どうばしゅんいちの最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆
高校野球、アメフト、槍投げ、ラグビー、プロ野球、とスポーツのシーンを扱った6つの物語。

スポーツシーンの物語というと、野球だろうとアメフトだろうと、誰もが思い浮かべるような絵になる場面というのはあるだろう。しかし本書が扱っているのは普段はあまりそのスポーツをしない人が知ることのない場面である。

例えば高校野球を扱った「連投」では、高校野球で話題になるエースの連投の問題について触れていて、連投を重ねて神奈川大会の決勝に進む高校のエースに焦点をあてている。連投がピッチャーの肩を壊して、将来のプロ野球の夢を断つ結果になるリスクを承知しながらも、勝つために最善のメンバーで試合に臨みたい監督と、監督に言われたら従うしかない高校生の投手たちの様子が描かれている。高校野球を見る際の、新たな視点をもたらせてくれる。

最後の物語の「右と左」もまた野球を扱っているが、こちらはプロ野球である。すでに下位が決まりながらも最終戦の結果次第には4位になる可能性があるという状況で、先発の決断に悩む監督と、先発を任される可能性のある2人の投手に焦点をあてている。1人はベテラン投手。そしてもう1人は勢いに乗るルーキーである。常に先発を任されてもいい状態で前日を過ごそうとしながらも、連絡のないことにいらだちを隠せない2人のその対照的な過ごし方が面白い。

あっさり読めるにも関わらず、スポーツに対する見方を少し深めてくれる一冊である。

【楽天ブックス】「ターンオーバー」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
箱根駅伝への出場を逃した大学の中から選ばれて作られる学連選抜。複雑な思いを抱えて各大学から集まった選手たちが一つのチームとなって箱根駅伝での優勝を目指す。

真面目に見たことなどないが、箱根駅伝と言えばもはや知らないものはいないだろうともうぐらいの正月の一大イベントで、そこで起きる様々なドラマ。襷を繋ぐことにかける選手たちの熱い思いもなんとなく想像できる。しかし、そのイベントの知名度のわりにはそれを物語とした小説やドラマなど、本作品に出会うまで聞いたことすらなかった。本作品を読むと駅伝というのが非常に物語に向いていると感じるのだが、ひょっとしたらそれは著者の力量によるものなのかもしれない。

単純に箱根駅伝を扱うなら、それはおそらくそのなかの出場大学に焦点をあてるのだろうが、本作品が選んだのは「学連選抜」というチーム。どんなチームスポーツにおいても選抜チームのつくる記録というのは常に、チームスポーツの意義に疑問を投げかける可能性を持つ。単純に優れた選手だけを集めて勝ててしまうなら、はたしてそれはチームスポーツなのか?長年かけて育んだチームワークの勝利への貢献度が低いのであれば、それはもはや個人競技なのではないか、そんな疑問である。

さて、そんな学連選抜チームのなかでも、本作品は特に4人の選手を中心に描いている。昨年10区で失速し、今年こそリベンジを、と思いながらも大学自体は箱根出場を浦(うら)。「化け物」と呼ばれるほど優れていながらも所属した大学のほかの選手の力不足で箱根出場を逃した、山城(やましろ)。かつては浦(うら)と同じ陸上部に所属しながらも、進んだ大学のほかの選手の志の低さに流され、本気で気持ちを入れては知ることをしなくなった門脇(かどわき)、そして実力はありながらも1年生と経験の乏しい朝倉(あさくら)である。特に際立っているのは、箱根はいずれ走るマラソンへの調整と位置づけ、チームワークを軽んじる山城(やましろ)だろうか。

それでもそこはこういうった物語の常で、衝突を繰り返しながらも少しずつ一つにまとまっていくのであるが、その過程でみえる駅伝というスポーツの異質な面や、箱根駅伝というスポーツの奥深さが非常に好奇心を刺激する。

今まで俺は、駅伝はあらゆるスポーツの中で最も過酷な集団競技だと思っていた。アイコンタクトで華麗にパスをつなげたり、八人の力を一本の矢にしてスクラムを押したり、そういう目に見える形のチームワークが存在しないが故に過酷なのだ。走っているときは一人。しかし自分の前で必死になっていた選手、襷を待っている選手の思いを消し去ることはできない。

なんか来年の正月はちょっとテレビを見そうである。一気読みの一冊。

【楽天ブックス】「チーム」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
瀬戸内海の瀬戸島に山村留学にきた中学二年生の鳥海浩次(とりうみこうじ)は、娯楽のない島の生活に飽き飽きしていた。それでも同級生の水谷計(みずたに)が海に沈んだ財宝の地図を見せてから、退屈な生活が動き出す。本作品はそんな島で過ごす少年たちの生活を描いている。

僕の半分も生きていない中学二年生の彼らだが、いろいろな悩みを抱えて日々の生活を送っている。同じクラスの女の子と口を喧嘩したり、沈没船を探して海に潜ったり、と、大人になった僕らから見れば、彼らの悩みはとても「悩み」と呼べるような類のものではなく、彼らの経験する大事件も些細な出来事に見えてしまうのだが、14年しか生きていない彼らにとっては、その経験のうちの何個かが一生心に残る大切な思い出になるのだろう。

そんなふうに、自分の中学生時代を思い出して、少し懐かしく、少しそんな彼らに嫉妬させてくれるような作品であった。もう何年も前に読んだ氷室冴子の「海が聞こえる」と似た匂いを感じた。

時には肩の力を抜いたこんな読書も悪くない。


サルベージ
沈没船の引揚作業。海難救助。(はてなダイアリー「サルベージ」

【楽天ブックス】「少年の輝く海」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1人の刑事が自殺し、1人の刑事が失踪した。鳴沢了(なるさわりょう)と今敬一郎(こんけいいちろう)は失踪した刑事を探すことを命じられる。

今回、「寝不足書店人続出?」というキャッチの帯に魅せられ、こうやって「刑事・鳴沢了シリーズ」を初めて手に取った。しかし、本作品中の事件が原因か、それとも、堂場瞬一(どうばしゅんいち)という作家の個性なのか、とりたてて物語にスピード感が感じられなかった。むしろ地道な捜査を続けて真実に少しずつ近づいていくという印象を受けた。

鳴沢了(なるさわりょう)という刑事にもそれほどの魅力は感じなかった。むしろ、昔の相棒とされる小野寺冴(おのでらさえ)という元女性刑事に魅力を感じたのは、単に自分が男だからだろうか。

物語の中でいくつか警察内部の派閥が出てくる。派閥に属して自分の派閥の人間をトップに推すからこそ、警察内部で安心して仕事に取り組むことができるという考えを持つ刑事と、派閥などくだらないと考える鳴沢(なるさわ)や今(こん)。もちろんそこに明確な答えなどなく、著者も鳴沢(なるさわ)も「こうあるべき」と考えを読者に押し付けないところに、好感が持てた。

そして、終盤の鳴沢(なるさわ)のように「今の自分の行動は正しいのか」と葛藤する姿は、読者に共感を与えるために必須な人間味であり、この辺が「刑事・鳴沢了シリーズ」の魅力の一つなのではないだろうか。

今回、刑事・鳴沢了シリーズに初めて触れたのだが、どうやら本作品はシリーズの中では4作目であり、中途半端なところから読み始めてしまったようだ。物語中の会話などから推し量ると、本作品の前の3冊にも大きな動きがあったのだろう。機会があったらそちらも読んでみたい。ただ、本作品に限っていえば「寝不足書店人続出?」というのは褒めすぎだろう。

【楽天ブックス】「孤狼 刑事・鳴沢了」

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