2015年11月アーカイブ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
旅を続ける男ラゴスを描く。

ラゴスが旅しているのはどこだろう。アジアのどこか、モンゴルや中央アジアのあたりだろうか。しかし、ある民族と行動するラゴスは集団転移を日常的に自然な行動として行うのである。どうやらこれは、僕らがいる世界とは異なる世の中を描いているようだ...。

そんな不思議な世界観を本書を見せてくれる。そして、いくつか非現実的なことが起きながらも、ラゴスの旅は、人と出会い、別れを惜しみながらも再び旅に出る、の繰り返しで、時には恋をしたり、トラブルに巻き込まれたりと、どんな世界にも、時代にも共通する旅の魅力であふれているのだ。

本書でラゴスと旅をする中で、それはいつのまにか、場所を移動する旅と時間を超える人生という旅が重なって感じられるから不思議である。恋愛、労働、教育、学習、子育て、確執、そんな連続で人生は進んで行くのだ。短くもはかない人生の一つ一つの出来事を一生懸命生きるラゴスの姿に、心に染み入るような何かを感じるだろう。

【楽天ブックス】「旅のラゴス」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
プロテニス選手のラファエル・ナダルがその人生を綴る。

ナダルと言えば、僕の中ではフェデラーに次ぐ存在で、どちらかというと華麗さや美しさよりも、力強さや泥臭さを印象として持っていた。その印象は本書を読んでも大きく変わることはなく、むしろ意外だったのは、控えめなその性格である。5歳年下の妹マリベルとは頻繁に連絡を取り合い、両親の住むマヨルカ意外では落ち着いて過ごす事もできないのだという。

2008年のウィンブルドンのフェデラー対ナダルの決勝はもはや伝説であるが、本人にとってもそうだったようで、本書では大部分をその試合の重要な場面とそれに関連する出来事を描くことによって占められている。ナダルが語るその試合の様子からは、世界のトップの選手がどれだけ多くのことを考えているかが窺い知れる。1つの試合のなかでも、重要な場面、諦めるべき場面、ひたすら我慢して好機を待つ場面、など、僕らが思っている以上に多くのことを考えながらプレーしているのだ。

また、本書からは、ナダルの成功は家族や周囲の人間達に支えられたものだとわかる。プロサッカー選手を叔父に持つナダルや家族は、トップ選手がどんな生活を送るかを前もって知っていたのである。また、叔父のトニーはナダルのコーチとして、自ら考えて行動する事とつらい練習や試合の厳しい状況に耐える忍耐力を植え付けた。時に理不尽と思えるトニーの言動がナダルの成功の大きな要因となっていることは間違いないだろう。

周囲の人間が、うぬぼれを恥ずかしいこととして行動する様子も印象的である。ナダルの母も、ナダルのガールフレンドもナダルの成功によって華やかな舞台に出たりは決してしないのである。

スポーツに限らず、自分が日々取り組んでいる事に対して、さらに深く考えようと思わせる一冊。

【楽天ブックス】「ラファエル・ナダル 自伝」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
10代の少年達を扱った4つの物語。

今の生き方のままではいけないと思いながら、それでもやりたいことも見つからず、毎日過ごす少年達。

何か結論があるわけではないが、もう感じる事のできない、10代の日々、とりとめもない時間がまだまだ続きそうな空気感が漂っている。今でもこのように毎晩クラブに通うような文化が高校生にあるのかわからないが、そんな時間に青春の時間を注ぎ込んだ少年達のこころが見えてくる。

【楽天ブックス】「少年たちの終わらない夜」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
美術部の先輩、香澄(かすみ)と芳野(よしの)に一緒に夏休みを香澄(かすみ)の家で過ごして作品を仕上げようと誘われた鞠子(まりこ)。その家は10年前に事件があった家だった。


久しぶりの恩田陸作品。相変わらず放課後の匂いが漂ってくるような、懐かしい雰囲気を醸し出している。毎回周囲を魅了するような美人が出てくるのも一つの特徴かもしれない。実際に目でみることのできるドラマや映画でなく小説だからこそ存在する事のできる「美人」である。

夏休みに憧れの先輩である香澄(かすみ)の家で過ごすことになった鞠子(まりこ)だが、周囲の人々から、気をつけるように言われる。一体香澄(かすみ)はなぜ鞠子(まりこ)を誘ったのか。やがてそれは10年前の事件につながっていく。

若干の非現実的さは感じさせるが、懐かしい夏休みの思い出が蘇ってくる。何でもできると思ったいた夏休みの始まり。1日の時間を持て余していた夏休みの日々。そして、たくさんあったはずの時間を巧く使ってこなかった事に気付く8月の終わり。もう味わう事のない懐かしい感覚を本書は提供してくれるような気がする。

【楽天ブックス】「蛇行する川のほとり」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校野球に打ち込んだ高校生のなかに野球ノートというものがある。単純に自分のことやプレーを綴るだけのものだったり、チームについて綴って監督とコメントを交換するものだったりと様々である。本書はそんな野球ノートを扱っている。

驚いたのは、強豪チームの選手達がつけていた野球ノートの内容である。強いチームの中心選手なのだから、ある程度野球について深く考えているのは当たり前なのかもしれないが、チームへの貢献のための目線や、家族や周囲の人々への感謝の気持ちなど、20歳になる前に彼らがこの精神状態に達していたということに驚かされ、また同時に、この経験は彼らのその後の人生に大きく役立つだろうと思った。

ノートを書く作業とは、目標に向かって正しい努力をするために、正しい考え方を養うためのものです。それは高校生活での野球が終わった後にも役立つことだと思うんです。実際に卒業生たちが就職して、仕事への取り組み方が、高校時代にノートで書いてきたことと全く同じだったと話していました。

書くという行為の意味をもう一度見直したくなる一冊。

【楽天ブックス】「野球ノートに書いた甲子園」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第一次大戦中にイギリス兵として働いたアメリカ人の地図製作者が亡くなった。その両親は、彼が直前まで連絡をとっていた恋人を捜して欲しいという。調査を開始してすぐにMaisieは彼が戦場で撲殺されたことに気付く。

Maisieが依頼を受けてすぐに依頼主夫妻が襲われて入院するなど、謎が深まる一方で、Maisieの若い頃からのメンターであるMauriceが体調を崩し始める。本シリーズは常に、解決する事件と並行して、Maisieと周囲の人間関係が描かれるが、本書では特にMauriceとの様子が多く描かれる。Maisieは少しずつ衰えていくMauriceの姿を見て、彼が今までに与えてくれたものの大きさに気付くのである。そんなMaisieの様子は、一生に大きな影響を与えるメンターとの出会いの重要性を改めて教えてくれる。Mauriceのような優れた考えを持っている人間と若いときに出会えたMaisieの幸運を思うと、むしろ年齢を重ねた僕らは、今後育つ若き人々に重要な存在となりたいと思った。

また、一方で事件に関しては、地図製作者という仕事の魅力も伝えてくれる。戦時中に、他国の地図がどれほど重要だったかが伝わってくる。本書では「地図制作者は芸術家である」と語るシーンがある。地図製作者はただ機械的に地図を起こすのではなく、何をどこまで描くべきか、使用者の目的を考えて地図を造り出すというのである。

いつものように人生における多くのことを考えさせてくれる一冊。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
県警の広報課に勤める森口泉(もりぐちいずみ)は県警の不祥事の苦情電話に悩まされていた。そんな中、その不祥事をリークしたと問いつめた報道に勤める友人が殺害される。責任を感じた泉(いずみ)は真実を知ろうと動き始める。

不祥事とは、ストーカー被害にあっている女性の被害届を受理せずに社員旅行に行った結果、その女性が殺害されてしまうというもの。それに限らず、後半では有名な宗教団体の事件への関わりが明らかになり、オウム真理教や桶川ストーカー事件など実際の出来事を物語に取り入れているような印象を受ける。

泉(いずみ)は刑事である磯川(いそかわ)とともに真実を知ろうとする。やがて事件は警察内部だけでなく公安などの警察内部の組織上の問題も関わっていることが明らかになって行くのである。

設定として、警察の汚職や公安との縄張り意識を扱った物語は既に多くあるため、あまり新しさは感じられなかった。結末もやや中途半端な印象も受けたが、同じ主人公による続編を期待できる終わり方だったのでその辺を期待したい。

【楽天ブックス】「朽ちないサクラ」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2015年世界ランキングを自己最高の4位まであげたプロテニスプレイヤーの錦織圭。彼が綴るブログを中心にその成長の経緯を描く。

基本的には錦織が普段綴っているブログと、その当時の戦績と、記者のコメントを並べているだけなので、読者はそれを読んで何かを感じるしかない。ラケット競技であるスカッシュを10年以上続けている僕にとっては、同じ相手と繰り返し戦い、その度に勝つために相手の弱点を分析して戦い方を変えていくという錦織のいるステージがとても羨ましくかんじた。また、そこまで突き詰めてスカッシュをやってこなかったことに考えが至り、1つの競技というものへの自分の取り組み方を改めて考えさせられた。

ブログの投稿はどれも錦織の生の声で、テニスの技術が優れている事をのぞけばどこにでもいる一人の青年だということが窺い知れる。特に何度も携帯をなくしたり、水没させたりする点にはとても親しみがわく。

錦織の今後の戦いに注目したい。

【楽天ブックス】「頂点への道」

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