2011年12月アーカイブ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
白石誓(しらいしちかう)はフランスのロードレースチームに所属している。ツール・ド。フランスで出会ったのは、敵チームに所属していて、めきめきと頭角を現してきたニコラとその幼馴染であるドニだった。

「サクリファイス」の続編である。前作は日本でのロードレースを扱っていたたが本作品はその3年後の物語。全作品と同様ロードレースという日本ではとても注目度が高いとはいえないプロスポーツの世界ゆえに、その世界に身を置く選手たちやその環境などどれも新しいことばかりで非常に面白い。

誓(ちかう)は、チームのエースであるフィンランド人のミッコをアシストすることを自らの役割としてレースを戦うが、すでにチームの解散が現実味を帯びている状態ゆえに、チーム内の選手間や監督との間に不和が広がる。

そしてレース全体を覆うのはドーピング問題。それはもはやドーピングをした選手がいるチームの問題だけに限らず、ドーピングの事実が発覚することはロードレースの人気の低下、そしてスポンサー離れにつながるゆえに、選手たち全員に影響を与える問題。さまざまな要素を物語に織り込みながら誓(ちかう)はレースを戦っていく。

そして全作品にも劣らないラスト。すでに出版されている続編「サヴァイブ」も近いうちに読みたいと思わせる十分な内容である。

最初は罪のない、誰も傷つけない嘘のはずだった。


マイヨ・ジョーヌ
自転車ロードレース・ツール・ド・フランスにおいて、個人総合成績1位の選手に与えられる黄色のリーダージャージである。各ステージの所要時間を加算し、合計所要時間が最も少なかった選手がマイヨ・ジョーヌ着用の権利を得る。(Wikipedia「マイヨ・ジョーヌ」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
都内で放火が相次いだ。狙われた家には必ずひとつの古い邦画映画ポスターがあった。

鑑定士凛田莉子(りんだりこ)シリーズの第4弾である。今回もシリーズではおなじみの流れとなりつつあるが、冴えない記者小笠原(おがさわら)と冴えない刑事葉山(はやま)とともに物語は展開するが、そこに臨床心理士として嵯峨敏也(さがとしや)が加わる。「千里眼」「催眠」シリーズから松岡圭祐作品を愛読している人にとっては注目すべき点だろう。

さて、物語は各地に眠っていた古い邦画ポスターをめぐって展開する。犯人の狙いはなんなのか、何故ポスターを燃やす必要があるのか、と。

力を抜いて楽しめる一冊。例によって雑学好きにもお勧めである。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「"痛みなく""疲れなく"気持ちよく完走できるランニングLesson」
マラソンについて初歩的な内容から順々に解説している。ランニングをすることのメリット、ランニングを始めるための体作り。フルマラソン、ハーフマラソンのためのトレーニング、体のケアの方法などである。

昨今のマラソンブームのなか、マラソンを始めた人は多いのだろう。しかし「マラソン」と聞くと、だれもが学生時代の授業で経験があるせいか、大した知識を必要とせずにひたすら走れば肺活量の向上によって上達するもの、と思うかもしれない。

しかし、実際にはそのままではモチベーションを保てたとしても度重なる怪我や、向上しないタイムと向き合うことになるのである。

本書は単にトレーニングの方法だけでなく、現代に合わせた、たとえばネットを利用した仲間との交流によるモチベーション維持など、総合的に役立つ情報をコンパクトにまとめている。初心者ランナーには一読の価値ありといえるだろう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ギャラリストである著者がその経験のなかから得た知識をもとに、現代アートについて語る。アーティストたちはどうやって有名になっていくのか、展覧会はどうやって開かれるのか、アートの値段はどうやって決まるのか、など、どこか敷居の高い世界、として距離を置いてしまうような空気のある現代アートについて、非常にわかりやすく解説している。

個人的に面白かったのは第3章の「アートの価値はどう決まる」である。世の中に最初に出たときの値段であるプライマリープライス、そしてオークションや売買などを経て変化するセカンダリープライス。と、アートの値段の決まり方を示してくれる。

そのほかにも、村上隆と奈良美智とのエピソードや海外のアート事情など、どれも興味を掻き立ててくれるだろう。そして、全体を通じて、現代アートをビジネスとしてだけでなく、作品、アーティスト、業界全体含めて「温かく育てていこう」という著者のアートに対する思いが伝わってくる。

アートは「商品」である前に、「作品」です。世界に一点しか存在しない。工業製品のように大量生産ができるわけでもないのです。作品には生身の人間が関わっているからこそ、アートは高額商品となり得るのです。

「ちょっとギャラリーを訪れてみようかな」と思わせる一冊である。

サザビーズ
現在も操業する世界最古の国際競売会社。インターネット上でオークションを開催した世界初の美術品オークションハウスでもある。(Wikipedia「サザビーズ」

クリスティーズ
世界中で知られているオークションハウス(競売会社)。ライバル社であるサザビーズと比べ、より大きな市場占有率を幾年にも渡って保持してきており、収益からみるとクリスティーズ社は現在、世界で最も規模の大きいオークションハウスである。(Wikipedia「クリスティーズ」

ジュリアン・オピー
イギリスの現代美術家である。シンプルな点と線による独特な顔を生み出し、世界の名だたる美術館に作品が貯蔵されている。(Wikipedia「ジュリアン・オピー」

キース・へリング
ストリートアートの先駆者とも呼べる画家で、1980年代アメリカの代表的芸術家として知られる。シンプルな線と色とで構成された彼の絵は日本でも人気があり、キースの作品をプリントしたTシャツがユニクロなどから販売されるなど広く知られている。(Wikipedia「キース・ヘリング」

ジャン=ミッシェル・バスキア
ニューヨーク市ブルックリンで生まれたアメリカの画家。1983年にはアンディ・ウォーホールと知り合い、作品を共同制作するようにもなる。(Wikipedia「ジャン=ミシェル・バスキア」

参考サイト
Julian Opie |
Keith Haring
Tomio Koyama Gallery 小山登美夫ギャラリー

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
音響効果を用いて詐欺を働いていたのはかつてのミリオンセラーのヒットを多く飛ばした音楽プロデューサーだった。凛田莉子(りんだりこ)はその企みに挑む。

万能鑑定士シリーズの第3弾。前の物語はIとIIにわたって繋がっていたが、本作品はIIIだけで完結している。詐欺を働く音楽プロデューサーはTK氏を想起させる。おそらく述べられていることのいくつかは現実のTK氏のことと重なるのだろう。

詐欺を防ごうと奮闘する物語でありながら、どこか力を抜いて読める作品。なんだかすこしずつ凛田莉子(りんだりこ)のやっていることは千里眼シリーズの岬美由紀(みさきみゆき)のやっていることと変わらなくなったように感じる。

まだ読んでいない続編が次々と出ているようだが、もう少し深みのある物語に発展することを期待している。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Rhymeのもとへ長い間連絡を取っていなかった叔母から電話があった。従弟のArthurが殺人の罪で逮捕されたと言う。しかし、Arthurは人を殺せるような人間ではない、調べていくうちに、無実の人間を容疑者に仕立て上げ、自分はのうのうと生きている人間がいることがわかる。

犯罪学者Lincoln Rhymeシリーズの第8弾。今回の相手は「すべてを知る男」。情報化された個人情報を利用し他人になりすまし、その人間の前科、習慣、趣味、商品の購入履歴などを基に、もっとも犯人にしやすい人間に狙いを定めて、その家や車に犯罪の起きた場所とつながる証拠をおく。

捜査の過程で浮かんできたデータマイニングという業界。その業務は人々のすべての情報をたくわえ、整理しそれを企業に提供するというもの。むしろそれは近い未来への僕らの生活に対する警鐘のようだ。犯人によってクレジットカードを勝手に使用され、犯罪にりようされて生活を破壊された元医師の言葉など、ただフィクションという言葉で済ませられないものを感じる。

人々はコンピューターを信じるんだ。コンピューターが、あなたはお金を借りていると言えば、あなたは金を借りているということになるし。あなたは信用に値しないと言えば、たとえ億万長者だろうが、信用されない。人はデータを信じて、事実なんて気にしないのさ。

それでもいつものように次第に犯人を追い詰めていく。

さて、今回もAmelia Sachsはもちろん、ルーキーから少しずつRhymeに鍛えられて成長しているRon Pulaskiも非常にいい味を出している。無実の罪で捕らえられたArthurがRhymeの従兄弟ということで、シリーズ内であまり語られなかったRhymeの学生時代に触れられている。個人的には犯人との対決よりも、その学生時代の物語により引き込まれた気がする。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さらに向上するために、プロフェッショナルの経験談や方法を聞いて実践しようと思っても、多くの人が数日続けるだけですぐにやめてしまう。そもそもそのモチベーションはどうやって維持すればいいのか。そんな新しい自分になるための心構えをまとめている。

また、その際人が陥りやすい罠を、人間の心理的傾向を元にわかりやすく説明している。いずれも誰にとっても思い当たるふしのあることばかりなのではないだろうか。

人は自分の手に入らないものを批判する気持ちをどこかに持っています。デートの誘いを断られれば「もともとそんなに好きじゃなかった」と言い、他人がもっているものを見て「そんなものは役にたたない」と批判します。

また、中盤で取り上げられている3つのコンプレックスの反応「同一視」「投影」「反動形成」は呼び名はときどき耳にするが意味をしっかり知ったのは初めてで、この内容を知っていれば自分がもし陥りそうになった場合に修正が効くのではないだろうか。

その他にも「アンラーン」の重要性や「ハロー効果」など興味深い内容を飽きさせないような構成でつづっている。

個人的に僕自身は勉強を始めれば永遠とやってられるぐらいでむしろ本書のターゲットとなる読者層とは異なるのかもしれないが、それでも楽しむことができた。本書の内容は誰にでも「本当に今のままでいいのか?」とか「書かれているような負の罠に嵌っていないか?」と考えさせてくれるだろう。

自分に合わないと思うものを拒否するのは簡単だけど、そんな事をしていたら君の価値観は死ぬまで拡がる事はないよ。

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