オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校の弱小野球部にすごいピッチャー沢渡(さわたり)がやってきた。勝利の味と悔しさを知った野球ことで部員達とその周囲に少しずつ変化が起こり始める。
舞台となっているのは1985年である。「キャプテン翼」によってサッカーの人気が出てきたあの時代。弱小野球部の野球部員はおニャン子倶楽部に夢中だった。そんな、僕自身よりも10歳ほど上の世代の青春時代を描いた作品。
この時代に対する僕らのイメージは、この時代に世にでていた漫画やドラマのせいだろうか、「根性」とか「青春」とか、なんかどこか敬遠してしまうようなイメージばかり抱いてしまうが、時代は違えど、高校生などどの時代も似たようなものなのだろう。手を抜くことと女の子と仲良くなることばかり考えていたのかもしれない。
本作品で描かれる野球部員達も、そんな種類の人間。「努力」と「根性」はせずに目の前の人生を楽しく生きたいという考え方。それでもそんな彼らが、野球とその仲間を通じて、少しずつ変化していく様子を描いている。
夏休みのこの時期にぴったりな爽快な物語。
【楽天ブックス】「1985年の奇跡」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お台場にあるテレビ局が生放送中に武装集団によって占拠された。経理部に勤める女性社員の岡本由紀子(おかもとゆきこ)も事件に巻き込まれるが、恋人を救うために行動を起こす。
「女性版ダイハード」とか「女性版ホワイトアウト」と聞いていた本作品だが、感想はというとどちらとも言えない新しい物語という印象。なぜなら、ダイハードのブルースウィルスもホワイトアウトの織田裕二も賢かったのだが、本作品のヒロイン、由紀子(ゆきこ)は時々賢そうな素振りを見せることはあっても、プラスチック爆弾どころかパソコンも操作できないどこにでもいそうな無知な女性なのだ。
本作品は最初に由紀子(ゆきこ)の結婚願望から始まる。
これで多くの読者が彼女の味方になってしまったのだろう。相変わらず五十嵐貴久の読者を一気に物語に引き込む技術には感心するばかりである。
また、犯人グループの警察を欺くその手口も本作品の大きな魅力の一つである。五十嵐貴久作品に触れたのはこれで4回目だが、この著者の作品にハズレはないと感じた。
【楽天ブックス】「TVJ」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第2回ホラーサスペンス大賞受賞作品。
妻と子どもを持つ42際の会社員の本間(ほんま)は、部下の奨めによって出会い系サイトにはまりだす。そして、そこで「リカ」と名乗る女性と知り合う。
序盤は、本間(ほんま)が出会い系サイトで、毎日大量のメールを受け取る女性に、読んでもらうためのメールの書き方などを少しずつ学んでいく様が描かれている。
出会い系サイトは「悪」と、世間一般で言われているような単純な分類をせずに、都会に生きている孤独や不安に苛まれている人が、それを解消するための一つの手段として描く点が非常に好感が持てる。
しかし、そんな世の中の問題を描い視点に感心してられるのも序盤だけで、本間(ほんま)がリカという女性とインターネット上で出会うことによって、物語は一気にホラーの様相を呈してくる。
他人との関わりをあまりせずに来た人は、自分の中に自分だけのルールを蓄積していく。そういう人たちは時に、被害妄想の強く、一般的な考え方が通用しない。そして、法による刑罰を恐れずに、自分自身以外に守るものが一切ないからこそ心の抑止作用はまったく期待できない。そんな人間と関わってしまったときの恐怖が本間の様子から伝わってくる。
久しぶりに恐い本を読んだ。一時期流行ったホラーのようなただひたすら恐いシーンを並べるだけではなく、本当に恐い物語は必ずどこか真実味を帯びているのだ。
【楽天ブックス】「リカ」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
興信所の調査員であり主人公の宮本と東大生の加奈は、芸術の才能はあるものの学力は最低レベルの昌史を東京芸術大学に合格させるため、最先端の技術を駆使してカンニングの手助けをする。しかしその先には大きな罠が待ち構えていた。
前回読んだ五十嵐貴久作品である「交渉人」が物語の展開とともに世の中の問題点をうまく描いていたので、今回もそれを期待して手にとったのだが、今回は少し趣が違った。
最終的に宮本らは、10億円をかけて、自分たちを罠に嵌めたカジノのオーナーとポーカーで勝負することになる。そのポーカーのシーンで描かれるブラフ(はったり)による駆け引きやカードチェンジの枚数によってよそうされる相手の役など、ポーカーを知っている人には非常に面白いだろう。
上でも述べたように、僕が物語に求めているような、世の中の矛盾や問題点を見事に描く。というような内容ではなかったが、1ヶ月ほど前に読んだ同名の作品、楡周平の「フェイク」と同様に、多くのお金を持っている人からお金を奪おうという内容が共通している点が非常に興味を惹いた。
格差社会と呼ばれる今、どんなに努力しても豊かな生活を得ることはできず、才能を発揮して誰もやったことのない事業に手を出しても、いずれ法律に阻まれる。今、ジャパニーズドリームとされるのは、弱者を蹴落として大金を稼いでいる人からお金を騙し取ることなのかもしれない。
【Amazon.co.jp】「Fake」
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
三人組のコンビニ強盗が総合病院に人質をとって立てこもった。交渉人の石田修平(いしだしゅうへい)警視正が現場に到着するまでの間、遠野麻衣子(とおのまいこ)は現場を守る任務に就く。
海外では一般的となりつつあり、日本でも「踊る大捜査線」のシリーズ「交渉人 真下正義」などによって認知されつつある交渉人という職業。この物語では交渉人の第一人者とされる石田修平(いしだしゅうへい)が犯人との巧みな交渉を中心に展開されていく。
仕事でもプライベートでも、社会は人間関係を無視して生きることなどできない。多くの読者は物語中で展開する交渉術を自身の淀みない人間関係を構築するために役立てたいと思うことだろう。
また、捜査の合間に触れている警察の最新技術もまた非常に興味を掻き立てられる。
圧倒的なスピード感、一切中だるみすることなく終わりまで完結する作品である。そして、スピード感だけでなく現代社会を蝕み見過ごされている大きな問題もしっかりと物語中に取り入れているところを評価したい。
【Amazon.co.jp】「交渉人」






