2009年01月05日

「ジウI 警視庁特殊犯捜査係」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警視庁特殊犯捜査係、通称SITに所属する二人の女性警察官、門倉美咲(かどくらみさき)と伊崎基子尾(いさきもとこ)。二人は都内で起きた人質篭城事件を期に、別々の道を歩むこととなる。

物語は2人の女性警察官の視点を交互に行き来する。2人は対象的な性格で、門倉(かどくら)は感受性豊かで犯人の気持ちにさえ共感できる優しい女性。そして、伊崎(いさき)は男顔負けの格闘センスで凶悪犯を何度も取り押さえてきたものの複雑な過去を抱える。

多くの読者はきっと、どこにでもいそうな優しい女性である門倉(かどくら)よりも、自分を追い込むように、闘いの場を求める伊崎(いさき)と、その性格の育まれた原因に興味を抱くのではないだろうか。

物語が進むにしたがって、未解決な誘拐事件の首謀者として、「ジウ」と呼ばれた国籍のない男の存在が浮かび上がる。共犯者がそのジウの不気味さを刑事に語って聴かせ場面がなんとも印象的である。

お金を払って物を買うという常識すら持たない人間が、お金を奪って一体何に使うのだろう。そう、法律を犯してお金を奪う強盗だって、「何かを手に入れるためにはそれ相応のお金を払う必要がある」という常識が根底にあるからこそお金を奪おうとするのだ。世の中のルールを犯す犯罪が人間らしさの表れであるという不思議な矛盾に気付かされた。

そして、「ジウ」にはその人間らしさがない・・・。語は本作品では完結せず次回作へと続く。お互い意識し合う門倉(かどくら)と伊崎(いさき)、そして「ジウ」。今後の展開を期待せずにはいられない。「ジウII」の文庫化が待ち遠しい。

【新しい用語】
黒孩子(ヘイハイズ)
中華人民共和国において、一人っ子政策に反して生まれたことを原因とする、戸籍を持たない子供達のこと。(Wikipedia「黒孩子」

【楽天ブックス】「ジウI 警視庁特殊犯捜査係」

投稿者 masato : 23:05 | コメント (0)

2008年12月31日

「北緯四十三度の神話」浅倉卓弥

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学で研究を続ける姉の菜穂子(なおこ)とラジオのパーソナリティを勤める妹の和貴子(わきこ)。2人は中学生のときに両親を交通事故で失い、妹の和貴子(わきこ)は2年前に恋人を失った。そんな2人の姉妹愛を描く。

回想シーンを交えながら姉の菜穂子(なおこ)目線で物語は進む。和貴子(わきこ)の亡くなった恋人が、菜穂子(なおこ)の元クラスメイトであったことが、二人の間の溝を広げていく。

それぞれ、自分の嫉妬や怒りの原因を探し、時には相手が悪くはないとわかっていてもお互いに怒りをぶつけずにはいられない…。1まわり大きな「大人」になるための大事な葛藤や衝突を本作品は描いている。

印象的なのは、自分の本当にやりたいことを見つけるために、自分の名前の書いたおもちゃ箱の中からいらないものを一つずつ捨てていって最後に何が残るか考える、という行動だろう。僕の場合、一体何が残るだろうか…。

人に嫉妬したことのない人などいない、人に八つ当たりしたことの人などいない。嫌な感情で、出来ればしたくない振る舞いだけど、きっとそういう行動をして、そんな行動を後悔して受け入れて、他人のそんな行動を許せる、優しく諭せる大人になるのだろう。

【楽天ブックス】「北緯四十三度の神話」

投稿者 masato : 21:24 | コメント (0)

2008年12月27日

「白夜街道」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警視庁公安部の倉島(くらしま)警部補は、元KGB所属のロシア人ヴィクトルが日本に入国したという情報を得る。

物語は「曙光の街」の5年後という設定である。「曙光の街」のエピソードの中で、ヴィクトルの強さを肌で感じ、平和に見える日本の中でも、裏では命をかけたやりとりがあり、だからこそ公安という仕事の必要性を肌で感じた倉島(くらしま)が、5年を経て成長した姿を本作品で見ることができる。

本作品でも物語の視点は主に、ヴィクトルと倉島(くらしま)で展開していく。前作では、日本を舞台にした闘いや本当の強さにあこがれる男達の人間物語であったが、本作品の半分近くがロシアでの物語りとなっていて、僕ら日本人にはあまりなじみのないロシアの文化や、その周辺国の歴史を中心に進められているため、ロシア、中央アジアの歴史、文化などに興味をかきたてられる作品に仕上がっている。

ヴィクトルと倉島(くらしま)、お互い多くの人間と同じように、自分の良心に背かないように生きていこうとしながらも、その生まれ育った国や文化が異なるために異なる考え方をするその人生の差と、その2人が合間見えて何かを感じ合う展開がこのシリーズの魅力なのだろう。

そしてロシアと日本を比較することで、日本にある安全がかならずしも永遠に続くものではない、言い換えるならいつ終わってもおかしくない貴重なものであることを訴えてくる。

すべての人々は平和で安全な日常の中で暮らす権利がある。だが、その日常は実に危ういバランスの上に成り立っていることを、倉島はすでに知ってしまった。

ただ、前作を読んでない読者にはやや理解しにくいのかもしれない。


【新しい用語】
バラ革命
2003年にグルジアで起こった、エドゥアルド・シェワルナゼを大統領辞任に追い込んだ暴力を伴わない革命。(Wikipedia「バラ革命」

オレンジ革命
2004年ウクライナ大統領選挙の結果に対しての抗議運動と、それに関する政治運動などの一連の事件の事。(Wikipedia「オレンジ革命」

ペチカ
ロシアで普通のスタイルの暖炉を想定しつつその全般を指す。日本では、特にロシア式暖炉のことをいう。(Wikipedia「ペチカ」

【楽天ブックス】「白夜街道」

投稿者 masato : 08:29 | コメント (0)

2008年10月26日

「ロンリー・ハート」久間十義

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松島早紀(まつしまさき)巡査部長とその上司の永倉(ながくら)警部補の所属する所轄警察署は、拉致事件と中国人によるキャバクラ強盗事件を扱っていたる。その一方で、落ちこぼれの高校生3人組みは日々の鬱憤をナンパなどで晴らしていた。

高校生三人組の生活と、警察の捜査を交互に見せることで、いつかこの2つの物語が重なっていくのだろうという期待を持たせる。そして、高校生三人組の目線でも、他の二人の行き過ぎた悪さに戸惑う博史(ひろし)、自分を他の二人のおろかな行為の尻拭いをしなければならない被害者としか思わない、亮(あきら)など常に目線は移り変わり、一見自分勝手にしか見えない人間にもそれぞれポリシーがあり言い分があるのだということを認識させられる。

そして、捜査の忙しさによって家庭のケアに時間を割けない永倉(ながくら)とその高校生の娘、絢子(あやこ)のやりとりも重要な要素となっていく。そして、キャバクラ強盗事件から、中国人組織と、日本国内における、中国人、日本の暴力団、警察組織の駆け引きにも触れられている。

そんな捜査の過程で刑事達は嘆く…

オレたちが若いときは犯罪は貧困から始まると教えられた。貧乏と差別。それに当てはまらないものは、犯罪以前の”異常”の範疇だったんだ。それがどうだ。いまはぜんぶが”異常”だよ。

終盤の、目の前で起こる出来事に戸惑い暴走する少年と、恐怖によって判断力を失った少女の行動を共にするシーンは個人的にはもっとも印象に残っている部分である。前半の展開の遅さにはややストレスを感じたが、後半は十分によみごたえがあった。

ただ、個人的には、松島(まつしま)巡査部長の女性被害者を守る立場と、犯人を逮捕したいという気持ちや、女性蔑視がはびこる警察組織内ゆえの葛藤をもっと表現して欲しかったと感じる。

【新しい用語】
ユトリロ
近代のフランスの画家。(Wikipedia「ユトリロ」

ニール・セダカ
アメリカ合衆国のポピュラー音楽の シンガーソングライター。森口博子のデビュー曲でもある「機動戦士Ζガンダム」のテーマ曲「水の星へ愛をこめて」などを作曲。(Wikipedia「ニール・セダカ」

ポール・アンカ
カナダ出身のポピュラー・シンガーソングライター。(Wikipedia「ポール・アンカ」

【楽天ブックス】「ロンリー・ハート(上)」「ロンリー・ハート(下)」

2008年10月15日

「サスツルギの亡霊」神山裕右

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
カメラマンの矢島拓海(やじまたくみ)は一枚の絵葉書を受け取った。その差出人は2年前南極で死亡したはずの義理の兄だった。期を同じくして拓海は南極越冬隊への仕事の依頼を受ける。

この作品の魅力は、その舞台を南極という地に設定している点だろう。その土地自体がすでに僕らにとっては未知の土地であるし、常に雪に覆われている点や、時に太陽さえも昇らないその場所はそれだけで十分に魅力的な素材となっている。しかし、本作品の仔細な描写と通じて、その生活の様子を知ることによって、南極という地に対して、僕ら一般の人間がどれほど偏見と幻想を抱いているか知るだろう。

昭和基地には郵便局、水道局、歯科を含めた病院施設など、人間が生活に必要なあらゆるものがあるのに、警察と刑務所だけがない。

物語は、南極へ向かう航路から不可解な事件が起こり始め、次第に2年前の義理の兄の死亡の裏に隠された真実に迫っていく、という流れであるが、個人的にはミステリーや謎解きの色合いよりも、南極という地特有の厳しさや不思議。そして、少人数社会ゆえに起こる諍いや各人が感じる存在意義などに焦点を当てているように感じた。

とはいえ、物語展開としての面白さが欠けているというわけでもなく、特に、鍵となる登場人物の背景がしっかり描かれていることに好感が持てる。そして、もちろん南極で過ごし、少しずつ義理の兄の生きてきた足跡に触れることによって変化する拓海(たくみ)の心情も描いている。

美しい景色をフィルムの中に閉じこめ、永遠に自分の物にしたいと思って、今までカメラを握ってきた。だが、誰かに何かを伝えたくて写真を撮りたいと思ったのは、初めてのことだった。

南極という地特有の出来事を要所要所に小道具として盛り込んでいるため、ややイメージしにくい部分もあるが、本作品を通じて得られる知識や、歓喜された好奇心という点では十分に満足のいく作品である。


【新しい用語】
ルッカリー
ペンギンやアザラシが、みんなで集まって子育てをする場所。(Weblio「ルッカリー」

アデリーペンギン
中型のペンギン。南極大陸で繁殖するペンギンはこの種とコウテイペンギンのみである。(Wikipedia「アデリーペンギン」

サスツルギ
風が作る雪の模様こと。

タイドクラック
潮の干満により海氷が動いてできる割れ目。

インマルサット
国際移動衛星機構(International Mobile Satellite Organization)という名称の組織で、 4つの静止衛星を運用して船舶や地上のインマルサット端末へさまざまな通信サービスを提供いる。(Wikipedia「インマルサット」

太陽フレア
太陽の大気中に発生する爆発現象。(Wikipedia「太陽フレア」

デリンジャー現象
電離層に何らかの理由で異常が発生する事により起こる通信障害の事。(Wikipedia「デリンジャー現象」

参考サイト
南極観測のホームページ
南極-ANTARCTICA

【楽天ブックス】「サスツルギの亡霊」

投稿者 masato : 00:46 | コメント (0)

2008年10月10日

「千里眼 優しい悪魔」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第9作。スマトラ島自信で記憶を失った女性を治療するためにインドネシアに趣いた岬美由紀(みさきみゆき)はそこで、世界を操る闇の集団メフィスト・コンサルティング・グループのダビデと出会う。因縁の戦いが再び始まる。

例によって、時事ネタや、感心するような小話を随所に散りばめて展開しており、物語の面白さ以外にも楽しめる作品に仕上がっている。

本作品は、小学館の千里眼シリーズからたびたび登場するメフィスト・コンサルティング・グループのダビデと「千里眼 ファントム・クォーター」などで登場するジェニファーレイン、そして「千里眼 シンガポールフライヤー」で表に出てきた人の心を信じない集団、ノン=クオリアの間で繰り広げられる争いを描いており、角川文庫のシリーズの大きな区切りとなるような構成となっている。

中盤から利害が一致したことによってダビデと美由紀(みゆき)は行動を供にして、ジェニファーレインの悪事を阻もうと試みる。美由紀(みゆき)はいつのもとおりその正義感から、そして、ダビデは、かつての部下だったジェニファーレインを思ってか、仕事としてか…、今まで、そのおどけた表情の裏に隠されたダビデの本性だが、本作品ではダビデ目線で描かれるシーンもあり、過去のシリーズの流れとは少し違った空気を感じる取ることができるかもしれない。

きみが過食症の女性のカウンセリングをしているとき、地球の裏側では五人の子供が飢えによって死んでいる。

本作品では、登場人物だけでなく、過去の事件などが何度か引用される。僕自身この千里眼シリーズは小学館と角川文庫で10年近く、ほぼすべてを読んでいるが、それでもその引用される登場人物や事件の前後関係が思い出せない。このあたりに松岡圭祐のおごりを感じてしまう。

物語的にはやや物足りない印象も受けるが、今後の展開に対する期待を感じさせる作品である。

参考サイト
メフィストフェレス
ドイツにて民間に伝えられる悪魔。(Wikipedia「メフィストフェレス」

タリホー
アメリカ合衆国のメーカーであるU.Sプレイング・カード社によって製造されているトランプのひとつ。バイスクルと並ぶ同社の人気商品。(Wikipedia「タリホー」

マホガニー
センダン科の広葉樹で、古くから知られる世界的な銘木のひとつ。

参考サイト
エレベーターのキャンセル技

【楽天ブックス】「千里眼 優しい悪魔(上)」「千里眼 優しい悪魔(下)」

投稿者 masato : 14:07 | コメント (0)

2008年10月02日

「ミッキーマウスの憂鬱」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
夢を支える仕事がしたいという思いから、ディズニーランドでの勤務が決まった青年、後藤大輔(ごとうだいすけ)の職場での姿を描いている。

松岡圭祐の初期の作品ということで、ずいぶん前からタイトルだけは耳にしていたが、なかなか触れる機会がなく、今回ようやく書店で目に止まり読むことができた。

本作品はもちろん、ディズニーランドを扱った作品である。物語中にはたくさんのアトラクション名が出てくるため、ディズニーランドに何度も足を運んだことのある人には非常に楽しめる作品かもしれない。残念ながら僕は2度しか行ったことがないので、そのイメージが湧いたのは、シンデレラ城、カリブの海賊、ビッグサンダーマウンテンなどわずか数点で、ディズニーシーに話が及ぶとまったくイメージできない、という具合であった。とはいえ物語はディズニーランドの舞台裏もかなり詳細に描いているので、夢は夢のままでとっておきたかった、と後悔する人もいるのかもいれない。

物語中でも、夢の世界の舞台裏に入ったことで、現実を突き付けられ、失望する後藤(ごとう)の姿が描かれる。

夢のディズニーキャラクターを演じる者たちの葛藤。そんなものが存在するなんて、できることなら知りたくなかった。夢は夢のまま、そのほうがどれだけよかったかわからない。

それでもやがて後藤(ごとう)は、周囲の人に支えられて、夢を支える仕事に自分の存在意義を見出していく。

物語の過程で描かれる、キャストたちの着付けの様子や、来場者の夢を壊さないためにキャストに強いられるさまざまなルールに、ディズニーランドの成功の秘訣を見ることができる。

また、物語の中で描かれる複雑な人間関係や、そこで発生する諸問題によって、東京ディズニーランドという、世界で唯一ディズニーカンパニーが経営権を持たないディズニーランドという企業としての利害関係についても理解を深めることができるだろう。

夢の舞台の裏側を描いたという展では本作品を読む意義はあっても、物語としてはややありきたりな印象を受けた。

【楽天ブックス】「ミッキーマウスの憂鬱」

投稿者 masato : 23:42 | コメント (0)

2008年09月28日

「ストロベリーナイト」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
溜池近くの植え込みから発見された惨殺死体から、捜査一課の警部補、姫川玲子(ひめかわれいこ)はその遺体損壊の必要性に気づく。類まれなる勘によって真実に近づいていく玲子の前に現れた謎の言葉は「ストロベリーナイト」。

最近では特に珍しくもなくなったが、本作品も、事件解決へ向かうとともん、警察組織内の縄張り争いや、刑事同士の足の引っ張り合いなどもしっかり描いている。

何か過去のトラウマを抱えていると思われる玲子(れいこ)の言動、そして、次第に浮かび上がる死体遺棄事件の関連性。それでいて読みにくさを感じさせないテンポや思わず笑ってしまう喜劇タッチも随所にちりばめられている面白さにも事欠かない。

…死後の損壊は、なんのため?主に、死体損壊は、なんのため?
「れれ、れ、玲子ちゃん」
…死体損壊は、死体損壊は……。
「玲子ちゃん、ワシの、この気持ち、受け止めて……」
…死体損壊は、死体損壊は……。
「玲子ちゃん、抱いてェーッ」
「やかましいッ」

前半部分で期待値は絶頂に達するが、残念ながら後半はあっけないほどあっさり事件が解決。やや拍子抜けである。

本作品では玲子(れいこ)の真実を見抜く力は、犯罪者に近い嗜好回路ゆえと結ばれている。しかし、それならば読者にも、犯罪者が犯罪者に走らざるを得なかったと納得させるような、苦悩や葛藤の描き方をして欲しかった、というのが個人的な感想である。

とはいえ総合的に評価すれば、今までにない刑事物語という印象を受けた。徐々に明らかになる玲子の過去と刑事になるまべのいきさつのくだりは、少々出来すぎな感もあるが、全体的には新しい警察物語で、読んでも損にはならないだろう。

【新しい用語】
ネグレリアフォーレリ
正式名はフォーラー・ネグレリア。温かい淡水中で増殖し、鼻の粘膜から脳に侵入する。その後1日‐2週間のうちに急激に悪化する。脳組織を破壊する。日本では1996年に鳥栖市で発生した。

二号警備
警備業務の種類。
一号警備
事務所、住宅、興行場、遊園地等における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
二号警備
人や車両の雑踏する場所またはこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し防止する業務
三号警備
運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
四号警備
人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務

ロボトミー手術
前頭葉切断の手術。難治性の精神疾患患者に対して熱心に施術されたが、現在は精神疾患に対してロボトミーを行うことは禁止されている。

【楽天ブックス】「ストロベリーナイト」

投稿者 masato : 21:38 | コメント (0)

2008年09月27日

「カディスの赤い星」逢坂剛

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第96回直木賞受賞作品。

1975年、楽器メーカーを得意先に持つPRマン漆田亮(うるしだりょう)はスペインから来日したギター製作家から、一人の男を捜すように依頼される。その調査はやがて独裁政権末期のスペインへと繋がっていく…。

以前より気になっていた逢坂剛(おうさかごう)という作家に触れるためとりあえず直木賞受賞作品から手に取った。

物語の舞台は日本とスペインに渡っているのだが、物語中では終始スペイン文化が溢れている。日本を舞台とした序盤では、メインとなる調査のほか、漆田の恋愛やPRマンという仕事の様子にも触れられていて、刑事物語と似た雰囲気を感じる。

一方舞台をスペインに移した後半では、独裁政権下のスペインの様子がよく描かれていて、冒険物のような絵がかれ方をしている。スペインというどちらかというとクールな印象を抱くヨーロッパの国が、実はわずか30数年前までヨーロッパ最後の独裁政権と呼ばれていたというのは新しい驚きであり、ヨーロッパ各国の時代背景をほとんど知らないことに気づかされる。

やや内容を詰めすぎた感は否めない。もう少しコンパクトにまとめられたのではないか、とも思うが、多くのスペインの都市の名前が挙がり、余裕があればGoogleストリートビューなどで町並を感じながら読むのもいいだろう。スペイン好きにはたまらない一冊かもしれない。


【新しい用語】
イサーク・アルベニス
スペインの作曲家・ピアニストであり、スペイン民族音楽の影響を受けたピアノ音楽の作曲で知られる。(Wikipedia「イサーク・アルベニス」

セヒージャ
カポタストのこと。

ソレア
苦悩や孤独を表現するフラメンコの代表的な歌のこと。(Wikipedia「フラメンコ」

種痘
天然痘の予防接種のこと。(Wikipedia「種痘」

ETA
バスク語で「バスク祖国と自由」を意味する言葉 Euskadi Ta Askatasuna を略したものであり、バスク地方の分離独立を目指す急進的な民族組織。(Wikipedia「ETA」

参考サイト
VentureView「「広報」と「広告」、その根本的な違いとは」

【楽天ブックス】「カディスの赤い星(上)」「カディスの赤い星(下)」

投稿者 masato : 11:42 | コメント (0)

2008年08月23日

「仇敵」池井戸潤

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
地方銀行である東都南銀行で庶務行員として働く恋窪商太郎(こいくぼしょうたろう)は基は都市銀行のエリート行員。商務行員としての優雅な日を満喫しながら、時々若い行員に助言を与えて日々を送る。そんな恋窪(こいくぼ)を中心とした銀行の出来事を描いている。

池井戸潤(いけいどじゅん)の経験からリアルに描かれた銀行を舞台とした物語。

序盤は地方銀行の一般的ともいえる業務の様子を通じて、地域に根ざした企業と銀行員の物語を描いている。大企業を相手にできない地方銀行は、行員たちが必死で歩き回って融資先を探すしかない。経営者と親しくなることによって、経営に関して的確な助言を与えられることもあれば、逆に融資先として適当かどうかを客観的に判断できなくなることもある。

そして一方では、かつては壮大な夢を語って自信に満ちていた経営者たちが資金繰りに苦しんで会社をたたんだり、時には親友さえも裏切って会社を守ろうとする。

恋窪(こいくぼ)の仕事を通して見えてくる、夢や希望や努力だけではどうしようもない人生の厳しさが感じられる。

そして後半は、都市銀行の幹部たちが絡む陰謀へと焦点が移っていく。人の弱みに付け込んだり、意図的に会社を倒産させて設けようとするその企みの、細かい部分まで理解しようとするのは、その専門性ゆえにやや難しい印象も受けたが、その雰囲気を理解していくだけでも楽しめることだろう。

【新しい用語】
ベンチャー・キャピタリスト 将来性のある企業を発掘し、株式投資することで成長する可能性のある企業に資金を提供し、さらに事業を伸ばすためにアドバイスを行なう。

【楽天ブックス】「仇敵」

投稿者 masato : 23:36 | コメント (0)

2008年08月15日

「ララピポ」奥田英郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
格差社会の底辺で生きる6人の男女を描いている。

人に頼まれたら断ることができないために徐々に泥沼にはまっていく男。作家という栄光にすがって生きていたらいつのまにか官能小説しか書いていない男。そのほかにも対人恐怖症のフリーライターや風俗専門のスカウトマンなど、僕にとってはあまり縁のない類のかなり刺激的な日常を描いている。

この物語の主人公はみんな自分の才能をみかぎってしまったひとばかり。そして、普通に会社で働いている人たちに気後れして生きていて、だからこそどんどん世間に認められる生き方からはずれていく。そして追い詰められた生活をしているからこそ人を思いやる余裕を持てない。それはもはや不幸のスパイラルである。

互いに尊敬できない人間関係は、なんて悲惨なのか。

そんな希薄な人間関係の中で生活するから、寂しく、風俗などのつかの間の人との触れ合いにわずかなお金と時間を費やして、更なるどの沼へと落ちていくのだろう。

それでもこの物語を読みながら感じたのはこんなこと。平和な日本では、プライドさえ捨てれば生きていくことはできる、ということだ。ホームレスとしてでも、体を売ってでも。

また、人間は意図するしないにかかわらず同じような境遇の人間と近付いていくのだとも改めて思った。お金のある人はお金のある人同士。そしてこの物語のようにお金も希望もない人たちは、お金も希望もない人となぜか近づいていく。だから、視野を広げるには無理をしてでもその人間関係の自然の法則に逆らうしかない。

最後に裏ビデオ女優がが嘆く言葉が心に響く。

世の中には成功体験のない人間がいる。何かを達成したこともなければ、人から羨まれたこともない。才能はなく、容姿には恵まれず、自慢できることは何もない。それでも、人生は続く。この不公平に、みんなはどうやって耐えているのだろう。

こういう人間が世の中に存在するということを僕たちはもっと意識しなければいけないのかもしれない。「一生懸命生きれば幸せになれる。」などという言葉は彼らにとっては幻想でしかないのだ。

ふと魔が差したことを発端として人生を転がり落ちるそのスピード感はもはや奥田英郎の最大の売りと言えるかもしれない。「最悪」「真夜中のマーチ」で存分に繰り広げられたその展開力は本作品でも健在である。


【楽天ブックス】「ララピポ」

投稿者 masato : 14:11 | コメント (0)

2008年08月07日

「容疑者xの献身」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第134回直木賞受賞作品。

一人娘と暮らす靖子(やすこ)のもとに、別れた夫である富樫(とがし)が現れる。口論の末に富樫(とがし)を殺してしまった靖子(やすこ)は、隣にすむ石神(いしがみ)の指示でアリバイ工作をする。

本作品の面白さは、犯罪を犯して犯罪を隠蔽しようとする靖子(やすこ)や石神(いしがみ)といった犯人側の目線をメインに描きながらも、その偽装工作の詳細が最後まで明らかにならない点である。

そして、そんな数学者である石神の考え抜かれた偽装工作に、これまた数学者でありドラマ化された「ガリレオ」の主人公としても名をはせた湯川学(ゆかわまなぶ)が挑む。湯川(ゆかわ)の追及によって少しずつ危機感を抱く石神。2人の天才の対決がこの物語の見所であるが、それだけでは終わらないのが東野圭吾ワールドである。最後は読者の想像のさらに上を行ってくれることだろう。

直木賞受賞作品ということでかなり期待したのだが、残念ながら、過去の東野作品の面白さの範囲を出ない。むしろ前回読んだ「さまよう刃」や名作「白夜行」のほうがはるかに強烈な物語だった。

【新しい用語】
エルデシュ
ハンガリーの数学者。

四色定理
いかなる地図も、隣接する領域が異なる色になるように塗るには4色あれば十分だという定理。(Wikipedia「四色定理」

【楽天ブックス】「容疑者xの献身」

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2008年07月29日

「1985年の奇跡」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校の弱小野球部にすごいピッチャー沢渡(さわたり)がやってきた。勝利の味と悔しさを知った野球ことで部員達とその周囲に少しずつ変化が起こり始める。

舞台となっているのは1985年である。「キャプテン翼」によってサッカーの人気が出てきたあの時代。弱小野球部の野球部員はおニャン子倶楽部に夢中だった。そんな、僕自身よりも10歳ほど上の世代の青春時代を描いた作品。

この時代に対する僕らのイメージは、この時代に世にでていた漫画やドラマのせいだろうか、「根性」とか「青春」とか、なんかどこか敬遠してしまうようなイメージばかり抱いてしまうが、時代は違えど、高校生などどの時代も似たようなものなのだろう。手を抜くことと女の子と仲良くなることばかり考えていたのかもしれない。

本作品で描かれる野球部員達も、そんな種類の人間。「努力」と「根性」はせずに目の前の人生を楽しく生きたいという考え方。それでもそんな彼らが、野球とその仲間を通じて、少しずつ変化していく様子を描いている。

ただ、あいつが見せてくれた夢があまりに美しかったから、それがやっぱり夢だとわかった瞬間、どうしていいのかわからなくなっただけなのだ。

夏休みのこの時期にぴったりな爽快な物語。

【楽天ブックス】「1985年の奇跡」

投稿者 masato : 22:35 | コメント (0)

2008年07月26日

「ガラス張りの誘拐」歌野晶午

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
連続婦女誘拐殺人事件が発生した。佐原を含む刑事たちの努力によって事件は終結したかに見えたが不振な点を残す。そして第二の事件が起きる。

物語の目線である佐原(さわら)は娘との関係に悩む刑事である。彼を中心として2つの事件が描かれていて、それぞれの事件は単純な刑事物語のように感じられるが、少しずつ不振な点を残して最終的に一つの大きな意図が見えてくる。

特に大きなテーマがあるわけではなく、数ある刑事事件を扱ったミステリーの中に、一つの回答例を挙げているような印象を受けた。ただその意外性だけに頼りすぎてしまった感が否めない。例えば佐原と娘の関係など、もうすこしリアルな心情描写、読者が感情移入できるような表現が盛り込まれていたならもっと強烈な何かを感じることができたのではないだろうか。

【新しい用語】
ハッブルの法則
天体が我々から遠ざかる速さとその距離が正比例することを表す法則。(Wikipedia「ハッブルの法則」

【楽天ブックス】「ガラス張りの誘拐 」

投稿者 masato : 21:29 | コメント (0)

2008年07月19日

「それでも、警官は微笑う」日明恵

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第25回メフィスト賞受賞作品。

刑事の武本(たけもと)と麻薬取締官の宮田(みやた)は違う組織に所属しながらも一人の麻薬常習犯の起こした事件で遭遇し、事件の全貌を追求するために協力しあうことになる。

物語の目線の大部分は刑事である武本に置かれている。武本は強い正義感と曲げることのない信念を持った、どちらかというと頑固で融通の利かない古い刑事という描かれ方をする。彼のモットーとしている父親の台詞が印象的だ。

「石橋を叩いて渡る」ということわざがある。しかし、ただ叩くだけでなく爆薬まで使って橋を試し、結果自ら叩き壊してしまう奴もいる。そして、「やっぱり壊れた」と、橋を渡らなかった自分の賢さに満足する。それは俺から見れば、ただの臆病者だ。

そして武本だけではどうしても事件の謎解きだけに焦点があたってしまっただろう警察内部の登場人物に、潮崎(しおざき)という、これまた個性的な人間をペアとして組ませることで、本作品の大きな魅力の一つとなっている。

潮崎(しおざき)はその由緒ある家系のせいで、警察上層部さえも扱いに困る存在。しかしそれゆえに本人は自分の実力を正当に評価されないという悩みにぶつかる。家系に恵まれているからこそ陥る葛藤。「シリウスの道」の新入社員、戸塚英明(とつかひであき)を思い出してしまったのは僕だけだろうか。悪い環境に悩む人間もいれば、いい環境に悩む人間もまた存在するのである。

物語は序盤から宮田ら麻薬取締官と武本ら警察官がたびたび衝突し、ここでも警察の高慢さや柔軟性の乏しさが言及される。

お前らポリ公は、専門性なんて言い方をすりゃぁ格好もつくだろうが、実際はただの融通の利かない分業制だ。しかも内部で妙な権力闘争や意地の張り合いがある。そうして捕まえられるものすら、取り逃がしちまう。

正義を全うするという共通の目的を持ちながらも、その方法も権力の範囲も異なる麻薬取締官と警察。少しずつお互いを理解し認めていくその過程をリアルに描くからこそ、現実の問題点が浮き彫りになるのだろう。

この情に厚く職務に誠実な男は、誠実であるがために、どれだけ辛く悔しい思いをしてきたのだろうか。しかもそうさせたのは他ならぬ警察、自分たちなのだ。

さらに、個人的に印象に残っているのは、潮崎(しおざき)が情報を得るために行った掲示板への書き込みが、特定の個人への攻撃へと発展し、潮崎(しおざき)がきっかけを作った自分の行動を悔やむシーンである。

自分を正義だとでも思っているんですかね。見当違いも甚だしい。正義を語って自分の悪意を正当化しているだけなんだ。なのに…僕という人間は…悪意の行方がどこに行き着くのか、すでに知っていたのに。…

深い。物語に取り入れられているすべてが深くしっかり描かれている。本作品だけでなく「鎮火報」についても同様だが、僕にとって魅力的な物語を創るために必要な、人の心に対する深い洞察力と、現実に起こっている問題を読者に伝える優れた表現力。日明恵という作者にはその2つの能力がしっかり備わっていると感じた。またすべての作品を読まなければならない作家が増えてしまったようだ。

【新しい用語】
警察法六十三条
警察官は、上官の指揮監督を受け、警察の事務を執行する。(警察法

参考サイト
Wikipedia「動物の愛護および管理に関する法律」
Wikipadia「保税施設」

【楽天ブックス】「それでも、警官は微笑う」

投稿者 masato : 22:08 | コメント (0)

2008年07月03日

「クローズド・ノート」雫井脩介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学で音楽サークルに所属する堀井香恵(ほりいかえ)は部屋のクローゼットの中で一冊のノートを見つけた。小学校の先生の日記で、そこにはその先生の日常や悩みが描かれていた。

沢尻エリカの「別に」騒動で映画化時に話題になっていたこの作品。僕はむしろ雫井脩介らしくないラブストーリーテイストな作品ということで注目していた。刑事事件やミステリーに定評のある作家なので、ある程度ハズレ作品であることも覚悟して手に取った。

物語は大学生である加絵(かえ)の友人関係や恋愛、アルバイトなど日常を描いている。内容として特に大きなテーマがあるわけでもないが、加絵(かえ)の文房具屋でのアルバイトの風景から万年筆というもに非常に興味を掻き立てられた。

多くの読者は物語中盤でその結末に気づくことだろう。ありふれた結末とありふれた泣かせの手法。他の読者がこれをやると途中で醒めてしまうのだが、本作品についてはしっかりと泣かせてもらうことができた。

新しい用語
アウロラ
イタリアの文具メーカー

スーベレーン
文具メーカーペリカンの万年筆の1シリーズ

サンテグジュペリ
フランスの作家・飛行機乗り。郵便輸送のためのパイロットとして、欧州-南米間の飛行航路開拓などにも携わった。読者からは、サンテックスの愛称で親しまれる。

マーク・トウェイン
アメリカ合衆国の作家、小説家。「トム・ソーヤーの冒険」の作者。

参考サイト
アウロラ
星の王子さまファンクラブ

【楽天ブックス】「クローズド・ノート」

投稿者 masato : 14:21 | コメント (0)

2008年06月28日

「イコン」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
有森恵美(ありもりめぐみ)というアイドルのイベントの最中に殺人事件が起きた。警察は事件の解決に動き出すが、肝心の有森恵美(ありもりめぐみ)というアイドルの実態を関係者の誰も知らないという不思議な事態に戸惑う。

本作品はインターネットが日常になる以前の1990年代中ごろを舞台としているため、キーとなるオンラインのやりとりはもちろん「インターネット」ではなく「パソコン通信」とである。そして、そのコミュニケーションはほんの一部の人間のみが楽しむものとして描かれている。

そして、有森恵美(ありもりめぐみ)というオンライン上から広まったアイドルの奇妙な存在を描くことで、アイドルという存在の変化、ファンにとってアイドルという存在の意味を考えさせられる。

物語の二つの主な視点である安積(あづみ)は事件を担当する所轄の刑事として捜査を行い、偶然第一の犯行に居合わせた少年課に勤める宇津木(うつぎ)は、旧友である安積(あづみ)の仕事に対する姿勢への嫉妬と、初めて触れる文化への興味から事件を調べ始める。

宇津木(うつぎ)は実在が確認できていないのにアイドルが多くのファンを抱えることに戸惑うが、自分が若かったころのアイドルもテレビを通じて顔が見れて声が聞けただけで、実際にあったことがあるわけではないのだと、思い至る。

そして真実に迫る過程で、新しい文化と向き合ったときの、とても柔軟とは言い切れない対応に走る警察組織の脆さも描かれている。容疑者としてネットアイドルの名前を挙げただけでその人物をタレント名鑑から探そうとした警視庁刑事の大下(おおした)の行動などはその典型と言えるだろう。

刑事たちはどんな怨恨の話を聞かされようが平気だ。だが、、非現実的な話にはそっぽを向いてしまう傾向がある。警察というのは、法律で縛られている世界だ。そして、法律というのは、きわめて現実的なものなのだ。

特異な事件を中心に、変化する若者文化を変化するメディアへと関連付けて描いている。80年代にベストテンやトップテンなどの番組に代表されるようなアイドルをもてはやした番組が90年代に入ってなくなり、アイドルがゴールデンタイムから姿を消す、そんな文化の変化を説得力のある形で説明しており、ただの刑事物語とは一線を画す作品に仕上がっている。

本作品は「時代が今野敏に追いついた」のキャッチコピーの帯とともに店頭にひだ積みされていた1冊。確かに本作品の内容は、初版発行の1998年よりも、インターネットが人々の生活に広まった今だからこそ理解される作品なのかもしれない。


【楽天ブックス】「イコン」

投稿者 masato : 21:55 | コメント (0)

2008年06月18日

「サヨナライツカ」辻仁成

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
入籍を控えた東垣内豊(ひがしがいとうゆたか)は、バンコクで真山沓子(まやまとうこ)という女性と出会う。日本で待つ婚約者、光子(みつこ)に対する罪悪感を感じながらも、豊かは沓子(まとうこ)に惹かれて行く。

名作と呼ばれながら読んでいない本が、僕にもたくさんある。本作品も自分にとってはそんな中の一つで、タイトルだけはかなり前からたびたび耳にしていた。

一言で言うなら、時代を超えたラブストーリーと言えるだろう。中盤までは1975年の出会いを描き、中盤以降は2000年以降の物語となっている。「二股」とか「不倫」と言うと汚らわしいイメージがあるが、「立場や体裁を気にせず誰かを好きになる」と言うとなんだか美しく聞こえてくるから不思議である。そして、終盤には涙を誘う展開が待っている。

「世界の中心で愛を叫ぶ」など、この類の本と出会うと必ずといっていいほど僕は思うことであり、今回も同様に言わせてもらうが、涙を誘うだけの物語を創るのはそれほど難しいことではない。悲しい人生をその主人公に感情移入できる形で描けばいいのだから。涙を誘ったうえで心の中に何か大きなものを残してこそ傑作といえるのだと僕は思うのだ。残念ながらこの作品は、涙を何ccか外に出しただけで心の中にはほとんど何も残らない作品だった。

しかしそれではあまりにも悲しいので、本作品の肝となる言葉を引用する。

人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトとにわかれる。
私はきっと愛したことを思い出す

【楽天ブックス】「サヨナライツカ」

投稿者 masato : 23:50 | コメント (0)

2008年06月17日

「名もなき毒」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

連続無差別毒殺事件が世間を騒がしていた、そんなとき、大企業の社内報編集部に勤める杉村三郎(すぎむらさぶろう)を含めた社員たちは、アルバイトである原田(げんだ)いずみの感情的過ぎる行動に悩み解雇することを決意する。

世の中で大きな連続殺人事件が起きているとはいえ、多くの人は自分は無関係なのだと、どこか他人事で過ごしている。なぜなら誰もが多少なりとも悩みを抱えているからだ。娘の喘息のこと、母親の介護のこと、職場の人間関係など、世間的に見れば小さな悩みでも本人にとってはそれが悩みの大部分を占める大問題なのである。

それでも物語の視点となる杉村(すぎむら)は、毒殺被害者の孫で女子高生の美知子と出会うことによって、それは他人事ではなくなる。そして関係者と会話を重ねるうちに気づいていく。世の中の多くの場所に、人の体を蝕む物質が、人の心を蝕む空気や環境が存在するということに。この物語はそれを総称して「毒」と読んでいる。名もなき、正体不明の「毒」だ。

そして、そんな「毒」はふとした瞬間に人の心に悪意を芽生えさせ、さらには悪へと走らせる。本来ならそれを周囲の人間が気づいて止めてやらなければならないのだろう。

正義なんてものはこの世にないと思わせてはいけない。それが大人の役目だ。なのに果たせん。我々がこしらえたはずの社会は、いつからこんな無様な代物に落ちてしまったんだろう。

でも、都会で生きている僕らは周囲に無関心で、塀を一枚隔てた先で何が起きているか、誰が住んでいるかを知らない。悪意を咎めてくれる友達も、大人もいなければ、その悪意は犯罪という形の悪へと変わっていき、不幸の連鎖が始まる。

なんで、僕だって少しは楽をしたいと思わなくちゃならないんだろう。少しどころか山ほどの楽をしている若者が、この世の中には掃いて捨てるほどにいるのに。何も願わなくても、すべてかなっている人たちが大勢いるのに。

この物語は世の中の何かが悪いと訴えているわけではない、しかし、世の中には犯罪因子がいくつも存在するという事実を突きつけてくる。ふとしたきっかけで世間を騒がす事件に変わる。僕らが普段目を向けていないだけだ。

宮部みゆきらしい視点と展開。悪くはないが、期待値はもっと大きいのだ。

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投稿者 masato : 00:56 | コメント (0)

2008年06月15日

「セリヌンティウスの舟」石持浅見

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
年齢も職業もバラバラの6人は石垣島のダイビング中に起きた遭難事故によって絆を深める。しかしそれから数ヶ月、そのうちの1人である米村美月(よねむらみつき)が自殺を遂げた。彼女は仲間を裏切ったのだろうか。鎮魂のために、その死の疑問点について残された5人が考え始める。

物語の大半は、ダイビングメンバーの1人で最年長者の三好(みよし)の部屋の中でのみ展開することとなる。小さな世界の中で、知性あふれる人たちが問題や謎を解決するために言葉を交わして真実に近づいていくのが石持浅見作品の特徴である。今回の物語も登場人物は死んだ美月(みつき)を除けばわずか5人で、そのうち真実への近づくための牽引役となるのは、どちらも冷静で論理的思考回路を持つ磯崎義春(いそざきよしはる)と吉川清美(よしかわきよみ)である。

発端は、なぜ美月(みつき)は自殺の際に青酸カリの入った瓶のふたを閉めることができて、なぜその瓶は転がっていたのか。ということである。小さな不審点に対して異常とも思えるこだわりを持ってすべての可能性を検討する5人。そのやや強すぎるこだわりと、すべての人間が合理的な行動をするはずだという考え方の2つの不自然さにさえ目をつぶれば、石持浅見作品は大いに楽しむことができる。

そして往々にしてこの著者の物語の結末には、ゾクリとするような瞬間が用意されている。だからこそ僕は、やや広がりに欠けるという不満をこの著者の世界観に感じながらも、繰り返し作品に手を伸ばすのだろう。また、今回は「セリヌンティウス」という言葉も僕の目には新鮮に映ったのだ。

わからない。セリヌンティウスには、メロスがどうやって帰ってきたのかがわからない。

今回も石持浅見らしいラストが用意されていた。残念ながら僕の心をわしづかみにするほどのものではなかったが…。

【楽天ブックス】「セリヌンティウスの舟 」

投稿者 masato : 21:50 | コメント (0)

2008年06月05日

「破滅への疾走」高杉良

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大手自動車メーカーとその労働組合の間の抗争を描いている。

何万人もの社員を抱えるほどの大企業であれば、そこに勤める人にとってはそれは世界も同然であり、生活の中の大きな割合を占めることだろう。だからこそ人事権を持っている人間の決定が人生をも左右する。そうやって大企業の中の恐怖政治は進んでいくのだろう。

そしてそんな企業の中で、各幹部たちは、各々の権力や情報を武器に、社内の人間関係を渡り歩く。人によっては企業や社員のために働く立派な人間もいるが、一方で、自分の財産や権力を守るためという人間もまた少なくない。

本作品は、労働組合の長となり、企業の人事権にも影響を及ぼすまでに力をつけた塩野(しおの)という男を主に描いている。自らの権力に執着するその行動はにわかには信じられないほどの徹底ぶりだが、これが現実に起こった日産自動車の労働組合との抗争をモデルにしているというから興味深い。そして、物語の登場人物の多くも実在した人間をモデルに描かれており、物語の軸となる塩野(しおの)も現実に存在した塩路一郎(しおじいちろう)に由来する。だからこそ単にフィクションとしては片づけられないリアリティを醸し出すのだろう。

物語自体は大きな山や谷もなく進められており、客観的な目線で終始展開するため登場人物の深い心情描写などはされていない。そのため詳細に描写された歴史年表を見ているような感覚であり、読者を引き込む巧みな描写力などとはとてもいえないが、一つの大企業内で起こる問題点やそれに対する対策や駆け引きなど、おおいに興味を喚起させられる作品だった。


【楽天ブックス】「破滅への疾走」

投稿者 masato : 13:11 | コメント (0)

2008年05月29日

「少年の輝く海」堂場瞬一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
瀬戸内海の瀬戸島に山村留学にきた中学二年生の鳥海浩次(とりうみこうじ)は、娯楽のない島の生活に飽き飽きしていた。それでも同級生の水谷計(みずたに)が海に沈んだ財宝の地図を見せてから、退屈な生活が動き出す。本作品はそんな島で過ごす少年たちの生活を描いている。

僕の半分も生きていない中学二年生の彼らだが、いろいろな悩みを抱えて日々の生活を送っている。同じクラスの女の子と口を喧嘩したり、沈没船を探して海に潜ったり、と、大人になった僕らから見れば、彼らの悩みはとても「悩み」と呼べるような類のものではなく、彼らの経験する大事件も些細な出来事に見えてしまうのだが、14年しか生きていない彼らにとっては、その経験のうちの何個かが一生心に残る大切な思い出になるのだろう。

そんなふうに、自分の中学生時代を思い出して、少し懐かしく、少しそんな彼らに嫉妬させてくれるような作品であった。もう何年も前に読んだ氷室冴子の「海が聞こえる」と似た匂いを感じた。

時には肩の力を抜いたこんな読書も悪くない。

新しい用語
サルベージ
沈没船の引揚作業。海難救助。(はてなダイアリー「サルベージ」

【楽天ブックス】「少年の輝く海」

投稿者 masato : 23:51 | コメント (0)

2008年05月25日

「迷走人事」高杉良

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
離婚後、大手アパレルメーカーに復職した竹中麻希(たけなかまき)は、広報部の戦力としその力を発揮する。社内の人間関係や将来に悩む女性視点で企業の内部を描いている。

物語の中には大きな山場もなく、一つの企業の日常が淡々と展開されていく。社長の交代劇や業務提携に伴うマスコミ対策などの、上場企業ゆえの業務のほか、訪問販売大手との提携、カタログ販売への進出などアパレルメーカーの企業戦略も盛り込まれている。

また業務以外では、竹中麻希(たけなかまき)と次期社長と目される松岡浩太郎(まつおかこうたろう)そして、麻希(まき)に思いを寄せる営業のホープ、秋山弘(あきやまひろし)の3人の人間関係が軸となって展開する。

ラストは若干物足りなさも覚えたが、アパレルメーカーなど、自分のかかわりのない業界に大しても十分に興味を掻き立ててくれた作品である。


【楽天ブックス】「迷走人事」

投稿者 masato : 00:38 | コメント (0)

2008年05月17日

「告白倒産」高任和夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大手百貨店の総務部長の倉橋(くらはし)は百貨店の業務に関連して警察に任意同行を求められる。執拗な取調べに対して対応するうちに次第に、会社の対応が厳しくなっていく。

序盤の警察での取調べシーンでは、百貨店の総会屋との付き合いについて書かれている。


わたしらつきあっている範囲の総会屋は、べつに怖くないんですよ。怖いのは暴力団でね。警察は頼りにならないが、総会屋はそんなときおさえてくれる。はっきりしているのは、こんな便利な人間を雇っておけるなら、二千万円なんて安いもんだ。役立たずの社員二人分だ。

理想ばかりでは大きな会社の経営維持的ないというのは事実なのだろう。どこまでが罰せられる犯罪で、どこからが見逃してもらえる犯罪なのかを探りながら、世の中を渡っていくしかないのだろう。それは言い換えれば、警察を含めた世の中のさじ加減でそれらの罪はいつでも「罰せられる罪」に変わるのである。

世の中に認知され、そのイメージが大きく業績を左右するような企業は、その判断ミスが命取りになる。ライブドア事件や、最近では日本教職員組合の会合を拒否したプリンスホテルの対応を思い出した。

百貨店業界の裏を濃密に描いた経済小説を期待して読み始めたのだが、残念ながら期待に応えてくれたのは最初だけで、後半はあまり個性のないミステリーで終わってしまった。高任和夫という作家自体、経済小説を思わせる題名の書籍を多く出版しているようだが、この内容を考えると、今後もその作品に手を伸ばすかどうかは悩むところである。

【楽天ブックス】「告発倒産」

投稿者 masato : 11:35 | コメント (0)

2008年05月09日

「ギャングスター・レッスン」垣根涼介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
渋谷で若者たちを率いていたアキはチーム解散後、裏金窃盗集団の一員になると決めた。柿沢(かきざわ)、桃井(ももい)という2人の犯罪プロフェッショナルの下で、訓練と必要な知識を学び始める。

時間的には「ヒートアイランド」と「サウダージ」の間に位置する。アキを描いたこの作品は垣根涼介のほかの作品に比べて、社会問題や人間の内なる悩みなどのテーマ性が薄いが、気軽に読める手軽さがある。

表の顔を裏の顔を持つアキを含む3人。法律の及ばない生活だからこそ、口にしたことは必ず守ろうと努力する姿勢と、いつでも冷静に物事に対応できる者が信用を勝ち取る。戸籍を売っているホームレスや武器の密輸を手伝うコロンビアの日本人たちとのエピソードから見えるのは、結局どんな状況にも共通する人間の重要な部分である。

アキ以外にも、未来に悩むヤクザの柏木(かしわぎ)や、コンパニオンのバイトをしているアケミにも目線が移る。肩で風を切って歩くヤクザも、綺麗な顔をしたコンパニオンも、みんな理想と現実のギャップに悩みながら生きている。読んでいるうちに世の中のすべての人が可愛い憎めない存在に思えてしまうから面白い。このどこか爽快な感じは垣根涼介作品に共通する空気である。

【楽天ブックス】「ギャングスター・レッスン」

投稿者 masato : 23:28 | コメント (0)

2008年05月08日

「償い」矢口敦子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホームレスとなった元医者の日高は、たどり着いた町で、一人の少年と出会う。その少年は13年前に日高(ひだか)が命を救った人間だった。時を同じくしてその町では社会的弱者を狙った連続殺人事件が起こっていた。日高は刑事に依頼されて真相の解明に一役買うことになる。

本作品では幼いころに日高(ひだか)が命を救った少年、真人(まさと)と日高(ひだか)が人間の生き方についてお互いの考えを言い合う展開が多く描かれている。複雑な家庭環境の中で育ったがゆえに、少し風変わりな人生観を持つ真人(まさと)、そして、その過去ゆえに自分の送ってきた考え方を「正しい」とは言い切れない日高(ひだか)。正解のないそんな問いかけが最後まで物語を包んでいる。

特に、この作品の中で繰り返し行われている問いかけは、命を救うことが必ずしも本人にとっていいことなのか?ということである。結果的に不幸になるのであればあえて命を繋ぎ止めないどころか、時にはその命を終わらせてあげることも必要、と主張する真人(まさと)の考え方を、日高(ひだか)は否定することができない。

そして、日高(ひだか)は連続殺人事件と真人(まさと)の関連に気づき始める。

私はとんでもない過ちを犯したのだろうか。善だと信じた行為が、悪への加担だったのだろうか。

ホームレスとなった日高(ひだか)の過去が少しづつ明らかになるとともに、真人(まさと)の家庭環境も少しづつ見えてくる。

興味深いテーマではあるが、ラストは、そんな少しづつ物語を覆ってくる不穏な空気に見合う結末とは言いがたい。読むタイミングが異なればもっと感動できたのかもしれない。

【楽天ブックス】「償い」

投稿者 masato : 23:27 | コメント (0)

2008年05月01日

「扉は閉ざされたまま」石持浅見

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大邸宅で行われた同窓会の最中に、伏見亮輔(ふしみりょうすけ)は新山(にいやま)を事故に見せかけて殺した。しかし、参加者の中には並外れた洞察力を持つ碓氷優佳(うすいゆか)がいた。

登場人物は7名のみで、ほとんど殺人の舞台となる大邸宅のみで物語が完結する王道のミステリー。犯人である伏見(ふしみ)が新山(にいやま)を殺すところから物語は始まり、そのまま犯人である伏見(ふしみ)の目線で展開していく。

同窓会参加者の優佳(ゆか)がずば抜けた洞察力の持ち主であることも早い段階で描かれるため、多くの読者が早々に物語の最後を推測できることだろう。最終的には優佳(ゆか)が真相を解明し、犯人が伏見(ふしみ)であることに気づくのだろう、と。

だからこそ、多くの読者は伏見(ふしみ)の言動を注意しるのだ。一体どこで優佳(ゆか)が真相を突き止めるためのボロを出すのか、と。僕もそうやって物語を読み進んでいったが、残念ながら優佳(ゆか)の気づいた小さなてがかりに僕自身は気づくことができなかった。(もちろん小説ゆえになせる業だと信じたいところだが)そして、そんなミステリーの王道ともいえる物語展開に加えて、本作品は臓器提供という未だ日本では広まっているとはいえない文化についても言及しており、個人的にはその考え方も物語に負けず劣らず印象的であった。

久しぶりにミステリーらしいミステリーを読んだ。石持浅見作品は本作品で3作目の読了になるが、いずれも非常に狭い範囲で物語が完結する点が特徴的である。例えば「月の扉」はハイジャックされた飛行機と飛行場のみで物語が終わり、「水の迷宮」は水族館という狭い建物の中だけであった。もう少し広く現実世界をうまく取り込んだ作品もあるのであれば読んでみたいものだ。

【楽天ブックス】「扉は閉ざされたまま」

投稿者 masato : 23:46 | コメント (0)

2008年04月30日

「上陸」五條瑛

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
会社勤めを辞めた兄貴分の金満(かねみつ)、若い前科者の安二(やすじ)、本国の家族のために働く不法滞在者のアキム。3人は共同生活を送りながら建設現場で働く。そんな3人の少し変わった生活を綴った。

格差社会の底辺とも言えそうな3人の生活。そこには僕らが知らない出来事が毎日のように起こり、そして彼らには彼らのルールと常識がある。

特に、不法滞在者であるアキムの生活や人間関係の中には、アジア諸国の人たちの生活が見える。そして本国へお金を送金するつもりで日本に密入国したが、日本にある多くの誘惑の中で、信仰をなくし、質素な生活から離れていく不法滞在者が多く存在するこエピソードが描かれていて、なぜ不法滞在者が犯罪に走るのかがわかるような気がする。彼らは悪ではなく、弱いだけなのだ。

どんな金でも、金は金です。それがなければ生きていけない。ボクも家族も

日本で生まれ育った人は、弱ければ誰かに頼って生きようとするだろう。しかし、彼らは、犯罪に走ることしか知らない。彼らの育った国がそういう文化だったのだから。そんな海外の事情とあわせて、日本がアジアの特殊な存在であることも改めて感じさせてくれた。

俺は家族に話すよ。東の果てにはいろいろなものがあった。見たこともない物で溢れていた。俺の言葉じゃ説明できないくらい、いろいろあったんだよって、そして、いろいろな人間がいたよって。いい人も悪い人もいた。でも俺は幸運だった。
【新しい用語】
HALAL
コーランの用語で、 「許された」または「合法の」という意味。HALAL食品は、アラー(神)により食べることを許されたもので、HALAL食品を摂ることは すべてのイスラム教徒の義務とされている。

【楽天ブックス】「上陸」

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2008年04月15日

「邂逅の森」熊谷達也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第131回直木賞受賞作品。

大正から昭和の始め。マタギという生き方をした松橋富治(まつはしとみじ)という男の人生を描く。

この時代を扱った物語に触れる機会が少ないためか、物語中の多くの出来事が新鮮に映った。なによりも富治(とみじ)とその仲間の猟の様子は非常に細かく描写されており、山や獣といった、現代ではないがしろにされているものに、多くの読者が関心を抱くだろう。

山の神の存在を心のそこから信じているわけではないが、山の神を怒らせるようなまねを敢えてしようとも思わない。急速に近代化へと進む時代の中で、富治(とみじゅじ)の考え方も少しずつ変化していった。ただ、それでも何か説明できない大きな力が働いているのだという思いは捨てきれない。そんな不思議な感覚は、現代に生きている人間の中にもあるのではないだろうか。

現代人が忘れてしまった大切なものの存在を訴えかけてくるような作品である。

【楽天ブックス】「邂逅の森 」

投稿者 masato : 23:35 | コメント (0)

2008年04月05日

「曙光の街」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金もなくロシアの冬を過ごしていた元KGB諜報員ヴィクトルの元へ、昔の上司で今はロシアンマフィアとなったオギエンコが、日本のヤクザを一人殺してほしいという依頼をする。ヴィクトルは仕事のために日本へ渡り、また日本の公安もその情報をキャッチする。

物語中には3人の目線が用意されている。日本にやってきたヴィクトルと、日本の公安警察の倉島(くらしま)、そして、ターゲットとなるヤクザの下に就いている暴力団の兵藤(ひょうどう)である。

国のための諜報活動、プロ野球、3人はいずれも、かつては何かに本気で取り組んでいた男。それが時の流れとともに、惰性で生きるようになっていた。そんな彼らだが、ヴィクトルという男の生き方に触れることで、少しずつ「自分が求めていた何か」に気づいていく。

そしてその過程で日本とロシアが比較される。日本は不況と言えども飢えることなどない。不幸な生い立ちといえども生きていける。あらゆる面で日本という国で生きている人は甘えた考えを持っているということが繰り返し描写される。実際、ヴィクトルや、娼婦として日本に連れてこられたエレーナの生き方は日本人の想像できる範囲を超えていて、逆にかっこよくすらある。

ヴィクトルも何度も日本の未来を嘆く。

平和な国だ。だが、自ら血を流して手に入れた平和ではない。生まれたときから与えられていた平和だ。そうした平和は人を腐らせる。危機感を失った国民。本当の危機がやってきたとき、対処する方法がなくてただ慌てふためくだけに違いない。

実際その通りなのだろう。この国は見栄さえ張らなければ何もしなくても生きていける国。そんな国に生きて危機感を常に持っているというほうが無理なのかもしれない。しかしそんなぬるま湯のような生活に浸っていても何か自分の内なるものを磨くような生き方は出来るはず。ヴィクトルと退治した、公安の倉島(くらしま)や暴力団の兵藤(ひょうどう)が見せた変化がそのためのヒントなのかもしれない。

【楽天ブックス】「曙光の街 」

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2008年04月01日

「TVJ」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お台場にあるテレビ局が生放送中に武装集団によって占拠された。経理部に勤める女性社員の岡本由紀子(おかもとゆきこ)も事件に巻き込まれるが、恋人を救うために行動を起こす。

「女性版ダイハード」とか「女性版ホワイトアウト」と聞いていた本作品だが、感想はというとどちらとも言えない新しい物語という印象。なぜなら、ダイハードのブルースウィルスもホワイトアウトの織田裕二も賢かったのだが、本作品のヒロイン、由紀子(ゆきこ)は時々賢そうな素振りを見せることはあっても、プラスチック爆弾どころかパソコンも操作できないどこにでもいそうな無知な女性なのだ。

本作品は最初に由紀子(ゆきこ)の結婚願望から始まる。

あの頃までは、本当に心からお祝いが言えたと思う。幸せになってね、と祈ることが出来た。ちょっと待ってよ、と思うようになったのは、次の年の六月から秋にかけていきなり四人の友達が結婚した時だ。

これで多くの読者が彼女の味方になってしまったのだろう。相変わらず五十嵐貴久の読者を一気に物語に引き込む技術には感心するばかりである。

また、犯人グループの警察を欺くその手口も本作品の大きな魅力の一つである。五十嵐貴久作品に触れたのはこれで4回目だが、この著者の作品にハズレはないと感じた。

【新しい用語】
参考サイト
金嬉老事件

【楽天ブックス】「TVJ」

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2008年03月30日

「孤狼 刑事・鳴沢了」堂場瞬一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1人の刑事が自殺し、1人の刑事が失踪した。鳴沢了(なるさわりょう)と今敬一郎(こんけいいちろう)は失踪した刑事を探すことを命じられる。

今回、「寝不足書店人続出?」というキャッチの帯に魅せられ、こうやって「刑事・鳴沢了シリーズ」を初めて手に取った。しかし、本作品中の事件が原因か、それとも、堂場瞬一(どうばしゅんいち)という作家の個性なのか、とりたてて物語にスピード感が感じられなかった。むしろ地道な捜査を続けて真実に少しずつ近づいていくという印象を受けた。

鳴沢了(なるさわりょう)という刑事にもそれほどの魅力は感じなかった。むしろ、昔の相棒とされる小野寺冴(おのでらさえ)という元女性刑事に魅力を感じたのは、単に自分が男だからだろうか。

物語の中でいくつか警察内部の派閥が出てくる。派閥に属して自分の派閥の人間をトップに推すからこそ、警察内部で安心して仕事に取り組むことができるという考えを持つ刑事と、派閥などくだらないと考える鳴沢(なるさわ)や今(こん)。もちろんそこに明確な答えなどなく、著者も鳴沢(なるさわ)も「こうあるべき」と考えを読者に押し付けないところに、好感が持てた。

そして、終盤の鳴沢(なるさわ)のように「今の自分の行動は正しいのか」と葛藤する姿は、読者に共感を与えるために必須な人間味であり、この辺が「刑事・鳴沢了シリーズ」の魅力の一つなのではないだろうか。

今回、刑事・鳴沢了シリーズに初めて触れたのだが、どうやら本作品はシリーズの中では4作目であり、中途半端なところから読み始めてしまったようだ。物語中の会話などから推し量ると、本作品の前の3冊にも大きな動きがあったのだろう。機会があったらそちらも読んでみたい。ただ、本作品に限っていえば「寝不足書店人続出?」というのは褒めすぎだろう。

【楽天ブックス】「孤狼 刑事・鳴沢了」

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2008年03月21日

「イントゥルーダー」高嶋哲夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
コンピュータ開発のスペシャリストである羽嶋浩司(はしまこうじ)は、ある日、数年前に別れた女性から松永慎二(まつながしんじ)という自分の知らない息子の存在を告げられる。しかもその息子はひき逃げにあって生死の境を彷徨っているという。会話さえしたことのな息子は一体事故の直前に何をしていたのだろう。

著者の高島哲夫の別の作品である「原発占拠」と同様に、この作品でも原子力発電所という人類のエネルギー減でありながら危険性のある施設をテーマにしている。主人公である羽嶋浩司(はしまこうじ)が一流のエンジニアであるため、原発に肯定的な考え方を持つ。しかし、物語中では「完璧なものなどありえない」という、科学への過信を警戒するような意見が散りばめられているから。「では最終的に物語はどこに落ち着くのか」と読者の興味を喚起するのだろう。

科学でなんでもわかるのはけっこうだが、それがどうしたと言いたいね。冬は寒い、夏は暑い。昔からそうだった。それに反して、冬でも夏でも同じように暮らそうとするから無理が生まれるんだ。
絶対に安全でなければならない。百パーセントの安全性。そんな技術は存在しない。だから原発には反対すべきなんだ。

新しい事実を知るにつれて少しずつ羽嶋(はしま)の心の中で形を成して息子・慎二の人間性。それは少しずつ羽嶋(はしま)の内面にも変化が起こす。

部長の優しさは、相手をいたわるのではなく、能力のない者をあわれむ優しさでした。それって、百倍も傷つくってことご存知でしたか

高島哲夫らしく、映像が浮かんでくるようなスピード感あふれる物語展開は本作品でも健在。ただ、後半はやや二転三転させすぎた感がある。あまりにも物語をもてあそび過ぎると真実味が薄れ、「つくられた話」感が強調されてしまうという印象を受けた。

高島哲夫は本作品でも一貫して一つの立場を取っている。技術は人類を幸せにするもので破壊するものではない。チェルノブイリなどのような出来事は、利益に走った権力者やうぬぼれた科学者の心が招くものだ。そういう考え方である。

原発に対して僕自身は否定の立場も肯定の立場も取っていないが、原子力発電によって電力を供給しておいて、「ほら、あなた方が使うから原発は必要なんだ」と訴えるのはいかがなものかと思う。僕らがそのエネルギーを利用しているのは、原発が必要だという意思の現われではなく、単にそこにエネルギーがあるからなのだ。本当に原発の是非を問うには国民投票を行う以外にないのだろう。

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2008年03月04日

「査察機長」内田幹樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
新米機長の村井知洋(むらいともひろ)は成田発ニューヨーク息の敏で社内のチェックを受ける。チェッカーは仲間から恐れられる氏原政信(うじはらまさのぶ)であった。

物語の視点は、新米機長である村井(むらい)と、ベテラン機長である、大隈(おおすみ)の間を行き来する。僕を含めた読者には日付変更線を日常的に超える環境にいる人間の考え方がとても新鮮に感じることだろう。

著者にとっては日常的なのだろうが、コックピットのやりとりなどのすべてが興味深く読むことができた。美しい飛び方を追求しようとする村井(むらい)と、乗客の年齢からほんのわずかな揺れにまで気を使って飛行機を飛ばすべきという氏原(うじはら)。僕の人生にほとんど接点のない生き方であるにもかかわらず、そんな中にも個々の仕事へのこだわりが見えるところが面白い。

特別引き込むような文章力は感じられず、淡々と物語が進んでいくが、航空会社で働いていたという題材だけでそれを補うだけの物語になるから面白い。


【新しい用語】
マッキンリー山
北米最高峰の山、標高は6194m。

バシキール航空2937便空中衝突事故
2002年7月1日深夜、ドイツ南部の上空において、ロシア民間旅客機のバシキール航空2937便と国際宅配会社DHLの貨物機DHL611便が空中衝突し、墜落した事故である。(Wikipedia「バシキール航空2937便空中衝突事故」

杉原千畝(すぎはらちうね)
ナチスによる迫害からおよそ6000人にのぼるユダヤ人を救ったことで世界中に広く知られている。(Wikipedia「杉原千畝」

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2008年02月20日

「空中ブランコ」奥田英朗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第131回直木賞受賞作品。

やたらと注射をしたがる妙な精神科医伊良部一郎(いらぶいちろう)と彼の病院を訪れる患者の物語の第2弾。

全体で5編から成り、それぞれブランコで飛べなくなった空中ブランコ演技者。尖ったものが怖くなったヤクザ。送球ができなくなったプロ野球の三塁手。羽目をはずしたい医者。ネタに困った恋愛小説家。という患者を描いている。それほど重いテーマというわけでもなく、伊良部一郎(いらぶいちろう)という主人公がそれほど魅力的なわけでもない、それでも読者を引き込むテンポの良さは、奥田英雄の作品には常にあり、今回も例外ではない。

しかし、ただのドタバタ劇という感じがして、途中、このまま読み終わって、自分の中になにも残らない「読書のための読書」で終わりそうな予感を抱いたりもしたが、ラストの恋愛小説家を描いた物語にはメッセージを感じた。

小説家を描いているだけに、きっと奥田英朗自身の過去なども反映していることだろう。周囲に流される人が多いからいいものが評価されない。大したものでなくてもメディアが飛びつけば売れるし、評価される。いいものを作っても評価されるわけでもなく売れるわけでもない。かといって売れるものを作っても自分の中の満足感は満たせない。そんなクリエイターなら誰もが感じたことのあるジレンマを見事に描いている。

恋愛小説家の友人のフリーの編集者が言う台詞が印象的である。

この国で映画の仕事をやっているとこんなのばっかだよ。ここで報われないとこの人だめになる、だから神様お願いですからヒットさせてくださいって天に手を合わせるんだけど、それでも成功することの方がはるかに少ない。わたしは彼らを前にして思うよ。せめて自分は誠実な仕事をしよう、インチキだけには加担すまい、そして謙虚な人間でいようって──

作者でなく、編集者という作品と作者を客観的に見れる立場の人間の台詞なだけに見事に世の中の矛盾を言っているように感じる。それぞれの人たちが自分の目、自分の耳で、いいモノわるいモノを判断できればこんなジレンマはなくなるはずなのに、日本という国の国民はその意識が極端に低い。それは国民性として受け入れるしかないが、自分のモノに対する姿勢については考えさせられる。

直木賞という評価も最後の作品に因るところが大きいのではないだろうか。

【新しい用語】
イップス
精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のことである。本来はパットなどへの悪影響を表すゴルフ用語であるが、現在では他のスポーツでも使われるようになっている。(Wikipedia「イップス」

キュレーター
美術館の学芸員。


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2008年02月18日

「しゃぼん玉」乃南アサ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
目的もなく、引ったくりを繰り返して放浪していた伊豆見翔人(いずみしょうと)は九州、宮崎の山奥の村にたどり着く。田舎の人の温かさに触れることで起こった翔人(しょうと)の心の変化を描いた物語。

実際には世の中の大半がこの物語の翔人(しょうと)のように、誰かを頼ることもなければ、頼られることもなく孤独で希薄な人間関係の中に生きているのかもしれない。そして、頼れる人がいないから、自分のことでいっぱいになり、他人の痛みに築かなくなるのだろう。

こういう一生はきっと最後の最後まで、このままなのだ。どこかで弾けて消えるまでの間だけ、ふわふわと漂っているより仕方がない。いずれにせよ、そう長いことではない。何分も漂い続けられるしゃぼん玉がないのと同じように。

田舎の温かい人たちの気持ちに触れて生活しているうちに、すこしずつ今までと違った感情が芽生え始める。このままの空気で終わってしまうのかと思い始めた終盤に、急展開が待っていた。

世の中には見た目はしっかりとした大人であるにもかかわらず、「この人には罪悪感というのがないのだろうか」と思うような、信じられないような行動を平気でする人がいる。しかし、いつかそんな人が自分のそんな行動に気づいて、「あれはひどい行動だった」と過去を思いかえすとき、それまで積み重ねてきた行動の記憶は、一生消えない罪悪感となって襲ってくるのかもしれない。そんなふうに思った。

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投稿者 masato : 22:47 | コメント (0)

2008年02月04日

「脳男」首藤瓜於

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第46回江戸川乱歩賞受賞作品。

連続爆発犯のアジトで2人の男が争っていた。警察が逮捕した1人の男、鈴木一郎(すずきいちろう)は、痛みを感じない男であった。彼は連続爆弾事件の犯人なのか。医師、鷲屋真梨子(わしやまりこ)は男の精神鑑定を担当することとなる。

真梨子(まりこ)は鈴木(すずき)の奇妙な行動の中から、知識として持っている特異な能力を持った人間たちの記憶をたどり始める。未だ謎に包まれている人間の脳。そして、世界に数人しかいないサヴァン症候群の人間たちの能力を物語の素材として、「ではこんな人間もひょっとしたらいるのではないか」と真意実を帯びて伝わってくる。

部屋の隅でじっとしているなどというのではない。文字通り微動だにしないのだ。瞬きもしなければ、指をほんの一ミリ動かすこともな。だれかが手を添えて腕をあげさせるとそのまま腕を上げたままの姿勢でおり、直立させて背中を押すと壁に当たるまで真っすぐ歩き続ける。

一度見ただけですべてのものを暗記してしまうという能力。その並外れた能力は、人間としての生活を送りにくくなる障害とともに現れる。この物語で最大の謎となっている、鈴木一郎(すずきいちろう)の能力も、それに類するもので、物語の中で鷲屋真梨子(わしやまりこ)が鈴木(すずき)の能力を見極めようとするその過程で、実は普通の人間こそがものすごい多様な判断を無意識のうちにしていることに読者は気づくことだろう。

きみはきのう町を歩いているときにすれ違った車のナンバーを全部いえるかね。すれ違った人間の服装をすべて記憶しているかね。生まれつき脳にこの簡単な認識のパターンがそなわっていないせいで、日常生活においてさえなにが必要でなにが必要でないかがわからない人間がいたとしたらどうなると思うかね。

物語中で鈴木一郎(すずきいちろう)が見せるうらやましくなるような記憶力。しかし、それは日常生活を送る上では不要なものである。正常な人間は何が必要な情報で何が必要でない情報なのかを瞬時に判断しているのである。コンピューターが人間の脳に近づくまでにはまだまだ長い年月がかかる。ひょっとしたら永遠にそんな日は来ないのかもしれない。改めて人間の脳について考えさせられる。

【新しい用語】

壊死性筋膜炎
筋肉を覆っている筋膜という部分に細菌が侵入し、細胞を壊死させてしまう病気

バビンスキー反射
2才未満の幼児には普通に見られる脊髄反射。成長後もこの反射が見られると錐体路障害が疑われる。

サヴァン症候群
知的障害や自閉性障害のある者のうち、ごく特定の分野に限って、常人には及びもつかない能力を発揮する者を指す。(Wikipedia「サヴァン症候群」

後見人
財産に関するすべての事項で、制限能力者に対する法定代理人となる者で、かつ、親権を行う者(親権者: 父母、養親)でないものをいう。(Wikipedia「後見人」

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2008年01月27日

「感染」仙川環

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第1回小学館文庫小説賞受賞作品。

ウィルス研究医の仲沢葉月(なかざははづき)は、外科医の夫である、仲沢啓介(なかざわけいすけ)とその前妻との間の子供が誘拐されたという連絡を受ける。遺体として帰ってきた子供と、失踪した夫啓介(けいすけ)。葉月(はづき)は啓介(けいすけ)の行動の本当の意味を知るために調査を始める。

葉月(はづき)と啓介(けいすけ)という、どちらも医療のスペシャリスト。結局意思疎通はできていなかったがどちらも大奥の人を救いたいという信念を持っていて、当然のように日本の医療制度や日本人の医療への関心の低さに不満を持っている。そんな世の中への問題提起と物語のストーリー展開とのバランスがいい。

教えてくれよ。どうして子供の臓器移植は認められていないんだ。そもそも、どうして臓器を提供してくれる人が少ないのか。俺にはわからない。脳死になったら判定ミスでもない限り、生き返ったりはしない。それなのにどいつもこいつも心臓や肝臓を灰にしてしまう。俺のこの手は何のためにある?俺は手術をうまくやってのける自信がある。心臓を提供してもらえれば、何人の命を救えたか…

物語中には著者の思う、今の医療に対する問題が随所にちりばめられている。この本を読んだ人の中の、ほんのわずかな割合の人でも、ドナーカードを持とうと思ったり、日本の医療に対する関心を高めることになったら、それこそ著者の本望なのだろう。

【新しい用語】

インターフェロン
もともと動物の体内に存在する物質で、ヒトに使用していたものをネコに応用したもの。ウイルスに直接作用するものではなく、予防や症状の緩和のために用いられるで、抗ウイルス性、抗腫瘍作用(抗ガン剤)、免疫系への作用という主に3つの働きがある。

異種移植
ヒト以外の動物の体を用いて移植や再生を行うこと

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2008年01月19日

「福音の少年」あさのあつこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北畠藍子(きたはたあいこ)を含む9人がアパートの火事で犠牲になった。藍子(あいこ)の同級生で、恋人の明帆(あきほ)と幼馴染の柏木陽(かしわぎよう)、事件の背後の不穏な空気を感じ、真実を知ろうとする。

不思議な力を持っている少年。永見明帆(ながみあきほ)と幼馴染の柏木陽(かしわぎよう)という点で描かれているが、その設定自体があまり物語に大きく作用していない。物語の大半を永見明帆(ながみあきほ)と柏木陽(かしわぎよう)という二人の高校生の視点で占められているため、どこにでもいる一般的な少年達という設定にしたほうがその言葉や気持ちの描写がリアルに伝わってきたような気がする。

隠し事?隠し事ばかりやで。おれたちが大人に晒す部分なんて紛い物か、ほんの一部かに過ぎない。海面下の氷山みたいに本物の過半は見えない、見せたりしないんだ。

そして、永見明帆(ながみあきほ)と柏木陽(かしわぎよう)の少年二人を、唯一対等の立場から見つめる大人の視点で、秋庭大吾(あきばだいご)というジャーナリストが登場する。

たかが子ども相手に本気になって……子ども?子供じゃないな。人は生きた年月で大人になるのではない。何十年の歳を経ながらガキの思考と戯言しか知らない連中が、この国にはうようよいる。

読みどころはやはり秋庭(あきば)と2人の少年が向かい合うところだろうか、物語の緊張感はそのシーンで一気に高まったが残念ながらその後にそれにつりあうだけのエンディングは用意されていなかった。

全体的に不完全燃焼で終わってしまったという感じ。読み終えて感じたこと以外に、もっと著者が訴えたいことがあるような気がしてならない。単に僕がその意図を感じ取れなかっただけではないのか、と。少年少女の青春小説のようでありながら、メインのストーリーは目に見えない陰謀を暴くミステリーの要素が強く、どっちつかずで中途半端な作品に思える。

【楽天ブックス】「福音の少年」

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2007年12月26日

「チームバチスタの栄光」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

バチスタ手術の天才外科チームで原因不明の術中死が立て続けに起こった。田口(たぐち)医師は真相の究明に挑むこととなる。

病院という舞台を扱ったミステリーである。昨今のよくある病院内の物語と同様に、本作品でも医者の上下関係や立場を重視する姿や、その閉鎖的な世界の現状が描かれている。本来、人の話を聞くことを得意とする田口がチームバチスタのメンバーから話を聞くことで真相をつかもうと努める。よくあるミそして、人の話を聞くことを仕事としている田口であるがゆえの目線が、個人的に本作品で印象に残った。

人の話に本気で耳を傾ければ問題は解決する。そして本気で聞くためには黙ることが必要だ。

同時に日本の医療の問題点も随所に散りばめられている。

文化人や倫理学者に発言させ、子供の臓器移植を倫理的、あるいは感情的に問題視させる。日本で子供の臓器移植を推進しようとすると足を引っ張る。米国で行われる手術は美談として支援し、日本では問題視する。同じ小児心臓移植なのに、おかしいと思いませんか


中盤から白鳥(しらとり)という真相救命の鍵を握る人物の登場以降、既にそこまでにも頻出していた専門用語やカタカナ言葉が一気に増える、その一方でいつまで経っても話の展開にスピードが感じられなかったのが残念である。「このミス」大賞の評価には疑問が残る。

【新しい用語】

拡張型心筋症
心筋の細胞の性質が変わって、特にに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気。

【楽天ブックス】「チームバチスタの栄光(上)」「チームバチスタの栄光(下)」

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2007年11月23日

「明日の記憶」荻原浩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第18回山本周五郎賞受賞作品。

広告代理店営業部長の佐伯(さえき)は、若年性アルツハイマーと診断された。仕事や日常生活が少しずつ出来なくなって行く中で悩み、生き方や人間関係を考えていく。

昨年やっていた、2時間ドラマの原作だと気づいたのは読み始めてからである。今回は萩原浩という最近よくみる作家の代表作に触れるという意図しかなく、アルツハイマーを扱った作品だと知らなかったので少し後悔した。「世界の中心で愛を叫ぶ」などと同様に、一人の元気だった人間が病気によって次第に衰えていく様子を描く作品は、涙腺を刺激することはあっても内容の濃いものであることは少ない。この作品もまた、人を涙させるためのもっとも安易な手法を採ってしまっただけで、とりててて大きなテーマもない作品ではないか、と。

物語は最初から最後までアルツハイマーに犯された佐伯(さえき)本人の目線で進む。生き方に悩んだり次第に物事を忘れていくことで、数ヵ月後の自分を想像して恐怖する姿は描かれているのだが、その心情描写がリアルだとは残念ながら言い難い。見所はむしろ妻である枝美子(えみこ)の夫を支える姿なのではないだろうか。また、アルツハイマーと診断されてから、佐伯(さえき)は「備忘録」と名付けた日記を書くことを習慣づける。その日記が作品の中の要所要所に登場するのだが、次第に同じことを繰り返し書かれたり、間違った漢字を使い始めたり平仮名が多くなったりする。それによって次第に病状が進行していくことを表現しているのだが、そんな手法も本作品の個性と言える。

記憶が消えても、私が過ごしてきた日々が消えるわけじゃない。私が失った記憶は、私と同じ日々を過ごしてきた人たちの中に残っている。

読み進めるに従い懸念したことが現実となる。徐々に記憶を失っていくその姿は悲しく、アルツハイマーという病気の恐ろしさは伝わってくるが、内容自体にあまり密度を感じない。それでも最後の2ページは著者の思惑通り涙が溢れ出た。このラストシーンを描きたくて著者はこのテーマを選んだのだろう。そう思った。

【新しい用語】

たたらづくり
板状に伸ばした粘土を型紙に合わせて切り取り、石膏型などにかぶせて成型する陶器の技法の1つ。

【楽天ブックス】「明日の記憶」

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2007年11月20日

「スピカ 原発占拠」高嶋哲夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本海沿岸に建設され、稼動間近となった原子力発電所がテロ集団に占拠された。原発の建設に一役買った日野佑介(ひのゆうすけ)、ジャーナリストの中川仁美(なかがわひとみ)。それぞれが信念に従って奔走する。

ミッドナイトイーグル」で興味を持った高嶋哲夫作品の、僕にとっては二作目である。タイトルからイメージされるように、テロ集団による下視力発電所の占拠という事件と絡めて、原発の利点とその脅威を訴える物語である。物語は何人かの視点の間を行き来するが、それぞれの原発に対する考え方が異なっていて、そのいずれかが読者の考え方と重なるだろう。原発制御プログラムの開発者である日野佑介(ひのゆうすけ)はもちろん、「原発とは絶対安全なもので過去の原発事故はすべて研究者の怠慢、もしくは犯罪行為によって生じたもの」と考える。

あれは事故ではなく犯罪ですよ。我々をあのレベルで見られてはたまりませんよ。いまロシアでは子供や老人が寒さに震え、工業が崩壊している。それを救うのは原子力しかない。

そして、環境保護団体に所属する中川仁美(なかがわひとみ)は穏健派でありながらも原発反対の意見を口にする。

会社と政府の最終目的はこの巨大プラントを世界に売り出すこと。地球を原発で埋め尽くそうとしているの。コンピュータで管理された絶対に安全な巨大原子力発電所という商品をね。

また、日野(ひの)の娘である由香里(ゆかり)の主張は、深く物事を知りもしないで「私は立派なことを言っている」という気持ちに浸りたがる多くの人間を代表しているようだ。

原子炉や廃棄物から出る放射能で地球は汚染されて、癌がたくさん発生したり、障害児が生まれるんでしょう。いま、地球は死にかけているのよ。ゴルフ場から出る農薬で水は汚染されて、田や池の魚は死んでいるし、チョウチョやトンボも10分の1に減っているの。

どれも一部正しく一部簡単には解決することのない理想論である。物語はそんな原発に対する大きなテーマを抱えたまま、テロ集団と自衛隊との戦闘シーン、そしてその背景にある大きな陰謀へと広がっていく。最後にロシアの科学者のサリウスが語る台詞は決して答えのない先進諸国に対する問いかけで、個人的には本作品で最も印象に残った言葉である。

世界に科学者という愚かな者がいなかったら、人類はもっと幸福になれたのではないか。進歩という名目で、科学者はその知的興味だけを追っていたのではないか。いま、その科学が地球をも破壊しようとしている。

しかし、知識人たちが何を訴えたところで、他国を蹴落とすことばかりを考える国際社会は、両刃の剣を研ぎ続けることを各国の科学者達に強いるのだろう。この流れはきっと、世界が一度滅びない限り変わらないのだ。

本作品で感じたのは、どうやら高嶋哲夫という作者は銃撃戦などの戦闘シーンを好むようだ、ということ。それは映像化にあたっては非常に面白いのかもしれないが、状況を視覚的に訴えにくい小説においてはあまり推奨されるものではないかもしれない。戦闘シーンにページ数を作なら、小説ならではの詳細な心情描写でテーマをもっと深く掘り下げてほしいと感じた。

さて、僕自身は原発に対しては肯定派でも否定派でもない。残念ながら現時点では原発に対する自分の意見を堂々と主張できるほどの知識を持ち合わせていないのである。ただ、何の代替案もしめさずにだた「原発反対」と訴える人々の行動には違和感を感じる。火力発電に頼れば二酸化炭素が排出されるし、水力発電、風力発電に頼れば電気料金は高騰する。結局原発廃絶には電力の消費を抑えるか、高額な電気料金を国民が受け入れるしかないのである。にもかかわらず代替案を提示せずに「原発反対」と訴え続ける市民団体や、安易にそれを支持する人々は浅はかとしか思えない。個人的にも原発の仕組みをもう少ししっかり理解し、その可否に対する考えを時間をとってしっかりまとめておきたいものだ。

こういう風に思ってしまうこと自体、著者の思惑にはまっているのかもしれない。

【新しい用語】

スーパーフェニックス
フランスの高速増殖炉。本格的に稼働を開始したのは1986年であるが、その後燃料漏れや冷却システムの故障が相次ぎ、1990年7月に一旦稼働を停止した。最終的にフランス政府は1998年2月に閉鎖を正式決定し、同年12月に運転を終了した。(Wikipedia「スーパーフェニックス」

松川事件
1949年に福島県で起こった鉄道のレール外しによる意図的な列車往来妨害事件。

参考サイト
Wikipedia「スリーマイル島原子力発電所事故」
Wikipedia「チェルノブイリ原子力発電所事故」
「もんじゅ」がひらく未来


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投稿者 masato : 22:54 | コメント (0)

2007年11月03日

「硝子のハンマー」貴志祐介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第58回日本推理作家協会賞受賞作品。

介護サービス会社の社長が社長室で撲殺死体として発見された。弁護士の青砥純子(あおとじゅんこ)は防犯コンサルタントという肩書きを持つ榎本径(えのもとけい)の協力を得て真実を解明しようとする。

青の炎」以来しばらく文庫化作品のなかった貴志祐介の久々の文庫化作品。「ISOLA」「黒い家」でホラー作家というイメージを世間に与えているようだが、僕の中ではそこまではっきりとした個性は確立されていない。本作品も、彼の中の王道作品というよりも実験的な色合いが濃いようだ。

前半部分は青砥純子(あおとじゅんこ)と榎本径(えのもとけい)の犯罪の行われた密室の謎を解くために奔走するシーンで終始する。防犯コンサルタントである榎本(えのもと)は、トリックの可能性への言及の際、セキュリティに関することを多く語る。物語の中に、展開以外に新しい知識へのきっかけを求める僕にとっては、専門分野への詳細な描写は嫌いではないのだが、それは時に、読者を飽きさせ物語のスピード感を損ねてしまうという諸刃の剣である。本作品ではその執拗な説明は僕にとってもややうんざりさせるものであった。

ひたすら犯行の可能性を潰していくという、この前半部分は、ずいぶん長いこと読んでいなかったよくある推理小説を思わせる。最新技術を用いて徹底的にトリックを検証する展開は、森博嗣の犀川創平・西野園萌絵シリーズと似た雰囲気を感じた。

そして、そのままトリックを終盤に解明して終わればなんてことないただの推理小説として終わってしまっただろう。ところが中盤に差し掛かったところで一転、物語は数年前の犯人の目線に切り替わる。

親の不幸からヤクザに追われる身となり逃亡を決意する。わずかな期間で別人の名前の免許証を手に入れ、逃亡するその手口は非常にリアルで、管理の行き届いた日本の社会といえども、身分を偽って生きることがそれほど難しくないことを知るだろう。逼迫したその「殺らなければ殺られる」という犯罪の布石となる考え方が犯人の心の中に形成されたことを無理なく受け入れさせるだろう。

最後には、日本の犯罪者に対する再教育体制の問題にも触れている。

懲役や禁固というのは、受刑者を、一定期間、世間から隔離する処置にすぎませんし、刑務所側が腐心しているのは、その間、問題を起こさせないようにすることだけです。極端に言えば、出所後、何をしようと知ったことではない。当然ながら誰一人。責任は取りません。だからこそ、これだけ、再犯率が高いんじゃないですか?

全体的には物語のテーマがぶれている印象を受けた。作者がこの物語で見せたかったものは何なのか、前半のような謎解きのミステリーなのか、最後の犯罪を犯した若者が構成されずに一時的に社会から隔離されるだけの日本の犯罪者に対する更正体制の怠慢なのか。もちろん双方なのだろうが、もう少し一貫したテーマでコンパクトにまとめるべきだったのではないだろうか。

【新しい用語】

ブルディガラ
ラテン語で「ボルドー」の意味。仏・ボルドーのシャトーから直輸入のワインを中心に、パスタや備長炭を使った料理などヨーロッパを主体とした各国のエッセンスをプラスしたフレンチレストラン。

ディンプルキー
鍵の表面に深さや大きさの異なるくぼみがいくつかあり、このくぼみの深さや大きさを変えることによって、約2935億通りの鍵のパターンができるとされるので、鍵の複製が非常に難しい。シリンダー内に6本のピンが一列に並んだものが上下左右、さらには斜めにもディンプル穴があるのでその角度まで合わせるのはほとんど不可能とされており、ピッキング対策に優れている。ディンプルキーにはシリアルナンバーが打ってあり「完全登録システム」が採用されているので、シリアルナンバーと登録者が一致しないと合鍵も作れません。また、鍵がリバーシブルタイプなので、鍵の上下を気にすることなくスムーズな開錠が可能。

ドリリング
ドリルなどを使用し、家屋を破壊し侵入する手口。

ジルコン
花崗岩の中に普通に見られる石の中でも、比較的稀な性質を持った宝石で磨くとダイヤモンドに迫る美しい宝石となる。ジルコンとはアラビア語で“金色”を意味する“zargoon”からきている。通常ジルコンは無色透明のものが知られているが、含有物により、黄色、オレンジ、青、赤、褐色、緑などの色がある。

ルビコン川
イタリア北部を流れる川で、アペニン山脈より東へ流れ、アドリア海に注ぐ。共和政末期の古代ローマにおいては、本土である「イタリア」と属州の境界線をなしていた。紀元前49年1月10日、ガイウス・ユリウス・カエサルが「賽は投げられた」(Alea iacta est)の言葉とともにこの川を渡ったことはよく知られている。「ルビコン川を渡る」は以後の運命を決め後戻りのできないような重大な決断と行動をすることの例えとして使われる。(Wikipedia「ルビコン川」

クレセント錠
窓などに取り付ける錠でほとんどの窓がこのタイプの錠を使っている。2つの金具からなり、1方はフック型の部分をもつ外側の扉に固定された金具で、もう1方は、把手の付いた半円状の盤に突起を設けた金具で内側の扉に固定される。

ガンザー症候群
ヒステリー性心因反応による退行状態である。的外れ応答をなす偽痴呆であり、拘禁反応として生じやすい。

捲土重来(けんどちょうらい)
敗れた者が、いったん引き下がって勢いを盛り返し、意気込んで来ること。

体感機
パチンコ・パチスロなどの遊技台の攻略に用いられる器具の一種。大当りなどのタイミングを振動によって打ち手に知らせる機能を持つ。(Wikipedia「体感機」

モース硬度
主に鉱物に対する硬さの尺度のこと。硬さの尺度として、1から10までの整数値を考え、それぞれに対応する標準物質を設定する。ここでいわれている「硬さ」とは「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「叩いて壊れるかどうか」の堅牢さではない。ダイヤモンドは砕けないというのは誤りであり、ハンマーで叩くなどによって容易に砕けることもある。(Wikipedia「モース硬度」

向精神薬
精神に働きかける作用を持ち、精神科などで使用される薬剤のこと。向精神薬には第1種から第3種まであり、いずれも医師の処方箋が必要な処方薬であり、中枢神経に作用して、精神機能に影響を及ぼす物質(医薬品としては抗不安薬、催眠鎮静薬、鎮痛薬等が該当)であって、麻薬及び向精神薬取締法及び政令で定めるものを言う。(はてなダイアリー「向精神薬」

ドレープカーテン
厚手のカーテン・室内側のカーテンのことを指す。日本では、厚手の室内装飾用の布地の意で使われている。

参考サイト
鍵と錠前の知識

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投稿者 masato : 15:02 |