「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ポンペイウスと敵対したユリウス・カエサルがルビコン川を越える紀元前49年から、カエサルの暗殺の後の紀元前30年までを描く。
「ブルータス、お前もか」というセリフでカエサルがブルータスによって殺されるということを一般的な知識として持っている人は多いだろう。しかしカエサルやブルータスがどのような人物で、どのような経緯でそこに至ったかを知る人は少ないのではないだろうか。
本書を読み終わった時の率直な感想は、「カエサルは偉大な人間だった」ということである。先の時代を見る能力と、人を操る能力を見事に備えていて、それ故に戦いにも政治の能力にも長けていたのである。同時期の他の権力者と比較して抜きん出ているだけでなく、現代においてもこれほど能力のある人にはそうそう出会えるとは思えない。
本書で扱っているのはすべて紀元前の出来事である。僕らはなぜか、「紀元前」と聞くと大昔の印象を持つが、本書で描かれているローマの実情を見ると、すでに社会がある程度出来上がっていたことがわかる。「社会」という言葉は非常に曖昧だが、政治や裁判やコミュニティとするとわかりやすいかもしれない。ちなみに、現在の前の暦であるユリウス暦もカエサルの命によって作られ、その時代ですでに11分程度の誤差しかなく、ユリウス歴は1582年にグレゴリウス暦にとって変わられるまで1500年以上も使われたというから驚きである。
また、もう一人の誰もが聞いた事のある有名な人物としてクレオパトラも登場する。美人としては有名だが、彼女がどのような存在だったのか本書を読むまでまったく知らなかった。
このカエサルの時代はローマのもっとも面白い部分なのではないだろうか。カエサル自身が書いたという「ガリア戦記」もぜひ読んだみたい。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(上)」「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(中)」「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(下)」

「A Mind for Numbers」Barbara Oakley

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
効果的に勉強するためにはどうすればいいのか。著者自身も学生時代は数学の能力をまったく伸ばす事が出来なかったが、軍隊に入ってロシア語を学び数学の必要性を感じてその方法に気付く。多くの例とともに効果的に学ぶ方法を語る。

数学や試験や言語だけでなく、学ぶというのは運動や楽器演奏などすべてに適応されるもので人生を生きていくうえで欠かせないもの。しかし、勉強しているけれども成績が上がらない、練習しているけれど上達しない、ということはたびたびある。誰もが1度は、●時間勉強したけどこの時間に意味があったのだろうか。と疑問に思うような時間を経験した事があるだろう。上達しない練習に時間をさくのであればその時間を他の事に費やした方がいいだろう。そういう意味では、人生を豊かに効率に過ごすために方法を本書は教えてくれると言える。

まず印象的なのは、Diffuse ModeFocus Modeの使い分けである。僕らは勉強するときに「集中する」ことを良いこととしているが、本書では、Diffuse Mode、つまり集中していない状態も同じように効果的に学ぶためには大切だと語る。もちろん集中していない状態が進歩を助けるのは、集中している時間に積み重ねたものがあってこそであるが、それによって集中していない時間にも脳が無意識下で情報を処理し続けるのだという。集中している時間と集中していない時間を適切に配置することで効率的に学ぶことができるのである。

また、「勉強した気になってしまう行動」や、「無駄な勉強」というのにも触れているので、知っておくと非常に役に立つだろう。例えば僕自身も過去やったことがあるのだが、蛍光ペンで教科書の重要な部分を塗っていくという方法。これは手を動かした事によって学んだ気になってしまうが実際にはほとんど効果がないのだそうだ。また、教科書を読んだだけでわかった気になるのもしばしば陥りがちな無駄な勉強法である。多くの教科書はそれぞれの章末に問題をつけているが、多くの人はこの重要性に気付いていない。本書では、必ず自分で問題を解いて自分の理解をテストすることの重要性を強調している。

その他にも、勉強を先延ばししてしまう人がとるべき対策方法や、多くの勉強に適用できそうな記憶方法についても触れている。向上心のある人には多いに役立つ内容と言える。

「ビジョナリー・カンパニー(2)飛躍の法則」ジェームズ・C・コリンズ

オススメ度 ★★★★☆
前作「ビジョナリー・カンパニー」で取り上げられた企業の多くは最初から偉大だった。偉大な経営者に恵まれた、初期の段階で偉大な企業としての形を作り上げた。しかし、今偉大ではない企業が偉大になるためにはどうすればいいのか、本書はそんな問いに答えようとする。
第一弾の「ビジョナリー・カンパニー」はなかなかタイミングが合わなくてまだ読んでいない。それでもいろいろな本を読んでいるとこの「ビジョナリー・カンパニー(2)」こそ良書との声をよく聞くため、本書を先に読む事になった。冒頭にも書いた通り、本書は第一弾とは視点を変えて企業を分析している。つまり、偉大な企業ではなく、偉大になった企業を選別しその本質を分析していったのだ。
本書のなかで取り上げられている内容はどれも印象的だったが、なかでも第三章の「だれをバスにのせるか」の章は印象的であった。この章で言っているのは、偉大な企業は最初に人を選び、目的地は後から決める、というのである。個人的には偉大な企業というのは常に明確な目的地、つまりビジョンや哲学を持っていると思っていた。偉大になりきれない多くの企業は、才能豊かな人間がいても会社の向かい目的地がはっきりしていないせいでその能力を最大限に活かしきれていないのだと思っていた。しかし、本書では人の選択こそが重要で目的地はその選択した人との間で決めていけばいい、というのである。
また、もう一つの驚きとしては、良い企業として連想しがちな顧客重視や、品質重視の考え方などが、必ずしも偉大な企業になるためには必要ないとしている点である。

これだけは必要不可欠だと思える価値観でも、永続する偉大な企業のなかにかならず、その価値観をもたない企業がある。たとえば、顧客に対する情熱をもっていなくてもいい(ソニーはもっていない)。個人を尊重する価値観はなくてもいい(ディズニーにはない)。品質重視の価値観はなくてもいい(ウォルマートにはない)。社会への責任という価値観はなくてもいい(フォードにはない)。これらがなくても、永続する偉大な企業への道で障害にはならない。

噂に違わぬ良書。もしこれから僕が起業に関わることがあるならぜひいろいろ参考にしたい。
【楽天ブックス】「ビジョナリー・カンパニー(2)飛躍の法則」

「アルゴリズムが世界を支配する」クリストファー・スタイナー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アルゴリズムについて世の中の実例を交えて紹介する。
25年前証券取引所はディーラーで溢れ返っていた。ところが今では人はほとんどいない。コンピューター・プログラマーのピーターフィーが、プログラムを使って取引をすることを始めてからその方法は世界に広まり、今では世の中の多くの取引がコンピューターによって行われているのだ。
こんな冒頭の今日深い話に一気に引き込まれてしまった。僕らは確かにコンピューターがいろいろな事を行うのを受け入れている。しかし、どの程度のことまでがコンピューターにできて、どの程度の事から先が人間にしかできないのか、それを正確に把握しているだろうか。本書を読むとコンピューターの能力、(つまりアルゴリズム)の可能性を過小評価していたことに気付くだろう。
中盤ではコンピューターがクラシック音楽を作曲する話について触れている。今ではベートーベンやモーツァルトの曲のように人々を感動させる曲をコンピューターが作る事ができるのだという。そんなコンピュータの能力はもちろん興味深いが、むしろ面白いのは、人間はコンピュータが作った曲に感動するが、それはそれが「コンピューターが作った曲」だということを知らない場合なのだという。「これはコンピューターが作った曲」ということを知った途端に「何か情熱が感じられない」と言い出すのが面白い。
本書を読んで感じたのは、アルゴリズムにできないことはなくなるだろうが、アルゴリズムの社会への普及を阻んでいるのは技術ではなく、人々の意識なのだということだ。アルゴリズムやプログラムを深く理解することの必要性を感じた。

参考サイト
http://www.ycombinator.com
アルゴリズムの背後にある高度な数学な世界を議論する世界でもっとも影響力のあるサイト

【楽天ブックス】「アルゴリズムが世界を支配する」

「いちばんやさしいアルゴリズムの本」みわよしこ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
アルゴリズムについてやさしく解説している。
先日読んだ本「アルゴリズムが世界を支配する」で次のように書いてあった。今後アルゴリズムによってコンピューターが、今人間が行っている大部分の作業を行うようになるだろう、と。きっと今後はプログラム言語と同様にアルゴリズムが重要になってくるのだろう。その基礎を学びたいと思って本書を手に取った。
かなり優しく書こうとしている努力は見えるが、やさしいたとえ話のはずの箇所で妙に専門的な単語がでてきたり、それぞれの章によって想定の読者の知識が統一されていないような印象を受けた。誤字も目立ったので、もう少ししっかり改訂して欲しいと思った。
それでも最後の章にある著者のオススメのアルゴリズム関連本は、さらに深い知識を身につけたい人にとってはありがたい内容である。

読みたくなった本
「プログラマの数学」結城浩
「アルゴリズム・クイックリファレンス」G.T Heineman
「The Art of Computer Programming」D.E. Knuth

【楽天ブックス】「いちばんやさしいアルゴリズムの本」

「三国志(二)」吉川英治

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
三国志の第二弾。董卓(とうたく)が権力を強めていく。
洛陽から長安へと董卓(とうたく)は移動する。王允(おういん)は美しい女性、貂蝉(ちょうせん)に命じて、董卓(とうたく)を討とうとする。
相変わらず人名の多さや、中国の地理に体する無知ゆえに物語にしっかり着いていってない感じもあるが、呂布(りょふ)、劉備(りゅうび)、曹操(そうそう)、孫策(そんさく)などそれぞれの個性が徐々に見えてくる。ようやく読み続けられるかも、と思えてきたが、きっと三国志の物語をしっかりと理解するには小説だけでなくマンガやゲームなど繰り返し触れる必要があるのだろう。
【楽天ブックス】「三国志(二)」

「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」ダニエル・ピンク

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
過去長い間、数学や物理などの左脳が得意とする技術が高く評価されてきた。しかしこれからは右脳の時代に向かっているという。そんな時代で生き抜くための方法やそのための能力を高める方法を著者が語る。
著者ダニエル・ピンクが言うには数学や物理や会計などの分野はコンピュータができるようになるか、またはインターネットの高速化も手伝って、インドや中国などの人件費が安い地域にアウトソースされ、先進国ではそれ以外の新たな能力が必要とされるという。今までのような左脳の能力に頼った生き方を抜け出さないと、新たな時代に適応できないというのである。
著者の言う、右脳が必要とされる能力とは、例えば、事実を印象的に伝える方法だったり、別分野の事柄を結びつけて新たなものを考え出す能力だったり、デザインだったりである。デザインに重みを置いている学校は成績が良いし、会社は業績がいい、などそれぞれその必要性を裏付ける物語とあわせて説明してくれるから興味深い。
新たな時代を生きるための「6つの慣性」を次のように表している。

「機能」だけでなく「デザイン」
「議論」よりは「物語」
「個別」よりも「全体の調和」
「論理」ではなく「共感」
「まじめ」だけでなく「遊び心」
「モノ」よりも「生きがい」

特に最後の「モノ」よりも「生きがい」という点に関しては、自分自身だけでなく社会全体が物質主義の先へ移行していることを僕自身も感じていたので、印象的であった。それぞれにその能力を鍛える方法として誰にでもできそうな方法が紹介されている。またそれぞれの知識を深めるための良書にも触れられている点がありがたい。世界の見方が変わる一冊と言えるだろう。

読みたくなった本
「Story-Substance, Structure, Style, and the Principles of Screen-writing」
「レトリックと人生」ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン
「マンガ学-マンガによるマンガのためのマンガ理論」スコット・マクラウド
「千の顔を持つ英雄」ジョーゼフ・キャンベル
「世界でひとつだけの幸せ:ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生」
「フロー体験:喜びの現象学」
「このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?」
「心はマインド……「やわらかく」生きるために」
「ダライ・ラマ こころの育て方」

【楽天ブックス】「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」

「三国志(一)」吉川英治

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の邪馬台国の時代。中国では後漢の霊帝の代。青年劉備(りゅうび)は関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)とともに世を救うために旅立つ。
物語としてはこれ以上ないというほどに有名な物語だが、これまで小説に限らずマンガ、アニメ、ゲーム含めて一切触れたことがなかった。それでも長く語り継がれる物語には相応の理由があるということで今回手に取った。
序盤は劉備(りゅうび)を中心としたよくある冒険物語といった印象を受けたが、その後の流れは単純な英雄伝説のようにはいかないらしく、物語の壮大さを感じさせる。
後半に入ると人名や地名などに着いていけない感じがしてきた。そもそも「三国志」の「三国」とは何を指すのかすら未だわかっていないが、頑張って読み進める事にする。
【楽天ブックス】「三国志(一)」