2007年12月26日

「チームバチスタの栄光」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

バチスタ手術の天才外科チームで原因不明の術中死が立て続けに起こった。田口(たぐち)医師は真相の究明に挑むこととなる。

病院という舞台を扱ったミステリーである。昨今のよくある病院内の物語と同様に、本作品でも医者の上下関係や立場を重視する姿や、その閉鎖的な世界の現状が描かれている。本来、人の話を聞くことを得意とする田口がチームバチスタのメンバーから話を聞くことで真相をつかもうと努める。よくあるミそして、人の話を聞くことを仕事としている田口であるがゆえの目線が、個人的に本作品で印象に残った。

人の話に本気で耳を傾ければ問題は解決する。そして本気で聞くためには黙ることが必要だ。

同時に日本の医療の問題点も随所に散りばめられている。

文化人や倫理学者に発言させ、子供の臓器移植を倫理的、あるいは感情的に問題視させる。日本で子供の臓器移植を推進しようとすると足を引っ張る。米国で行われる手術は美談として支援し、日本では問題視する。同じ小児心臓移植なのに、おかしいと思いませんか


中盤から白鳥(しらとり)という真相救命の鍵を握る人物の登場以降、既にそこまでにも頻出していた専門用語やカタカナ言葉が一気に増える、その一方でいつまで経っても話の展開にスピードが感じられなかったのが残念である。「このミス」大賞の評価には疑問が残る。

【新しい用語】

拡張型心筋症
心筋の細胞の性質が変わって、特にに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気。

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投稿者 masato : 21:17 | コメント (0)

2005年10月30日

「パーフェクト・プラン」柳原慧

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第2回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

代理母として生計を立てる小田桐良江(おだぎりよしえ)と歌舞伎町で働く田代幸司(たしろこうじ)、赤星(あかぼし)サトル、張龍生(ちょうりゅうせい)の4人は投資アドバイザーである三輪俊英(みわとしひで)の息子である俊成(としなり)を誘拐して、ある犯罪計画を立てる。彼ら4人の計画通りに進むかに思えたところで物語りは大きく展開していく、という話。

物語はクラッキング、オンライントレードなど旬な題材を盛り込んだ、まさに今風な物語に仕上がっているが、物語自体の面白さ、深みは予想を超えるものではなかった。物語よりも新たな専門知識の風を吹き込んでくれたことが印象的である。

【新しい用語】

ソーシャルエンジニアリング
ネットワークの管理者や利用者などから、話術や盗み聞き、盗み見などの「社会的」な手段によって、パスワードなどのセキュリティ上重要な情報を入手すること。パスワードを入力するところを後ろから盗み見たり、オフィスから出る書類のごみをあさってパスワードや手がかりとなる個人情報の記されたメモを探し出したり、ネットワークの利用者や顧客になりすまして電話で管理者にパスワードの変更を依頼して新しいパスワードを聞き出す、などの手法がある。

ベルフェゴール(Belphegor)
ベルフェゴールは、人間界の結婚生活などをのぞき見る悪魔で、牛の尾にねじれた二本の角、顎には髭を蓄えた醜悪な姿をした悪魔とされる。しかし、それとは別に妖艶な美女として描かれることもある。何故か車輪付きの椅子、または寝室の奥で洋式便所に座った姿で現される。

七つの大罪
「七つの罪源」ともいわれ、「罪そのもの」というより、キリスト教徒が伝統的に人間を罪に導く可能性があるとみなしてきた欲望や感情のことを指す。伝統的な七つの大罪とは高慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲の7つを指す。

エニグマ
第二次世界大戦でドイツ軍が使用した暗号システム。ドイツ軍はエニグマに絶大の自信を持っていたため、 これが連合軍に解読されるとは夢にも思っていなかった。エニグマ暗号がもし解読されていなければ、 ノルマンディ上陸作戦や大戦での連合軍の勝利はずっと遅れたか、 あるいは、勝利そのものさえなかったかもしれない。

ES細胞
embryonic stem cellsの略語で、正式には「胚性幹細胞」という。不死化し、がん細胞のようにいくらでも永く増殖しつづける力をもっている。しかし、ヒトES細胞は、“人の生命の始まりである受精卵”を破壊して作り出すものだけに、いかに有用な細胞とはいえ、倫理的に果たして作製が許されるものかどうか、欧米を中心に真剣に議論されている。

ディスレキシア
学習障害の一つのタイプで、脳内の中枢神経系の機能障害。特徴としては、平均の知的能力があり、その他の障害が無いのにも関わらず、文字をすらすらと読むことができなかったり、スペリングをよく間違い、文字を書くことが苦手などがある。

ウィザード
本来「魔法使い」を意味する英語で、コンピュータの世界では稀に見る天才的技術者をウィザードと呼んだりもする。

サヴァン症候群
知能障害をもちながらも、例えば音楽や目で見た風景を写真と同じくらいに見事に再現できるなど、突出した記憶力を持つ人々のこと

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投稿者 masato : 22:21 | コメント (0)

2004年08月24日

「四日間の奇蹟」浅倉卓弥

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

第1回「このミステリーがすごい!」大賞金賞受賞作品。

指を失ったピアニスト如月敬輔と障害を持った少女、千織。二人に起こった奇蹟の物語である。正直このテの奇跡の話は良く有る。「このテ」というのがどんなテだかというのは、ネタバレになってしまうのでここで書くのは避けることにする。そんなよく使われる奇跡であるにも関わらず、この本は描写が非常にリアルで、こんな奇跡が起こってもおかしくないのではないかと思わせてくれる。つい「実際にどこかで起こったノンフィクションなのかな?」と思ってしまったぐらいである。
この本の魅力はそんなストーリーだけでなく、要所要所に読み直したくなる文章や言葉がある、読み終わった時にはページのスミがたくさん折れていた。

「心というのは肉体を離れても存在できるものなのか」
「人間だけが親子でもない別の個体のために命を投げだせる特別な存在なのではないか」

読んだあとにいろんな問いかけを自分に向けてみたくなる。

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投稿者 masato : 02:45 | コメント (0)