オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第9作。スマトラ島自信で記憶を失った女性を治療するためにインドネシアに趣いた岬美由紀(みさきみゆき)はそこで、世界を操る闇の集団メフィスト・コンサルティング・グループのダビデと出会う。因縁の戦いが再び始まる。
例によって、時事ネタや、感心するような小話を随所に散りばめて展開しており、物語の面白さ以外にも楽しめる作品に仕上がっている。
本作品は、小学館の千里眼シリーズからたびたび登場するメフィスト・コンサルティング・グループのダビデと「千里眼 ファントム・クォーター」などで登場するジェニファーレイン、そして「千里眼 シンガポールフライヤー」で表に出てきた人の心を信じない集団、ノン=クオリアの間で繰り広げられる争いを描いており、角川文庫のシリーズの大きな区切りとなるような構成となっている。
中盤から利害が一致したことによってダビデと美由紀(みゆき)は行動を供にして、ジェニファーレインの悪事を阻もうと試みる。美由紀(みゆき)はいつのもとおりその正義感から、そして、ダビデは、かつての部下だったジェニファーレインを思ってか、仕事としてか…、今まで、そのおどけた表情の裏に隠されたダビデの本性だが、本作品ではダビデ目線で描かれるシーンもあり、過去のシリーズの流れとは少し違った空気を感じる取ることができるかもしれない。
本作品では、登場人物だけでなく、過去の事件などが何度か引用される。僕自身この千里眼シリーズは小学館と角川文庫で10年近く、ほぼすべてを読んでいるが、それでもその引用される登場人物や事件の前後関係が思い出せない。このあたりに松岡圭祐のおごりを感じてしまう。
物語的にはやや物足りない印象も受けるが、今後の展開に対する期待を感じさせる作品である。
【楽天ブックス】「千里眼 優しい悪魔(上)」、「千里眼 優しい悪魔(下)」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
夢を支える仕事がしたいという思いから、ディズニーランドでの勤務が決まった青年、後藤大輔(ごとうだいすけ)の職場での姿を描いている。
松岡圭祐の初期の作品ということで、ずいぶん前からタイトルだけは耳にしていたが、なかなか触れる機会がなく、今回ようやく書店で目に止まり読むことができた。
本作品はもちろん、ディズニーランドを扱った作品である。物語中にはたくさんのアトラクション名が出てくるため、ディズニーランドに何度も足を運んだことのある人には非常に楽しめる作品かもしれない。残念ながら僕は2度しか行ったことがないので、そのイメージが湧いたのは、シンデレラ城、カリブの海賊、ビッグサンダーマウンテンなどわずか数点で、ディズニーシーに話が及ぶとまったくイメージできない、という具合であった。とはいえ物語はディズニーランドの舞台裏もかなり詳細に描いているので、夢は夢のままでとっておきたかった、と後悔する人もいるのかもいれない。
物語中でも、夢の世界の舞台裏に入ったことで、現実を突き付けられ、失望する後藤(ごとう)の姿が描かれる。
それでもやがて後藤(ごとう)は、周囲の人に支えられて、夢を支える仕事に自分の存在意義を見出していく。
物語の過程で描かれる、キャストたちの着付けの様子や、来場者の夢を壊さないためにキャストに強いられるさまざまなルールに、ディズニーランドの成功の秘訣を見ることができる。
また、物語の中で描かれる複雑な人間関係や、そこで発生する諸問題によって、東京ディズニーランドという、世界で唯一ディズニーカンパニーが経営権を持たないディズニーランドという企業としての利害関係についても理解を深めることができるだろう。
夢の舞台の裏側を描いたという展では本作品を読む意義はあっても、物語としてはややありきたりな印象を受けた。
【楽天ブックス】「ミッキーマウスの憂鬱」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
千里眼第2シリーズの第8作。「千里眼 美由紀の正体」で自分の過去を知った岬美由紀(みさきみゆき)は精神疾患に悩まされていた。そん中、世の中は新種の鳥インフルエンザの猛威に晒されていた。
本作品で岬美由紀(みさきみゆき)は今まで以上に人間味を出す。人の心を読めることで、人の悪意を瞬時に察しながらもそれを証明することができないために周囲に協力を求めることができない。そして、どんな人でも少なからず悪意を持っているため、目に入る全ての人の表情が気になる。そんな悪循環に悩まされる。
例によって、多く現実の出来事を物語に盛り込んでいる。ルネサンス佐世保の猟銃発砲事件、富士スピードウェイで開催されたフォーミュラ1での交通問題。時事ネタが素早く取り込まれることが松岡圭祐の指示される理由だろう。
本作品では「クオリア」という言葉がキーワードになる。
新種の鳥インフルエンザ、ヴェルガ・ウィルスの日本への拡大を防ごうとする美由紀(みゆき)と、クオリアを否定する組織「ノン=クオリア」が対峙することになる。
人間が生きる喜びを感じる多くの要素を説明しうるクオリア。しかし、成長過程によってはそれを理解できない人もいることを、理解できるからこそ物語の結末に興味を掻き立てられる。
小学館から発行されていた千里眼第1シリーズに比べて、この角川文庫の第2シリーズは物足りなさを覚えることが多かったのだが、本作品はそんな中でも心に残るものがあった。
【楽天ブックス】「千里眼 シンガポール・フライヤー(上) 」、「千里眼 シンガポール・フライヤー(下) 」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
政治的立場を利用して、女性に淫らな行為を働いた男性に対して、強烈な怒りと共に制裁に走った岬美由紀(みさきみゆき)。普段は冷静にもかかわらず時に暴走するその理由は一体なんなのか。美由紀(みゆき)の幼少期の真実が明らかになる。
起こるはずもないと思われる出来事で読者をひきこみ、物語中でその出来事についてはさりげなく解決してみせる、そしてそのころには物語中にどっぷり浸かっている。松岡圭祐がよくやる手法がこの物語でも健在である。
人の心を読むことができながら、恋愛経験が乏しいばかりに人の恋愛に関する意識だけは読むことが出来ない。「千里眼」シリーズでは過去何度もそういうシーンがあり、そこが非のうちどころのない主人公である美由紀(みゆき)に読者が親しみを覚える理由なのだろう。今回は、なぜ美由紀が恋愛経験が乏しいのか、という点に深く踏み込むことになる。
第2シリーズに入って展開がやや大人しくなっていたが、今回は自衛隊時代の美由紀の恋人で、第1シリーズの「ヘーメラーの千里眼」で重要な役どころを演じた、伊吹直哉(いぶきなおや)が多くのシーンに登場したのがこの作品をより常識はずれで、面白くしているのだろう。そうでなくとも、自衛隊という組織が絡むといつだって千里眼シリーズは面白くなる。なぜなら、自衛隊は日本でもっとも矛盾を孕んだ組織だからだ。今回はそんな自衛官、伊吹が語る言葉がもっとも印象的だ。
物語は、人身売買などの問題も絡んで進んでいく。貧富の差がある限り、地球上から永久になくなることのない人身売買問題に改めて興味を持った。
物語中で、珍しく自信を失う美由紀は終始自分の孤独感に苛まされる。しかし、美由紀(みゆき)のように物事の大部分を自分で解決することができる人間は往々にして孤独なことが多い。これは仕方が無いことである。なぜなら、人は人間関係の中にいつだってギブアンドテイクを求めている。頼られてこそ、その人を頼っていいと誰もが思うのだ。つまり、人に頼ることのない人間は、人から頼られることも少ない。そうすると美由紀(みゆき)のような人間に頼ってくる人はいつだって本当に無力な人ばかり。それでは対等な人間関係は築けないのだ。そんなことが何故か物凄く理解できてしまう。
【楽天ブックス】「千里眼 美由紀の正体(上)」、「千里眼 美由紀の正体(下)」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
霊柩車の運転手を務める怜座彰光(れいざあきみつ)。その特異な職業とその周囲で起こった事件を物語にしている。
霊柩車の職業という普段接することのない人間を主人公にしているためにその周囲で起こる一般の人にとっては非日常的である日常的なことの描写のすべてが非常に新鮮で面白い。途中、やや現実離れした展開も見せるが、それはあとがきで作者も言及している通り、意図的なもののようだ。物語中で、死に近い場所で毎日生活しているからこそ至ったであろう考え方がしばしば出てきて、それがとても面白い。
千里眼シリーズ、催眠シリーズ、マジシャンシリーズなど、終わり方を見るとこの怜座彰光(れいざあきみつ)の物語も続編へと続きそうな気配を持っていた。今回は第1作ということで、その特異な環境やその職業の社会との関わりだけに触れるだけで、とりたててしっかりとした筋や世の中を風刺した内容を伴っていなくても、ある程度読者を満足させることができたであろうが、自作からはしっかりとしたテーマが必要になってくるだろう。次作はその辺に注目して読んでみたい。
【楽天ブックス】「霊柩車No.4」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第6作。ハローワークに職探しに現れた女性は「千里眼の水晶体」で自殺を図り行方不明となっていた西之原夕子(にしのはらゆうこ)であった。岬美由紀(みさきみゆき)は自己愛性人格障害と見られる夕子(ゆうこ)を救うべく奔走する
この物語の中では、基本的に「千里眼の水晶体」で、人格障害とみなされながらも犯罪に走り、結局、美由紀(みゆき)が救うことのできなかった夕子(ゆうこ)を中心として物語が進む。
第2シリーズも6作目になるが、第1シリーズのような深いテーマが未だに感じられない。個人個人の小さな精神的な苦痛を軽んじていいとは言わないが、社会に巣食った問題や矛盾に興味を覚える僕にとっては、やはり全体的に物足りなさを感じる。
【Amazon.co.jp】「千里眼 堕天使のメモリー」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第5作。氏神高校の体育館で爆発が起こった。そして爆発の後、生徒達は突然氏神高校国の設立を政府に向かって宣言する。
例によってやや現実離れしたストーリーである。学校という小さな面積と少ない人数で独立した国を作ろうとする生徒達の行動は、小さな国の成り立ちを見ているようだ。
インターネットを利用することで、土地が無くても頭脳で外貨を稼ぐことができ、国に役立つ情報や技術にはそれ相応の通貨を支払うなど、国民のモチベーションを上手く国へ還元させようとする。その一方で医療技術の進歩が遅れていれば、国民の生命を守るために、医療技術の進んだ他国に頼らざるを得ない。小国であるが故の長所と短所をこの題材の中でうまく表現している。
生徒達の知識が、高校生という設定にしては豊富すぎる印象もあるがこのへんの非現実感は千里眼シリーズだから描けるものなのだろう。そんな非現実なストーリーの中で発せられる疑問や台詞には現代の真実を的確に言い表したものもある。
どんなに学のない大人であっても、中学生や高校生と比較すれば多くの知識を持っているのは当然である。それであるがゆえにその行動が正しくなかったり子供にとって納得の行かないものであったとしても言い争えば大人が勝ったり上手くはぐらかすことができるものである。それだけの理由で、大人には「自分たちのほうが正しい」という思い込み、子供には「大人は話しても無駄」という思い込みが生まれ、双方の溝は深まっていく。
いつか大人の立場になったとき、子供達の間に、そんな不都合な溝の生じない関係をつくれる大人になりたいものだ。
【Amazon.co.jp】「千里眼の教室」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
4年ぶり2回目の読了。前作「千里眼 メフィストの逆襲」と2冊で一つの物語となっており、北朝鮮問題を題材とした物語の完結編である。岬美由紀(みさきみゆき)や蒲生誠(がもうまこと)は東京カウンセリングセンターの研修生となった謎の女性、李秀卿(リ・スギョン)を北朝鮮の工作員と疑って身辺警護する。
北朝鮮で生きてきた李秀卿(リ・スギョン)と美由紀(みゆき)は物語中で何度も言い争いをする。信じるものや育った環境によってどんなに理論的な会話を重ねようともお互いに理解することは難しいものだと感じさせるが、それを辛抱強く続けることによってそれは可能になるということもまた教えてくれる。
そして、物語中盤から、正体を現した李秀卿(リ・スギョン)によって、日本と北朝鮮の関係の中で多くの日本人が誤解している一つの真実の形を見せている。
もちろんこの物語は松岡圭祐の作り出したフィクションなのだから、必ずしも真実が描かれているとは限らない、しかし、僕らが「真実」として受け止めていること。つまり、ニュースや新聞から得られる情報によって僕らが持っている北朝鮮に対する印象も、必ずしも真実とは限らないのである。北朝鮮に対する考え方を変えてくれる作品である。
【Amazon.co.jp】「千里眼 岬美由紀」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第5作である。「千里眼 ミドリの猿」と「千里眼 運命の暗示」では中国と日本の問題を題材に取り上げていたが、本作品では北朝鮮問題を題材に取り入れている。「千里眼 岬美由紀」と2冊で一つの物語を構成する。
物語冒頭では岬美由紀(みさきみゆき)の自衛隊時代のエピソードが描かれている。自衛隊という矛盾した存在を現場の目線で語っている。
物語途中から李秀卿(リ・スギョン)という北朝鮮工作員と疑われる女性が大きく関わってくる。李秀卿(リ・スギョン)と美由紀(みゆき)の議論は双方とも祖国の正当性を主張するもので、育った環境によってお互い理解することの難しさを見せてくれる。
拉致問題など、北朝鮮問題に興味を抱かずにはいられない作品である。
【Amazon.co.jp】「千里眼 メフィストの逆襲」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第4作である。奥多摩の山中で行われていた自己啓発セミナーの参加者4,000人が人質に取られた。「千里眼」で凶悪なテロを画策し、「千里眼 運命の暗示」で死んだとされた友里佐知子(ゆうりさちこ)が企てた陰謀である。
世間で認識されているような、人を思いのまま操る”洗脳”は現実にはあり得ない。という立場に立ちながらも、4,000人ものセミナー参加者が抵抗も見せずに施設の中に人質として留まってしまった状況に、「洗脳」の存在を信じる世間に対して、美由紀(みゆき)や嵯峨敏哉(さがとしや)は心理学的立場から真実を探ろうとする。
世にはびこる凶悪事件について、その犯人を「異常」とか「洗脳された」という一言で片付け、それ以上理解しようとしない現在の世の中にに疑問を投げかけているのがこの物語のテーマと言えるだろう。
どんな凶悪な犯罪者だろうと、そのような行為を働く過程、育った環境にその心を育む土壌があったはず。そんな考え方は普段の人間関係にも当てはめることができる。理解し難い行動に走る人、仲良くなることはできないかもしれないがその気持ちを理解することはできるかもしれない。
物語終盤では友里佐知子(ゆうりさちこ)と岬美由紀(みさきみゆき)が向き合って言い争う場面がある。決して知ることのできな人間の本質、生きる意味。お互いの信念を言葉にしてぶつけ合う、その台詞の数々はどれも心に響く。結局その人生に悲観するか希望を見出すかは本人次第なのである。そこに、間違っているとか正しいとかいうものはない。
【Amazon.co.jp】「千里眼 洗脳試験」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第3作である。前作「ミドリの猿」の続編。岬美由紀(みさきみゆき)と嵯峨敏也(さがとしや)、そして刑事の蒲生誠(がもうまこと)は日本への宣戦布告間近の中国奥地に降り立つ。
集団マインドコントロールを行っているメフィストコンサルティングのトリックに迫っていく。フィクションということで、深く考えずにその手法は「可能」と受け止めて読み進めるしかないが、美由紀(みゆき)の解決手段は読者に大きな驚きを与えてくれるだろう。
【Amazon.co.jp】「千里眼 運命の暗示」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第2作である。岬美由紀(みさきみゆき)がODA査察中に戦火に巻き込まれているアフリカの子供を救ったことが、中国の対日感情を悪化させ、開戦の気運を高める。追われる身となった美由紀は、同様に追われている立場で優秀なカウンセラーの嵯峨敏也(さがとしや)と出会う。
第1シリーズ第2作である本作品は、第3作の「千里眼 運命の暗示」とあわせて一つの話を形成している。本作品は「催眠」シリーズと「千里眼」シリーズの世界が交わる作品である。この作品では、美由紀(みゆき)と嵯峨(さが)の周囲の奇妙な出来事の謎を、倉石勝正(くらいしかつまさ)というベテランのカウンセラーを加えた3人で解いていく。
読み進めていくうちに「催眠」というものに対する世間一般的な誤解と、正しい解釈をわずかであるが知ることができるだろう。人を意のままに操るなど不可能ということを繰り返しながら、それを可能にしている陰謀の真相に迫っていく。本作品は次作「千里眼 運命の暗示」の序章といった感じである。
【Amazon.co.jp】「千里眼 ミドリの猿」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自衛隊の航空祭で最新ヘリが盗まれた。六本木にそびえるミッドタウンタワーには毎晩侵入者が現れる。中国大使館の敷地で企てられた陰謀に岬美由紀(みさきみゆき)が挑む。
今回も話題のオープン間近のミッドタウンを舞台に設定しており、最近の話題や社会問題を物語に取り入れようとしている姿勢が松岡圭祐らしい。山場の一つとなるギャンブルのカードゲーム「愛新覚羅」は物語を盛り上げ、同時に中国の歴史にまで興味を向けさせてくれる。また、そんな知識欲を刺激する内容以外で、本作品の中で印象的だったのが、岬美由紀(みさきみゆき)、雪村藍(ゆきむらあい)、高遠由愛香(たかとおゆめか)という、一見どこにでもいるような女性の仲良し三人組の人間関係についての描写である。
高遠由愛香(たかとおゆめか)は精神的に追い詰められて、美由紀(みゆき)に本音をぶつける。
人間関係は必ず双方によってなんらかのメリットがあってこそ成り立つもの。それは僕自身が常々思っていることであるが、世間の人は「無償の愛」が存在すると考えたがり(もちろん「無償」が「金銭的のやり取りのない」を意味するのであればそれは存在するのだが)、この事実を認めたがらないようだ。本作品では美由紀(みゆき)の友人である高遠由愛香(たかとおゆめか)がそれをはっきりと表現しており、もちろんそれは世間一般的には受け入れられ難い行動なのだろうが、僕はその潔さは逆に良い印象を受けた。
【Amazon.co.jp】「千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
旧日本軍の生物化学兵器、冠摩(かんま)が温暖化によって猛威を振るいだした。岬美由紀(みさきみゆき)の友人、雪村藍(ゆきむらあい)もそのウイルスに感染され命の危険にさらされる。
地球温暖化と極度の潔癖症という現代の社会が生む問題を重要な鍵として物語を展開している。
悪意と罪に対する社会の対処の仕方について深く考えさせられる。物語中では小さな悪意が結果的に、ウイルスを広めて人々を恐怖に追いやることとなるのだが、小さな悪意が、その人の思惑以上に多くの人に被害を与える結果になった場合、その罪と責任はどこにあるべきなのだろうか。
世の中の多くの犯罪者は、現代の社会が生み出した犠牲者なのである。しかし、昨今増え続ける凶悪犯罪に対して、その犯罪者を裁判にかけて、被害者と世間を納得させるだけ。決して凶悪犯罪が減っているとは思えない。本当に目を向けるべき場所は他にあるのだということをみんな気付いているはずだ。
【Amazon.co.jp】「千里眼の水晶体」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本企業の株価が一斉に値を下げ、岬美由紀(みさきみゆき)の元には航空自衛隊の幹部から、「目に見えないミサイルが日本を狙っている」という情報が入る。そんな中で美由紀(みゆき)は拉致され、奇妙な街、ファントムクォーターへ送り込まれる。
ワンセグやHDDレコーダーなど最新機器をトリックに取り入れており、それ以外にも多くの物事に興味を引き起こす要素に事欠かない。そしてラストは目に見えないトマホークを防ぐために美由紀が奔走する。前シリーズに比べやや大人しい印象を受けたのは前作と変わらないが、そんな中、早くも話の展開に現実離れした感覚を覚えた。
【Amazon.co.jp】「千里眼 ファントム・クォーター」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小学館文庫で刊行されていた千里眼シリーズの続編という位置づけではなく、新たなシリーズとなっている。過去十二作を刊行する際に7年の月日が経ち、その間、心理学の分野にも考え方もまた少し変わってきたことがその理由であると。著者の松岡圭祐があとがきで書いている。
物語は主人公の岬美由紀(みさきみゆき)が自衛隊を除隊して、臨床心理士を目指すところから始まる。飛行機の墜落をもくろむ犯人の計画を防ぐことがメインとなって展開し、美由紀の恋愛にまで触れるところが今回は新鮮である。また航空機の構造やそれを墜落させる難しさに触れているが、基本的には心理学に関する内容が多い。
松岡圭祐が本作品のあとがきで書いているように、前シリーズよりも真実に近い形にすることを重視したせいか、少し大人しい印象も受ける。とはいえ前シリーズはやや行き過ぎな印象もかなり多くそのたびに興ざめすることもあったのでこれからの展開に期待したいところである。岬美由紀(みさきみゆき)の知識や頭の回転の速さは前シリーズと変わらず大きな刺激を与えてくれることだろう。(もちろん空想の人物であるがゆえにできることではあるのだが)
【Amazon.co.jp】「千里眼 TheStart」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ゲームメーカーフォレストの人気ゲームである「シティ・エクスパンダー4」をプレーした小学生が、黒いコートの男の幻覚を見るという事件が全国に拡大した。フォレストの社長である桐生直人(きりゅうなおと)を含めた各分野の専門家たちが真相解明へと動き出す。
物語は2001年に発刊された「バグ」の改訂版である。かなりの部分に加筆されているとは言え、一度「バグ」を読んでいる人にはある程度展開に予想がつくかもしれない。
音声認識アプリケーション、ポリゴン、テクスチャーなど、最先端ではないが、CG技術の発展したゲーム業界で用いられる言葉を多く物語中に取り入れて展開していく。個人的にはゲームプログラマーが音声認識アプリケーションなど使うのかという疑問はあるのだが、それ以外にも「2ちゃんねる」ならぬ「Nちゃんねる」、「ミクシィ」ならぬ「メクシィ」、ライブドア粉飾決算などニュースをいち早く物語の中に取り入れるあたりはさすが松岡圭祐という印象を受けた。
ゲームの中で「死」という表現を用いないことをポリシーとする桐生直人(きりゅうなおと)とそれに対する意見も興味深く、また一つ僕の中にテーマを植えつけてくれた。
最終的には「水の通う回路」という言葉についても理解できることだろう。ただ、松岡作品に時々感じられる「突飛すぎる展開」をこの作品でも感じてしまった。数年前に「バグ」を読んでおり、そのときもやや強引な印象を受け、今回大幅に加筆されたというのでその辺りの改善を期待していたのだが、相変わらずやや強引な印象を受けた。
【Amazon.co.jp】「バリアセグメント 水の通う回路[完全版]」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
岬美由紀(みさきみゆき)の活躍する千里眼シリーズ。「千里眼」でテロを実行した友里佐知子(ゆうりさちこ)の後継者である鬼芭阿諛子(きばあゆこ)が能登の白紅神社で宮司を務めているという。能登に急行した美由紀は、恐るべき内容が綴られた友里(ゆうり)の生涯を記録した日記を入手する。
物語の大半が友里佐知子(ゆうりさちこ)の日記で占められていて若干本編の内容に物足りなさを覚えた。それでも友里(ゆうり)の日記には波乱万丈な人生とともに共産主義の理想国家をつくるために揺れ動く考え方などが描かれていて、「全共闘」やよど号ハイジャック事件をリアルタイムで知らない僕等の世代には新鮮かつ刺激的でページをめくっていて飽きさせることがない。
そして相変わらず能力を持ったことによって悩む美由紀(みゆき)の考え方やその葛藤も今後の展開を楽しみにさせてくれる。
次回作にまた期待する。
【Amazon.co.jp】「千里眼 背徳のシンデレラ(上)」、「千里眼 背徳のシンデレラ(下)」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
史上最大のIT企業が設置した”48番目の都道府県"萩原県。そこはニートと呼ばれる無職の人々や失業者たちが、生活費も支給されながら暮らす最先端の福祉都市である。
ところが住民たちは悪夢にうなされて臨床心理士への相談を希望する。そんな舞台の上で、「蒼い瞳とニュアージュ」の主人公であり、萩原県で生活する一ノ瀬恵梨香(いちのせえりか)と、千里眼シリーズの主人公であり、「千里眼 トランス・オブ・ウォー」の話の後にイラクから帰国したばかりの岬美由紀(みさきみゆき)の人生が重なるという、松岡作品ファンにとっては待ちに待った作品だったのではないだろうか。
物語は、主人公クラスの二人が活躍するという内容ではなく、どちらかというと主役の座は美由紀(みゆき)に譲り、恵梨香(えりか)は自分の生き方に迷い、時に投げやりな姿勢が印象に残る。
美由紀(みゆき)は相変わらず、読者の誰もが憧れるような行動力と聡明さを併せ持ちながらも完璧な女性であり続けるわけではなく、誰もが味わいそうな悩みや葛藤を見せるところがまた読者のヒロインであり続ける要素なのであろう。
物語全体としては、美由紀(みゆき)と恵梨香(えりか)が出会うこと意外は今までの松岡作品と比べて目新しいことも、感動する場面もないように思えた。ニッポン放送株買収問題で脚光を浴びたライブドア、2000年に発覚した藤村真一氏の遺跡捏造事件など、社会の出来事を上手く素材として物語に取り入れようとするあまり、内容が薄くなってしまったように感じる。次回作品に期待する。
【Amazon.co.jp】「千里眼とニュアージュ(上)」、「千里眼とニュアージュ(下)」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松岡圭祐の「催眠」シリーズの第三弾であり、嵯峨敏也(さがとしや)を主人公とする物語である。
響野由佳里(ひびのゆかり)は、児童にピアノを自由に弾かせることで、その児童と心で会話することができる。そのような考えを基に教育を行い続けた結果、文部科学賞から表賞されるに至った。そして同じ日、由佳里(ゆかり)が外出中に、息子の巽(たつみ、娘の麻里(まり)を含む家族4人が13才の少年によって残殺された。少年法によって刑罰の科せられない少年に対して、由佳里(ゆかり)の心には復讐の気持ちが膨らみはじめる。
聴覚に著しい才能に恵まれたが故に、悩み、葛藤するが由佳里(ゆかり)の考えは新鮮である。
嵯峨(さが)は復讐の念に捕われた由佳里(ゆかり)を責めるでもなく、心を救おうとするのである。
この物語を通じて考えさせられたのは13歳以下の少年へは刑罰の対象としない現行の少年法への疑問である。インターネットの普及という情報社会の波の中で、犯罪が低年齢化するのは誰にも疑いのないものである。それに対して法律がどのように犯罪を抑制する方向に働くのか、一歩間違えば14歳以下の犯罪を助長することにもなりかねない。今後の動向を気にかけていきたいと思った。
【Amazon.co.jp】「カウンセラー」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
松岡圭祐の「催眠」シリーズの第二弾であり、時間軸から見ると「催眠」の物語の数年前の出来事となる。
嵯峨敏也(さがとしや)はあるとき謎の女から電話を受け、伝言を頼まれる。
聞いたことのない名前を突然指示されて嵯峨(さが)は戸惑いながらも、真実を知ろうとする。
一方で、神経症を患っている木村絵美子(きむらえみこ)はカウンセラーの深崎透(ふかざきとおる)と再会し、同時に神経症の治療も再開することとなる。
カウンセラーと相談者との恋愛というタブーに触れながら、それを爽やかな作品に仕上げられている。嵯峨敏也(さがとしや)は語り手として登場するのみであるが、彼の視点なくしては物語のテーマは成立しない。
そしてラストは驚きと感動の結末である。松岡作品には珍しく、読むのに半日もかからない薄さで、一読しても決して後悔することはないだろう。
【Amazon.co.jp】「後催眠」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松岡圭祐の「催眠」シリーズの第一弾である。
ニセ催眠術師としてテレビなどに出演して生活していた実相寺則之(じっそうじのりゆき)の前にある日、奇妙な女性、入絵由香(いりえゆか)が現れた。その女性は突如、「ワタシハウチュウジンデス」と語りだし、予知能力も備えていた。そのため実相寺は彼女を占いの館の目玉として売り出すことにした。そして、にわかに世間から注目され始めた由香(ゆか)をテレビで見かけた嵯峨敏也(さがとしや)は彼女への接触を図ることになる。
以前より興味を持っていた「多重人格障害(解離性同一性障害)」という症状について理解を深めたいと思ったのだが、その点については若干掘り下げが浅いように感じた。しかし、それでも新たな知識を充分なまでに提供してくれる。
物語は嵯峨と由香とのやりとりの中で、由香がこのような精神病に至った原因を究明し、解決しようということがメインに進む。そして、嵯峨は入絵由香(いりえゆか)と接することで、今の世の中の家族の形の難しい問題とも言える部分に気づく。
さらに物語終盤で、嵯峨(さが)は精神病に対する現代の世間の冷たさに問題があることも訴える。
少なからず心に響く言葉である。
物語の中で催眠効果が世の中のいたるところに存在していることが述べられている。例えばパチンコに熱中する人が存在するのは、パチンコの仕組みの中に催眠効果を取り入れていることによるものであり、パチンコに熱中するかしないかはその人が生まれ持った被催眠性の強弱によるものだという。読み進めていくうちに、世の中の多く人に対して「悪いのは人間ではなく社会なのだから、そのことで悩んでいる人を救わなければならない」そんなメッセージが込められているように感じる。
そうやって理解するなら、僕の嫌いなタバコもCMによる暗示と依存のせいであるから、被催眠性の強い人が一方的に「意志の弱い人」として世間から攻められるのはおかしい。ということになる。僕自身はこの本を読んでも、やはり「意志の力でなんとかできるはずだ」と主張したい。この辺り、被催眠性が弱いせいで、「自分は意志が強い」と思いこんでいる僕の身勝手な部分なのかもしれない。
しかし、だとしたら一体誰を責めればいいのだろう、何を変えればいいのだろう。大きな命題を突きつけられても答えは見つからない。自分なりの答えを見つけたときにまた一つ成長するのかな。
主人公の嵯峨敏也(さがとしや)は後に千里眼シリーズで岬美由紀(みさきみゆき)と行動を共にすることになるが本作はその松岡ワールドの最初の作品である。
【Amazon.co.jp】「催眠―Hypnosis」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マジックだけを唯一の趣味とする少年、椎橋彬(しいばしあきら)は15才のとき、世の中にも両親にも絶望したて家を飛び出すことになった。そして椎橋(しいばし)は生きるために年齢を偽り、唯一の趣味を生かして悪事に手を染めていく。
タイトルの通り「マジシャン」の続編である。「マジシャン」で天才マジック少女として登場した里見沙希(さとみさき)は椎橋を追う舛城(ますじょう)警部補の協力者として登場するが、残念ながら見せ場はあまり多くはない。この物語の中では、椎橋(しいばし)の社会や大人への嫌悪、次第に孤独を深めることに対する心の葛藤や、それを追跡する舛城(ますじょう)の同行に多くのページが割かれている。
椎橋(しいばし)は社会から認められないことの原因を、理解力のない大人のせいだと解釈することで自身を正当化する。
彼の家庭環境が、歪んだモノの見方を作り出したことが痛ましい。
椎橋(しいばし)の世の中に対する敵意は、世の中で葛藤を繰り返しながら生きている多くの人に、多少なりとも共感できるものではないだろうか。そして、そんな人には舛城(ますじょう)が椎橋(しいばし)言う言葉が強く胸に響くに違いない。
この物語は、椎橋(しいばし)と真っ正面から向き合う舛城(ますじょう)の行動を通じて、読者の生き方まで考えさせられる作品に仕上がっていると感じた。
【Amazon.co.jp】「イリュージョン:マジシャン第2幕」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
千里眼シリーズ。岬美由紀(みさきみゆき)が活躍する物語である。
混乱の続くイラクで日本人4名が人質に取られるという事件が発生。人質のPTSDを考慮した政府は元自衛官であり臨床心理士の美由紀(みゆき)を派遣することとなった。ところが、人質の救出のために行動した美由紀(みゆき)はイスラム教シーア派の部族アル=ベベイルと行動を共にすることになる。混乱の続くイラクの中で美由紀(みゆき)は戦争の無意味さを訴える。
この作品でも全作「ヘーメラーの千里眼」と同様。美由紀(みゆき)の自衛隊訓練時代の回想シーンが含まれている。両親との突然の別れ。救難ヘリのパイロットになるための訓練の様子が描かれていて、美由紀(みゆき)の過去がまた少し明らかになる。
毎度のことながら美由紀の生き方、考え方には少なからず影響を受ける。
残念ながら美由紀(みゆき)のような勇気と行動力を現在の僕は持ち合わせていないが自分自身を欺かない生き方は続けていきたいと思った。
そして美由紀(みゆき)が行動を共にするイラク人に語る言葉の中に日本人として誇るべき一端を見つけた。
物語の中で、美由紀(みゆき)はタイトルでもある「トランス・オブ・ウォー」について、常に理性を保つことが大切だと訴え、それが戦場で殺戮を繰り返さないための第一歩と説くき続ける。しかし、それが普通の人間ならば不可能に近いことも同時に教えてくれるのだ。
感情的にならずに理性を保つ。常に僕自身こころがけているつもりだがどんな状況においてもそれを保てるかと尋ねられれば全く自信がない。日々意識するしかないのだろう。
この物語はフィクションであるが、イラク国内だけでなくアメリカという国、そしてブッシュ大統領という人間についても作者の考えが強く主張されている。きっと、部分部分は真実なのだろう。曲げられる報道、アメリカよりの物の見方をせざるをえない日本という国に生きて、一人一人が溢れた情報の中から真実を見つける努力をしなければならないということだ。
ちなみに、この作品によって松岡圭祐の他の作品である「蒼い瞳とニュアージュ」と世界が繋がることとなる。今後の松岡ワールドの広がりにも大いに興味を喚起させる作品である。
【Amazon.co.jp】「千里眼 トランス・オブ・ウォー(上)」、「千里眼 トランス・オブ・ウォー(下)」
オススメ度 ★★★★★ 5/5
千里眼シリーズ。岬美由紀(みさきみゆき)のストーリー。今回は美由紀(みゆき)の航空自衛隊時代の先輩であり恋人でもあった伊吹直哉(いぶきなおや)一等空尉が訓練中に誤って基地内に進入して標的の中に隠れていた少年、篠海悠平(しのみゆうへい)を誤射してしまったことから始る。
前作「千里眼の死角」で若干ストーリーの設定的に行き過ぎた感があったため、このシリーズをしばらく手に取ることを憚(はばか)られていたが、結局番外編を除いた千里眼シリーズをすべて順番どおりに読破していることとなる。
そんなシリーズの中で、この作品は少し趣が異なり、美由紀(みゆき)の臨床心理士としての活躍よりも二等空尉としての活躍の方が多く、また過去の美由紀の自衛隊時代の話にも触れている点が非常に新鮮である。また伊吹直哉(いぶきなおや)にも同様に深い心理描写があり、2人の主役がいるようなシリーズの中では珍しい設定となっている。
事件の内容を確認する会議の中で伊吹(いぶき)が発する言葉に戦争の矛盾を感じる。
僕らは物心つく前の時代を教科書でしか知らない。そして教科書に載っている文字から当時を想像し、それを現実として受け止めてきたのだ。時代の流れの中で仕方がないにしても、可能な限り言葉で語り継ぐべきものなのかもしれない。
物語中、僕から見ると完璧としか見えない美由紀(みゆき)が多く葛藤を繰り返すシーンもまた考えさせられる。
結局人はいつになっても満足することはできないのだろうか。
物語終盤では自衛隊という組織の中で国を守るという自衛隊員の強い連帯感を感じる。そんな中、迷いのある隊員に向かって美由紀は叫んだ。
そして出撃前にこうも叫んだ。
僕らは国民の誇りなどすっかり忘れていないだろうか?
そして、そんな忘れ去られたものが「自衛隊」という、普段は近づきがたいフェンスの向こうに、日本の中に確かに残っているのだ。さらに、任務を遂行することでいつまでも青春に浸っていられる彼らをうらやましくも感じた。きっとそれは厳しい訓練を乗り越えたものだけが味わえるものなのだろう。もしまだチャンスがあるならそんな気持ちを味わってみたいものだ。そう思わせてくれる作品であった。数ある千里眼シリーズの中でも特にオススメの作品である。
【Amazon.co.jp】「ヘーメラーの千里眼(上)」、「ヘーメラーの千里眼(下)」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松岡作品ではもはやお馴染みの登場人物である。岬美由紀、嵯峨敏也に続く3人目のカウンセラーの登場というテーマのこの作品。その3人目のカウンセラーと言うのが少々コギャルちっくな一ノ瀬恵梨香という女性。内閣情報調査室の宇崎俊一が絡んでストーリーは進んで行く。岬美由紀や嵯峨敏也のようなクールさや知的な主人公を求めている人には少し抵抗があるかもしれない。今回は一ノ瀬恵梨香の一作目だからか、登場人物の人となりに多くのページが費やされたためストーリー的には少し物足りなかった。今後に期待する。
【Amazon.co.jp】「蒼い瞳とニュアージュ」
おススメ度 ★★★☆☆ 3/5
例によって飛躍したストーリー展開が今回はいつも以上に激しかった。人工衛星からマイクロ波を発射して地上の人を焼き殺す兵器が乗っ取られた・・という話から始まるのだが、残念ながら人間はここまで馬鹿ではない。核兵器をいくつかの国で開発されたからといって、すぐに核戦争になるわけではないのと同じ事で、一人の思惑で世の中の平和が壊れるなどということはあってはならない、そう、ここまで馬鹿なはずがない。そう感じた。だが、たしかに今後このまま兵器が発展して行けばこのような世界になる可能性もゼロではない。そういうことなのだろう。
ヒロインである岬美由紀の恋の行方は少し発展したのかもしれない。だが、彼女の1ファンとしてはこのまま一人で突き進んでもらいたいものだ。彼女の「強いゆえに孤独」というのは非常に共感できる部分がある。僕自身も弱音を吐かない人間なもので。
松岡圭祐作品を僕が読み続ける理由に、ストーリーの面白さはもちろん、いろいろな分野への興味を抱かせてくれるということもあげられる。今回のストーリー展開のなかで興味を持ったキーワードは「突沸」「ステファンボルツマンの法則」「GPS」などである。聞いた事あるけど「それってなんだっけ?」そう思う事柄を、この本を読んで調べたくなるのである。
【Amazon.co.jp】「千里眼の死角」






