オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
文字を持たないゆえに謎に包まれたインカ帝国。その歴史とそこでの生活、文化などを何年もアンデスに通い続けた著者が語る。
インカ帝国の謎の一つに、なぜそんなにも高地に彼らは文明を築いたのか、というものがあり、その点に対して非常にわかりやすく説明している。
印象的だったのがその異形のものを崇拝する文化である。アンデスではじゃがいもやトウモロコシなどの収穫物だけに限らず、兎唇や斜視や双子など人間に対しても希少な存在を敬う文化が根付いているという。いじめや差別の起こる現代社会をみるとそれはむしろ非常に望ましい文化のようにさえ思える。
終盤では、その滅亡の謎に迫る。なぜこれだけ永きにわたって繁栄した文明が、スペイン人の侵攻によってあっさりと滅んでしまったのか。筆者はそこに事実と経験に基づいて推測を語っている。それは異形なものを崇拝する文化にかかわるものであった。
タイトルから期待した「謎」というよりも、しっかりとした調査によって得られた事実に近いことが説明されていて、あまり面白い、とお勧めできるものではないが、インカ帝国について純粋に理解を深めたい人にはお勧めできる内容である。
【楽天ブックス】「天空の帝国インカ その謎に挑む」
masato (2012年2月28日 23:00) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長野、新潟、カリフォルニア。各地で発生している失踪事件。父親が失踪するという経験のある栗山冴子(くりやまさえこ)は失踪事件を扱うテレビ番組のメンバーに加わることになる。
ついさっきまで存在していたかのような痕跡を残して人が失踪する。本作品でも触れられているマリーセレスト号の話は非常に有名であるが、本作品がすごいのは、やはりプロローグである数ページで作り出す、失踪のその空気感である。鈴木光司のその巧みな描写技術はおそらく「リング」で多くの読者が経験したのだろうが、本作品でもそれは健在。これが明らかにSF的内容である本作品まで「ホラー」というカテゴリーに含まれてしまう理由だろう。
さて、失踪事件というと、多くの人は超自然的な話を想像するのかもしれないが、実際にはむしろ非常に科学的な話である。本作品で世の中が狂い始めている...と科学者たちに思わせた最初の出来事は、無理数であるはずの円周率πがある桁以降で0になってしまう、というもの。磁場やフォッサマグナなど、失踪という荒唐無稽でありえない話が、科学的なことや、未解決な歴史的事実と絡めて説明されるうちにどこか真実味を帯びて聞こえる点が面白い。
そして、冴子(さえこ)と番組のメンバーたちは、真実に近づくどころか、真実の法が人々の目の前に次第に姿を現していく。リーマン予想、反物質、インカ帝国、あるはずのない南極大陸の地図、など好奇心を刺激する要素の数々。きっとこれからも鈴木光司(すずきこうじ)の作品は迷わず手に取ることになるだろう。そう思わせる内容である。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
鎌倉の古本屋の店主である篠川栞子(しのかわしおりこ)は人見知りで口下手だが、古本をこよなく愛し、古本に関わることではすぐれた洞察力を発揮する。就職浪人中の五浦大輔(いつうらだいすけ)は本の鑑定のためにその古本屋を訪れる。
やはり本シリーズの魅力は篠川栞子(しのかわしおりこ)のその個性だろう。「千里眼シリーズ」で有名な著者、松岡圭祐も「万能鑑定士」シリーズで、非常に知識のある女性を描いているが、最近で言えば「鉄子」と言われる女性鉄道オタクが市民権を得たように、世の中が度を越して知識を持っている女性を求めているのかもしれない。
物語はそんな篠川栞子(しのかわしおりこ)と五浦大輔(いつうらだいすけ)の周辺で起きる、言ってしまえばそれほど深刻でない日常の問題を、栞子(しおりこ)が解いていく。その過程で語られる、古本に関わる小話や、夏目漱石、太宰治などの日本文学が非常に好奇心を掻き立ててくれる。誰もが聞いたことのある著者でありながら、なんとなく「古臭い」「退屈」といったイメージをぬぐえずに実際に読んだことのない人は多いのだろう。本作品は、そんな躊躇している人の背中を押してくれるだろう。実際僕も、太宰治を何冊か読んでみようか、と読み終わって思った。物語自体が、「ものすごい面白い」とかいうわけではないが、心地よく視野を広げてくれる作品である。
本作品では、鑑定、古本に深くかかわる内容である、古本屋といえば京極夏彦の「姑獲鳥の夏」、鑑定といえば松岡圭祐の「万能鑑定士シリーズ」が僕のなかで印象的だったので、まだ読んだことのない人は読み比べてみてはどうだろうか。
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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本代表の遠藤保仁(えんどうやすひと)と今野泰幸(こんのやすゆき)が、過去のサッカー人生や、現在の日本代表、Jリーグなどを語る。
今野(こんの)の語る内容からは、とりたててとりえのなかった選手が日本代表になるまでの苦労や心構えが感じられる。人見知りゆえに、初めて代表に呼ばれたときは風をひいてしまった苦労など、組織の中で自らの長所を知り、それを活かしつつ監督の求める要求にこたえる。というむしろサッカーに限らず組織のなかでの心構えとして通用しそうな内容である。
また、後半の遠藤(えんどう)の内容からは、さすがに現日本代表のキープレイヤー的な視点を感じさせてくれる。
2人の語る内容からは、ザッケローニの求める理想の選手像とオシムの求める選手像の違いが見えてくる。また、間の章ではアジアカップ準々決勝のカタール戦について、試合経過ごとの2人の心のうちを語っている点が面白い。その試合を観戦していない人がどれほど楽しめる内容か、はなんとも言えないが、2人とも派手な選手ではないだけに、その心のうちは新鮮である。
【楽天ブックス】「観察眼」
masato (2012年2月22日 23:05) | コメント(0)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30代のうちにしておくべきこ著者が語る。
正直読み始める前は、価値観を押し付けるような不快な内容で、人生をやりたいこともなく過ごしているような人向けの内容、と馬鹿にしていたりもしたのだが、なかなか興味深く読むことができた。印象的だったのは結婚に関する記述。
うまくいかない結婚の方が、一人で生きるよりも不幸。ということらしい。まさに常々感じていながることである。また、多くの人が嫌いなことを仕事にしている世の中がおかしい、というのも印象的である。
著者は、「好きなことをやっていればやがてどこかにたどり着いてそれを仕事にできる。」と主張するのだ。それを「たまたま好きなことを仕事にできた人だから言える理想論」と片付けることもできるが、それは読者次第だろう。また、個人的には、人脈をつくるために、自ら主催のパーティを開催する。という考えに刺激を受けてしまった。そのほかにも一般的に人生において心がけておくべきことが書かれている。さらっと読んでおいても損のない内容である。
【楽天ブックス】「30代にしておきたい17のこと」
masato (2012年2月22日 13:05) | コメント(0)オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
そもそも「哲学」という分野にあまり今まで目を向けていなかった。と突然思い立って手に取った。本書はまさにそんな「哲学って何?」というような人向けの内容で、著者は哲学の必要性を訴え続ける。
世の中にはどうしても「哲学か科学か」というように、二者択一を迫るような風潮があるが、著者自身も決して科学を否定しているわけではなく、例えば、何か目的があって、それを達成する手段が科学であり、何を目的とするか、が哲学であると語る。つまり哲学とは「価値観」なのである。
「哲学」と言うと、少し距離を置いてしまう人も「価値観」と聞くと、それは誰しもが持っているもの、として身近に感じられるのではないだろうか。
なかなか回りくどく複雑な説明が多く、なかなか理解しやすい本ではなかったが、興味深い話もいくつか拾うことができた。もう少しコンパクトにして、重要な部分をわかりやすく書くこともできたのではないかと思える内容。
【楽天ブックス】「哲学のすすめ」
masato (2012年2月21日 01:17) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ある朝、14歳の少女Cynthiaが目覚めると父も母も兄もいなくなっていた。それから25年後、結婚して娘と3人で暮らすCynthiaはいまだに25年前の夜の出来事を忘れられずにいた。
物語は家族の失踪から25年後、Cynthiaの夫のTerry目線で進む。過去の経験から娘のGraceから目が離せないCyinthia。それに対して、過去を忘れて前へ進むべきだと主張するTerry。前半は、そんなぎくしゃくした家族のやり取りで展開する。
印象的なのは25年間、失踪した家族の理由を考え続けて、何度も「自分のせいかも?」と自分を責め続けたCynthiaの心のうちだろう。
家族の失踪に対して物語的に説明をつけようとすればいくらでも説明のつく出来事を考えることはできる。それゆえに期待はずれな結末を覚悟したりもしたのだが、結末に待っていた真実は予想以上に深く泣ける家族の物語だった。
おそらく今年もっとも泣かされた物語。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第22回山本周五郎賞受賞作品。
雑誌社の編集長であるカワバタは胃ガンと診断される。そんなカワバタが死を意識しながらも世の中を見つめながら生きていく。
最近の白石一文の作品はどれも死と隣り合わせの場所で生きている人の目線で世の中を語るものが多く、本作品もそんな物語である。胃ガンと診断され手術を受けた後も再発を恐れ、死を意識し続けるからこそ見えてくる世の中の形が描かれている。
それは、僕らがもはや疑問も持たずに受け入れている人生の形や、社会のシステムなどに対して、もう一度疑いの目を向けさせてくれる内容である。
ネットカフェ難民や、貧困問題など現在の社会問題や、その一方で使い切れないようなお金を手にしている有名人にも触れ、世の中の矛盾を指摘していく。カワバタの目線で語られるから、何か無視できない重みを感じてしまう。
ページをめくる手を加速させるような面白さはないが、世の中について考えさせる内容に溢れている。似たような本ばかりが溢れるなかちょっと違う本を読んでみたい、という方は、一度読んでみるべき本かもしれない。
【楽天ブックス】「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)」、「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(下)」
過去の事件によって精神病を患い休職中の刑事、仙道孝司(せんどうたかし)はその有り余る時間ゆえに知り合いから依頼される未解決の事件や、警察が動けない事件の捜査の依頼を受ける。
他の佐々木譲の作品同様、本作品も北海道を舞台とした警察物語。過去の強烈なトラウマゆえにその回復を待つ、という設定ながらもその過去の事件についてはあまり触れられないままいくつかの物語が展開する。いずれも派手な事件ではない点や、余計な説明や描写が少なく展開の速さは非常に佐々木譲らしい。
直木賞というと、どちらかというと多くの心を掴みやすい物語という印象があるのだが、本作品はどちらかというと地味で玄人好みなのではないだろうか。
【楽天ブックス】「廃墟に乞う」
masato (2012年2月12日 18:39) | コメント(0)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の樽井翔太郎(たるいしょうたろう)はバイトの途中で1人の女子高生と知り合う。病気の妹を救う為にお金が必要な彼女は、幸か不幸かヤクザの組長の娘。2人は狂言誘拐を決意する。 「謎解きはディナーのあとで」の本屋大賞で一気に有名になった著者。本作品はそれ以前の作品となるが、その個性的なテンポは本作品にもしっかり存在している。
ツッコミを前提とした台詞の数々。非現実な設定のオンパレード。何かを学ぶ為に読む物語では決してないが、こういう空気に触れたくなるときは誰にでもあるものだろう。
さて、そんななかで本作品の個性を挙げるとするなら、物語が下関市の関門橋付近で展開される点だろう。僕自身行ったことも通りすぎたこともない場所なので想像するしかないのだが、東京という日本の中心(この表現にもやや抵抗があるが)から遠く離れた場所に生活の基点を置く人々の都会への憧れや嫉妬とともに、巌流島、壇ノ浦、 赤間神宮など、その場所の名所が物語に絡めてある。
特にお勧めするような作品でもないが、決して外れでもない。こんな空気が楽しみたい気分のときに気楽に楽しむべき本である。
【楽天ブックス】「もう誘拐なんてしない」
masato (2012年2月 6日 19:56) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
実験的投薬によって不思議な力を身につけたAndyとVicky、しかし2人の娘Charlieはさらに強力な力を持つこととなる。それは念じるだけで火をおこすことのできるパイロキネシスだった。AndyとCharlieはその力のために組織Shopから追われることとなる
宮部みゆきのクロスファイアのもととなった物語と聞いて非常に興味を持って手に取った。物語の鍵となるのパイロキネシスという能力を持ちながらもその力をコントロールしきれないゆえに自らの力におびえる7歳の少女Charlieと、その父親で人の心を操作する能力を持つAndyである。
2人はその逃避行のなかでたびたびその力を使わざるを得ない状況に陥るのだが、使い過ぎることによって自らの体力や命さえも脅かすのである。個人的にはCharlieの力が無意識に出てしまうシーンなどが印象的だ。たとえば、泣きわめくCharlieの横で、温度計の目盛りがじわじわ上がっていくのを見て、なんとかCharlieに平静さを取り戻させようと努めるAndyのシーンや、階段を降りようとしてテディベアのぬいぐるみにつまずいた次の瞬間にぬいぐるみが燃え上がるシーンなどがそれである。
さて、超能力者を中心にすえた物語は多々あるが、終わりはだいたいその人が死ぬか能力を失うか、である。Stephen Kingがこの物語をどうやって終わらすか、という点も途中から僕の興味をそそる部分だったのだが、その点も及第点をあげられるだろう。幼い女の子Charlieがその年齢に似合わないたび重なる試練を乗り越えて成長していく物語としてその心の揺れ動くさままでしっかりと描かれている。
ややスピード感に欠けると感じる部分もあるが非常に満足できる内容である。
masato (2012年2月 1日 13:56) | コメント(0)





