ささきじょうの最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警部に承認した安城和也(あんじょうかずや)は父親同然に慕っていた加賀谷仁(かがやひとし)を覚せい剤所持で警察から追放することに成功する。やがて安城(あんじょう)は班を率いて覚せい剤の取締を担うこととなる。

タイトルから佐々木譲の他の作品、「笑う警官」「警官の血」などとの物語的なつながりがあるかと思ったが、あったとしてもよっぽど繰り返し読んでいる著者にしかわからない程度だろう。物語の主人公が、父親のように慕った警察を売った警部という点も、物語に感情移入しない点なのかもしれない。

佐々木譲の警察物語に期待するスピーディな展開は本作品ではあまり見られず、特に印象に残らない作品になってしまった気がする。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第142回直木賞受賞作品。

過去の事件によって精神病を患い休職中の刑事、仙道孝司(せんどうたかし)はその有り余る時間ゆえに知り合いから依頼される未解決の事件や、警察が動けない事件の捜査の依頼を受ける。

他の佐々木譲の作品同様、本作品も北海道を舞台とした警察物語。過去の強烈なトラウマゆえにその回復を待つ、という設定ながらもその過去の事件についてはあまり触れられないままいくつかの物語が展開する。いずれも派手な事件ではない点や、余計な説明や描写が少なく展開の速さは非常に佐々木譲らしい。

直木賞というと、どちらかというと多くの心を掴みやすい物語という印象があるのだが、本作品はどちらかというと地味で玄人好みなのではないだろうか。

ニセコ
北海道後志支庁管内にあるニセコ町、倶知安町、蘭越町などをまたぐ地域の総称のこと。(Wikipedia「ニセコ」

参考サイト
ニセコリゾート観光協会

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
洞爺湖サミットを間近に控えているなか。勤務中の警察官が拳銃を所持したまま行方をくらました。その警察官の目的はなんなのか。津久井(つくい)巡査部長がその調査に充てられる。

「笑う警官」「警視庁から来た男」に続く、北海道警の大規模な汚職事件に続く物語の第3弾である。前2作と同様に、津久井(つくい)のほか、佐伯(さえき)警部補、そして、小島百合(こじまゆり)は本作品でも登場し、それぞれがそれぞれの任務を遂行しながらも、再び相互にかかわりあうことになる。

本作品は、途中かなり過去の事件に触れられて物語が進んでいくために、前2作品を読んでいないと少々着いていくのは厳しいかもしれない。とはいえ、複雑な捜査や内部事情だけでなく、このシリーズの独特なテンポも大きな魅力ではある。

さて、実は今回あとがきを読むまで本シリーズは完全なるフィクションだと思っていたのだが、どうやら実際にあった北海道警の汚職事件を題材にしているらしい。ひょっとしたら僕が無知だけだったのかもしれないが、ここにいたってようやくそれに気付き、最初からそれを知っていたら本シリーズは何倍も楽しめただろう、と反省している。


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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
追っ手から逃れるために沖縄にたどり着いた原田泰三(はらだたいぞう)は、台風が過ぎるまでとあるホテルへ身を潜めることにした。そこで一人の女性と出会う。

佐々木譲が直木賞を獲った影響だろう。過去の佐々木譲作品が書店の棚を飾ることが多くなった。本作品もそんな中のひとつである。とはいえやはり今ほど評価の高くなかった時代に書かれたこともあり、物語中に際立った個性は感じられない。

非常に読みやすいという点では評価したいが、もう一度同じ著者の作品を手に取りたい、と思わせるような魅力はない。

内容まさに典型的なハードボイルドといえるだろう。ハードボイルドの明確な定義があるのかどうかはわからないが、「銃」「男女」「愛」という必須項目と思えるものを本作品もしっかり満たしている。あまりにも王道なので、読書の原点に戻ったような気分さえ感じた。

ラッフルズ・ホテル シンガポールの最高級ホテル。(Wikipedia「ラッフルズ・ホテル

ウチナーグチ
沖縄諸島中南部(沖縄本島中南部と慶良間諸島、久米島、渡名喜島、粟国島、奥武島、浜比嘉島、平安座島、宮城島、伊計島)で話される言語の総称。(Wikipedia「沖縄方言」

ノーマン・メイラー
アメリカ合衆国の作家。ノンフィクション小説の革新者。(Wikipedia「ノーマン・メイラー」


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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
昭和23年。警察官として人生を歩み始めた安城清二(あんじょうせいじ)。そんな父親の警察官としての生きかたを見て、息子の民雄(たみお)、そしてその息子の和也(かずや)も警察官として生きることを選ぶ。

" >笑う警官」以降、今野敏と並んで警察小説の雄とされる佐々木譲の長編である。物語の始まりは、戦後の混乱の続く、昭和23年である。家族を支えるために警察官になろうという清二(せいじ)の決意から、60年にも及ぶ親子3代の警察物語が始まるのである。

面白いのはその時代背景の描き方だろう。時代は大きく移りながらも、基本的にはその舞台は上野周辺を描いているため、その時代の日本人の生活事情が大きく反映されている。昭和の清二(せいじ)の時代からは、戦後の混乱ゆえに、多くのホームレスが上野周辺で生活しており、多くの人々が生きることにすら不安を覚えている、今からは考えられないような生活である。そして、そこで起きる、窃盗や殺人事件に対応しながら治安を守るのが、清二(せいじ)の主な仕事であったのに対して、二代目の民雄(たみお)の捜査の対象は赤軍派というテロ組織へと変わる。そして三代目の和也(かずや)の任務は、同じ警察組織の刑事の汚職を疑った内部調査となる。

警察の組織が大きくなるに従い、対応しなければいけない犯罪の規模も大きくなるとともに、大きくなったがゆえに内側から汚職が発生する、というように、時代に伴って変化する警察組織が見て取れる。

警察物語としては特に大きな事件が発生するわけでも、興味深い謎が発生するわけでもなく、読者を寝不足にさせるほどの吸着力もないが、警察という職業に対する、3人の強い気持ちと、それと同時に、組織の大きさゆえに人生を大きく狂わせてしまうような、圧倒的な、その組織や時代の流れの大きさを感じさせるような作品である。

ノンポリ
英語の「nonpolitical」の略で、政治運動に関心が無いこと、あるいは関心が無い人。(Wikipedia「ノンポリ」

Wikipedia「共産主義者同盟赤軍派」
Wikipedia「巣鴨拘置所」
Wikipeida「キューバ革命」
Wikipeida「谷中五重塔放火心中事件」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北海道県警に警察庁から特別監査が入った、監察官であるキャリアの藤川警視正は、監察の協力者として、半年前に北海道県警の裏金問題を証言した津久井(つくい)刑事を指名する。

舞台は「笑う警官」の半年後である。目線は監察官の協力者を努める津久井(つくい)と、別方面の捜査から、道警内部に疑いの目を向ける佐伯(さえき)、新宮(しんぐう)を基本として、物語は展開される。

前作品「笑う警官」を読んだときも感じたのだが、実は「笑う警官」の一個前の作品が存在して単に自分がその作品を読んでいないだけではないか?という疑問は本作品を読んでいる際も感じた。それは、言い換えるなら、この作品の登場人物の過去がそれだけリアルに描かれているということなのかもしれない。

「笑う警官」でも活躍した女性刑事小島百合(こじまゆり)巡査は本作品でも登場し、その、一般的な刑事とは違ったスキルを披露して真実の究明に貢献する。その描写からは間違えなく自分が好む燐とした女性像が想像でき、僕にこのシリーズを好きにさせた大きな要素である。

また、新人警察官の新宮(しんぐう)の成長も注目である。本作品で一つの忘れられない経験をした彼が今後どうやって一人前の刑事になっていくのか。

「おれたちは、骨の髄まで刑事だよな。ただの地方公務員とはちがうよな」
「おれたちは、刑事です」
「目の前にやるべき事件があり、しかもおれたちが解決できることだ。こいつを組織に引き渡すなんて真似はやるべきじゃないよな」
「そのとおりです」

本シリーズの魅力はやはり、その捜査の様子に違和感がないことだろうか、もちろん素人意見ではあるが、不自然な捜査や信じられないような偶然が起きたりしないから、リアルな警察官を感じられる。読者によっては物足りないと思う人もいるかもしれないが個人的には支持したい。


エドウィン・ダン
明治期のお雇い外国人。開拓使に雇用され、北海道における畜産業の発展に大きく貢献した。(Wikipedia「エドウィン・ダン」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
安積啓二郎(あづみけいじろう)は自分の事業からの撤退を機に、兄の経営していて存続の危機に瀕していた実家のガラス工場の建て直しを担うこととなる。啓二郎(けいじろう)はそのガラス工場で透子(とうこ)というガラス工芸作家に出会う。

本作品には、優秀な営業マンが企業を立て直す経済小説の要素と、恋愛小説の要素が取り入れられている。

この物語で新しいのはその恋愛の形だろうか。啓次郎の妻は経済的にも自立したキャリアウーマンで夫の浮気も仕方がないものと考える。また、透子もガラスと恋人ならガラスを選ぶという女性。男性目線で描かれた物語でありながらも女性の強い生き方を魅せてくれる。

また、ガラス工場という点でも、面白い。大田区という世界でも有名な工場地帯を舞台としており、やや頑固な生き方をしながらも、そこで働く人々は高い技術を持つが、市場調査や営業力を持たない。そこに経験豊かな啓二郎(けいじろう)が取締役として加わることで徐々に業績は上向いていく。

屈折率のものすごい高いガラスのエピソードはなんとも興味深くロマンチックで印象に残った。自分の中の話のネタの一つに加えておきたい。

その厚さにやや戸惑うかもしれないが、個人的には、読んで後悔することのない作品と感じた。

予納金
自己破産を裁判所に申立てする際、裁判所に収めるお金のこと。これを収める事が出来ないと自己破産の手続を受けることはできない。

クラインの壺
境界も表裏の区別も持たない(2次元)曲面の一種。(Wikipedia「クラインの壺」

参考サイト
日本ガラス工芸協会

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
女性警察官殺人の容疑者として挙げられた津久井(つくい)巡査部長。組織はその容疑を利用して津久井(つくい)の射殺許可を出す。かつて津久井(つくい)と苦難をともにした佐伯(さえき)警部補は独自に津久井(つくい)の潔白を証明しようと動き出す。

多くの人が理解しているとおり、警察というのは決して清廉潔白な組織ではない。単純に私腹を肥やしている警察官もいるだろうが、世の中の平和を維持するための行動ではあっても必ずしも規則に則っていることばかりではない。軽微な犯罪を見逃す見返りとして裏の情報を得ることで、より大きな犯罪を防いだりするのはその1例だろう。

そして時には大きな犯罪を防ぐために犯罪者に協力することもあるらしい。最終的に「平和を守る」という点では一致していても、どこまでが赦される行為か、という点ではそれぞれの警察職員によって異なる。

本作品では、公の場で、警察内部の真実を語ることを正義と信じて行動しようとする津久井(つくい)巡査部長と、その行為を「警察に対する裏切り」と受け止める派閥との争いである。個人の利益に直結するものではなくそれぞれの信念に委ねられるものだからこそ、どこに敵がいるかわからない。そんな環境の中で友人である津久井(つくい)を守ろうと行動する佐伯(さえき)の周到で機敏な判断と、その良きパートナーとを果たすことになる女性警察職員、小島百合(こじまゆり)の知性溢れる言葉の数々がなんとも魅力的である

もし、正義のためには警官がひとりふたり死んでもかまわないってのが世間の常識なら、おれはそんな世間のためには警官をやっている気はないね。

警察小説は、おそらく小説の中でももっとも多く書かれている小説だろうが、そんな警察小説の中でも際立って個性のある作品に仕上がっている。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元刑事の川久保篤(かわくぼあつし)は十勝平野の農村に駐在警官として単身赴任することとなった。

最近「警官の血」のドラマ化などでよく耳にする佐々木譲という著者。本作品は僕にとって初めて触れる彼の作品となった。

単に犯罪を未然に防ぎ、犯罪者を司法の手にゆだねるまでが駐在員としての仕事ではなく、時には犯罪を黙認しても、町の平穏を守ることが必要となる。

「被害者を出さないことじゃない。犯罪者を出さないことだ。それが駐在警官の最大の任務だ。

田舎町という閉鎖的かつ排他的な地域で、どこまでを見過ごすべき犯罪とするか、時に地元の警察と、地域の権力者の声に板ばさみに合いながらも正義を守ろうと奔走する姿が描かれる。世の中に多く出回っている警察物語とは一線を画す作品である。

正直、もっと一気に物語に引き込むような、例えば横山秀夫作品のような力強さを期待したのだが、やや期待がはずれた。どちらかというと玄人好みの刑事物語と言えるのではないだろうか。とはいえ他の作品にも近いうちに触れてみたいとは思った。

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