2015年6月アーカイブ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
バレエダンサーであるミスティ・コープランドのこれまでの人生を描く。

バレエというと、裕福な家庭の女の子達がするものというイメージがあるが、著者であるミスティはどちらかというとかなり貧しい家庭の生まれである。それどころかMistyの母は何度も結婚と離婚を繰り返したため、強大も別々の父親を持ち、たびたび引っ越しを繰り返し、モーテルに住む事まであり、自分の部屋どころか自分の寝床を確保することさえ難しいような子供時代を過ごしたというから驚きである。

しかし、才能のある人間は才能を見つけて育てる人間を呼び寄せるのか、それともそんな人間に恵まれたから才能が開花したのか、いずれにしても、成功者の周囲には必ず鍵となる人物がいるものだ。バレエ教室を経営するCindyがまさにMistyにとってそんな人間となる。遅くにバレエを始めたMistyの才能に早くから注目し、教室まで遠くて通う事ができないMistyの送り迎えをするだけでなく、Copeland家がモーテルに住み始めたのを機に、Mistyを引き取って一緒に生活する事になる。そしてバレエを教えるだけでなく、その家庭事情ゆえに引っ込み思案で自らの意見を言うことをあまりしなかったMistyに繰り返し質問をして、本人の自我を育む事となったのである。

また、才能あふれるMistyだが、黒人ということで、未だにアメリカのバレエ界に根付く人種差別に何度も遭遇する事となる。しかし、過去の黒人バレリーナ達が自分に道を開いてくれたという信念と、自らも次の世代の同じような境遇の人々へバレエの世界を開くという姿勢で少しずつバレリーナとして成功していく。Mistyのバレエに対する姿勢はとても刺激となる。彼女の姿勢はまさに完璧主義者であり、目の前にあるモノを突き詰め、毎日時間を費やすことによって、人を感動させるような技術身に付くということを改めて教えられた気がする。

ステージでは照明がバランスと重心に影響を及ぼし、空気を暖め、それがトゥシューズを少し柔らかくする。衣装の重さや動きにくさはダンサーの動きに影響を与える。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
富士の樹海に絡んだ6つの物語。

印象的だったのは最初の物語である。人生に絶望して樹海で命を断った男性は、死んでからも意識を失う事なく、自らが首を吊った木に憑依し、自らの肉体が月日の流れとともに腐敗し、やがて骨となる様子を見ることとなる。死んだ後の世界が実際どのようなものなのかわからないが、一カ所で何もできずに固定され、意識だけ永遠に持ち続ける以上に苦痛な状態などあるだろうか。そんな今までにない恐怖を味わえるのは鈴木光司らしく、僕が彼の作品が出るたびに読む理由でもある。

本書はそれ以外にも5つの短編が含まれており、それおれが微妙に関連している。世代を超えた不幸の連鎖や希望が感じられるのではないだろうか。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京の大学の管弦楽団に参加する学生達の物語。大学が指揮者として迎えたプロ、茂実(しげみ)とバイオリン奏者として参加していた蘭花(らんか)は恋愛関係になる。

前半は蘭花(らんか)目線で物語が進む。将来を有望視される指揮者の茂実(しげみ)と付き合い始め、茂実(しげみ)の元彼女や、周囲の女性との関係に嫉妬する様子などとともに、同じオケの友人である留利絵(るりえ)や美波(みなみ)との人間関係を描く。美人な蘭花(らんか)の学生生活は少女マンガのようだが、やがて茂実(しげみ)との関係は悪化していく。

後半は蘭花(らんか)の友人である留利絵(るりえ)目線で進む。幼い頃から誰もがうらやむような美人の姉を持ち、自分自身はニキビを気にしてコンプレックスを抱えて生きる。やがて、留利絵(るりえ)は友人である蘭花(らんか)に固執していく。

個人的には前半の蘭花(らんか)の物語よりも、嫉妬やコンプレックスに苦しみながらも自分の存在意義を見いだそうとする留利絵(るりえ)目線の方が印象に残った。若くて未熟な心の動きを描くという意味では辻村深月作品らしいといえるが、いい作品の印象が強いため、少し物足りなさを感じてしまった。

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オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
アフリカのシエラレオネで、国境なき医師団の一員として働く著者がその日々の生活の様子を語る。

シエラレオネとはどんな国なのか。日本人にとっては、エジプトと南アフリカ以外のアフリカの国はどこも貧しいというイメージで同じなのかもしれない。しかし、本書によると、そのタイトルにもあるように、平均寿命最短、乳児死亡率最悪、妊産婦死亡率最悪など世界一悪い医療統計記録を多数保持しているという。

そんな貧しい国で、毎日人々を救っていると聞くと、ものすごくかっこいい話のようにも聞こえるが、本書で描かれる著者の日常の様子は本当に命がけである。HIV感染者や多くの伝染病が蔓延しているにも関わらず、手を洗うための水さえ手に入れることが難しいのである。

中途半端な気持ちで、「いつか発展途上国で医者として活躍したい」などと思っている人は、実際に行動を起こす前に本書を読んで観た方がいいかもしれない。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元世界銀行副総裁である著者が貧困と戦った日々を語る。

僕らは貧困という言葉を聞いたときどのようなイメージを持つだろうか。もちろん貧困がなくなるといいと思うし、ただお金を分け与えるだけではそれは解決しない事も分かっているし、世界から貧困を無くすためには多くの超えなければならない生涯があることも知っているだろう。しかし、僕らが知っているのはそれだけである。多くの人が貧困がなくなればいいとは思いながらも自分の人生に大きな影響を与えるほどの行動はできない。または行動力のある人でも実際に現地に行って数年の支援活動に参加する程度なのであろう。

本書の西水美恵子はそのどちらでもない、その立場多くの国の政策に影響を与える権力者達と貧困解決の方法を探り、時には彼らの態度を叱咤し、大きなレベルで貧困を解決しようとする世界を走り回る一方で、常に現地の人たちと交流しその実情を知ろう努力するのである。

そんな彼女が常に立ち返る思い出がある。

カイロ郊外の路地で、ひとりの幼女に出会った。ナディアという名のその子を、看護に疲れきった母親から抱きとったとたん羽毛のような軽さにどきっとした。ナディアは、私に抱かれたまま、静かに息をひきとった...。誰の神様でもいいから、ぶん殴りたかった。天を仰いで、まわりを見回した途端、ナディアを殺した化け物を見た。きらびやかな都会がそこにある。最先端をいく技術と、優秀な才能と、膨大な富が溢れる都会がある。

自然にナディアが仕事の尺度になった。何をしてもナディアに問うのが習慣になった。「生きていたら喜んでくれるかしら。あなたを幸せにできるかしら...」

本書のなかに登場する多くの権力者たちは、西水美恵子の視点によって、また報道などで見聞きするのとは違った印象を与えてくれる。真実には多方面の視点から物事を見つめる事によってのみ近づく事ができる、ということは改めて感じる。

世界をよくするために何ができるか。本書では、そんな理想を、理想として終わらせない生き方が見えてくる。きっと何か行動を起こしたくなるだろう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本の起業で、著者が世の中に必要と思う企業を取り上げる。

著者は多くの企業は被害使者意識に凝り固まっていると言う。そんな企業は5つの言い訳「景気や政策が悪い」「業種・業態が悪い」「規模が小さい」「ロケーションが悪い」「大企業・大型店が悪い」を繰り返して、変わろうとしないのだそうだ。それに対して、いい企業があるべき次のように表現する。

「会社経営」は次の5人に対する「使命と責任を果たすための活動」
1.社員とその家族を幸せにする
2.外注先・下請企業の社員を幸せにする
3.顧客を幸せにする
4.地域社会を幸せにし、活性化させる
5.自然に生まれる株主の幸せ

顧客が3番目に来ている点に多くの人は驚くかもしれない。しかし、今世の中の多くの会社が「経営者」や「顧客」を一番上に持ってきているために、人々の幸せを損なっているように見える。社員が仕合せになることで、顧客や地域にその幸せを共有しようとするのが本来のあるべき流れなのだろう。

中盤以降はそんな著者の目に止まったすばらしい企業を5つ紹介する。紹介される企業は例外なく、顧客よりもまず社員を大切にする点に注目すべきだろう。読者はこんな会社で働いてみたい、と思うのではないだろうか。素敵な会社を作りたいと感じさせてくれる一冊。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ワールド・カフェの効用とその方法について説明する。

ワールド・カフェという言葉を知ったのは本当に最近のことである。会社で毎日繰り返されるミーティングのように、人々が協力して物事の解決策や新しいアイデアを生み出すというのは多くの場所で行われていることではあるが、残念ながらそれはなかなか旨く機能しない。多くの場合、上司や部下がいて、立場を気にしたり、同じ職場やコミュニティの人間が集まっていて最初から考え方に偏りがあったりするからである。ワールド・カフェというシステムはそれにたいする一つの解決策とも言える。

本書はそんなワールド・カフェの手法とそれぞれの参加者が意識すべき考え方が説明されている。ワールドカフェで行うべきなのは「ディスカッション」ではなく「ダイアログ」である、とする点が印象的である。この考え方は、世の中の多くの企業で行われているミーティングなどでも取り入れられるべきだと感じた。「ディスカッション」と「ダイアログ」の違いのいくつかを挙げると次のようなものだ。

ディスカッション
正しい答えがあるはずだ。それは自分の答えだ
目的は議論に勝つこと
相手の立場を批判する
相手の欠点と弱点を探す

ダイアログ
誰もが良いアイデアを持っているはずだ。それらをもちよれば、良い解決案が見いだせるだろう
目的は共通の基盤を探すこと
すべての立場の再評価
相手の強さと価値を探す

ワールド・カフェそのもの運営に興味がなくても、本書は話し合いに対する考え方に新たな視点をもたらせてくれるだろう。

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