2013年4月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第9回山本周五郎賞受賞作品。

都内で起こる一課殺人事件。非行に走った少年が起こしたものと考えられていたが、同様の事件が続く事となる。刑事馬見原(まみはら)、教師巣藤俊介(すどうしゅんすけ)、児童カウンセラーの氷崎游子(ひざきゆうこ)などそれぞれの悩みを抱えた人々が事件に関わる事になる。

物語の主な登場人物たちはいずれも家族に問題を抱えている。馬見原(まみはら)は息子を失い、それによって妻は精神を病み、娘は馬見原(まみはら)を憎む事となった。俊介(しゅんすけ)は美術教師であるために問題を抱えた生徒たちの対応しなければならない。游子(ゆうこ)は過去の経験から、子供たちを救う事を使命として仕事に打ち込んでいる。そんなそれぞれの思いを順々に描きながら、物語は進んでいく。

家族のあり方、子供の育て方、年老いた両親への接し方。いずれも正解のないものだが、結果だけで周囲には判断されかねないもの。そして、家族というつながりがあるゆえに、決して逃げ出す事のできないものである。本書はまさにそんな現実に改めて目を向けさせてくれる。

そういう意味では物語の発端として起こっている残虐な事件は、人々に家族のありかたに目をむけさせるための一つの要素に過ぎない。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第9回本屋大賞受賞作品。

出版社につとめる馬締光也(まじめみつなり)はその名の通り真面目で、変人として通っていたが、ある日辞書編集部へと配属される。馬締(まじめ)はそこで辞書の編集に取り組む事となる。

最近でこそ調べ物はインターネットで片付いてしまうが、小学生の頃には母がプレゼントしてくれた辞書をよく使っていたのを覚えている。本書が描くのは、そんな辞書を作る側の物語である。

辞書編纂メンバーの言葉に対する取り組みに触れると、言葉についていろいろ考えさせられる。そもそも言葉は辞書によって定義されるものではなく、僕らの生活やその言葉を繰り返し使う中で人々の心のなかに共通の意識として染み付いていくものなのだ。例えば本書で分かりやすくも印象深いのが、「愛」という言葉の説明に対して議論をする場面である。

「異性を慕う気持ち。性欲を伴うこともある。恋」となっています。 なんで異性に限定するんですか。じゃあ、同性愛のひとたちが、ときに性欲を伴いつつ相手を慕い、大切だと思う気持ちは、愛ではないと言うんですか。

言葉とは時間によっても変化していくものなのだろう。編纂メンバーはそうやって一つ一つの言葉を、哲学を持って定義していく。

そして、彼らは言葉だけでなく、辞書の素材についても気を配るのである。本書の中では、紙の選び方についても触れている。辞書はページ数が多いから一枚一枚の紙は薄くなくてはならないが、薄いことによって裏の文字が見えてしまったも行けない、もちろん手触りも非常に大切なのである。

こうやって見てみると、辞書を作るというのはなんとやりがいのある仕事なのだろうか。本書を読むと、今まで考えてこなかった、一つ一つの言葉の意味、重さを改めて考えさせられる。辞書というものの見方を変えてくれる一冊。

有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく。こわいけれど、楽しい。やめたくないと思う。真理に迫るために、いつまでだってこの舟に乗りつづけていたい。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2010年にチュニジアから起こったデモがアラブ諸国に大きな動きをもたらした。そんな「アラブの春」と呼ばれる出来事の実態をアラブ社会で育った著者が語る。

「アラブの春」という言葉は知りながらもその実情はほとんどの日本人は知らないだろう。もともと日本と交流の多い欧米の国々のメディアはアラブ社会での出来事についてあまり多くを報道しようとはしないし、なんといっても日本は時を同じくして東北大震災に見舞われていたのだから。

本書を読むと、そんなアラブ社会に対する偏見が見えてくる。アメリカやヨーロッパのメディアは常にアラブ諸国での出来事を、視聴者に意図した形でねじ曲げて伝えようとする。アルジャジーラでさえも物事を完全に客観的に報道してはいないのである。それはスポンサーなくしては存在し得ないメディアにおいては避けられない事なのだろう。

さて、本書ではアラブ諸国について、チュニジア、エジプト、リビアだけでなく、カタール、サウジアラビア、シリアなど多くのアラブ諸国についてその実情を語っている。本当に表面的な部分だけなので、本書だけで理解できるとは言えないだろう。それでもアラブ諸国の実情や、イスラム教などの宗派など興味を喚起させてくれる内容である。

印象的だったのは、革命後の国々の多くの人々が革命前よりも不幸になるだろうという著者の見解である。

政府を倒すまでは民衆蜂起でできるのです。リーダーが必要になるのは、政権を倒し、新しい政権を作るときです。

革命後のアラブ諸国にもしっかり目を向けていきたいと思った。

パンナム機爆破事件
パンアメリカン航空103便爆破事件(パンアメリカンこうくうひゃくさんびんばくはじけん、通称:ロッカビー事件〔ロッカビーじけん〕、パンナム機爆破事件〔パンナムきばくはじけん〕)は、1988年12月21日に発生した航空機爆破事件。(Wikipedia「パンアメリカン航空103便爆破事件」

GCC
中東・アラビア湾岸地域における地域協力機構。(Wikipedia「湾岸協力会議」

【楽天ブックス】「「アラブの春」の正体」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
幼児の殺害の容疑をかけられていた実の母親立花里美(たちばなさとみ)は隣に住む尾崎俊介(おざきしゅんすけ)との関係を示唆した。別の女性と同棲している俊介(しゅんすけ)は過去に強姦事件を起こしていたのである。

幼児殺人事件という体裁をとって物語は始まるが、その焦点は過去にその殺害事件そのものではなく、関係者の過去を洗っていたマスコミに寄って明らかになった、隣人尾崎俊介(おざきしゅんすけ)の起こした過去の集団強姦事件と、その関係者のその後の様子である。

同じ強姦事件の場にいながらも、そのことを忘れたように成功している人も入れば、それを機にその苦しみから逃れられない人もいる。同じ出来事でもそれを受け止める人に寄って、その記憶はよくもわるくも、長くも短くもなるのだろう。

ああ、この人もずっとあの夜から逃れられずにいたんだなぁって。あの夜から逃れて、自分だけが幸せになっていくことを、心のどこかで許せずにいたんだなぁって。

幸せになるというのが怖い、という行き方があることはなんとなく分かっているがなかなか、それを描いてくれる物語は少ないように思う。そういう意味では貴重で印象に残る内容である。

一緒に不幸になるって約束したんです。そう約束したから、一緒にいられたんです

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
リーナス・トーパルズはヘルシンキ大学在学中にOSを作り始めた。インターネット上でソースコードを公開し、ネット経由でたくさんのプログラマーの強力を得てLinuxを作り上げていった。その過程やリーナス・トーパルズの考え方などをまとめている。

そもそも「オープンソース」とは何なのか、単純に「ソースを公開する」とはいうけれど、それをどうやって管理するのか、そんな点の興味から本書に入った。残念ながらオープンソースの管理という面では、どうやら本書を読むと結構行き当たりばったりな部分が多かったようで、期待にそう内容とは言えない。しかし、本書で触れられているリーナスのプログラムに対する情熱にはとても刺激を受けた。何よりお金に執着しないで楽しみを求めるリーナスの行き方に感銘をうけるだろう。

多少なりとも生存が保証された世界では、お金は最大の原動力にはならない。人は情熱に駆り立てられたとき、最高の仕事をするものだ。

専門用語も多く残念ながらとてもすべてを理解できたとは言いがたいが、読み終わった後、久しぶりにプログラミングがしたくなる。寝る間も惜しんでパソコンの前にへばりつき、プラグラムに明け暮れる。そんな時間が恋しくなる一冊。

MINIX
1987年にオランダ・アムステルダム自由大学(蘭: Vrije Universiteit Amsterdam)の教授であるアンドリュー・タネンバウムが、オペレーティングシステム (OS) の教育用に執筆した著書 Operating Systems: Design and Implementation の中で例として開発したUnix系のオペレーティングシステム (OS) 。(Wikipedia「MINIX」

Shell
ユーザの操作を受け付けて、与えられた指示をOSの中核部分に伝えるソフトウェア。キーボードから入力された文字や、マウスのクリックなどを解釈して、対応した機能を実行するようにOSに指示を伝える。(e-words「shell」

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
コピーを書いてその効果を検証し続けた経験を著者が語る。

過去の分析の結果からどのコピーが優れた結果を残し、どうしてそれが優れているのかを多くの事例とともに解説していく。どれも納得のいくものばかりで、コピーライティングに関わる人にとってはまさに「読むべき本」と言える。

たとえ少人数でも信じてもらえるほうが、大勢から半信半疑に思われるより大事なのだ!

本書を読み進めていくと、世の中にあふれるコピーの多くが実際にはその目的を果たしていない事がわかる。例えば、商品のコピーであれば、その商品を売る事が目的であり、「このコピーはうまい!!」と言われることではないのである。

また同時に、そのような意味のないコピーが世の中にあふれる理由として、理解のないクライアントやそもそもその効果を測定すら使用としない一般的な姿勢についても語っている。後半は複数のコピーの効果の測定方法についても書かれている。

広告の主体が紙からインターネットへと移る昨今、本書で書かれている事をすべて鵜呑みにしていいというわけではないが、基本的な考えは適用できるだろう。

コピーライターがコピーを書くときには「文学性」を捨てなければならないのと同じように、アートディレクターも広告をデザインするときには「芸術性」を捨てなければならない。

本来手元に置いて繰り返し読むべき本なのだろう。

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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
映画のロケ地を探してPellamがMartyとたどり着いたのはClearyという田舎町。しかしその街に滞在している最中に、Martyが不可解な死を遂げる。PellamはMartyの死の真相を暴こうと決意する。

田舎町で退屈な生活を送っていた人々が、都会からやってきた映画関係者のPellamが来た事で、警戒したり、期待したりする様子が描かれている。きっと、若い頃は都会に出て、何かのきっかけで田舎に戻ってきて、現状に不満をいいながらも年を取っていく。そんな流れは日本もアメリカも同じなのだろう。アメリカの文化のある一面を知るという意味では悪くないかもしれない。

Jeffery Deaverの初期の作品で、現在のRincoln Rhymeシリーズにあるようなスピード感は読者を引き込むような魅力は残念ながら感じられない。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第123回直木賞受賞作品。

フィリピン、セブ島のガルソボンガ地区に祖父と住むトシオ・マナハン13歳。ある日、日本人と結婚したクイーンと呼ばれる女性が、故郷であるガルソボンガ地区に戻ってきた。それをきっかけにトシオは内紛に巻き込まれていく。

その描写からはずいぶん昔を舞台とした物語のようにも感じるが、実際には1998年の現代を描いている。祖父とともに強い軍鶏(しゃも)を育てることに夢中になっているトシオ・マナハンが少しずつ大人になっていく様子が描かれる。

日本人とフィリピン人の間に生まれたがゆえに「ジャピーノ」と呼ばれるトシオ。そんなトシオの生活の様子から、フィリピンの田舎町での生活が見えてくるだろう。電気もなく、警察や役人は汚職に手を染め、貧富の格差によって生活が大きく異なる。そんななかで信念を持って生きる事はきっと大変な事なのだろう。

本書のタイトルにもなっている「虹の谷」はガルソボンガ地区でトシオのみが行き方を知っているという不思議な虹のできる谷のこと。しかし、トシオはそれゆえに悲劇に巻き込まれていくのである。

フィリピンの歴史についてもっと知りたくさせてくれる一冊。

浮塵子
イネの害虫となる体長5mmほどの昆虫を指す。(Wikipedia「ウンカ」

タイタン・アルム
インドネシア、スマトラ島の熱帯雨林に自生する。7年に一度2日間しか咲かない、世界最大の花。(Wikipedia「スマトラオオコンニャク」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
旧約聖書、新約聖書に沿って、その場面場面を表した名画を紹介していく。

「最後の晩餐」「受胎告知」など、多くの絵画は宗教の一場面を描いていて、絵画を深く理解する上で、宗教への理解は避けて通れないもの。そんなニーズに応えてくれる一冊。そして同時に改めて聖書への理解も深まるだろう。

個人的には子供の頃からピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」には強く惹かれるものがあり、本書にもその2作品が選ばれていて改めてその絵画の背景にある物語を理解する事が出来た。

それにしても聖書がなぜこんなにも理解しにくいかというと、それはきっと同じ名前の登場人物の多さのせいなのかもしれない。ユダ、ヨハネ、マリア...。きっと長く繰り返し物語に触れる事に寄って理解していくものなのだろう。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
もはや御馴染みの、古本屋の店主栞子(しおりこ)と、そこでバイトをする五浦(ごうら)の繰り広げる本に関わる物語。

シリーズ3作目となる本作品でも面白そうな本がいくつか触れられて、きっと読みたくなるだろう。栞子(しおりこ)ほどではないにしても、読書好きを自負する僕としては、もっと古い作品にも触れてみるべきなのだろうと、本シリーズを読むたびに思う。

さて、本書でも過去と同様に、栞子(しおりこ)と五浦(ごうら)は、店に持ち込まれるお客さんの本に関わる悩みを解決していく。過去の2作品と異なるのは、少しずつ失踪している栞子(しおりこ)の母親の存在が前面にでてきた点だろうか。突然失踪した母に腹を立てながらも、栞子(しおりこ)は母親が残した本を探し続けるのだが、本書では、お客や顔見知りの同業者によって、母の話を聞く事になるのだ。

本の話のなかで印象的だったのは宮沢賢治の推敲の話。きっと世の中で売れている本もそうでない本も、多くの本が、作者にとっては大きな愛情を注いで作り上げた、忘れがたいものなのだろう。

正直、前作まで読んだ段階で、シリーズすべてを読みつづけるほどのものではないと思ったのだが、本書第3作を読んで逆に辞められなくなってしまった。

【楽天ブックス】「ビブリア古書堂の事件手帖3 栞子さんと消えない絆」

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