2011年7月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30日生きることのないオオスズメバチの物語。マリアは飛ぶのが速く「疾風のマリア」と呼ばれる。

百田尚樹は僕にとって注目の著者であるため、内容など確認せずに手にとったのだが、それにしてもハチの物語とは。読み始めてそれに気づいた後は、むしろこのハチをどのようにして200ページを越す物語に仕上げたのか、とそちらに俄然興味を抱いた。

序盤は巣のなかでワーカーという餌を捕獲する役割を担う一人のマリアの狩りの様子を描きながら、オオスズメバチの生態を説明している。30日という短い生涯ということで1日1日と上の立場になって、毎日戻らない仲間のハチたちの情報によって、自分も近いうちに命が尽き果てることを意識して狩を続ける。

周囲の昆虫と話すことにより一生餌を捕獲し続け、恋もせず子供も生まないということに疑問を持ち始めるあたりは、短い一生のなかに人並みの悩みを与えて、人生の縮図のようで面白い。

物語を楽しみながら、女王蜂による集中産卵の意味が見えてくる点も興味深い。昆虫にしゃべらせて擬人化させてしまっている時点で、小説としては難しい部類の構成になったと思うが及第点は十分に与える内容と言えよう。

むしろ本書を読んでさらに興味を持ったのが著者が今後どのような作品を手がけるのかということ。「永遠の0」で戦争を描き「ボックス」でさわやかなスポーツ物語。「輝く夜」でラブストーリーを描いたと思ったら今回は昆虫の話。まだまだ新しい方向から物語が生まれそうである。

さて、僕がハチ関連の本を読むことなど数年に一度だと思うが、意図せず連続してしまった(「ハチはなぜ大量死したのか?」)この偶然も面白い。本作品にもミツバチの話は出てくるのであわせて読んでみるのも面白いかもしれない。

【楽天ブックス】「風の中のマリア」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2006年から各地で報告されたミツバチの失踪事件。本書はそんななぞ名が事件の原因を探ることでハチや自然、その進化を語る。

なんという魅力的なタイトルなのだろう。この本を手に取る人の多くは、むしろ農業や昆虫に興味ある人間よりもミステリーファンなのかもしれない。僕自身もタイトルと最初のプロローグで一気に心を掴まれてしまった一人である。

2007年の春までに、実に北半球のミツバチの四分の一が失踪したのである。

序盤は、ミツバチの習性について説明している。コロニーと呼ばれる蜂のグループにおける、女王蜂や採餌蜂、貯蜜蜂の役割などである。それによってミツバチのコロニーがどれほどシステム化されたものだか理解できるだろう。

同時に、世の中の植物の多くが、蜂の助けを借りて受粉することによって果実をつけること。蜜蜂が消えたら、僕らの食卓に毎朝並んでいるものの多くが消えてしまうことを強調することで、本書が扱っている内容の重要性を訴えている。

さてCCDと呼ばれる蜂の失踪。その原因は新種のウィルスなのかダニなのか、それとも農薬なのか、携帯電話の普及に原因があるのか。信憑性のある説から荒唐無稽なものまで、各地であげられた報告やその矛盾点を説明し、また、その過程で過去に起こった、ウィルスやダニ、農薬に起因する事件を取り上げている。

話が時系列に進まないのでお世辞にも読みやすいとは言えない。そして物語が後半へと進むにしたがって不安になったのは。「なぜ大量死したのか?」の回答は本作品に最終的に書かれるのか?ということ。そう、残念ながら本作品にその答えはない。というよりも現実世界でもその原因未だわかっていないのだ。

ミステリーではなく現実の話なのだからそういう可能性があることを考慮すべきだったのだろうが、個人的にはがっくり来た。罪なのは本書のタイトルだろう。原書のタイトルは「The Collapse of the Honey Bee」の方が内容にはるかに合致している気がする。僕と同じような思いをする日本の読者は多いに違いない。本書は蜂の失踪事件をきっかけに、自然への人間の接し方について再度深く考えさせる方向へ意図された内容なのである。

最初からそういう目線で見れば、本書は非常に面白い。最終的に本書が訴えているのは「回復力」の重要性である。自然界で動物や昆虫が大量に死ぬのは理由があり、やがてその耐性を持ったものが生き残って種は強くなっていく。それを人間が下手に手助けすれば弱いまま種が残り、いつかそのしっぺ返しを食らう時が来るのである。自然界のバランスを保とうとする「回復力」の範囲内の変化であれば介入せずに見守ることも重要なのだと説いているのだ。

人は芋虫なしに蝶だけを欲しがるが、そういうわけにはいかないのだ。

本書を通じてミツバチのすばらしさを知るだろう。著者も書いているが、僕も本書を読んでミツバチを飼いたくなってしまった。

【楽天ブックス】「ハチはなぜ大量死したのか」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
黒衣の男は砂漠を逃げていく。ガンマンは追った。そんな冒頭で始まる物語。Stephen Kingの「The Dark Tower」シリーズの第1弾である。

なぜガンマンが黒衣の男を追い続けているのか、彼らは過去にどんな因縁を抱えているのか。その説明は一切描かれない。ただガンマンは男を追い、立ち寄った町で男について尋ね歩く。男はなぜ蘇ったのか。19という数字は何を意味するのか。

自分の英語力が未熟なせいかと思うほど意味の繋がらない回想シーン。いずれもおそらくこの後のシリーズの続編でその細かい物語の断片が繋がっていくのだろうと思われる。本作品だけを評価すると、残念ながら面白いとはとても言えないが、「The Dark Tower」というシリーズを読む上で欠かせない作品として我慢して読むべきなのだろう。

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
弱小チームだったヤクルトスワローズにID野球を浸透させ、3度の日本一に導いた野村克也。その野球に対する考え方を語る。

「ID野球」「野村再生工場」。このような単語は野球に詳しくない人間でも何度か聞いたことがあるだろう。こういう言葉が浸透したのは、おそらく野村の監督としての振る舞いが、ほかの監督とは違っていたからだろう。

本書では、野村克也がプロになってレギュラーを掴むまでの過程。そして中盤以降は、ヤクルト、阪神、楽天での監督としての目線で、選手や試合、戦術について語っている。

残念ながらその内容は、野球以外のものに応用できるとは言いがたく、野球ファンのための内容と言える。すでに70歳を超えている著者に対して求めるのは酷なのかもしれないが、その語り口調からは謙虚さよりも傲慢さが感じられる点が残念である。

【楽天ブックス】「野村の「眼」」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
記憶に新しい秋葉原連続無差別殺傷事件の犯人加藤智大(かとうともひろ)。彼はなぜ追い詰められていったのか、彼はなぜ事件を起こさなければならなかったのか、そんな視点で加藤智大(かとうともひろ)を見つめていく。

時系列で加藤の成長の過程が説明されていく。いきなりページをめくる手を鈍らせたのは、小学校、中学校時代の母親の虐待のような厳しいしつけである。

加藤は、母の罰に耐えかねて、よく泣いた。すると母はスタンプカードを作り、泣くたびにスタンプを1つ押した。そして、スタンプが10個たまるとさらなる罰を与えた。

虐待や厳しいしつけを受けたからといって、そんな人すべてが犯罪を起こすわけではないから結局本人の責任。という人もいるだろう。しかし、これほどその厳しいしつけの影響が加藤の性格に如実に現れているを目の当たりにすると、加藤が成人しているとはいえ両親への責任の追及をすべきなのではないかと感じてしまう。また、そこになにか負の連鎖のようなものも感じてしまった。大学に行かなかったことで自分たちの生活に満足していない両親が、過渡な期待を子供たちに押し付けることで、形は違えどやはり次の世代にも不幸な人生が形作られていくのだ。

しかし、高校以降の加藤の生活には、僕の思っていた以上に、素敵な友人たちがいたようだ。。「きっと悩みを打ち明ける相手もいなかったのだろう」と思っていただけに、その点は逆に驚かされた。

以降も、転々とする職場や、ネットの掲示板上にも加藤の気持ちを理解してくれようとしてくれる人がいるという事実になんだか救われた気がする。

「冗談抜きで友達になりたいと思うようになったよ。」
「それは嬉しいですけれど、私と友達になってもあなたにとっては何のメリットもないですよ。」
「じゃ今日から友達だから。」
「以前にもこんなやりとりした人がいましたっけ。どこへ行ってしまったんでしょうね。」

しかし、残念ながらそれらの好意に上手に甘えることのできない加藤。この性格もおそらく家庭での育てられかたによって、形作られたのだろう。そんなしつけを強要した母親や、同じ母親のもとで成長した加藤の弟は事件に対してどう思うのか、実際そのような手記が出ているということなので、そちらもぜひ機会があれば触れてみたいと思った。

終盤に差し掛かるにつれて、結局事件を起こした原因はなんだったのか。誰が悪いのか。何の罪なのか。今後同じような事件を起こさないためには世の中はどう変わるべきなのか、と考えてしまう。しかし、そこには当然明確な答えなどない。

次第に追い詰められていく加藤が、犯行直前にも掲示板に書き込みを続けていた。

店員さんいい人だった。
人間と話すのっていいね。
タクシーのおっちゃんともお話した。

そこにあったのは何気ない言葉だった。しかし、加藤はそんな言葉を通じて、世界を信じた。それがたとえ一時だったとしても、彼の心は動いた。自然と笑みがこぼれた。涙もこぼれた。言葉こそが彼の岩盤のような他者への防波堤を穿ち、頑なな姿勢を突破した。

きっと誰でも、彼に共感する部分を持っているのだと思う。自分の不幸の原因がわからなくて、何が自分を幸せにしてくれるのかわからなくて、そんな鬱憤を社会や人のせいにして、自分のなかの孤独を常に感じて、自分を理解してくれる誰かと話したくて・・・。誰しもきっとそんな感覚に覚えがあるだろう。それでもそういう人たちが「今のところ」このような事件を起こしたり自殺したりしないのは、その気持ちを一時的にであれやわらげてくれる存在、機会を周囲に持っているからだろう。

さて、僕はこの本を読んでどうすべきか・・・。なんか、僕は割と甘えている人間に冷たかったり厳しかったりするのだが、くだらない愚痴や、退屈な人の話でも、これからはもう少ししっかり聞いてあげようかな、と少し思った。

【楽天ブックス】「秋葉原事件 加藤智大の軌跡」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大森署の署長を務める竜崎伸也はアメリカ大統領来日の際、方面警備本部の本部長に任命される。

「隠蔽捜査」シリーズの第3弾である。このシリーズはいずれも竜崎伸也(りゅうざきしんや)という有能なエリート警察官を描いている点が、多くの警察物語と大きく異なる点である。

一切の不正を行わないだけでなく、キャリアでありながら、その立場に溺れて部下に不必要な指示を与えたりせず、常に事件解決、防止のための合理的な決断をし、それを実行する点が僕ら読者の持つ「キャリア」のイメージと大きく異なり、本シリーズの魅力となっている。

しかし、本作品では、補佐役として方面本部に参加してきた魅力的な女性キャリア畠山美奈子(はたけやまみなこ)に恋愛感情を抱いてしまい、竜崎(りゅうざき)の持つ倫理観と、それと相反する感情の葛藤のなかで、本部長という重要な役目をこなさなければならない、という過去2作品とはやや異なった展開になっている。

例によってテンポのいい迅速な展開で非常に読みやすい。このシリーズの魅力は、最終的に竜崎の見せてくれる芯の通った決断と合理的な判断が、しっかりと問題を解決してくれるという、その爽快感だろう。前2作に比べるとややその個性が薄れてしまった気もするが、一気読みさせてくれる展開力は健在である。

【楽天ブックス】「疑心 隠蔽捜査3」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本人でありながら世界からも注目を浴びる心臓外科医。日本初のバチスタ手術に挑んだ男でもある。その心臓外科医としての地位を固める過程が綴られる。

著者海堂尊はドラマや映画にもなった「チームバチスタの栄光」で一躍有名になり自信も医者であるという異例の経歴の持ち主である。そんな彼が出した実際の外科医についての本ということで興味を抱かずにはいられなかった。

本書では今までに須磨(すま)が越えてきたいくつかの壁について語っている。序盤に触れられているのは須磨(すま)が海外からのオファーによって経験することになった公開手術である。

似たような状況をドラマなどで見たことがあるからある程度は想像できるものの、実際にはそれは通常の手術とは比べ物にならないくらい多くのことを気にかけながら進めなければいけない手術で、緊張やプレッシャーも信じられないほどのものだということがわかるだろう。

それ以外のいくつもの困難とわずかなチャンスをものにしながらその地位を固めていく須磨(すま)。そこでは日本の医学会の保守的で異端児を嫌う風潮が何度となく触れられている。

そして後半はバチスタ手術について触れている。現在バチスタ手術の状況や、臓器移植が実質ほとんど行われていないという実情が、須磨にバチスタ手術の必要性を強く感じさせたこと。など、日本最初のバチスタ手術が本当に多くの人の助けを借り、また、費用いくつかの解決しなければいけない問題を越えてようやく実現されたものであることがわかる。

バチスタ手術を今、一番必要としているのは日本ではないのか。

当時の日本ではまだ脳死が認められておらず、心臓移植再開のメドも立っていなかった。なので、拡張型心筋症という難病に罹った日本人には希望がなかった。

現在、バチスタ手術が生き残っているのは世界中を見回しても日本だけだ。バチスタ手術は他国では全部死に絶えた、と言っていいだろう。なぜ須磨が有名なのかといえば、いまだにバチスタ手術をやっていて、しかも数多くの患者を助けているからだ。

医療現場の実情だけでなく、ぶれない須磨(すま)の生き方も本書を通じて見えてくる。自分を複雑化しないで単純に「外科医」という基本から逸脱しないで物事を考え決断するその姿勢には見習うべきものを感じた。

そのほかにも「本物」に対する須磨(すま)の考え方が印象的だった。

ニセモノは、できた直後にはきらびやかですが、その瞬間からすでに滅びに向かっている。本物は違う。年月とともにその威厳を増すものなんです。

人とは違う生き方をずっと続けていた人というのはやはりそれなりのものが身につくのだと、それが本書を読んでいて伝わってくる点に驚かされた。

【楽天ブックス】「外科医 須磨久善」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ジャーナリスト池上彰が世界の現状をわかりやすく語る。

「知らないと恥をかく」とタイトルにあるが、こういう本を読んでいると周知している時点ですでに多少恥を晒している気もする。正直言って割と経済や政治に疎い自覚はあるから本書を手に取ったのだ。

扱っている内容は、世界ではリーマンショックや各地の紛争、アメリカ一極集中の崩壊、そして日本国内の問題などであるが、少し読み進めると、本当に表面的な説明だけで、さらに詳しく知りたい人にとっては物足りない内容だと気づくが、世界で起きている多くの諸問題に対して興味を持つきっかけとして、本書は有用といえるのではないか。

たとえば、サブプライムローン問題などは、その問題の引き起こした出来事の大きさ故に多くのメデイアで説明されつくされたものではあるが、各国の低金利が原油価格の引き上げの大きな要因となっている問題などは正直まったく知らなかったことなので、なんとも恥ずかしい驚きであった。世の中をしっかり理解するためには一度しっかり経済学などを勉強すべきなのかも、と感じてしまう。

本書を読み終えたからといって「知らない」ことが「知っている」になるわけでは決してない。読み終えたあとも、世の中はわからないことだらけだという印象は大して変わらないが少しはハードルを下げてくれたような気がする。

パクスブリタニカ
イギリス帝国の最盛期である19世紀半ばごろから20世紀初頭までの期間を表した言葉。特に「世界の工場」と呼ばれた1850年頃から1870年頃までを指すことも多い。イギリスはこの時期、産業革命による卓抜した経済力と軍事力を背景に、自由貿易や植民地化を情勢に応じて使い分け覇権国家として栄えた。(Wikipedia「パクス・ブリタニカ」

ブレトンウッズ協定
第二次世界大戦末期の1944年7月、アメリカ合衆国のニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで開かれた連合国通貨金融会議(45ヵ国参加)で締結され1945年に発効した国際金融機構についての協定である。(Wikipedia「ブレトンウッズ協定」

【楽天ブックス】「知らないと恥をかく世界の大問題」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ワールドカップやアジアカップなど、日本代表の主要な試合を詳細なデータで解説する。

つい先日「マネーボール」という本を読んだ。その本はメジャーリーグで選手への年俸総額は下から数えたほうが早いにもかかわらず毎年地区優勝を争うアスレチックスがどのようにデータを分析しどのような尺度で選手を評価しているかを興味深く解説したものである。それを読み終えたとき「同じことがサッカーでもできないものか?」という感想を抱いたのだが、その「マネーボール」のサッカー版がまさに本書であり、本書でも「マネーボール」について言及されておりそれなりに影響を受けたことが窺える。

サッカーは野球よりデータの取り方が複雑になるようだが、本書ではいくつかの尺度を用いて解説している。詳細なデータを見ると、僕らが試合を見た印象のいくつかはデータと矛盾していることがわかる。

スペイン代表はほぼ全ての試合をボールポゼッション率で圧倒してきた。当然スペインの攻撃はパスを華麗に繋いでシュートまでいくと思うだろう。データで言えば相手ボールを奪ってからシュートまでの時間は多くかかっていると思われるだろう。しかし、相手ボールを奪ってから16秒以内にシュートを打ったのが6番目に多いチームだった。

Jリーグ2010年のトラッキングデータで瞬間的に最も速く走った選手のランキング表を作ってみた。Jリーグの中で誰が最も早い選手なのだろうか?
答えはおそらくサッカーに詳しい人であれば名前を挙げる事が殆どないと思われる鹿島アントラーズの小笠原満男選手だ。

試合の中で試合をコントロールするゲームキャプテンも、ピッチの外から冷静に分析して指示を出す監督もこの印象に左右される。だからこそ客観的なデータが重要になってくるのだろう。

日本代表の主要な試合のデータをいろんな角度で見ることで、たとえば岡田ジャパンとザックジャパンの考え方の違いなど、またひとつサッカーを楽しむ視点が増えた気がする。ただ、どうしても上でも述べた「マネー・ボール」と比較してしまうのだが、そのデータ解析を面白くわかりやすく説明しているとはいい難く、データ、解説、データ、解説という単調な繰り返しで終わってしまっている点が残念である。サッカーを知っていて、日本代表の試合をある程度見ている人にしか楽しめない内容になっているような印象を受けた。

【楽天ブックス】「本田にパスの36%を集中せよ ザックJAPAN vs.岡田ジャパンのデ-タ解析」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2008年、そのスピーチに未来の希望を感じ、オバマ大統領は選ばれた。その後アメリカの貧困層にはどんな変化があったのか。著者が実際にアメリカの貧困層の人々たちに接してその声を届ける。

「すべてのアメリカンに大学教育を受けさせる」「国民全員に医療保険を与える」。弱者を思いやる発言に胸を打たれ、多くの人が、彼なら本当に世の中を変えるかもしれない、と将来への希望を見たのだろう。期待が大きかっただけにその失望も大きいのだ。本書のなかに描かれる人々の声は、失望と、期待しすぎた自分への憤りが見える。

私はあなたに投票した。でも、もう本当に疲れきっているの。一体、何がCHANGEしたのかしら?あなたには本当に失望しています

本書のなかで貧困層の現状を訴える過程で、いくつか議論を巻き起こした事件が取り上げられる。()いまだ根強く残る人種差別と貧困ゆえに高まる犯罪率。日本と同じ先進国でありながら、最下層にここまで差があること、生まれてから努力しても変えようのない状況に人生の不公平を感じてしまう。

大統領が変わることに将来の希望を見た彼らの声を聞くと、アメリカという国で、大統領選挙があれほど国民の関心を引く理由がよくわかる。僕ら日本人がアメリカ人と比べて政治に関心がないのは、ある意味、それが僕らの人生を左右するほどの影響をもたらさないためだろう。それは幸せなことだとも言えるかもしれない。どんな無能な人間が総理大臣になろうと政治によって命の危機を感じることはないだろう。

多くの声をまとめているだけで、著者の考えがあまり介入していない点に好感が持てる。おそらく、本書を読んで、いくつかの貧困にあえぐアメリカ人が口にしているように「オバマは口だけだ」と思う読者もいれば、「そう簡単に改善できないぐらいひどい国にブッシュはしてしまったのだ」とオバマ大統領への期待の目で見続ける読者もいるだろう。貧困層の現状を伝えるだけでそれによる判断は読者に委ねているのである。


オスカー・グラント
サンフランシスコとベイエリアの各地をつなぐ公営高速鉄道システム「BART(Bay Area Rapid Transit)」の駅で、内でけんかをしているとの通報に応じて駆けつけた鉄道警察官らに電車から降ろされ、地面に押さえつけられた状態で撃たれ、死亡した。事件の様子は、通行人が携帯電話で撮影しており、動画がインターネットやテレビで広く放映された。(AFPBB News

アマドゥ・ディアロ
ニューヨーク市に住んでいた23歳のギニア人の移民。1999年2月4日に、ニューヨーク市警察に勤める4人の白人警官から、合計で41発の銃弾を受けて射殺された。 4人の警官は解雇され起訴されたが、その全員が裁判で無罪となった。(Wikipedia「アマドゥ・ディアロ」

ジェニファー・ハドソン
アメリカ合衆国の歌手、女優。(Wikipedia「ジェニファー・ハドソン」

【楽天ブックス】「オバマも救えないアメリカ」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第142回直木賞受賞作品。

本作品は2つの物語で構成されている。1つ目は宇津木明生(うつぎあきお)という、名家に生まれながらも才能豊かな2人の兄にコンプレックスを抱きながら生きてきた男の物語。2つ目は結婚を目前に控えたOLみはるの物語である。

どちらの物語にも、生きていくことの目的や意義や、幸せの形や、そういった答えのないもの(もしくは各自答えの異なるもの)に対する疑問を読者のなかにじわじわと染みこませてくるような世界観を漂わせている。

たとえば1つ目の物語では宇津木明生(うつぎあきお)の周囲には叶わぬ恋に突き進む2人女性がいて、恋愛についての考えを語る。

みんな徹底的に探してないだけだよ。ベストの相手を見つけた人は全員そういう証拠を手に入れてるんだ。

年をとろうとも、結婚しようともベストな相手を見つけることが人生の目標...、そんな考え方にどきっとさせられてしまう。

そして2つめの物語も結婚を目前にもほかの男性と関係をもちながらゆれる女性を描く。

足元の地面が固まれば固まるほど、その硬い地面をほじくり返したい衝動に駆られるのはなぜだろう?

目的を達成することが幸せなのか、目的を達成できないから幸せなのか。安定しているから幸せなのか、安定していないから幸せなのか。長生きすることが幸せなのか、もっと生きたいと思って死ぬから幸せなのか...。

残念なのは2つの物語に関連性があまり見出せなかった点だろう。過去にもいい作品がありながら(特に「私という運命について」は傑作)本作品で初めて直木賞を受賞したということでいままでとは違う何かを期待したのだが、そういう意味での新しさは残念ながら感じられなかった。

【楽天ブックス】「ほかならぬ人」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
古典部の高校生4人が2年生が作りかけたミステリーを見せられ、その続きの脚本の製作に手を貸すよう依頼される...。

「氷菓」に続く古典部シリーズの第2弾である。筆者米澤穂信の作品にいくつか触れるとわかることだが、ミステリーに対してかなりの強い思い入れがあるようだ。(特に「インシテミル」のなかでミステリーに対する言及が多かった)そして、そのミステリーにおける暗黙のルールを強調しながらも、そのルールの枠からどうにかして逸脱しようと終始試みているように感じられる。

本作品で興味深いのはその舞台設定だろう。折木ホータロー、千反田えるを含む古典部4人は素人によって途中まで映像化されて放り出されたミステリーを見せられ、続きがどうなるのか考えるよう依頼されるのだ。

つまりそれは、単純に目の前で起きた殺人事件の謎を解くのとは実はかなり異なる。彼らは常に、映像のなかで得られた手がかりのほかに「実は脚本を担当した人は、この窓が空きにくい事実を見逃していたかも?」とか「脚本担当がこの建物を下見したときは冬でここはもっと草が少なかったかも」という、そのミステリーの作成のなかで生じた見落としや誤りをつねに想定しながら、推理を進めていかなければならないのだ。

そんななか、ホータローは「これが真実」と提出される案を論破していく。では、真実は?というよりも真実として描かれるはずだった映像の脚本は?物語の出来不出来にかかわらず、この奇妙さはかなり新鮮である。結末よりもこの奇妙な設定にずいぶん魅力を感じてしまう。

全体的には前作同様、力を抜いてのんびり読める作品である。

【楽天ブックス】「愚者のエンドロール」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
前作「武士道セブンティーン」で福岡南高校で剣道を続けることを決意した早苗(さなえ)は香織(かおり)と全国大会で対戦することを約束する。本作はその後を描いた物語。

前2作は、早苗(さなえ)と香織(かおり)の物語で、その2人の視点を交互に物語が展開していったが、本作では、早苗(さなえ)の姉でモデルの緑子(みどりこ)の仕事や恋の話。香織(かおり)の通う道場の師範、桐谷玄明(きりたによしあき)の物語など、今までとはやや異なり、いくつかのサブストーリーが含まれている。

こういう風に言うと、今までの物語がぼやけてしまうように聞こえるかもしれないが、メインの早苗(さなえ)と香織(かおり)の物語ももちろん今まで以上の密度で展開されていく。香織(かおり)の東松高校と早苗(さなえ)の福岡南はともに全国への出場を決め、二人の剣道へかけた高校生活は集大成を迎えようとするのである。

そこからは見所泣き所満載である。実現した早苗(さなえ)と香織(かおり)の対戦。待ち望んだ対戦でその緊張感を楽しむ二人の気持ちが手に取るようにわかる。

今、ようやくあたしは、分かった気がする。
「もしかしたら...あたしはもう一度、お前に、負けたかったのかもしれない...」

そして、因縁の黒岩レナと香織(かおり)の死闘。剣道に関する知識がほとんどゼロなため、書かれていることを100パーセント理解できないのが悲しいが、それでもそこからほとばしる緊張感や竹刀のこすれる音が聞こえてきそうなのは、その描写力のすごさなのか、僕自身が物語に入り込みすぎなのか...。正直僕はこういうのに涙腺がかなりゆるいらしい。

誰をさて置いても、あたしが真っ先に礼をすべきは、お前なのだ。
ここで再び戦えたことを、心から感謝する。
本当に、ありがとう。
今までの非礼を、どうか許してほしい。

メインの物語だけでなく、福岡南のチンピラ教師吉野先生の話す過去や、香織(かおり)に憧れつづけた田原美緒(たわらみお)の物語も読み応え十分である。

恐怖はいつのまにか、狂気にすり替わっていた。
復讐は、単なる暴力へと変容していた。

三部作の最期にふさわしいシリーズ中最高の傑作。放課後の汗と砂埃のなかで明日のことなど考えずにひたすらなにかに力をぶつける、そんな時間が恋しくなってしまうだろう。

逮捕術
警察官、皇宮護衛官、海上保安官、麻薬取締官、麻薬取締員、自衛隊警務官等の司法警察職員、または入国警備官等の法律上は司法警察職員ではないが司法警察職員に準じた職務を行う者が被疑者や現行犯人等を制圧・逮捕・拘束・連行するための術技のこと。(Wikipedia「逮捕術」

【楽天ブックス】「武士道エイティーン」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Lincoln Rhymeシリーズの第7弾。2つの殺人現場には古風な時計が置かれていた。Rhymeと犯人、通称Watchmakerとの知恵比べが始まる。

犯罪の現場にわずかに残された微粒子から犯人につながる手がかりを見つけけだして犯人を追い詰める流れは本シリーズに共通し、本作品でも例外ではない。

そんなシリーズの中で、本作品で新しいのは、Amelia Sachsが自らRhymeとは別の犯罪捜査にも専念している点だろう。しかし、それはやがて同じく警察官だったSachsの父の過去へと繋がって行く。

また、本作品は、会話中の相手のしぐさや表情からその真偽を読むスペシャリスト、Katheryn Danceが登場し、Rhymeとの2人の主役級が登場する稀有な物語とも言える。証拠しか信じないRhymeは次第にKatherynを認め、その能力を頼るようになる。

前作「The Twelfth Card」でルーキーとして登場したRon Pulunskiが失敗しRhymeにしかられたりしながらも次第に成長していく姿も物語を面白くさせている。

一方で犯人の追跡劇は一転二転三転と引っくり返る。現場に置かれた時計は何を意味するのか。なぜこの人々が被害者として選ばれたのか。ややいろいろな要素を詰め込みすぎた感がある。そして、本作品に関してはその終わり方も少し異質である。賛否両論あるのではないだろうか。

Red Stripe
ジャマイカのビール(Wikipedia「Red Stripe」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本を代表するアートディレクター/クリエイティブディレクター佐藤可士和がそのクリエイティブな考え方や日々の心構えを語る。

全体的に書かれている内容は特に目新しいことではなく、実際、世の中の多くのクリエイターや、むしろクリエイターにかぎらず、クライアントと協力して何かを作り上げなければならない仕事に就いている人の多くが意識していることだろう。しかし、著者のようにそれなりの実績を社会で持っている人間が語ると説得力を持ってくる。むしろ社会に出たばかりの人向けに書かれた内容のような印象を受けた。

その考え方の説明の過程で例としてだされるクリエイティブワークはそれなりに興味を持って読み進めることができた。個人的にはそちらの過去の事例に焦点をあてて、「過去の事例とその裏の努力」というような視点の内容であればもっと楽しめただろう、と思った。

文字が大きめで、ページ数もその厚さほどないので、この内容であれば新書で出版して欲しいところである。

【楽天ブックス】「佐藤可士和のクリエイティブシンキング」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本代表長谷部誠(はせべまこと)。華麗なパスを送るわけでも強烈なシュートを放つわけでもないのに日本代表の主将まで登りつめた男。その視点からサッカーに対する考え方や日々の生活を語る。

なんとも 日本人らしいサッカー選手。読み始めて、いやむしろ読み始める前から長谷部に対して僕の持っている印象はそんなだった。そもそも「日本人らしい選手」とはどんな選手だろう。たとえばマラドーナのように海外ではサッカーさえうまければ認めてもらえる国もあるが、日本はそうではない。中田英寿、宮本恒靖などがいい例だろう。

サッカーだけが上手くても決して驕り高ぶることなく、サッカーどころかスポーツに限らずすべてに目を向けて、勤勉すぎるまでに向上させる。僕の思う「日本人らしいサッカー選手」とはまさにそんなイメージである。そして多くの「日本人らしいサッカー選手」のなかでも、長谷部に対しては、テレビ出演のときの応対やその風貌からか、特に謙虚なイメージを持っていた。

本書を読み始めてもそんな彼に対するイメージは崩れることなく、むしろより強固に固まっていった。本書のなかで彼がなんども強調しているのは、一人の時間の大切さ、読書の大切さ、常にフラットでいることの大切さである。半分も読まないうちに、ものすごく僕自身の考え方をと共通する部分があると感じた。遅刻に対する考え方などまさに寸分たがわず同じ。


遅刻というのは、まわりにとっても、自分にとっても何もプラスを生み出さない。まず、遅刻というのは相手の時間を奪うことにつながる。

僕より7歳も年下の人間と考えが共通することを喜んでいいのかよくわからないが、日本代表にまでなるほどの男と共通する部分が多い、と前向きに受け取ろうと思う。全体的に特に新しい考え方はほとんどなかったが、多くのことを再確認させてもらった気がする。ちなみに「これも自分と同じだ」と思った考え方のなかで特に驚いたのがこんな考え方である。実は本書を読むまで自分でも意識してなかったのだが。

僕は何が起こっても心が乱れないように、普段から常に「最悪の状況」を想定しておく習慣があるということだ。

長谷部の言葉を僕自身の感覚で補足すると、常に「最悪の状況」と「最高の状況」を想像しておく、ということになるだろう。そうすることによってすべてが予想の範囲におさまり、決して動じることなく常に冷静に最高の決断ができる。実は結構なこれによって、リアクションが薄かったり冷淡に見られたりすることもあるのだが、とにかく僕にとっては非常に理解できる感覚である。

終盤ではワールドカップや、優勝したアジアカップについても語っている。


一度は心が折れそうになった。けれど、まわりのチームメイトを見て、そしてベンチで手を叩いて励まそうとしてくれている仲間を見たら、こいつらとだったら試合をひっくり返せるんじゃないかと思った。

若干サッカーや試合に関するエピソードが少なく、普段の生活や日々の心がけ、といった内容に重点が置かれているため、多くの人が楽しめるだろう。全体を通して、僕にとっては共感できることばかりで、一つ一つの言葉がやけにしっくりくる。しかし、逆に、女性や無秩序に生きることに重みをおく人間が読んだらどんな感想を抱くのだろう。

【楽天ブックス】「心を整える 。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
リストラを請け負う企業の面接官として働く真介(しんすけ)の物語の第3弾。今回も真介(しんすけ)の退職を促す面接によって、人生の岐路に悩む人たちの物語がリアルに描かれる。

本書で退職を勧められるのは、英会話学校、旅行代理店、自動車ディーラー、写真週刊誌で働く人たち。いずれも業界的に長くとどまる場所ではないところが共通している。
英会話学校の章では数年前のNOVAの倒産を期に浮き彫りになった英会話学校の内情、そしてインターネットの普及が逆風となっている現状を描いている。僕自身英会話に長く興味をもっているため特に楽しむことができた。

旅行代理店の回ではその業界の利益の少なさと残業の多さ。とはいえ本作品でもっとも印象深かったのが、この章でその退職を勧められることになった男。古屋陽太郎(ふるやようたろう)である。7年間、その会社に籍を置きながらも会社に対する忠誠心などまったくなく、その考え方は非常にドライで、個人的には非常に共感できる。

続く自動車ディーラーの章や写真週刊誌の章でも、人生の岐路にたった彼、彼女が、自分のやりたいことを再確認し、周囲の人に助けられて決断し、新たな一歩を踏み出していく様子は涙を誘うだろう。

毎回思うことだが、このシリーズを読むと転職がしたくなる。

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