「わが心のジェニファー」浅田次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30歳を過ぎたラリーは、恋人で日本を愛するジェニファーにプロポーズをしようとする。ところが、ジェニファーからプロポーズをする前に日本を見てくるようにお願いされたため、ラリーは休暇を取って日本へ行くことを決める。
日本を訪れたラリーを描いている。東京、京都、大阪と訪れるうちに、少しずつ日本の文化にラリーは魅了されて行くのである。興味深いのはラリーが祖父に育てられたところだろう。ラリーはその訪問の最中たびたび祖父や両親のことを思い返すのだ。特にラリーが、両親に育てられた友人たちと、祖父に育てられた自分を比較して、育て方の違いが現在の自分の性格に影響を与えていると考える部分が印象的である。

父親は息子の失敗をフォローすることができるが、祖父には孫にそうするだけの時間も体力も残されていないから、勇敢であることより堅実であることを求めるのは当然だからだ。

自国の文化を賞賛するだけの物語かと思ったが、最後はちょっと感動できる。
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「A Steep Price」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Tracy Crosswhiteのシリーズ第6弾である。
前作までで、恋人のDanと結婚して妊娠したその後の物語であり、序盤は妊婦という立場でありながらも、仕事との間に揺れ動くTracyの心が描かれている。そんなTracyの心を見透かしたように、子育ての先輩であるパートナーのKinsが語る言葉が今回もっとも印象的だった。

あっという間に、予想よりもずっと早く、子供達を大学に送り出さなくなるし、さよならを言わなければならなくなる。そして自分自身に問いかけるさ。あの数年間はどこへ行ったのだろう、って。写真を見て、いつ子供達が幼かったかすら思い出せなくて・・・。まだ子供達が小さかったらよかったのにって思うさ。あの頃に戻れたら、子供達がまだ家にいたらいいのにって。だから、家にいることを罰だなんて思わないでくれ。そう思っているのなら、いつかきっと後悔するから。

前作がTracyと同じチームの所属するDelが活躍する物語であったが、今回はDelのパートナーであるFazが主役のような活躍をする。妻であるVeraが癌と診断されたことにより動揺しながらも、家で思い悩んで過ごさないように、仕事に集中しようとするFazであったが、パートナーのDelが腰を痛めたことによって、代わりに新人のAndreaとペアを組むこととなる。ところが、そのAndreaが聞き込みの最中に、容疑者を射殺してしまうという事件に発展していくのである。
一方でTracyは行方不明のインド人女性Kavitaの捜査に関わっていく。Kavitaの友人で、同じくインド人女性のAditiの証言からは、インドの文化における女性の地位の低さが、アメリカで過ごす2人を苦しめていることがわかる。
並行して進む2つの事件と、事件の解決を進めながらも私生活に悩むTracyとFazの2人の様子から、人生のおける多くを学ぶことができる。
こんどはぜひKinsを主人公にしてほしいと思った。

「Interviewing Users」Steve Portigal

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

ユーザーインタビューの方法について書いている。本書は

デザインにおけるインタビューの重要性
インタビューのフレームワーク
インタビューの準備
ただ質問するだけでなく
インタビューの段階
どのように質問するか
インタビューをまとめる
インタビューを最適化する
調査結果でインパクトを与える

の9章からなる。特に学びが多かったのが「How to Ask Questions」の章である。
まずは、沈黙の使い方について書いている。インタビュー中はどうしても沈黙を埋めたくなるが、沈黙を埋めたいというプレッシャーを感じるのはユーザーも同じこと。だからこそ、その沈黙をユーザーに破らせてこそ、貴重な情報が得られるのだという。
また、「相手を正さない」というのも非常にインタビューにおいてやってしまいがちな間違いである。相手の助けたいという高からきたとしても、インタビューが終わってから行うべきなのだという。
例えばユーザーが「こんな機能があったらいいのに」と、すでにある機能について言った時、プロダクトに常に関わっているインタビュアーとしては、「その機能は実はここにあります」と言いたくなるが、一度それをやってしまうと、ユーザーは「ではこんな機能ありますか?」「こうやるにはどうしたらいいんですか?」という流れになってしまい、本来ユーザーの状況を理解するためのインタビューが、出張サポートへと変わってしまうからだという。
結局、インタビュアーが教えるのではなく、ユーザーから彼らの状況や考え方を教わるのが、ユーザーインタビューの目的なのである。そのことを常に念頭においておかなければならないのだろう。
「How to Ask Questions」の章は、今後もインタビューのたびに読み直して、インタビューするメンバーがほかにもいるならぜひ共有したいと思った。

「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」中原淳/金井壽宏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
企業・組織の学習・成長を研究する著者が企業の「学び」について語る。
序盤では、課長という中間管理職の地位の低下について触れ、過去数十年で複雑になってきた中間管理職の業務と求められている高度な能力について説明している。その後中盤からは、どのように組織の進歩を支えていくかについて説明している。
学びというのを考えた時、重要なのは「実践」か「座学」か、で考えがちだが、著者はもっとも大切なのはそのどちらでもなく「内省」だと言う。そして、内省とは別の人間がいて、その人のために自らの行為をアウトプットすることによって効果的に行われるのだと言う。
本書の言葉を借りるなら、僕自身はどちらかというと「経験主義」だったわけだが、確かに自身の過去を振り返って見ると、忙殺されていた時代(実践の時代よりも)よりも、程よい忙しさのなかに自身の行為を振り返る時間があったときのほうが成長した気がする。
今後部下を持ったり、社内の学びの強化に関わることも増えてくると思うが、そんな折はしっかりと「内省」という要素について考えたいと思った。

「一斉講義はすべて忘れさられる運命にある」。教える側は、人は、言えば聞き、聞けば理解し、理解すれば納得し、納得すれば行動するものだと思いがちだが、それはまったくの思い込みでしかない。

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「エンジニアリング組織論への招待」広木大地

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロジェクトにおいて不確実性をなくしていくための考え方を書いている。
日々アジャイルをベースとしてプロジェクトに関わる中で、さらにより良いマネジメントの方法はないものかとヒントを探して本書にたどり着いた。
読みにくい本ではあるが、いくつものヒントが散りばめられていた。よくある問題の一つとして作業にかかる時間の見積もりの精度があがっていかないという問題があるが、それについて本書では、2点見積もり、3点見積もりといった多点見積もりを紹介している。将来的に多点見積もりの理解も深めたいと思った。
また、印象深かったのがアジャイルとウォーターフォールの比較の話である。よく議論になる話ではあるが、アジャイルはチームマネジメントもその流れのなかに含んでいるため、アジャイルとウォーターフォールはそもそも範囲が異なるので比較すること自体がおかしいとしている。
後半に出てきた7段階の権限移譲は組織において誤解が発生しやすい部分であるので頭のなかにしっかり刻んでおきたいと思った。

命令する
説得する
相談する
合意する
助言する
尋ねる
委任する

である。
正直、期待したほどのインパクトのある内容ではなかったが、それでも新たな学びはあったと感じる。
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