanderが病院に運び込まれるシーンから始まる。
前作「The Girl Who Played with Fire」の続編であり、「The Girl...」シリーズ三部作の最終話である。大怪我を追ったとはいえ、殺人未遂などの罪の容疑によって拘束中の身であるSalanderは、再び、Zalachenkoがロシアのスパイであるという事実を隠蔽しようとする闇の組織「The Section」のターゲットとなる。
その一方で、は「The Section」の秘密を暴いて世に知らしめようと、出版社Milleniumの仲間たちと動き出す。そんななか、再びネット上で協力し合う、SalanderとBlomkvistの少しちぐはぐな協力関係が面白い。実際、前作「The Girl Who Played with Fire」でもSalanderはひたすら、Blomkvistと顔をあわせるのを避けており、ようやくBlomkvistがSalanderに出会えたときはすでにSalanderは品詞の状態、という結末であった。本作品中で2人が平和に面と向かって会話をすることがあるのか、というのが気になるひとつである。
本作品では前二作で、脇役に徹していた人物の活躍も目覚しい。出版社Milleniumの代表のBergerは大手新聞社に引き抜かれてそこで新たなスタートを切り、新たな職場で、保守的な経営陣と対立する。また、Blomkvistの妹で、弁護士のGianniniはSalanderの弁護を担当し、Salanderの発言のすべてを社会不適格者の妄想として処理しようとする「The Section」の一味と法廷で争うことになる。本作品でもっともかっこいいのはGianniniかもしれない。
人付き合いの苦手なSalanderがGianniniに少しずつ心を開いていくシーンに心が温まる。いつものようにそれぞれの登場人物の個性や、それぞれの人間関係まで、最後まで飽きさせない作品である。
著者Stieg Larssonはすでに亡くなってしまったが、本作品の終わり方を見る限り、まだまだMilleniumシリーズには続く物語が彼の頭のなかにはあったのではないか、と思えてなんとも残念である。
masato (2010年10月19日 00:28)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
首から上と薬指以外を動かすことのできない犯罪学者RhymeとAmeriaの物語。裁判の重要な証言者となるはずの航空会社の2人を、その2人を殺すために雇われた殺し屋Coffine Dancerから守る任務を負う。
犯罪学者Rhymeシリーズの第二作目である。前作と同様、証拠至上主義のRhymeの捜査過程で、犯罪現場に残されたわずかな物質が多くを語ることに驚かされる。
また、本作品ではRhymeとAmeliaだけでなく、殺し屋のターゲットであり、小さな航空会社を経営し、自らもパイロットであるPerceyの生き方も大きく扱っている。コックピットの中が自分の居場所、というPerceyの生き方に、最初は嫌悪していたAmeliaも次第に心を通わせていく。
そして今回、RhymeやAmeliaにとって脅威となるのはCoffin Dancerと呼ばれる殺し屋。彼のもっとも強力な武器は「Deception(欺き)」である。最後まで先を読ませない展開に十分に楽しませてもらった。
masato (2010年8月13日 01:01) オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Lisbeth SalanderはBlomkvistと距離を置くことを決めて海外に旅に出る。一方Blomkvistは、新たな2人のパートナーと共にスウェーデンの裏に広がる性売買の実態を暴こうと動き出す。
Stieg Larsson三部作の第二作である。前半は前作「The Girl Who has The Dragon Tatoo」の後のSalander、Blomkvistとその周辺の様子が描かれて、ややスピード感に懸ける部分があるが、3つの殺人事件を機に、Salanderが追われる身となって、物語は一気に加速する。
面白いのは、事件を巡って3つの方向から真相を究明しようとする動きがあることだろう。一つは警察であり、残りの2つは、Salanderの無実を信じる、Blomkvistと、Salanderの職場である、警備会社である。
一見ただの殺人事件に見えていたものが、次第にSalanderの過去と深く関わっていることが明らかになってくる。「All The Evil」と呼ばれた日、Salanderに何が起こったのか、すべての公式な記録から抹消されたその出来事。その結末はまたしても想像を超えてくれた。
また、凶暴な売春婦と一般的に忌み嫌われているSalanderを、わずかであるが信頼している数人の人間がいて、彼らが必死になってその無実を証明しようとする姿がなんとも温かい。特に、彼女の保護者であり理解者であったPalmgrenとチェスをするシーンなどでは、彼女の中の優しさのようなものも感じさせてくれる。
物語としては文句なし。個人的にはもう少しスウェーデン語やスウェーデンの地名を知っておいたほうが楽しめるだろう、と思った。
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2009年このミステリーがすごい!第1位。
時代は1953年のソビエト。大戦の英雄でありMGB(国家保安省)のLeoは内部の諍いから、妻と友にモスクワから遠い東の地に送られる。そこでLeoは子供を狙った連続殺人事件に出会う。
本作品から面白い部分を挙げればいくらでもあるが、まずは、戦後の混乱のソビエトの社会であろう。未完成な社会ゆえに、未完成な正義が幅を利かせている。KGBがその間違った正義であり、彼らに嫌われたらどんなに誠実な人間さえも容疑者にされる。そして人々は自らが密告されることを恐れるがあまり、ひたすら目立つことを恐れて生きていくのである。このような魔女狩りのような世界がわずか数十年前に隣国で存在していたことに驚いた。
さて、本作品では、そんな権力の象徴的存在であるMGBであるLeoが、その権力を失っていく。そして権力を失ったことによって正直な意見を妻のRaisaから聞かされ、そこから見えてくる真実がさらにLeoを苦しめるのである。Leoの妻、Raisaが語った言葉などはまさにどんな社会にも通じる真実を表現しているだろう。権力を持った人の周囲では人は正直ではいられないのである。
やがてLeoとRaisaは協力して連続殺人事件を解決しようとする。そんな協力関係の中で少しずつ変化していく二人の関係が大きな見所の一つである。そして、連続殺人事件の謎。何故、事件はいつも線路の近くで起きているのか、何故子供ばかりが狙われるのか。何が犯人を残酷な殺人へと突き動かすのか。
揺れ動く登場人物の心の動き、作品中から教えられる悲劇の歴史、物語展開も最後まで予想を巧に裏切ってくれた。この完成度は誰にでもオススメできる。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2008年エドガー賞受賞作品。
5年前に町を離れたAdamの元へ、旧友のDannyから連絡が入り、Adamは生まれ育った町に戻ることを決める。殺人の容疑をかけられた町、そして母が自殺した町へ。
舞台となるのはノースカロライナ州シャーロット。大きなブドウ園を所有する地元の名士の下に生まれ幸せな子供時代をすごしながらも、母親が目の前で拳銃自殺を図ってから家族の歯車が狂い始める、Adamの行動の中からときどきそんなトラウマが見え隠れする。
5年ぶりに故郷に戻ったAdamは、義理の兄弟や旧友、昔の恋人との再会するなかで、その5年という月日の中で変わってしまったもの、そして未だ変わらないものと向き合い、自分だけでなく、多くの人が同じように5年間苦しみながら過ごしてきたことに気付く。
本作品からは、家族でブドウ園を切り盛りしようとするアメリカの一つの家庭の様子が見えてくる。これはそんな家族の中で起こった小さな間違いから生じた大きな悲劇の物語といえよう。
登場人物それぞれが持っている苦悩の描き方が印象的である。誰もが人は弱く、間違いを犯すものだと知りながらも、自分の不幸を他人のせいにしたり、自分を正当化したり、とその心は常に揺れ動いているのである。そしてそれでも月日は流れていく。近くを流れる、子供時代から親しんだ川、そしてなにかを伝えるかのように表れる白いシカ。いったい何を意味するのだろう。
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
名誉毀損の有罪判決を受けた、失意のジャーナリストBlomkvistの基に、すでに第一線を退いた経済界の大物、Vangerから仕事の依頼が来る。それは30年前にいなくなった当時17歳の少女の事件を解決して欲しい、というものだった。
物語の舞台はスウェーデンの田舎町である。事業家のVangerの家系ゆえに、その親類や関係者たちで居住者の多くが占められており、その日は、唯一他の場所へ行くルートとなっていた橋で交通事故が起こったため実質孤立した場所となっていた。そんな中で消えた少女。残された写真や警察の調査報告書から少しずつ真実に近づいていこうとする。
「どうして彼女は...」とか「彼女は一体何を...」というように、今は存在しない彼女の心を推し量る場面では、名作、宮部みゆきの「火車」や同じく宮部みゆきの「楽園」で味わった空気と同じものを感じさせてくれる。関係者に30年前のことをたずねて歩くうちに、それぞれが持つ思いを知っていく。
そんな Blomkvistの調査と平行して、話はタイトルにある、竜の刺青のある女Salanderの物語も進んでいく。スウェーデンを含む北欧の国々と聞くと、僕らは日本と比較してはるかに教育体制が整っているような印象を持つが、彼女はその生い立ちから、生きていくために後見人制度に頼らざるを得ない。そこで発生する問題からは、北欧といえどもまだまだ多くの改善すべき点があると感じさせてくれる。
さて、少女の失踪の秘密は、やがて聖書の中の文章と深く結びついていく。その過程で、僕の興味を強くひいたのが聖書の「外典」の話である。聖書はもともとヘブライ語で書かれているが、その原典に存在しないもの(つまり選出されなかったもの)を「外典(Apocrypha)」と呼び、カトリック、東方教会、プロテスタントでそれぞれ選定の基準が異なる。というもの。
こうやって徐々に徐々に真実が明らかになっていく物語、というのは、どうしても期待感を高めすぎてラストがそれに伴う衝撃を用意できていないことが多いのだが、本作品はその点も及第点はつけられる。
物語中で登場する多くの地名がスウェーデン語であるということから、言語にも興味を持つだろう。ただの謎解きだけでなく、ヨーロッパから、やがてはオーストラリアにまで広がるスケールと、読んでいるなかで多くの現実の問題や人々の生活に深く根付いている宗教にまで物語は広がり、非常に楽しめた。
読んでいる最中に、翻訳して出版したくなったが、先日本屋で「ドラゴン・タトゥ-の女」というタイトルで邦訳が並んでいるのを発見したので、興味がある方はそちらも手に取ってみるといいだろう。もちろん、英語で読んでも非常に読みやすい。500ページを超えるその厚さに多少躊躇するかもしれないが、読み始めれば時間も忘れて読み進められることだろう。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
犯罪者である父親を持っているという過去を捨てて、新しい場所で自分の店を開いていたLaine Tavish。ある日、彼女の店に年老いた男が訪ねてくる。一方ニューヨークでは2800万ドルのダイヤモンドが盗まれたという。
恋愛小説のベストセラー作家NoraRobertsの作品。Laineの父親が絡んだダイヤモンドの強奪によってLaine自身も犯罪に巻き込まれていく。一方で保険会社に雇われて、ダイヤモンドを取り戻そうとする私立探偵のMax。Maxはダイヤモンドのありかを探るために娘のLaineに近づく。
なんといっても犯罪者の娘という設定が面白い。それゆえに物語中で見えてくる、Laineの賢さやしたたかさが彼女自身を魅力的に見せてくれる。終盤、Laineは数年ぶりに、今も犯罪を続けている父親と再会する。そこで、まだ子供だと思っていた娘が、自分の店を持ち、自分の人生をしっかり生きている姿に、ショックを受けながらもどこか誇らしげな父親Jackの態度が印象的である。その一方で、娘のLaineに会いに行くための交通手段としてさえも、車を盗み、娘にしかられる父親のやりとりもほのぼのとしていて一つの見所と言えるだろう。
父親のJackが犯罪者でありながらも憎めないのは、やはりその犯罪を通じて人を傷つけたり、被害者の人生に致命的な傷をつけるような犯罪はしないという哲学のせいだろう。ルパンやキャッツアイなど、多くの英雄的に犯罪者が持っている哲学でありがちではあるが、読者を引き付けるためには必要な要素なのだろう。
それにしても、J.D.Robbs(Nora Robertsがサスペンスを書くときに使用している名前)の著者名で書かれている巻末のエピソードが物語を複雑にしている。一体これはどういうことなのか。誰かの解説が欲しいところだ。
masato (2010年2月 7日 23:45) | コメント(0)





