「The Day of Jackal」Frederick Forsyth

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1963年フランス、「アルジェリアは永遠にフランス」をもっtーに活動する秘密軍組織OASは大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺を企てる。すでに多くの幹部が警察に目をつけられている中、暗殺を実現するための唯一の方法が、外国人の殺し屋を雇うことだった。その殺し屋のコードネームこそジャッカルなのである。
空港の名前にもなっているシャルル・ド・ゴールだが、実際にはその在任中にどのような政策を行ったのかをほとんど知らなかった。また、アルジェリアがもともとはフランス領だったことは漠然とした知識としては持っていながらも、どのように独立したかをこれまで気にかけたこともなかった。
本書は暗殺を依頼されたジャッカルが暗殺のために入念な準備をする様子と、その暗殺を防ぐ任務を課せられたClaude Labelが、わずかな手がかりを元にすこじずつジャッカルを追い詰めていく様子が描かれている。いくつものパスポートを用意し、いくつもの変装を用意して厳重に警戒されているであろうド・ゴールに近づくための準備をするジャッカルも、もた、外見的な特徴しかわからないじょうたいで、海外の警察のつながりをもとに暗殺者を絞り込んでいくLabelも、まるで本当に起こった真実を描写しているようで、とても1971年に書かれた小説とは思えない。
概要として語ってしまうと、「暗殺者とそれを捕まえる刑事」となってしまうが、その描写の緻密さは一読の価値ありである。

アルジェリア戦争
1954年から1962年にかけて行われたフランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争。(Wikipedia「アルジェリア戦争」

「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」マルティ・パラルナウ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
グアルディオラはFCバルセロナで選手として活躍し、その後FCバルセロナを監督として率いて黄金時代を気付いた監督。本書はグアルディオラが2013年に、それまでドイツのブンデスリーガで優勝の常連であったバイエルン・ミュンヘンの監督に就任してからの様子を、間近で取材して描いている。
僕自身がサッカーから離れて久しいが、個性豊かな20人近い選手をまとめげて一つの強力に機能するチームを作り上げる優れた監督の物語はいつだって非常の面白い。監督はどのようにチームを機能させるのか、どのようにメンバーのモチベーションを上げるのか、どのように長く成長する環境を作るのか、といった問題を突き詰めて優れたチームを作っていく。そのスタンスはサッカー以外にも応用できるだろう。
2013年時点で、グアルディオラはすでにFCバロセロナでの輝かしい経歴の持ち主で、さらに就任先のバルセロナはその時すでに優勝の常連国。おそらく周囲の人間は成功よりも失敗を予想したのではないだろうか。しかし、もはや改善しようがないようなチームをさらに強く安定したチームに改善していく様子は、「すべては永遠に改善できる」と改めて認識させてくれる。スペインのパスサッカーの文化をバイエルンに取り入れる様子も印象的だが、一方で「バイエルンにメッシはいない」と、完全にバルセロナのパスサッカーを取り入れるのではなく、ドイツの文化や身長など選手の個性に応じてバイエルンのサッカーを発展させていくグアルディオラのスタンスも刺激的である。
最も印象的だったのは選手の希望に折れて戦術を決め、レアルマドリードに0-4で大敗する場面である。グアルディオラほどの完璧主義者も失敗なしには前進しないのだ。そんな失敗の後のグアルディオラの失敗の受け止め方こそもっとも見習うべき点かもしれない。
ここしばらくサッカーを1試合通じて見る機会がなくなってしまったが、本書によってサッカーの戦術はまだまだ進歩していること、そして、以前よりも高く洗練されたチームが対戦している様子が本書から伝わってきて、またサッカーが見たくなった。本書で触れられている多くの重要な試合をYouTubeで見ながら読み進めてみれば、サッカーファンじゃなくても十分に楽しめるのではないだろうか。
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「人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣」金澤悦子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
僕自身人見知りだとは思っていないが、アルコールが苦手なので飲み会に参加する回数が一般的な人に比べて少なく、それによって人脈作りが不利だと感じている。何かその不利な部分を補う秘訣のようなものが見つかればと思って本書を手に取った。
すでにやっていることから、大事だとは思っていてもできてないことから、考えたことすらなかったようなことまで様々な手法、心がけが書かれている。
印象的だったのは、パーティなどで困った時。そんなときは、人に話しかけられなくて孤立している人を束ねる役割をするというもの。確かにこの方法だと、無理に話の輪のなかに入る必要もないし、孤立している人にとっては救世主として印象づけられることになるだろう。
またSNSでのイベントの誘いが増えた昨今、断りのメッセージもどうしてもさらっとしたものになりがち。しかし、単純に断るだけでなく、断っても別の人間にシェアすることによって自分の価値をあげられるのだとか。
いずれも普段の心がけしだいだが、人との接点を持っていろいろ試してみたいと思わせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣」

「A Win Without Pitching Manifesto」Blair Enns

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザイナーとして他のデザイナーやデザイン企業と差別化を図る方法について語る。
本書で繰り返し主張していることはタイトルにあるように「Win Without Pitching Manifesto」である。クリエイティブな業界で仕事をする人は、仕事を得るためにコンペに参加して、無料で提案内容を披露したり、値段を安くすることで、勝負するデザイナーや企業を見たことがあるだろう。ひょっとしたら自分自身がそのようにして仕事を取ってきているかもしれない。
しかし、値段を安くすることをしている限り、クライアントを完全に満足する仕事はできないというのである。そして、一度値段を安くすると、その負のスパイラルから永遠に抜けられないというのだ。「楽しい仕事をしているから、忙しくても満足」では続かない。本書はそんなクリエイティブ業界のよくある状況から抜け出すための次の12の話を語っている。

We Will Specialize
We Will Replace Presentations With Conversations
We Will Diagnose Before We Prescribe
We Will Rethink What It Means to Sell
We Will Do With Words What We Used to Do With Paper
We Will Be Selective
We Will Build Expertise Rapidly
We Will Not Solve Problems Before We Are Paid
We Will Address Issues of Money Early
We Will Refuse to Work at a Loss
We Will Charge More
We Will Hold Our Heads High

印象的だったのは、コンペでプレゼンをすることを、医者に例えてさとしている点である。「医者は診察をしないうちに薬を処方したりしない」と。つまり、クライアントの問題点をしっかり調査しないうちに提案をするのは間違っているというのである。
読み終えて思ったことだが、本書はクリエイティブな仕事の仕方について書いているが、自らの価値を少しずつ高めていく考え方としては、必ずしも仕事に限ったことではなく、人間関係にも適用できるかもしれないと感じた。

「星間商事株式会社社史編纂室」三浦しをん

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
川田幸代(かわたゆきよ)は社史編纂室に勤務する29歳。社史をまとめることが仕事なため、年配の社員や、退社した社員から話を聞いて情報を集めようとするが、過去のある時期に関して、関係者は頑なに口を閉ざす。一体その時代に何があったのか。
社史をめぐる業務が、やがて商社の海外進出の際の闇の歴史を暴き出すこととなる。すべてがフィクションとはいえ、同じようなことが実際にあったのではないかと考えさせられる。
ただ、残念ながら他の三浦しおんの作品のように読者を強烈に引き込むような面白いさは感じられず、また、なぜこのようなテーマで物語を描いたのかも感じられない中途半端な仕上がりだと感じた。
【楽天ブックス】「星間商事株式会社社史編纂室」

「Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書」Steve Mulder,Ziv Yaar

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Webサイト設計のためのペルソナの作り方についてまとめている。
ペルソナ設計という考え方は昨今多くの企業で認識されるようになってはきたが、その設計の仕方となるとよくわからない。本書はそんな人のためにペルソナの作り方を丁寧に説明している。
まず、ペルソナを作成するためのユーザー調査の油断として、定性的なアプローチ、定性的なアプローチと定量的な検証、定量的なアプローチという3つのアプローチがあり、それぞれの長所と短所を理解すべきだろう。またもう一つの軸として本書ではユーザーの発話とユーザーの行動という指標を用いている。定性的な調査は「なぜ」を明らかにし定量的な調査は「何が」を明らかにする、という言い方もしているがこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
本書はそんな考え方の大枠だけでなく、調査の方法、質問の作り方、そして調査結果をもとにどのようにしてどれだけのペルソナを作ったらいいかまで、非常にわかりやすく解説している。実際にペルソナ設計の際に、常に手元に置いておきたいと思える内容である。
後半では作ったペルソナをどのようにプロジェクトに組み込んでいくかの方法が書かれている。ペルソナは作って終わりではなく、プロジェクトに関わる人が常にペロソナの存在を意識するようになってこそ成功なのである。
【楽天ブックス】「Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書」