「ローマ人の物語 危機と克服」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悪名高き皇帝ネロの後のローマ帝国の物語で、紀元69年から98年までを描いている。
ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミニティアヌスと皇帝が次々と変わる時代だが、ローマ帝国自体は比較的安定していたようである。首相が次々と変わる日本のように国民がどこか政治に無関心な様子である。それは見方を変えると、すでに国自体がそう簡単に不安定な状態にならないという確信が国民のなかにあったのだろう。
次々変わる皇帝のその政策やふるまいをここまで連続して見せられると、どのような人間が信用を失いやすく、どのような人間が長く信頼を勝ち取れるかという傾向が見えてくるようだ。「歴史から学ぶことは多い」と言葉としては多くの人が知っていて、使ったりもするが、ローマ帝国の皇帝たちから学べることは、企業の経営者たちにも共通している気がする。まだローマ帝国の歴史なかばではあるが、結局カエサルとオクタビアヌスに勝る皇帝はいないのではないかと思えてくる。
本書のもう一つの個人的な見所はポンペイで有名なヴォスヴィオ火山の噴火である。当時ヴォスヴィオ火山の麓の町で生きていた男性がタキトゥスという当時の作家に送った手紙の全訳はそれが確かに現実に存在した悲劇であることを伝えてくれる。
トライアヌスが皇帝になったことで終わる本書。ローマ帝国はこの後「五賢帝時代」と呼ばれる時代に入っていくのである。
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「自律神経が整う時間コントロール術」小林弘幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自律神経を整えるための生活方法を書いている。
正直僕自身も人生の効率化はかなり強く意識していて、本書に書いてある多くのこと、例えばミニマリズムや早起きや整理整頓、毎日の同じことを繰り返す、などはすでに生活に取り入れている。そんな僕でもいくつか現在できてなくて取り入れたいなと思えることがいくつかあった。

カバンの整理
朝はメールを見ない
スマホの通知機能はオフ
夕食は就寝の3時間前までに
記念日を大切に

どれも説明するまでもないかもしれないが、なかなかわかっていてもできないものだ。また、著者がロンドンの病院で働いていたときに出会った尊敬できる人の考え方が印象に残った。

I don’t believe anybody.

一見冷たく寂しく聞こえる言葉だが、人のせいにしないで常に冷静にいるために、また人の励ましや行為に心から感謝できる心構えなのだと、語っている。僕自身の普段の心構えと似ている部分もあるが、人へのアドバイスとして心に留めておきたいと思った。
全体的にはものすごい特別な内容が書かれているわけではない。試行錯誤をして生きてきた人がある程度の年齢に達すれば誰しもそれなりに独自の生き方や習慣を身につけており、そんななかの1人がそれを本にしてシェアしてくれたという印象である。もちろん上に書いたようにそのなかからも得られるものはあるが特別、知人にお勧めするほどの内容ではない。
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「美術館で働くということ」オノユウリ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東京都現代美術館の仕事の様子を描いた漫画である。
先日読んだ原田マハの「弾幕のゲルニカ」が以前か気になっていた学芸員という仕事に再び
目を向けた。
本書を読み始めて知ったのだが、どうやら展覧会などで美術館に訪れたときに、部屋の隅に座っている黒い服を着た女性は学芸員ではないらしい。学芸員という職業の名前を最初に知ったのが、美術館で座っている人を指してのことだっただけにこれには驚かされた。実際には、美術館にのんびり座っている暇もないほど、毎日忙しく、好きな画家や好きな美術に本当に深く関われる仕事だとわかった。
前半は展覧会などを企画する学芸員の仕事の様子が描かれており、美術館に所属する学芸員たちは自分のすすめる作家の展覧会を提案し、企画し、作家と一緒になって展覧会を開催するのだという。だから、ときには学芸員の意見が作家の作品に影響を与えることもあるのだという。そう考えると、決してただ美術を展示するだけの受け身な仕事でないことがわかる。人生で経験できる仕事はわずかだけど、こんな生き方もしてみたかったと思わせてくれるだろう。
後半のコレクション担当もとても面白かった。コレクション担当とは美術館の所蔵する作品を決定、管理する仕事で美術館が所蔵する作品を決める際には、何を後世に伝えるべきかを職員の間で議論して決めていくのだそうだ。そうやって議論のすでに決定された所蔵された作品が貸し出されたりする際には我が子を送り出す親のような気持ちになるのだという。
学芸員という仕事について知りたくて手に取った本ではあるが、むしろ美術の奥深さ、展覧会、美術館など、美術に対する考え方もさらに深めてくれた気がする。
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「Divergent」Veronica Roth

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その世界はDauntless、Amity、Erudite、Abnegation、Candorという5つの派閥で構成されていた。Dauntlessは恐怖を克服して生きること、Amityは人に対する優しさや道場を、Eruditeは知識を、Abnegationは自分を主張せずに人のためにいきること、Candorは嘘をつかずに正直に語り生きることを重視していた。若者たちは大人になるときに自分の所属する派を選択することができる。本書はAbnegationの家庭に生まれ育ちながら、Dauntlessとして生きることを選んだBeatriceの物語である。
最初の舞台設定がかなりおもいっきっているので世界観になれるのに時間がかかるかもしれないが、そんな世界を想像しながら描く著者の楽しさが伝わってくるようだ。主人公であるBeatriceは派の選択儀式の前の診断テストで試験管に、どの派にも向いていないDivergentであると見出されるが、同時にその事実は秘密にすべきだとも忠告される。なぜDivergentの事実を秘密にしなければならないのか不思議に思いながらもDauntlessで生きる選択をするのである。
その後はBeatriceのDauntlessとして生きるための通過儀式の様子を描いている。恐怖に打ち勝つことや、戦いの技術などを学びながら、その一歩でAbnegation以外の派から移った仲間たちとの交流に戸惑う様子などが描かれている。
もちろん物語はそこからそれなりにクライマックスへ向けて大きく動くのだが、結局BeatriceのDivergentが現代の人間の象徴であり、それぞれの5つの派が重視する強さ、優しさ、知性、謙虚さ、正直さのすべてのバランスをとることこそ重要であるということを物語を通じて伝えているように感じた。
続編もあるらしいが読み続けるかどうかはなんとも言い難い。暇つぶしとしてはいいかもしれないが、学び取れる部分は多くはなかった。

「鬼速PDCA」冨田和成

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
野村証券にて数々の営業記録を達成した著者が自身が日常的に行うPDCAを解説する。
「今更PDCA?」と思うかもしれないが、誰もが耳にしたことのあるPDCAでも、実際に機能するように取り入れようとすると簡単ではない。成果をどのようにCheckし、どのようにActionするか、というのが非常に重要であり難しいのである。
また、本書では、PDCAを初めて耳にしたときに誰もが感じる違和感、AのActionについて、わかりやすくAdjustとしている。ここは僕自身もDoとActionの違いについてなかなかつかめなかったので、わかりやすく人に説明するために取り入れたいと思った。
後半は実際のPDCAの実施の仕方を細かく書いている。説明を読めばどれももっともと思えるもので特に驚く部分はないが実際日常的にここまで徹底している人はいないだろう。ここまで徹底してやっている人が世の中にはいるんだということ知ることがなにより大きな刺激になった。本書でも触れているが、普段目に見えない自分の進歩を、数値化することで目に見えるようにすることで毎日がより楽しくなる、というのはすごい共感できることで他の人にもこの感覚を感じて欲しいと思った。
普段行なっている、運動や勉強など改めて数値化してもっと徹底してPDCAできないか考えさせてもらった。
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