★4つの最近のブログ記事

「In The Clearing」Robert Dugoni
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
友人であり警察官でもあるJennyが、同じく警察官であるJennyの父が保管していた未解決事件をTracyに依頼する。それは40年前に自殺した女子高生の事件である。Jennyの父が集めたたくさんの証拠と当時の写真を、現在の技術によって分析することで、Tracyは真実に近づいていくのである。

第1作がTracyの妹の死を扱ったということで、第二作目以降への期待度はあまり高くなかったのだが、本作品は非常に面白かった。やはりその要因は40年前に起こった事件が、残された証拠写真や証拠物質から真実に近づいていくという聞きなれない手法によるものなのだろう。

物語の中心となるのは、40年前に陸上の成績で将来を期待された高校生の女性Kimi Kanasketに起こった真実を解明することである。ただ単に事件の解決だけでなく、事件から40年後の今もなお彼女が自殺などするはずがないと信じて苦しみ続ける父と兄の姿が痛ましく、また自らも妹の死の謎に20年以上にわたって苦しめられたからこそそんな遺族を救おうとするTracyの姿が印象的である。

結末は予想外の展開だった。誰もが若さゆえにハメを外した経験はあるのではないだろうか。
一歩間違えればそんな若い頃の楽しい一日であるはずだった日の行動が、人生をすべて変えてしまうこともあるのである。そう考えると、決して他人事とは思えなくなってくる。

事件解決の刑事物語にすでに読み飽きた人にもオススメできる一冊である。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

「トイストーリー」等のアニメで有名なピクサーが成功するまでの様子をピクサーの創設者の一人である著者が語る。

ピクサーの歴史とはCGの歴史でもある。本書の冒頭で語られる1970年代のCGは、今見ると信じられないような品質のもので、この数十年間のCGの発展に改めて驚かされるだろう。そして、CGという新しい技術が広まる中で、古い手法に固執しようとするアニメーターたちがいる一方で、著者のように新しい技術を広めようとする人たちがいるのである。

ピクサーと言って僕らがすぐに思いつくのは、アップルの創設者でもあるスティーブジョブスではないだろうか。そして、スティーブ・ジョブスの果たした役割の大きさはすでにみんなも知っていることと思う。しかしピクサーにおいては、僕がアップルの印象として持っていたジョブスの自分の信じたものだけを、誰の意見にも耳を傾けずに追い求める、というような関わり方とは異なる関わり方をしたようだ。ジョブスは、自分のアニメーションに対する知識が足りてないことを早い段階で悟り、制作者たちの意見を尊重するのである。本書での描かれ方で、著者自身がどれほどスティーブジョブスを信頼しているのかがわかる。

本書はピクサーの成功を描いた作品でもあるが、その一方で、ディズニーという一時代を築いたアニメーション制作の会社が落ちてゆく様子も見えて来る気がする。また、ピクサー自体も順風満帆に成功の道を歩んできたわけではなく、数々の失敗を経て常にヒットを生み出す企業へと成長してきたのである。創造力を組織として維持することがどれがけ難しいかがわかるだろう。

本書の最後に書かれている「「創造する文化」の管理について思うところ」はそんなピクサーの考え方が詰まった4ページである。永久保存版にして何度でも読み返したくなる。なかでも印象的な言葉を挙げておく。

リスクを回避することはマネジャーの仕事ではない。リスクを冒しても大丈夫なようにすることがマネジャーの仕事である。
規則をつくりすぎないこと。規則はマネジャーの仕事を楽にするかもしれないが、問題を起こさない95%の社員にとっては屈辱的だ。
「卓越性」「品質」「優秀」は、自らが言う言葉ではなく、他者から言われるべき言葉である。
信頼とは、相手が失敗しないことを信じるのではなく、相手が失敗しても信じることである。

本書を読み終えた後、またピクサー映画が見たくなる。見ていないピクサー作品は片っ端から見ようと思ったし、すでに見た作品でさえも、そのできるまでのピクサー社員たちの奮闘の様子を知ると再度見たくなった。

【楽天ブックス】「ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イギリスのEU離脱の背景や今後の課題などについて語る。

2006年6月のイギリスの国民投票によるEU離脱は大きなニュースとなった。あるイギリス人の友人はFacebook上で友人に謝っていた。「これは僕らが望んだことではない」と。起きたことはニュースで知ることができるが、その裏にある理由についてもっと知りたいと思って本書を手に取った。

今回の国民投票によって、北部と南部、年配者と若者の考え方が大きく分かれた理由だけでなく、EUという組織の歴史的系などについても今まで知らなかったことを知ることができた。考えてみれば当たり前なことなのかもしれないが、国民投票で離脱という結果になったからといってすぐに離脱と決まるわけではなく、その後イギリスがEUに離脱の意思を伝えて初めて手続きが始まる、という事実も本書を読むまで知らなかった。また、イギリスが島国ゆえに他のEU諸国とは少し異なるスタンスを持ってEUに接していたという事実も印象的だった。

離脱推進派の政治家たちが自らの責任を取ることもない状態で、EU離脱という事実に向き合わなければならないテリーザ・メイ首相の苦悩は想像に難くない。本書でも今後の課題として語られている部分ではあるが、イギリスが今後どのようにEUと向き合っていくのか注目したい。

実際以前にもEUについて詳しく知りたくて本を買ったことがあったのだが、その本はデータなどの数字が多くて、あまり読みやすいとはいえなかった。それに比べて本書はとても読みやすく、内容も細かすぎず、まさに「イギリスのEU離脱について知りたい」という人にぴったりの内容である。

【楽天ブックス】「英EU離脱の衝撃」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
7年前夫に先立たれたテツコは亡くなった夫の父ギフと今も暮らし続けている。微妙なバランスで保たれている2人の関係に、テツコに結婚を申し込んだ岩井さんが入り込んでいく。

不思議でなんか暖かい物語。夫の父親と2人で暮らし続けているテツコも不思議だが、その夫の父親、ギフ(「義父」がそのまま呼び名になったらしい)も、テツコに結婚を申し込んだ岩井さんも不思議な性格だけどとてもやさしくて、そんな3人のやりとりが、読者の心を和ませてくれるだろう。

何かを学べるわけではないが、今まで読んだ事がないような不思議な作品。人間関係のあり方に正解はなく、それぞれが心地よい関係がその人にとっての正解なんだと感じた。

【楽天ブックス】「昨夜のカレー、明日のパン」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Tracyの妹のSarahは行方不明になり、自供と証拠をもとに同じ町に住む男が有罪となった。その裁判に疑問を持つTracyは一度は教師を志すも、真実を知るために刑事になる。20年後、妹の遺体の発見をきっかけに自ら集めた証拠を元にTracy再び裁判を起こして真実を暴きだそうとする。

前半の多くは、妹の失踪という出来事に苦しむTracyと、TracyとSarahの当時の様子が交互に展開していく。過去を描いたシーンでは、自由奔放に行動するSarahと、その面倒を見なければいけない姉のTracyと見えていたが、物語が進むにつれて、Sarahは町の誰からも好かれるような存在で、Sarahの失踪が町の空気さえも変えてしまったことがわかる。姉のTracyだけでなく、町に住む多くの人がその事件による苦い記憶を抱えて生きているのである。

現在を描くシーンでは、Sarahの発見をきっかけとして、裁判のやり直しへ動くTracyとその友人の弁護士Dan。20年間Sarahを殺害したとされて刑務所で過ごしていたEdmund Houseに会うなどして、当時偽の証拠を捏造したとされる警察のRoy Callowayらを追い詰めていくのだ。

衝動買いだったが、Tracyやその周囲の人々の心情描写が深く、予想以上に楽しむことができた。続編も出ているので読み続けてみたい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アートを作る上での心構えを著者の経験から語る。

タイトルにもあるようにアートを作りたければ「アイデアを盗め」と堂々と語っている。確かに僕自身もデザインに関わってきて思うことだが、上達の近道はいいデザインを真似ることである。「それは盗作ではないのか?」と思う人もいるだろう。そんな問いに本書はこんな風に答えてくれる。

すぐれたアーティストは何もないところからは何も生まれないことを知っている。すべてのアートは以前もあったものの上に作られるのだ。完全にオリジナルなものなど存在しない。

アートに限らず、スポーツでも音楽でも、いいものを真似ようとして努力する中で、それでもその人の体格や能力でどうしても真似できない部分に出会う。そこを自分なりに工夫した結果、オリジナルが生まれるのだという。

ちなみに良い盗み方と悪い盗み方をこう書いている。良い盗み方は多くのものを盗むこと、悪い盗み方は一つのものを盗むこと。納得がいく部分があるのではないだろうか。

また、著者は仕事以外に趣味を持つことを推奨している。一見関係ないように見えることでも、趣味を持つことは何かしらいい影響を与えてくれるのだと。たしかに、いい仕事をする人は何かしらの趣味にも打ち込んでいるような気がする。

何か新しいものを創り出すことを考えた時、人の真似をするのはどこか後ろめたいもの。でも世の中の創造的なものはみんなそういうステップを踏んで生み出されたのだと、堂々と語ってくれる点がなんとも清々しい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
グアルディオラはFCバルセロナで選手として活躍し、その後FCバルセロナを監督として率いて黄金時代を気付いた監督。本書はグアルディオラが2013年に、それまでドイツのブンデスリーガで優勝の常連であったバイエルン・ミュンヘンの監督に就任してからの様子を、間近で取材して描いている。

僕自身がサッカーから離れて久しいが、個性豊かな20人近い選手をまとめげて一つの強力に機能するチームを作り上げる優れた監督の物語はいつだって非常の面白い。監督はどのようにチームを機能させるのか、どのようにメンバーのモチベーションを上げるのか、どのように長く成長する環境を作るのか、といった問題を突き詰めて優れたチームを作っていく。そのスタンスはサッカー以外にも応用できるだろう。

2013年時点で、グアルディオラはすでにFCバロセロナでの輝かしい経歴の持ち主で、さらに就任先のバルセロナはその時すでに優勝の常連国。おそらく周囲の人間は成功よりも失敗を予想したのではないだろうか。しかし、もはや改善しようがないようなチームをさらに強く安定したチームに改善していく様子は、「すべては永遠に改善できる」と改めて認識させてくれる。スペインのパスサッカーの文化をバイエルンに取り入れる様子も印象的だが、一方で「バイエルンにメッシはいない」と、完全にバルセロナのパスサッカーを取り入れるのではなく、ドイツの文化や身長など選手の個性に応じてバイエルンのサッカーを発展させていくグアルディオラのスタンスも刺激的である。

最も印象的だったのは選手の希望に折れて戦術を決め、レアルマドリードに0-4で大敗する場面である。グアルディオラほどの完璧主義者も失敗なしには前進しないのだ。そんな失敗の後のグアルディオラの失敗の受け止め方こそもっとも見習うべき点かもしれない。

ここしばらくサッカーを1試合通じて見る機会がなくなってしまったが、本書によってサッカーの戦術はまだまだ進歩していること、そして、以前よりも高く洗練されたチームが対戦している様子が本書から伝わってきて、またサッカーが見たくなった。本書で触れられている多くの重要な試合をYouTubeで見ながら読み進めてみれば、サッカーファンじゃなくても十分に楽しめるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザイナーとして他のデザイナーやデザイン企業と差別化を図る方法について語る。

本書で繰り返し主張していることはタイトルにあるように「Win Without Pitching Manifesto」である。クリエイティブな業界で仕事をする人は、仕事を得るためにコンペに参加して、無料で提案内容を披露したり、値段を安くすることで、勝負するデザイナーや企業を見たことがあるだろう。ひょっとしたら自分自身がそのようにして仕事を取ってきているかもしれない。

しかし、値段を安くすることをしている限り、クライアントを完全に満足する仕事はできないというのである。そして、一度値段を安くすると、その負のスパイラルから永遠に抜けられないというのだ。「楽しい仕事をしているから、忙しくても満足」では続かない。本書はそんなクリエイティブ業界のよくある状況から抜け出すための次の12の話を語っている。

We Will Specialize
We Will Replace Presentations With Conversations
We Will Diagnose Before We Prescribe
We Will Rethink What It Means to Sell
We Will Do With Words What We Used to Do With Paper
We Will Be Selective
We Will Build Expertise Rapidly
We Will Not Solve Problems Before We Are Paid
We Will Address Issues of Money Early
We Will Refuse to Work at a Loss
We Will Charge More
We Will Hold Our Heads High

印象的だったのは、コンペでプレゼンをすることを、医者に例えてさとしている点である。「医者は診察をしないうちに薬を処方したりしない」と。つまり、クライアントの問題点をしっかり調査しないうちに提案をするのは間違っているというのである。

読み終えて思ったことだが、本書はクリエイティブな仕事の仕方について書いているが、自らの価値を少しずつ高めていく考え方としては、必ずしも仕事に限ったことではなく、人間関係にも適用できるかもしれないと感じた。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
いくつかの事例を交えてリーン・スタートアップについて説明する。改めて実例と共にそのコンセプトを読み進めると理解が深まる。

特に印象的だったのがMVP(Minimum Viable Product)の重要性である。制作に関わる人間はどうしても、「できるかぎりいいものを世の中に出したい」と思って作りこむことに時間をかけてしまうが、実際に作っているものが世の中の求めているものとは限らないのである。実用に耐えうる最低限のものを、アーリーアダプターに提供することによって世の中でどんなものが求められているかを早く知り、早く軌道修正することができるのである。

もう一つ印象に残ったのがバッチサイズの縮小のメリットである。バッチサイズとは繰り返しの作業による1つの工程から次の工程への作業量の大きさである。例えば100通の手紙を用意するのに、100枚の手紙をまず折って、その後100枚の手紙を封筒に入れる、という作業の流れだとパッチサイズ100となる。これに対して手紙を1枚ずつ仕上げる方法がパッチサイズ1である。僕らは、作業は繰り返すほどに習熟するという思い込みがあるため、バッチサイズが大きいほど効率的という思い込みがあるが、バッチサイズが小さい方が問題が早く浮上し、すばやく修正を反映することができるのである。

非常に読みやすく、リーン・スタートアップについて理解するのに非常にわかりやすい本である。

参考図書「イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」
「製品開発フローの原則 第2世代リーン製品開発」ドナルド・G・レイナーツェン
「教育 × 破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する」
「ザ・トヨタウェイ」ジェフリー・ライカー
「トヨタ生産方式 脱規模の経営をめざして」大野耐一
「プランB 破壊的イノベーションの戦略」ジョン・マリンズ、ランディ・コミサー
「リーン・シンキング改訂増補版」ジェームズ・P・ウォーマック、ダニエル・T・ジョーンズ

【楽天ブックス】「リーンスタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生み出す」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
クリエイティブに関わる人間が心がけるべき言葉に溢れている。手元に置いておいていつでも見返せるようにしたいと思える本。

Don't look for the next opportunity. The one you have in hand is the opportunity. 次のチャンスを探すな、今目の前にあるものがチャンスなのだ。
Do not seek praise. Seek criticism. 賞賛を求めるな、批判を求めろ

ぜひ手にとって、1つ1つの言葉を噛み締めてもらいたい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界を大きく変えた薬について紹介する。

世の中にはわずかな違いで、歴史が大きく変わっていたかもしれないことがある。クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、というように。本書はそれを薬について語っているのだ。実際100年ほど前までは日本人の平均寿命は40歳程度だったのだというから驚きである。言い換えるなら「世界史を変えた薬」が生まれていなければ、僕はもう死んでいたかもしれないのである。

本書で扱っているそんな「世界史を変えた薬」とは、ビタミンC、ペニシリン、アスピリンなどである。薬のど素人の僕でさえ知っている名前ばかりである。つまりそれは現在ではそれほど広範囲で使用されているということなのだろう。大航海時代に多くの航海者が悩まされた壊血病を解決するビタミンCの発見に始まり、多くの興味深い歴史的事実を交えて、薬の発明を紹介している。薬という世界の入り口としては非常に面白い一冊である。

【楽天ブックス】「世界史を変えた薬」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生に悩む青年が「人は変われる、世界はシンプルである、誰もが幸福になれる」と言う哲人のもとを訪ね、その内容を問いただす。自分の人生を嘆きそれと比較しながら、哲人の話す内容はただの理想論と言う青年だったが次第にその考え方に心を奪われていくのである。

昨今アドラー心理学という言葉をよく聞くようになったので、比較的新しい考え方だと思っていた。しかし実際にはアドラーはフロイト、ユングと並ぶ心理学の三大巨頭なのだそうだ。

まず、興味をひいたのは原因論と目的論という考え方。例えば、とある引きこもりの男性がいて、ある人がその原因を幼少期の虐待にあるとする。これが原因論による考え方である。一方で目的論をベースにするアドラー心理学は次のように捉える。その男性は社会に出たくない故に幼少期の虐待を理由に引きこもることを選んでいる、と。アドラー心理学では常に「今」の「目的」に目を向けており、「過去に人はとらわれない」という考え方をしている点が興味深い。

他人の評価などのように、自分ではどうしようもないことに干渉するためにエネルギーをかけない、という点は、選択理論などでも語られ、最近では一般的な考え方になってきたが、それでも改めてアドラー心理学の中でそれを考え直すのも悪くない。

やはりもっとも印象的だったのは「貢献感で幸せを感じる」という考え方である。人はどうしても人や社会に貢献すると、金銭や感謝の言葉などのような見返りを求めてしまうが、そこから解き放たれて自ら満足することこそが幸せになる方法なのだ。

実はこの考え方、僕自身がこの1,2年至った考え方だったので、もう少し本書を早く読んでいればもっと早くここにたどり着いたのかもしれない、と思った。

【楽天ブックス】「嫌われる勇気」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
父、織田信長に認めてもらうため、織田信雄(おだのぶかつ)は伊賀を攻めることを決める。強力な部下に恵まれながらも自らの能力のせいでその忠誠を勝ち取ることのできない信雄(おだのぶかつ)と、とてつもない強さを持ちながらもお金のためにしか動かない伊賀の忍びたちの戦いが始まる。

伊賀という言葉からイメージするのは、やはり忍術というなにか胡散臭いもの。子供時代にみたハットリくんの世界が現実ではないとわかっていながらも、それでは実際に歴史上の伊賀の忍者とはどのような存在だったかと聞かれると未だによくわからない。そんな曖昧な「忍者」の認識に新たな視点をもたらしてくれるのが本作品である。

物語は、織田と伊賀という非常にわかりやすい構図で描かれる。織田方は誰もが天下を統一したことで知っている織田信長と、その息子、信雄(のぶかつ)を中心に展開する。すごい父を持った故に、自らの能力のなさを嘆き、父に認められるようとする信雄(のぶかつ)の姿に、400年という時を超えて共感する読者も多いのではないだろうか。そして伊賀の方では、類まれなる強さをほこりながらも妻に頭のあがらない無門(むもん)の様子が繰り返し描かれる。こちらもどこか現代の男性の共感を呼ぶのではないだろうか。

戦国の時代というと、日本の立派な武士道が見られるかとおもいきや、伊賀の人々は裏切りなど当たり前で、お金のためにしか動かないというのが面白い。また、信雄(のぶかつ)に仕える武士たちも、混乱の世の中で生き抜くために、仕える先を頻繁に変わるために必ずしも忠誠を誓っていない者も多いのである。

そんななか、信雄(のぶかつ)の維持と伊賀がぶつかるのである。信雄(のぶかつ)と無門(むもん)を中心とする物語に、個性のある脇役が加わり、軽快に楽しめる物語に仕上がっている。

【楽天ブックス】「忍びの国」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
幼い頃よりネフローゼという病気を患い、それゆえに将棋と出会い、命がけで将棋を指して29歳でこの世を去った村山聖(むらやまさとし)を描く。

著者大崎善生(おおさきよしお)は「将棋マガジン」などの編集部に務めた経歴を持つ作家なだけに、「将棋の子」など将棋関連のノンフィクションが面白い。本作品も将棋に人生をかけた1人の男を描いており、その過程で、将棋界の厳しさが見えてくるのである。残念ながら僕の知っている棋士は谷川浩司や羽生善治ぐらいなのだが、村山聖(むらやまさとし)はその2人を何度か破っているというから、本当に将来を期待された棋士だったのだろう。

本書のなかで描かれる、常に自分の死を意識している聖(さとし)の生き方は、読者に一生懸命毎日を生きることの尊さを改めて感じさせてくれるだろう。

そして、改めて思ったのは、自分のなかに、物事にすべてを賭けて取り組むからこそ見える世界への憧れがあることである。本書のなかで描かれている、村山聖のいくつかの重要な対局のなかで「神が指したかのような一手」と呼ばれるものがあるのである。きっとそれは、何年も将棋に取り組んだものだけがわかる一手なのだろう。きっと、何年も将棋という世界に没頭しない限り、指すことはおろか、その凄さを理解することすらもできないような世界なのだ。


【楽天ブックス】「聖の青春」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
生物学者である著者が社会や組織を語る。

生物や昆虫の性質を引き合いにだしながら、世の中を説明して行く点が新鮮である。多くの人が知っているように生き物は種の存続を目的にそれぞれの行動が決まっている。しかし、そのような目的を持ちながらも種によっては群れを作ったり、1人のためにその他大勢が死ぬまで働いたり、ほかの生物の巣に入り込んだりと、戦略はさまざまである。ある種が、長い時間をかけてなぜ現在の行動に落ち着いたのかを考えると、その種にとってその生き方が、長期的なメリットがあることがわかる。

社会や組織や、人を新しい視点で見つめられるようになるかもしれない。

【楽天ブックス】「働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フランスへのホームステイを機に考え方を大きく変えた、カリフォルニア育ちのアメリカ人女性の話である。

昨今「断捨離」や「ミニマリスト」「ミニマリズム」という考え方が浸透してきたが、本書もそんな考えを後押しするもの。つまり、物質主義にお分かれして「自分らしい生き方をしよう」ということである。ホームステイ先の家庭で、それまでのアメリカでの生活とはまったく異なる生活があることを知った著者はすこしずつその生活を取り入れて行くうちに、あるべき姿に気付いて行くのだ。

まず著者は、それまで持っていた大量の服のなかから本当に自分らしい物だけを残して捨てることにするのである。また、毎日化粧に多くの時間を費やすことを辞め、スナック菓子を食べながらテレビを見て過ごす事を辞めたのである。それによって彼女は、本当にいいものだけを持とうとするようになり、読書や散歩や美術鑑賞をすることに時間を費やすようになり、人生が満ち足りて行くのを実感するのである。

本書でもひしひしと伝わってくるが、このような生き方の本質は持ち物をなくすことではなく、本当に必要な物だけを持つ事であり、人生はそれによって豊かになる、ということである。

僕自身の生き方と似ている部分がかなりあったが、身習いたいと感じる部分もたくさんあった。例えば、小さなものでもいいものを持つということ。小さなものだから安いもので間に合わせるのではないのである。また、部屋の中でも常にしっかりとした装いをすることや、家族への料理でさえもしっかりとした盛りつけをするというのも真似したいと思った。どんな服を着るかなど、すべての振る舞いが相手への敬意なのだそうだ。

【楽天ブックス】「フランス人は10着しか服を持たない」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
トラック競技で日本人初のメダルを獲得した著者がツイッターでつぶやく内容を集めたのが本書である。

以前より著者為末大の語る言葉が深い、というのは友人から聞いていた。実際ネット上でも彼の語る内容が物議を醸し出していたりもして、一般的な「スポーツ選手」というイメージから想像される人物とは少し異なる考え方を持っているということは知っていた。それでも彼の書籍を読むのは本書が初めてだったので、その視点の深さに改めて驚かされた。いくつか心に響いたものを取り上げるとこんな感じである。

"継続は力なり"は、常に撤退を頭に入れている時に効力を発揮する。
辛い練習をすれば安心と満足感は約束される。楽な練習はこれでいいのかと不安になる。勇気があるから辛い練習をするのではなくて、臆病だから辛い練習をしている場合もある。

また、自分と強く一致する部分があったことのも印象的だった。

いい方法を探すのではなく、マシな方法を探すと思った方がいい。どんな方法にも問題はあり、問題がない方法を見つけようとし過ぎれば、実行が送れ、学習のサイクルが鈍る。

何度でも読み返したくなるような、素敵な言葉にあふれている。

【楽天ブックス】「走る哲学」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
7つの王国を舞台としたファンタジー。

最初はそれぞれの土地の名前と、人の名前を覚えるので精一杯だろう。北の地Winterfellに構えるのはEddard StarkとCatelyn Tully Starkの夫婦から成るStark家である。その息子達Jon, Robb, Sansa, Arya, Brandon, Rickonが物語の中心となる。息子達6人はある日Jonが見つけた6匹の狼をそれぞれが1匹ずつ飼うのである。Stark家の象徴でもある狼は彼らの良き友人となる。

物語は7つの王国の支配者であるRobert Baratheonに王の片腕(the Hand of the King)にEddard Starkが指名されたことから動き出す。Eddardは9歳のAryaと11歳のSansaの2人の娘を連れて南のKing's Landingへ向かって旅立つが、一方でEddardの前のKing's Handは暗殺されたという噂を耳にする。一方でWinterfellに残ったStark家のなかで、Eddardと別の女性の間で生まれたJonはStark家を継ぐ資格がないため、Winterfellの北にある「The Great Hall」に向かう。The Great Hallの北では不可思議なことが起き始める。

少しずつ名前を覚えてくると全体が見えてくる。名前や土地の名前の多さに圧倒されるのは最初だけで、位置関係がわかってくると、それぞれの家の持つ紋章にある動物が意味を持っている事に気付くだろう。

また、物語が進むに連れて過去の歴史も少しずつ明らかになっていく。現在の統治者であるRobert Baratheonは前の王Aerys Targaryenを倒して王位に就いたという。そしてその際、僻地へ逃げたTargaryenの兄妹ViserysとDaenerysの様子も本作品では描かれている。最初は兄Viserysの言われるがまま行動していたDaenerysが少しずつたくましくなっていく姿が先の展開を楽しみにさせてくれる。

やがて明らかになるLannister家の秘密、それを暴こうとしたEddardとその娘達は大きな動乱に巻き込まれて行くのである。

大作とも言える本作品を読み終えてもまだ物語は始まったばかりといった印象である。忘れないうちに続編に取り組みたい。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
戦国時代に瀬戸内海で勢力を誇っていた村上海賊を、戦に憧れる娘景(きょう)を中心に描く。

海賊という言葉はよく聞くけれども、どこか外国や物語の中にのみ登場する存在であって、日本の歴史にはそぐわない気がしていたのは僕だけだろうか。だからこそタイトルの「村上海賊」が不思議で魅力的に聞こえるのだろう。主人公が女性なのだが、残念なのが冒頭でいきなりその景(きょう)が嫁ぎ先に困るような醜女(しこめ)だと書かれているということだ。男性読者はいつもヒロインを理想の女性像と重ね合わせて読むからこれは非常に残念なのだが、本書を通じて景(きょう)の大活躍を見る事によってそんな考え方もくつがえされていく。

さて、物語は本願寺の地を狙う織田信長に対して、その地を守ろうとする本願寺側が兵糧を毛利家に求め、毛利家はその兵糧を運ぶために村上海賊を頼る、という構図である。しかし、本願寺、毛利、村上海賊もいずれも、異なる思いを抱えた人物が存在するために、いろんな駆け引きが発生するのである。

しかし、最初は「家の存続」や「地位の向上」を意識しながら行われていた細かい駆け引きが、やがて戦が本格化するにしたがって、潔よく、誇り高い行動に変わって行く様子が非常に爽快である。

大なるものに靡き続ければ、確かに家は残るだろう。だが、それで家を保ったといえるのか。残るのは、からっぽの容れ物だけではないか。

村上海賊の景(きょう)はもちろん、弱虫であった弟の景親(かげちか)や雑賀党(さいかとう)の鈴木孫一(すずきまごいち)などかっこいい人物ばかりである。極めつけは景(きょう)の最大の敵となった七五三兵衛(しめのひょうえ)である。どのように決着するのかぜひ楽しんでいただきたい。

また、本書のなかではわずかな登場しかしない織田信長が、とてつもないオーラを放つ人間として描かれているのも印象的である。もちろん歴史上重要な人物なだけにそのように描くことは特に驚きでもないが、「今だったら誰にあたるのだろう?」と考えてしまう。

物語自体が面白いのはもちろん、歴史を読み解くと「○○が勝った」「○○が負けた」だけで終わってしまう出来事を、ここまで分厚い物語にし、そこに関わった人物をここまで人間味あふれる存在として見せることのできる著者の描写の技術に感動する。

【楽天ブックス】「村上海賊の娘(一)」「村上海賊の娘(二)」「村上海賊の娘(三)」「村上海賊の娘(四)」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アウグストゥスの統治の後の紀元14年から68年までを描く。

ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロと支配者の変わるこの時代である。ローマの歴史に詳しくない人でも皇帝ネロの名前ぐらいは歴史の教科書で目にしたことがあるだろう。キリストの迫害で有名なネロゆえに、その性格も自分勝手な人間を思い描いていたが、本書を読むと決してそんなことはなかったのだとわかる。ネロ自信は立派であろうと努めたのである。

印象的だったのは、いい皇帝ほど歴史に名を残さず、いい皇帝ほど小さなことで非難されるというジレンマである。アウグストゥスがすでに国の基盤を作ったこの時代、皇帝のやるべきことは小さな事をコツコツ調整することであった。ティベリウスはそれを着実に行ったのだが、結果として良くも悪くも教科書に名を残すほどの人間にはならなかった。また、もし国のどこかの地で争いが起こっていれば国民の関心はそちらに向かい、細かい社会制度や皇帝自身の私生活など誰も気にしないのだが、平和に国が統治されれば人々の関心は細かいことに向かって行き、結果として皇帝の人間関係などが批判の対象となるのである。

いろんな部分で2000年前の出来事が現代と共通していると感じた。言い換えると、人間は2000年かけて、技術的には成長しても、人間的にはまったく成長していないのではないか、とも感じてしまったのである。過去から学べることはたくさんあるのに、限られた人間しかそれを意識し日々努めてはいないのかもしれない。

さて、絶頂を迎えたローマがこれからどのように終焉に向かって行くのか。「ローマ人の物語」もようやく折り返し。続きが楽しみである。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
物事を解決するためには多くの知識や経験を必要とすることもあるが、一方で先入観を持たずに望めば他の人が見えない解決方法が見えることもある。しかし、先入観を持たずに物事を見つめるのは言うほど簡単な事ではない。本書はそのためのヒントを多くの事例を交えながら紹介している。

面白かったのはフードファイター小林尊(こばやしたける)がホットドッグ大食い大会を制覇するために行ったことを書いた章である。小林尊(こばやしたける)は前年25本だった優勝記録を一気に50本に伸ばして圧勝したのである。しかし、小林は元々大食いだったわけではなかったというのである。小林が行ったのは単純に優勝するための試行錯誤とそれを実現するために特化した練習なのだという。

たとえばホットドッグを端から食べろだなんて、ルールのどこにも書いていない。そこで単純な実験から始めた。食べる前にソーセージとパンを半分に割ってみたらどうだろう?こうすると、噛んだり呑み込んだりする方法に幅が出たし、口でやっていた仕事の一部を手に任せられてラクになった。

また、「コブラ効果」や「ナイジェリアの詐欺」の話も面白かった。これから行う事の結果を予想したり、多くの人の行動を少しでも自分の望む方向へコントロールしようとするときのヒントとなるだろう。

実は本書は「ヤバい経済学」と同じ著者によるもので、実はこの2冊の間には「超ヤバい経済学」という本もあるそうなのでそちらも後で読んでみたい。

【楽天ブックス】「0ベース思考 どんな難問もシンプルに解決できる」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「ナレッジ・イズ・パワー・プログラム(KIPP)」はマイケル・ファインバーグとデヴィッド・レヴィンによって1994年に設立された教育プログラムである。低所得者層の子供達が中心でありながらも目覚ましい成果をあげているKIPPができるまでの様子を、情熱的な2人の教師に焦点をあてて描いている。

最初は、教育への強い情熱を持ちながらも教室の生徒達を静かにさせることさえできなかったファインバーグとレヴィンだったが、やがてボールというカリスマ教師に出会ってその手法を学び、少しずつ自分達の教育スタイルを確立して行く。そしてやがて2人は「KIPP」という教育プログラムを立ち上げる事を決意するのである。

KIPPの特長として印象的だったのが、「教師の誓い」「保護者の誓い」「生徒の誓い」である。そこには教師、保護者、生徒たちが守るべきことが箇条書きに書かれており、3者が協力することが優れた教育を行うためには必要なのだろう。また、勉強しようとする他の生徒達を守るために、授業中に他の生徒を妨害するような生徒に対しては断固とした姿勢で対応する姿も印象的である。この姿勢は授業という場に限らず、共通の目的を持ったすべての組織に有効なように感じた。

ファインバーグとレヴィンは、KIPPを大きくする過程で、多くの障害を乗り越えて行く。時には周囲から非難されるような強引な手法を用いながらも、理想の教育のために突き進んでいくのである。その強引さは、保守的な教育界を変えるためには正攻法では難しいことを教えてくれる。様々な種類の人々が住むアメリカの教育を帰ることは日本よりはるかに難しそうに見えるが、彼らが様々な困難を克服しながらKIPPを軌道に乗せて行く様子は教育にはまだまだ可能性があると感じさせてくれるだろう。

母親や生徒達の視点で描かれている場面もいくつか挟まれており、最初は手に負えないかった生徒が、優秀な卒業生になる姿は涙を誘う。教育にもまだまだ改善の可能性があるのだと感じさせてくれる。

チャータースクール
アメリカ合衆国で1990年代から増えつつある新しい学校の試みで、チャーター(Charter)と呼ばれる特別認可、あるいは達成目標契約により認可された学校である。(Wikipedia「チャータースクール」

参考サイト
Teach For America

【楽天ブックス】「情熱教室のふたり 学力格差とたたかう学校「KIPP」の物語」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「武士道シックスティーン」に始まるシリーズの第4作目。剣道に青春を捧げた香織と早苗の大学以降の物語である。

序盤は早苗の結婚式に始まり、大学時代の回想シーンで2人の高校後の様子が描かれるが、物語が主に早苗(さなえ)の結婚後、香織(かおり)の大学卒業後である。香織は毎日桐谷道場で子供達の稽古を任されるようになる。

相変わらず剣道に関してだけはおそろしくストイックな香織と、のんびりした早苗のやり取りはほのぼのしていてのんびり読み進めることができる。その一方で、「武士道セブンティーン」から続く、香織(かおり)と黒岩レナの因縁の対決も健在である。2人の関係が友情に変わって行く様子が暖かい。また、香織(かおり)が道場で子供達を指導する中で、自らの剣道に対する情熱を、子供達に伝えようとする様子も素敵である。

そんな中、特に香織(かおり)が道場の少年の1人に伝えた言葉が強烈である。

世のためを思い、他人を敬い、精進を怠らない。人はこの三つを守っていれば、どこででも、どんな時代でも、生きていける

どこかに書いてとっておきたいような素敵な言葉である。

そんな時、師範である桐谷玄明(きりたにげんめい)が体調の衰えを理由に道場を閉じる事を示唆するのである。香織(かおり)が自ら跡継ぎになろうと名乗り出てもかたくなに道場の閉鎖を取り返さない玄明。やがて香織(かおり)は桐谷道場の剣道秘密に迫って行くのだ。

厳しい鍛錬を通じて、香織は身をもってその信念を体現しようとする。

誰かを守れる力を、あたしも今、勉強中なんだ。あたしはな、胸を張って、お前たちに伝えたいんだ。正しい力っていうのは、こういうことだって、お前たちに、教えてあげたいんだ。それがな、あたしなりの武士道なんだよ。

また、同じ時期に桐谷道場にやってきたアメリカ人、ジェフも物語に彩りを与えている。議論の好きなジェフとの会話からアメリカと日本の考え方の違いが見えてくる。戦争に対する考え方、力に対する考え方。武士道の考え方の価値を改めて感じられるだろう。

日本は、とても強い。でも戦争しナイ。強い力、持ってる。強い技、たくさん持ってる。でも、相手を倒すは、しナイ。戦いを終わらせる、ために、戦う。アメリカも、それをしタイ。そういう勉強、始めるといい、思いマス。

信念を持って生きる事のすばらしさを感じられる1冊。改めてシリーズまとめて読み直したくなった。

【楽天ブックス】「武士道ジェネレーション」

オススメ度 ★★★★☆
ロゴデザインの本というと多くのロゴを集めたものが多い。それはそれで見ていて楽しいが実際に仕事としてロゴデザインをする人にとっては物足りないだろう。なぜなら素晴らしいロゴは、見た目だけでなく、クライアントの求めるものを満たすからこそ素晴らしいのだから。

本書はロゴを紹介しながらも、クライアントのロゴデザインをする上での仕事の進め方や注意点を多くの事例を交えながら説明する。どのようにして相手の担当者をプロジェクトに巻き込むか。プロジェクトとして良く起こりうる事は失敗はどのようなことから始まり、それを避けるにはどうするべきなのか、など。

単に注文を受けるだけになってしまうことも陥りがちなワナである。最初の頃は私にもそんなことがよく起こった。クライアントが私にフォントや色を指定してくるのである。そして「大丈夫です。明日までに修正します。」と私は答えるのだ。つまり私の知識や経験を利用しないで、クライアントが私の仕事をしているのである。

もちろん、ロゴデザインにおいて基本的に抑えておかなければ行けない点も一通り網羅している。

ロゴは企業がやっていることを示す必要はない 歯医者のロゴで歯を見せる必要はないし、配管業者のロゴでトイレを見せる必要はない、インテリアショップのロゴで家具を見せる必要はないのだ。

また、技術的な話だけでなく、見積もりについても描いてある。印象的だったのは、ピカソが描いたスケッチの話を用いて、経験による金額の上乗せを説明している点である。

「この絵にどうしてそんなにお金がかかるの?ほんの数秒しかかからなかったじゃない」
「マダム。それを学ぶのにこれまでの人生がかかりました」

成功事例だけでなくTropicanaなどの失敗事例も掲載している点が面白い。本書を通じて多くの素晴らしいロゴに出会う事ができたし、またロゴデザインがしたくなった。

参考サイト
davidairey.com
logodesignlove.com
identitydesigned.com

関連書籍
「It's Not How Good You are, It's How Good You Want to Be」Paul Arden
「Design Is a Job」Mike Monteiro
「Identify」Chermayeff & Geismar & Haviv
「The Win Without Pitching Manifest」Blair Enns
「Steal Like an Artist」Austin Kleon
「Thinking with Type」Ellen Lupton
「Designing Brand Identity」Alina Wheeler
「Lateral Thinking」Edward de Bono
「The Art of Client Service」Robert Solomon
「Bob Gill So Far」Bob Gill
「A Smile in the Mind」Beryl McAlhone
「The Fortune Cookie Principle」Bernadette Jiwa
「Seventy-nine Short Essays on Design」Michael Bierut
「The Geometry of Type」Stephan Coles
「Aesop's Fables」Aesop
「The Design Method」Eric Karjaluoto
「Work for Money, Design for Love」David Airey

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
その時期にもっともDVDを売り上げる「ハケンアニメ」を目指すプロデューサーやアニメーター達の様子を描く。

最近はあまりアニメを見る機会がないが、別に興味がない訳ではなく時間が取れないだけ。僕らが子供の頃とは違って今はアニメは深夜に放映されることが多く、またそこに割かれるお金や人も大きくなっているようだ。本書はそんなアニメ制作の様子を3人の登場人物に焦点をあてて描く。

1人目はプロデューサーである有科香屋子(ありしなかやこ)。才能を認めている監督に存分に力を発揮してもらうために振り回されながらも奮闘するのである。アニメーション制作の現場を描く様子には、アニメと小説という風に形は違うけれども、同じようにクリエイティブな仕事をする著者辻村深月が、普段感じているだろうことがにじみ出てくるのが面白い。例えば、香屋子(かやこ)に対してアニメーターがこんなことを言うのだ。

勝てると思いますよ。あの人、人の顔覚えないから。そこが弱点。

きっと辻村深月自身が人の顔を覚える人に対して特別な思いを抱くのだろう。こういう部分がフィクションを単純に「作り話」として済ませられない理由である。フィクションでありながらも現実に適応できる考え方が多く埋め込まれている作品こそ僕に取っての「いい作品」である。

ちなみに、2人目の登場人物は法律を学んだ後にアニメ業界に転身した映画監督斉藤瞳(さいとうひとみ)である。女性でありながらもドライな正確な瞳(ひとみ)は、声優やプロデューサーやアニメーターなど現場のいろんな人との関係に悩みながらも、自分の理想とする作品を作り上げて行くのである。

3人目はアニメーターで驚くほど上手い絵を描く並澤和奈(なみさわかずな)。絵を描くのが好きで仕事をしているが、自らオタク女子と認識しており、リア充にコンプレックスを持っている。もっとの多くのページが割かれているこの和奈(かずな)の章は、アニメの世界に没頭する「オタク女子」と呼ばれる女性の複雑な心を爽やかに描く。

和奈(かずな)が制作に関わったアニメの舞台となった地方の街が「聖地巡礼」によって観光を盛り上げようとしているなか、和奈(かずな)自身もその活動の担当を任され、熱血公務員宗森(むねもり)と協力することとなるのである。地方公務員の「リア充」宗森(むねもり)の地域を盛り上げようとする努力を目の当たりにするなかで、少しずつ和奈(かずな)の心が変化して行く様子が面白い。

理解できない相手のことが怖いから、仰ぎ見るふりをして、この人を突き放して、下に見ていた。自分は非リアで、充実した青春にも恋愛にも恵まれてないんだから、これくらいのことを思う権利があると、勝手に思っていた。人より欠けたところが多い分、自分の方が深く物を見てるんだからと自惚れていた。

そしてそれぞれがすばらしいアニメを制作することを目指しやがてハケンアニメが決まるのである。時間をとっていいアニメが見たくなる爽やかな1冊。

【楽天ブックス】「ハケンアニメ」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世の中には成功する子と失敗する子がいる。自分の子供を成功させたくて、お金をかけて教育を施したり、厳しくしつけたりする親がいるが、果たしてそれは正しいのだろうか。

まず誤解しないで頂きたいのは、本書で言う「成功」とは、いい大学に入ったり、いい成績を取ったり、という「短期的な成功」ではないという点である。逆境のもくじけず、物事に挑戦するこころを常に持ち、それによって人生を幸せに生きることが本書の言う「成功」なのである。

まず本書が紹介しているのが、子供時代の逆境によるストレスと成人してからの人生のネガティブな結果には明らかな相関関係である。ストレスが発達段階の体や脳にダメージを与えるのというのである。しかし、一方で親の愛情によってそのストレスは軽減することもできるのだという。つまり、不幸な境遇や貧しい家庭に育っても、親が愛情を注いで育てることで将来成功をする心を持った子供は育てることができるのである。

そしていくつかの教育機関と人に焦点を当てている。そのうちの一つがKIPPアカデミーである。KIPPアカデミーは革命的な教育で低所得層の子供達の成績を向上させ多くのメディアにも取り上げられたにもかかわらず、卒業生のうち大学を卒業した者はわずか21%だった。「一体卒業生達が大学を卒業するために何が必要だったのか」KIPPの創立者であるレヴィンは成績以外の生徒達に必要な者を探し始めるのである。

後半ではチェスの強豪であるIS318の生徒達とチェスの指導者スピーゲルのやり取りを紹介している。スピーゲルが試合に負けた生徒達に必ず試合の後、自分の駒の動かし方と向き合わせて検証させているシーンが印象的である。負けと向き合い、困難と向き合うことの一つの答えだろう。また同時に、チェスだけに打ち込むことが本当に子供達にとって幸せかどうかはわからないとしているスピーゲルの態度も興味深い。

結局本書はどんな育て方が正しいとか、どんな人生が幸せであるとか書いてはいない。貧困問題など現在アメリカ社会が抱える問題を指摘して締めくくっている。

多くのことを考えさせる1冊。機会があれば定期的に読み返したい。

KIPPアカデミー
The Knowledge is Power Program (KIPP) is a nationwide network of free open-enrollment college-preparatory schools in under-resourced communities throughout the United States.(Wikipedia「Knowledge Is Power Program」)

関連書籍
「オプティミストはなぜ成功するのか」
「ちいさなことへのこだわり」(未邦訳)「Sweating the Small Stuff」
「情熱教室のふたり」ダイヤモンド社
「特権の代償」(未邦訳)「The Price of Privilege」
「過食にさようなら」デイヴィッド・ケスラー
「ゴールラインを超える」(未邦訳)「Crossing the Finish Line」
「本物の教育」(未邦訳)「Real Education」
「ここに子供はいない」(未邦訳)「There are No Children Here」
「野蛮なる不平等」(未邦訳)「Savage Inequalities」

【楽天ブックス】「成功する子失敗する子」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
度重なる体調不良によって敗退することの多かったジョコビッチは医師のアドバイスで食事を買えてから劇的なる変化を果たし、ついに世界ランキング1位に上りつめた。そんなジョコビッチが食事の重要性について語る。

子供時代やこれまでの成功の過程を挟みながら、食事に対する考え方を書いている。ジョコビッチの食事の改善はひと言で言ってしまえばグルテンフリーである。グルテン不耐性という小麦製品に対して過敏な体だったために試合中に不調を起こしていたのである。グルテンとは大麦や穀物に含まれるタンパク質でパンに柔らかさを出すために使われるが、一部の人間はグルテンを消化できないために深刻な肉体反応を引き起こすのだと言う。

私たちのほとんどが大なり小なり恒常的なグルテン反応ーー体が重かったり、疲れたり、気弱になったりーーを経ている可能性が非常に高い。そして、こういった症状を普段の生活から来ている疲れだと思い込んでいる場合が多いはずだ。

本書はこのようにグルテンというものの存在を意識を向けてくれるが、すべての人にグルテンフリーを勧めているわけではない。人には、乳製品、カフェインなどそれぞれ体に合わない製品があり、それを知ることによってもっと健康な生活を送れるというのである。本書はそんな自分にあわない食べ物を見つける方法として、14日間一部の食物を食べない期間を設け、体調の変化を見ることを勧めている。実際、ジョコビッチはグルテンフリーを最初に14日間試したとき、1週間で毎日悩まされていた鼻づまりが消えたのだそうだ。確かに14日だけなら我慢できるものもたくさんあるだろう。実際体に合うか合わないかわからないのに怪しい食べ物をすべて辞めるよりも手軽に始められる。

また、ジョコビッチの食事に対する真摯な向き合い方にも感心する。ジョコビッチはそれぞれの食べ物を口にするときに、筋肉になるように、エネルギーになるように、と意識しながらゆっくり食べるのだそうだ。部分的にでもぜひ見習いたいと思った。

セリアック病
小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患。(Wikipedia「セリアック病」

【楽天ブックス】「ジョコビッチの生まれ変わる食事」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アジャイルという言葉をよく耳にするようになってすでに数年が経った。言葉としては何度もその説明を聞くことはあっても、なかなか実際の進め方がわからない。本書はそんな人がさらに深くアジャイルな開発を理解するのに役立つだろう。

アジャイル開発の手法がいくつかあるなかで、本書はエクストリーム・プログラミングに焦点をあてて書いている。正直、まだスクラムやリーンとの詳細な違いがわからないが、よく使用される言葉はスクラムでは次のように対応するということだ。

イテレーション(スプリント)
マスターストーリーリスト(プロダクトバックログ)
顧客(プロダクトオーナー)

全体を通じで感じるのは、結局臨機応変にプロジェクトを走らせることを突き詰めた結果がアジャイルという手法だということで、正確に定義された枠組みはないし、まだまだ発展の余地はあるということ。むしろアジャイル開発との比較で描かれる、アジャイルではない開発手法の無駄の多さに驚かされる。

また本書ではアジャイルなメンバーとしてゼネラリストが求められていると書いているが、本書では相変わらずデザイナーとプログラマーの垣根を維持している点が興味深い。デザイナーもプログラムを、プログラマーもデザインをできることこそゼネラリストの理想形だと思った。

後半では著者自身それぞれの項目だけで1冊の本が書けるというユニットテスト、リファクタリング、テスト駆動開発にも軽く説明している。その内容よりもそれに抵抗する人の考えや、それによって説得方法が見えてくる点の方がありがたい。

現在僕の会社ではアジャイルコーチを迎えてアジャイル開発を少しずつ取り入れているが、そこで話している内容をさらに理解するのに役立った。

【楽天ブックス】「アジャイルサムライ 達人開発者への道」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本代表主将までのぼり詰めだ著者はその徹底した生き方の力の源の一つとして「言葉の力」を挙げている。イビチャ・オシム、岡田武史、貴重な出会いのなかで著者が授かった言葉を紹介している。

本書のなかではいくつも印象的な言葉が紹介されているが、なかでも印象的だったのはこの言葉。

人生において『成功』は約束されていない。しかし人生において『成長』は約束されている

田坂広志さんの「未来を拓く君たちへ」のなかで紹介されていた言葉だそうである。また、この言葉は以前も聞いたことがあるような気がするが、マジックジョンソンのこの言葉も印象的である。ちょっと長いのだが全文引用させていただく。

『お前には無理だよ』と言う人のことを聞いてはならない。
もし、自分で何かを成し遂げたかったら、できなかったときに
他人のせいにしないで、自分のせいにしなさい。
多くの人が、僕にも『お前には無理だよ』と言った。
彼らは、君に成功してほしくないんだ。
なぜなら、彼らは成功できなかったから。
途中であきらめてしまったから。
だから、君にもその夢をあきらめてほしいんだよ。
不幸な人は不幸な人を友達にしたいんだよ。
決してあきらめては駄目だ。
自分のまわりをエネルギーであふれたしっかりした
考え方を持っている人で固めなさい。
近くに誰か憧れる人がいたら、その人のアドバイスを求めなさい。
君の人生を帰ることができるのは君だけだ。
君の夢が何であれ、それにまっすぐ向かって行くんだ。
君は、幸せになるために生まれてきたんだから

一方で「この言葉のどこに動かされたんだろう?」と思うような言葉も紹介されている。きっと言葉の重さは、その言葉を構成する単語や文と同じくらい、その言葉を与える人や、その言葉を与えられる状況に影響されるのだろう。そして本書で言葉について語るなかで、中澤の支えになった人々との交流が描かれる。悔しさや悲しさや情けなさや優しさ、そういったものすべてを自分の力にしてきたことが伝わってくる。

【楽天ブックス】自分を動かす言葉

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

「中級スペイン語」ということで、一通りスペイン語の文法を学んだ人向けの内容である。どんな言語にも言えることかもしれないが、スペイン語においても接続法まで一通り学んで本をスペイン語で読み始めると、どうしても理解しにくい文章や、使い分けの難しい文章に出会うことが多々ある。本書はそんな悩みをすべてではないが解決してくれるだろう。

例えば、スペイン語においては主語を省くことができたり、主語がある場合でもその位置は英語ほど明確に決まっていない。そのため、読むときには理解はできても、実際書いたり話したりする状況では、主語をどこに置くべきか悩むことがある。本書はその点についてこのように説明している。

聞き手との間であらかじめ共有されている情報を旧情報と呼び、新しく情報価値のある情報を新情報と呼ぶとすると、旧情報、新情報の順に現れることが普通です。通常<主語→動詞>の順になるのは、主語が文の話題になることが多いからです。したがって、主語が新情報である場合には、語順が入れ替わります。

その他にも英語学習の後にスペイン語に入った人には非常に悩ましい箇所をわかりやすく解説している。文法の基本的な部分に軽く触れた上で、文法の先の、実際に使われている傾向に踏み込んで解説している点が非常に有り難い。

また、最後の数ページではスペイン語の成り立ちや地域による違いについて説明している。ラテン語の変化からアラビア語やアメリカ大陸の先住民の言語の影響など言語の発展に対する興味も喚起してくれる。また、スペイン語の地域差についても説明している。例えばvosotrosとustedesの使い分けや、直接人称代名詞の地域による傾向等、どれもある程度スペイン語を学んでいる人には避けて通ることのできないことなので少しずつ覚えて行きたいと思った。

もちろん1回読んだだけですべてを理解すること等できないのでスペイン語に触れながら繰り返し読み返したい。

【楽天ブックス】「中級スペイン語読みとく文法」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イランイラク戦争の際、日本人を救出するためにトルコが航空機を飛ばした話は有名である。それは1800年代後半に起きたエルトゥールル号の恩返しであった。

僕自身もトルコを訪れた事があり、トルコ滞在中には日本が本当にトルコに愛されている事を感じてその理由を知ろうとした事もある。だから、エルトゥールル号の物語とイラン・イラク戦争のときのトルコの行動は知識としては知っていたが、それが本書で書かれているような劇的なものだとは思っていなかった。

本書で描かれている、日本人のトルコ人の救出や、また一方で、トルコ人達の日本人の救出は、決して政治的な駆け引きなんかではなく、一般の人々の助け合いの結果なのである。トルコに行った事ある人や、これからトルコに行こうとしている人にはぜひ読んで欲しいと思った。

また、トルコ共和国の初代大統領であるアタチュルクについてもトルコに行ったときに名前だけは知っていたが、日本人から大きな影響を受けていたことは初めて知った。

恩を忘れないトルコ人の姿から僕ら日本人も学ぶ物があるだろう。

【楽天ブックス】「海の翼 エルトゥールル号の奇蹟」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
なぜアップルやグーグルやトヨタは成功し、日本の電気・半導体・通信・IT企業は完敗してしまったのか。それは「タレント」の重要性を理解していたか否かなのだ。本書はそんな視点で企業が発展して行くためにどのようにしてタレントと向き合うかを語っている。

今や、材料や労働力はどこでも手に入れる事ができるので、物を作るのは人件費や物価の低いところを選ぶ事ができる。そうなると企業として重要なのは何なのだろう。本書はそれを「設計情報」だと主張する。優れた設計情報」さえできあがれば、あとはそれをひたすら各地で現実に存在する物やサービスに転写するだけなのである。そしてその「設計情報」を作る人こそが「タレント」と呼ばれる人なのである。

「タレント」というとなんとなく「すごい人」という印象しかないが、プロフェッショナルやスペシャリストと比較するとタレントというものが何なのか分かりやすいだろう。

単なるスペシャリストは、知識を活用する「目的」よりも「知識そのもの」にアイデンティティを持っている人が多い。プロフェッショナルも同様である。一方、優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ、「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに際立った特徴がある。

世の中がただ一言「天才」とか「才能のある人」と読んでいる人の正体が分かった気がする。

また本書は後半でタレントを育む事の成功例としてトヨタの主査制度を挙げている。興味深いのは、トヨタの主査制度は日本よりもアメリカで高く評価されている点だろう。

著者は言う。アメリカは日本ほど新たな文化を創造するのは得意ではないが、いいものを徹底的に分析して取り入れる能力は非常に高く、日本で生まれた主査制度もそうやってアップルなどの企業で成果を上げたのである、と。

アメリカという国の見方が少し変わった。

【楽天ブックス】「「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「ドラゴンタトゥーの女」という印象的なタイトルで、映画にもなったこのミレニアム3部作は、「面白い本」と聞かれたら必ずタイトルである。不幸にも著者のスティーグ・ラーションが亡くなったことで、続編を諦めていたのだが、本書によって別の著者による4作目がつくられたのである。

正直、著者が変わったことで本書は懐疑的に見ていた。実際序盤は描写がややしつこく、シリーズ三部作までに感じられたテンポの良さが失われてしまった印象を受けたが、中盤から物語が大きく動き出すとそんなことも気にならなくなり十分に楽しむ事ができた。

物語は、人工知能の第一人者であるBalderが殺害されることから始まる。しかし、幸か不幸かBalderの自閉症の息子Augustがその現場を目撃していたのである。それに気付いた犯人だが、その不自然な行動から自閉症と判断し、自閉症の子供であればわざわざ目撃者として殺す必要はないとその場を去る。実はAugustは自閉症でもサヴァン症候群という見た物を強烈に記憶し、写真のような絵を描く事のできる能力を持っていたのである。それを知ってAugustを殺そうとする犯罪集団とAugustを守ろうとするBlomkvistやSalanderを描く。

得意のハッキングで誰よりも早くAugustの危険を察知して救出するSalanderは、これまでの4作品のなかではもっともSalanderが優しくかっこいい人間として描かれている気がする。それはAugustという少年と行動することになったこの物語のせいなのか、著者が変わったせいなのかはわからないが、Salanderに対する見方が変わるかもしれない。

また、Augustの救出劇だけでなく、雑誌社ミレニアムの社員達も重要な活躍をする。特に若い優秀なAndrei Zanderは重要な役割を担う鵜。若く優秀でジャーナリズムを愛するAndrei Zanderの好きな映画、好きな小説が本書で触れられていたので挙げておく。

そして、やがて現れるSalanderの双子の姉妹Camilla Salanderの影。里親の証言からCamallaの歪んだ考え方が明らかになって行く。

今後も続編があることを感じさせる終わり方で、次回作品が楽しみである。

Elliptic Curve Method
The Lenstra elliptic curve factorization or the elliptic curve factorization method (ECM) is a fast, sub-exponential running time algorithm for integer factorization which employs elliptic curves.(Wikipedia「Lenstra elliptic curve factorization」)

レナード・ノーマン・コーエン
カナダのシンガーソングライター、詩人、小説家。日本では主にシンガーソングライターとして知られ、熱心なファンも多い。80歳を超える現在もアルバムをリリースするなど精力的に活動中。(Wikipedia「レナード・ノーマン・コーエン」

「供述によるとペレイラは... 」
ファシズムの影が忍びよるポルトガル。リスボンの小新聞社の中年文芸主任が、ひと組の若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。タブッキの最高傑作といわれる小説。

「Dark Eyes」ニキータ・ミハルコフ

1987年のイタリア語とロシア語の映画で、19世紀を舞台に、ロシア人と恋におちたイタリア人を描く。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織というのは大きくなるに従って昨日しなくなって行く。無駄なミーティングに費やす時間が多くなり、忙殺される人がいる一方で、暇な人もいる。本書は組織が陥りがちなこととその改善方法や予防を著者の経験から説明する。

「組織戦略」という言葉からは、むしろ企業などの組織を競合とどのように渡り合って行くか、を描いたような印象を受けたが、本書で描かれているのは、むしろ組織内部が機能するための方法である。

まずは組織を単純なヒエラルキーと捕らえる事から説明する。組織とは、業務をプログラム化し、そのプログラムで対応できない状況のみを管理者・経営者が判断するという形を基本としているのだ。この状況が機能しなくなるのは、例外処理が増えすぎて管理者・経営者が忙殺されてしまうことから起こるのだそうだ。本書はこんな状況に対して5つの解決策を挙げて説明している。

(1)現場従業員の知的能力アップ
(2)情報技術の装備
(3)スタッフの創設
(4)事業部制
(5)水平関係の創設

中盤では、事業部制、職能性、マトリクス組織という3つの代表的な組織構造についてメリットとデメリットを説明している。

事業部制 各事業部の独立性を高めていくのならば、なにもひとつの企業としてまとまっている必要などないはずである。短期的な市場への適応には都合が良いのだが、効率性が低下してしまうといった問題が出て来やすい。

また、マズローの欲求階層説を挙げて、日本の多くの企業が「自己実現欲求」を過信していると語る。

マズローの欲求階層説
(1)生理欲求
(2)安全・安定性欲求
(3)所属・愛情欲求
(4)承認・尊厳欲求
(5)自己実現欲求
何かと言えば自己実現という言葉に酔いしれている会社は、承認・尊厳欲求について深く考える思考を止めてしまっている。承認・尊厳欲求を充足するためには、ポストとカネ以外にも多様な方法があることを考えなくなっていく。

本書の多くは僕自身が過去企業に属していて感じた事を再確認させてくれた。今後組織作りに携わる事が会ったら繰り返し読み直したいと思えるほど内容の濃さを感じた。

【楽天ブックス】「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「学級方向立て直し請負人」という異名を持つ菊池省三の教育方針を、元生徒である著者が描く。

学級崩壊はなぜ起きるのか。序盤は現状の教育の現場と、菊池が立ち直らせた生徒達、立て直したクラスについてのエピソードとその方法について描いている。

まず印象的なのは本書のなかで「ほめ言葉のシャワー」と呼ばれる取り組みである。「ほめ言葉のシャワー」とは毎日帰りのホームルームで、その日の日直がみんなの前に立ち、生徒がそれぞれその人のいいところを褒めるのだ。いい行動を褒められる事で、引っ込み思案な生徒も、自分の存在価値を認識するのである。そして、普段素行の悪い生徒も、自分にもいいことができるということを学ぶのだそうだ。

その描写を見て思ったのは、両親に褒められることのない生徒というのが決して少なくないという点だろう。「ほめ言葉のシャワー」という取り組みによって変われる生徒がたくさんいるのは、その裏返しなのだ。

僕自身が比較的いい育てられ方をしたために、そのような状況で育てられる環境というのが想像しにくいのだが、教育というものを突き詰めるためには、多くの子供達がどのような環境で育てられているかを理解するのは大切だと思った。

菊池が生徒たちに教えようとするものの多くは、一生通じるような考え方ばかりである。

「怒る」と「叱る」の違い
怒るとは、「自分中心の感情で相手に接すること」。叱るとは、「相手の存在を認め成長を願って強く意見すること」。
「群れ」と「集団」の違い
個人が自分らしさを発揮して自立しているグループが「集団」。個人の考えよりもその場のなんとなく流れる空気、特にマイナスの空気が勝るのが「群れ」。

本書は教育に関する内容について書かれているが、大人になって誰もが一人前と認めて、自分を叱ってくれないと思う人は、菊池が生徒達に教えようとしていることに感じるものがあるだろう。

一生懸命だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳が出る

【楽天ブックス】「蘇る教室」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
高校を中退して東京に出て、離婚歴のあるみすみと、写真家を目指しながらも満足に生活費を稼ぐ事のできない俊彦(としひこ)の2人が、人生の数々の障害を乗り越えながらも共に生きて行く様子を描いている。

数年前に読んで、今でも好きな本である同じ著者の「私という運命について」は女性を主人公としているが、本作品は俊彦(としひこ)という男性目線で展開する。

写真家として大成しなかった俊彦(としひこ)はやがて小説家を志すようになる。成功間近で不幸が重なりつらい日々が続き、さらに病気に悩まされたりする中、妻のみすみが俊彦(としひこ)を支える。また一方で、みすみも流産を繰り返し失意の日々を送るときは俊彦(としひこ)がその支えとなる。

決して幸せとは言えない人生をお互いに支え合う様子がなんとも心に染みる。人生にはいい時もあれば悪い時もあり、そんななかの平穏が人生にとてもっとも幸せな瞬間だったいるするのだ。自らの人生を振り返る俊彦(としひこ)はみすみと過ごしたいくつかの時期に対してこんな風に語るのだ。

いまにして思えば、手をつなぎ、毎日と言っていいほど共に須磨寺を歩いたあの頃が、私たち夫婦にとって最も幸福な季節だったのかもしれない。


いまにして振り返れば、地蔵通りに転居してからの数年間は、私とみすみにとって最も穏やかな日々だった。

幸せは、過ぎ去って初めて気付くものなのだと、改めて気付かせてくれる。

安定した人生を相手に提供するのではなく、不安定な人生を共に乗り越えて行くという生き方こそ素敵で、2人の間に強い絆を作るものだと教えてくれる。

【楽天ブックス】「快挙」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アメリカの起業家であり、スペースXのCEOであるイーロン・マスクについて語る。

スティーブ・ジョブスの次に世界を変えるのはこの男、と言われるイーロン・マスク。正直、最近になって初めてイーロン・マスクという名前を知って興味を持ったのだが、本書はそんな興味をさらに大きくしてくれる。

彼のやってきたことのなかで最も印象的なのはスペースXの取り組みだろう。彼は、人類が宇宙を旅する事を本気で実現しようとしているのだ。宇宙に行く事は可能だとしても、それが一般の人間が楽しむレベルになることはないし、そもそもそこまで宇宙に行くことに魅力もメリットもない、と多くの人は考え、だからこそ、世の中の企業は宇宙という分野に注力する事はなかったのだろう。しかし、マスクはそんな常識を覆し、古い権力や考え方に振り回されないようにロケットに必要なすべてをスペースXで作ることを実現して行くのだ。

AppleのiPhoneなどのかつてのイノベーションは、今ある物を改善したり、今はある物の隙間に新たなチャンスを見い出すようなものだったが、スペースXの取り組みは、これまでのイノベーションとはまったく違った印象を与えてくれる。それは誰も目を向けていなかった先へ人類を導く取り組みなのだ。

また、マスクはスペースXだけでなくテスラという企業で今までにない車を作る事にも取り組む。こちらについても本書を読むまで知らなかったが、多くの失敗を経て完成したテスラのモデルSにとても興味をかき立てられてしまった。

マスクのように、何事に対しても情熱的に生きてみたいと思わせてくれる。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
旅を続ける男ラゴスを描く。

ラゴスが旅しているのはどこだろう。アジアのどこか、モンゴルや中央アジアのあたりだろうか。しかし、ある民族と行動するラゴスは集団転移を日常的に自然な行動として行うのである。どうやらこれは、僕らがいる世界とは異なる世の中を描いているようだ...。

そんな不思議な世界観を本書を見せてくれる。そして、いくつか非現実的なことが起きながらも、ラゴスの旅は、人と出会い、別れを惜しみながらも再び旅に出る、の繰り返しで、時には恋をしたり、トラブルに巻き込まれたりと、どんな世界にも、時代にも共通する旅の魅力であふれているのだ。

本書でラゴスと旅をする中で、それはいつのまにか、場所を移動する旅と時間を超える人生という旅が重なって感じられるから不思議である。恋愛、労働、教育、学習、子育て、確執、そんな連続で人生は進んで行くのだ。短くもはかない人生の一つ一つの出来事を一生懸命生きるラゴスの姿に、心に染み入るような何かを感じるだろう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
プロテニス選手のラファエル・ナダルがその人生を綴る。

ナダルと言えば、僕の中ではフェデラーに次ぐ存在で、どちらかというと華麗さや美しさよりも、力強さや泥臭さを印象として持っていた。その印象は本書を読んでも大きく変わることはなく、むしろ意外だったのは、控えめなその性格である。5歳年下の妹マリベルとは頻繁に連絡を取り合い、両親の住むマヨルカ意外では落ち着いて過ごす事もできないのだという。

2008年のウィンブルドンのフェデラー対ナダルの決勝はもはや伝説であるが、本人にとってもそうだったようで、本書では大部分をその試合の重要な場面とそれに関連する出来事を描くことによって占められている。ナダルが語るその試合の様子からは、世界のトップの選手がどれだけ多くのことを考えているかが窺い知れる。1つの試合のなかでも、重要な場面、諦めるべき場面、ひたすら我慢して好機を待つ場面、など、僕らが思っている以上に多くのことを考えながらプレーしているのだ。

また、本書からは、ナダルの成功は家族や周囲の人間達に支えられたものだとわかる。プロサッカー選手を叔父に持つナダルや家族は、トップ選手がどんな生活を送るかを前もって知っていたのである。また、叔父のトニーはナダルのコーチとして、自ら考えて行動する事とつらい練習や試合の厳しい状況に耐える忍耐力を植え付けた。時に理不尽と思えるトニーの言動がナダルの成功の大きな要因となっていることは間違いないだろう。

周囲の人間が、うぬぼれを恥ずかしいこととして行動する様子も印象的である。ナダルの母も、ナダルのガールフレンドもナダルの成功によって華やかな舞台に出たりは決してしないのである。

スポーツに限らず、自分が日々取り組んでいる事に対して、さらに深く考えようと思わせる一冊。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第一次大戦中にイギリス兵として働いたアメリカ人の地図製作者が亡くなった。その両親は、彼が直前まで連絡をとっていた恋人を捜して欲しいという。調査を開始してすぐにMaisieは彼が戦場で撲殺されたことに気付く。

Maisieが依頼を受けてすぐに依頼主夫妻が襲われて入院するなど、謎が深まる一方で、Maisieの若い頃からのメンターであるMauriceが体調を崩し始める。本シリーズは常に、解決する事件と並行して、Maisieと周囲の人間関係が描かれるが、本書では特にMauriceとの様子が多く描かれる。Maisieは少しずつ衰えていくMauriceの姿を見て、彼が今までに与えてくれたものの大きさに気付くのである。そんなMaisieの様子は、一生に大きな影響を与えるメンターとの出会いの重要性を改めて教えてくれる。Mauriceのような優れた考えを持っている人間と若いときに出会えたMaisieの幸運を思うと、むしろ年齢を重ねた僕らは、今後育つ若き人々に重要な存在となりたいと思った。

また、一方で事件に関しては、地図製作者という仕事の魅力も伝えてくれる。戦時中に、他国の地図がどれほど重要だったかが伝わってくる。本書では「地図制作者は芸術家である」と語るシーンがある。地図製作者はただ機械的に地図を起こすのではなく、何をどこまで描くべきか、使用者の目的を考えて地図を造り出すというのである。

いつものように人生における多くのことを考えさせてくれる一冊。

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