2010年12月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

女性にあまり縁のない生活にを送っていた鈴木(すずき)は、友人に誘われた合コンの席で、一人の女性に繭子(まゆこ)と出会い、付き合うことになる・・・。

友人から薦められて読むことになった。結構賛否両論別れる内容だということで、大ハズレもあり得るかと構えたりもしていた。

軽く内容にふれると、鈴木(すずき)は繭子(まゆこ)と付き合っていたが社会人になったことを機に、状況し、そこで洗練された美女、美弥子(みやこ)と出会うのである。

タイトルである「イニシエーション・ラブ」というのがまさに本作のテーマ。人は常に変化するもの。過去自分が信じていたものさえも、その後自分が成長し、いろんなものを学ぶにしたがって、間違っていることに気づいて改めることもあり、むしろ改めることによってひとは成長していくと語っていて、それは恋愛についてもそれは同様で、今は好きになったひとを今後もずっと好きになるとは限らない、という考えである。

この考えはむしろ結婚などの広く日本人は広まっている慣習とは相反するものなのかもしれないが、常に周囲のものごとから学んで自分を発展させようと考えるひとにとっては、こちらの方が自然なのかもしれない。

そうやってこの本を受け止めたのだが、どうやらその裏には結構なトリックが隠されているらしく、読み終えてほかの人の書評を見るにいたって、ようやくそれに気づくことになった。

読みながらちょっとした違和感を感じたような気はするが、一読してそれを理解できる人がどれほどいるのだろうか?そういう意味では、なるほど、確かに賛否別れるかもしれない。

【楽天ブックス】「イニシエーション・ラブ」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校野球界のスターがガソリンをかけられて焼き殺されるという事件が起こった。元警察犬のマサは飼い主である探偵事務所の調査員たちとともに事件に関わることになる。

宮部みゆきの現代小説の長編はすべて読み終えたつもりでいたのだが、実は本作品だけ抜けていた。ふとそれを思い出して読んでみた。物語は高校野球のスターの諸岡克彦(もろおかかつひこ)が殺されたことによって、その弟の進也(しんや)とともに、真相を突き止めようとする探偵事務所の調査員、加代子(かよこ)やその父であり所長の行動を犬のマサ目線で描く。

宮部みゆきのデビュー作品ということで、やや荒削りな話の展開を感じなくもないが、新聞沙汰になるような事件に関わったら、たとえ被害者だろうと選手たちは甲子園出場をあきらめなければならない、という高校野球の不条理な「連帯責任」を物語に巧みに取り入れているあたりは「らしい」と言える。

そして物語が進むにつれ明らかになっていく、諸岡(もろおか)兄弟とその家族の本当の関係に、きっと何か感じるところがあるだろう。

【楽天ブックス】「パーフェクト・ブルー」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
そもそも英語圏のこどもはどのようにして英語を覚えて行くのだろう。僕らが英語の勉強を始めるのは中学生から(今は小学生かららしいが)なので、すでに論理的思考ができており、その利点を生かした覚え方をする。一方でネイティブスピーカーはそもそも第一言語が英語であるため、経験をもってしかその言葉を学ぶことができない。

この2つの英語の習得方法は大きく異なるが、その違いを知ることは決して無駄ではないだろう、本書はそんな視点に経って、著者が娘で、日本人とアメリカ人のハーフであるジーナの言葉の習得過程をと、それを観察する過程できづいたことなどをまとめている。

僕らの日本人が勉強しながらよく間違えがちなことのうちいくつかは、アメリカのこどもにとっても間違えやすく、また一方で、アメリカの子供にとってさえも間違えるわけないものとあるてんが面白い。

例えばアメリカのこどもはよく「a apple」のように本来「an」となるべきところを「a」といったりするらしいが、規則を最初に学んだ日本人はめったにこういう間違えをすることがない。

そんな興味深い話がいくつも語られている。なんか勉強に役立つというよりか、英語学習者間の面白いトピックとしてのほうが役立つかもしれない。

【楽天ブックス】「アメリカの子供はどう英語を覚えるか」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
あの有名な「金持ち父さん貧乏父さん」の続編にあたり、そのタイトルにある「キャッシュフロー・クワドラント」とは、世の名の人を大きく4つにカテゴライズしていることに由来する。その4つとは、従業員(E)、自営業者(S)、ビジネスオーナー(B)、投資家(I)である。そして、この4つのなかでEとSの2つと、BとIの2つの間には大きな違いがると語る。それはEもSもお金を稼ぐためには相応に自分が動かなければならないのにたいして、BとIは準備さえ整えれば自分が何もしなくてもお金が生み出されるというのである。

そして、本書ではそんな、EおよびSからBおよびIへ移るためにやるべきこととして多くを語っている。書かれている内容はどれも当然のこと、と思えなくもないのだが、その書き方がいずれもシンプルで非常にわかりやすい。

世の中の多くが所属するであろうEのカテゴリの人たちを、「リスクをおそれてなにもやろうとしない」とか「勉強することを諦めた人」のように言っているので
ひょっとしたら本書を読んで不快に思う人もいるのかもしれないが、個人的には楽しむことが出来た。

【楽天ブックス】「金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第50回江戸川乱歩賞受賞作品。

新たに発見された鍾乳洞の調査に参加することになった水無月弥生(みなづきやよい)は、悪天候のための落石によって、アタック班の数名とともに洞窟内に閉じ込められることとなる。

まずケイビングという今まで聞いたことも無かったスポーツに興味を惹かれた。ダイビングの地上版、と例えるのがわかりやすいのだろうか。序盤はそんなめずらしいスポーツについての記述から始まる。

そして、鍾乳洞調査が始まり、調査隊のなかで最初に洞窟に入るアタック班の数名が閉じ込められることによって物語が動き出すのだが、それまでの過程で、アタック班および、その周辺の人の背景や性格がしっかり描かれている点が、物語を面白くさせているのだろう。権力者同士の駆け引きなどを含むそれぞれの思惑と背景、例えば、それは数年前にダイビング中の事故で父親を亡くしている弥生(やよい)や、その事故のときに同じ場所にいたケイブダイバーの東馬(とうま)にもあてはまる。そして、参加者の誰かが犯罪にかかわっているという情報も浮かび上がる。また、雨天のために洞窟が水没するまでに数時間、というタイムリミットもまたスピード感を増すのに一役買っている。

著者の別の作品「サスツルギの亡霊」は南極を舞台にした物語だったが、本作品も洞窟、ということで、今回もまた僕等が普段触れることのない世界を題材にスリリングな物語に仕上げている。

【楽天ブックス】「カタコンベ」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
太平洋戦争末期に太平洋の島に残された日本の軍用犬、北、正勇、勝と米軍のエクスポロージョン。4頭の犬たちはさまざまなかたちで子孫を作り、その血は、戦争の時代に翻弄され世界に広がっていく。

最初の4頭の子供たちはその類稀なる才能ゆえに、ある犬は犬橇でその才能を生かし、あるものは、先祖と同様に戦争でその才能を発揮する。

太平洋戦争から、冷戦の時代に入り、ベトナム戦争、アフガン戦争と20世紀に起こった戦争や紛争、そして、それだけではなく、米ソの宇宙開発など、歴史的な出来事とその背景を描きながら犬たちの動向を描いていく。むしろ20世紀の戦争史として読んだほうが期待に沿うかもしれない。

そして、軍用犬を戦力として重宝する国々によって、気がつけば数世代前には兄弟だった犬たちが敵と味方に分かれて戦っているのである。

考えてみれば人間の所在は、国籍や民族などしっかりと記録されているが、犬においてはそのようなものはなく、その犬の先祖がどこで生まれたか、とかその犬の従兄弟が今どこで何をしているか、など正確に把握することなどまず不可能なのだろう。そう考えると本作品が描く世界は、決して物語のための誇張とはいえないのかもしれない。

そういった意味では本作品は間違いなく斬新的な作品と言える。ただ、斬新的ゆえに読む人によって好みが分かれし、僕としても、もっと少ない数の犬に集中して描いてくれたほうがありがたく、犬も人間も誰一人共感できる形で描かれていないことによって、ずいぶん読みにくさを感じてしまった。

【楽天ブックス】「ベルカ、吠えないのか?」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本人が間違えやすいポイントに絞って英語を解説している。

日本の英語教育の家庭ではその意味的な違いにまで踏み込んで勉強することのなかった部分を、わかりやすい例文を用いて解説している。

たとえば「will」と「be going to」の意味的な違いなどは、何度かきいたことがあるのかもしれないが、あまり意識して使っていなかったことに気づいた。著者が例文をもって、そのニュアンスの違いを示すのを見て初めて、その違いをしっかりと意識して使い分けなければならないということを知った。

たとえば、上司と部下の会話を想定して、

We have to inform the Chicago office be the day after tomorrow.
「明日の朝までにシカゴオフィスに連絡しなければならない」」

という問いに対して「will」と「be going to」の意味的な違いを考えると、
I'm going to do that tomorrow morning.「明日の朝やるつもりでした(言われなくてもわかっているよ)」

I will do that tomorrow morning.「わかりました、明日の朝やります」

となるのである。こうしてその英文が使用される状況を想像して考えると、その違いが日常会話においては無視できないものであることがわかるだろう。同様に、過去形と過去完了のニュアンスの違いなども解説している。

また、個人的に印象的だったのは「make」「have」「get」「let」という4つの使役動詞の使い分けである。日本語にするといずれも「?させる」という意味になるため混乱しやすいのだが、いずれも微妙にニュアンスが違うということがよくわかるだろう。

後半では英文において日本人が「therefore」「so」「because」を多用する傾向があることについて書いていて、その使い方を解説している。実際僕もどうしても日記を英語で書くと「because」を使いたくなってしまうので、この部分の考え方はしっかりと身につけたいものだ。

同様に「したがって」と日本語で訳される、「Consequently」「Accordingly」「Therefore」もしっかりと使い分けをしなければいけないことがわかるだろう。

そして、終盤は制限用法と非制限用法の意味の違いである。話し言葉ではあまり意識する必要がないが、英語でしっかりとした文章を書く技術を身につけるためにはおさえておきたいポイントである。


【楽天ブックス】「日本人が誤解する英語」

おススメ度 ★★★☆☆ 3/5
映画「Shall we dance」で有名になったバレリーナ、草刈民代がそのバレエ漬けの生活を振り返る。

僕自身が、何か一つを極めるという生き方をしてこなかったため、何か一つを極めるために他の、普通の人間なら普通に楽むようなことをすべて犠牲にして一つの道を究めるような生き方には非常に興味を持っている。周囲の人が楽しそうにふるまう中、違う生き方をした自分が、その厳しい人生にどうやって意味を見出し続け、また、そこで感じた葛藤などが知りたいのだ。

そうやって読み始めたのだが、前半はむしろ幼いころの思い出話や、バレエのツアーを通じて体験した海外旅行記のような感じでやや期待はずれな感じを受けた。とはいえ、海外と日本とのバレエに対する社会の考えや環境の違いや、そもそもバレエそのものについてもおおいに好奇心を掻き立てられた。

後半になってようやく僕が読みたかった、その人生の意味や葛藤などに触れている。自分が何のために踊るのか、椎間板ヘルニアに悩まされたことによって改めてそんな問いかけをするのである。

当然と言えば当然なのだが、やはり文章にやや表現力に欠ける感は否めないが、こうして一つの道で大成した人がその人生を振り返った内容だけに、それなりに印象に残る部分はあった。むしろ驚いたのは「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「ドン・キホーテ」。いずれも名前に聞き覚えはあっても、物語の内容をまったく知らないことである。機会があれば劇場に足を運んでみたいものだ。

【楽天ブックス】「バレエ漬け」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「絵の見方」と称して、さまざまな西洋絵画を時代背景や画家の気持ちの変化などとともに解説している。

どうやら世の中には、「絵画の見方がわからない」と言って、それを避けてしまう人がいるようだ。考えて見れば僕の友人にもそんなようなことを言っていた人がいる。個人的には、絵画などというのは、何度も見ていれば、それなりにその画家の個性が見えてくるものだと思うし、その画家の絵のタッチや絵のテーマに興味を持てば、自然と宗教や神話や歴史にも興味が広がっていき理解が深まるもの。絵を見る前に「絵の見方」を学ばなければならないなんてものでは決してないと思っている。

本書の「はじめに」で著者が言っているものまさに僕の考えと一致している。著者のそんなスタンスがなによりも気に入った。

さて、本書はそうやって今まで気にしてなかった絵画の見えなかった部分を教えてくれる。たとえばモナリザについての興味深い説明はこうである。

モナ・リザが座っているのは、腰壁に囲まれたテラスである。つまり室内から外部へと続いていく空間のはざまであると同時に、自然と人工物ののはざまでもある。つぎに時間はどうだろう。どうやら夕暮れ時の光のなかのようだ。つまり、昼から夜へと変化していく時間のはざまだ。さらに季節は秋だ。これも暑い夏から寒い冬への変わり目であり、やはり、はざまといえる。

あれほど見慣れているモナ・リザにもこんな見方があったということに驚かされる。

さて、本書はまた、僕自身のお気に入りの画家について書かれている部分が思いのほか多かったのもうれしい。たとえば、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・モロー、ヒエロニムス・ボス、ビーテル・ブリューゲルなどがそれである。

絵画好きだけでなく、興味はあるけどいまいちわからない、などと思っている人にもオススメである。

ファン・エイク
兄のフーベルト(ヒューベルト)・ファン・エイクとともに油彩技法の大成者として知られる。フィリップ2世(豪胆公)の宮廷で活躍した。フーベルトの事績は不詳で、確実な作品もないが、現存のヤンの作例は兄との合作も含まれている。(Wikipedia「ヤン・ファン・エイク」

【楽天ブックス】「誰も知らない「名画の見方」」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「クラウド」とはなんなのか。人々が漠然と受け入れているその言葉の意味とその有効性を、アップル、グーグル、マイクロソフトというIT界の巨人たちの動向をふまえて説明していく。

本書によると「クラウド」という言葉のブームは2006年に続いて2度目なのだそうだ。しかし一体、世の中のどれほどの人が「クラウド」という言葉の意味を言葉にすることができるのだろうか。実際僕も「Saas」と「クラウド」を同じものとして今まで受け止めてきた。本書ではまずはそんな言葉の意味から説明していく。
決してわかりやすいとは言いがたく、どこか教科書的になってしまう1章、2章は正直やや退屈だったが、「クラウド」「Saas」「Paas」「Iaas」という鍵となる言葉を理解するうえではおおいに役立つだろう。そして各社がどのような戦略をとっているのか、という視点にたってクラウド解説している後半は世の中に対する新しい見方を提供してくれる。

現在3社がそれぞれクラウドに向かって進んでいるが、それぞれの歩んできた道は異なる。印象的だったのが、マイクロソフトのとってきた戦略とグーグルのとってきた戦略が真逆だという考え方である。

マイクロソフトは既存のパソコンに多くの資産を持ち、クラウドを取り込もうとしているが、グーグルはクラウドに莫大な資産を抱え、次は人とクラウドの接点たるパソコンに入り込もうとしている。

そんなふうに中ほどまではマイクロソフトとグーグルの比較に多くのページが割かれるが、その後は、アップルやアマゾンの手法にも触れられる。この手の多くの著者同様、本書もアップルびいきが感じられるが、世の中の状況を見ると、今のアップルの手法を賞賛せずにはいられないのだろう。アップルの賢さ、(したたかさ?)ばかりが印象に残ってしまった。

スマートフォンや電子書籍など、今後のIT界の動向を見つめるのを少し楽しくさせてくれる一冊となるだろう。

【楽天ブックス】「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第30回吉川英治文学新人賞受賞作品。

クラス会の3次会でとあるバーになだれこんだ5人。彼らは同じく同級生だった田村(たむら)を待ちながら、思い出話、近況報告に花を咲かせる。

物語の中心となる5人は40歳。夢を追ったり、甘い恋をするには歳をとりすぎているが、人生をあきらめるには早すぎる。そんな人生の中だるみ的な位置を生きている。

そんな5人が酒を飲みながら交わす会話は、いずれも、ものすごく面白くもなければものすごく退屈でもない、ほどほどの話。そしてみんな純情でもなければ、悪人でもない。そんな中途半端な年齢を生きる彼らのなかから何か感じられるものがあるのかもしれない。面白いのは、この友人田村(たむら)を待っている、という設定だろう。なにかの折りに彼らはつぶやくのだ「田村はまだか」「田村遅すぎる」と。そうやって登場していないにも関わらず、なんども会話のなかで触れられていくうちに田村(たむら)がどこか伝説めいた響きをもってくるから不思議である。

ただ、残念ながら、末尾の解説で「若いひとにはぴんと来ないんじゃないかとすら思う。」と書かれているように、ちょっと僕にはこの作品のよさを掬い取ることができなかったようだ。(僕が「若いひと」かどうかは置いておいて)。

【楽天ブックス】「田村はまだか」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
もはや説明もないぐらい今話題の本だが、改めて説明するなら、ドラッカーの「マネジメント」を読んだ弱小高校野球部のマネージャーみなみが、その内容を野球部に少しずつ取り入れていくという内容。

この本がなぜここまで人気があるのかは理解しがたいが、「マネジメント」と聞くと、会社経営に興味がある人向け、と思って敬遠してしまう人が多いであろう内容を、会社以外の身近な組織(ここでは野球部)で説明している点と、そのタイトルとはイメージとしてかけ離れた表紙絵、挿絵などによるところも大きいだろう。

実際僕自身、そのオリジナルのドラッカーの考えなど一切知らないが、抵抗なくその基本的な考えに触れられる。

あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。

こういう説明をするとただのドラッカーの「マネジメント」の初心者版、というような響きをもってしまうだろうが、繰り返しになるが、それを「高校野球」という非営利な組織に適用している点は単に「身近な例」という意味以外においても大きな意味を持つように思う。特に「顧客とは誰か」という問いを高校野球について問う、というのが新鮮で、読む人によっては、人間関係を損得で計ろうという考え方を嫌う人がいるのかもしれないが、僕自身にとっては好意的に捕らえられる。

「顧客は誰か」との問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。

また、そんな「マネジメント」だけでなく、高校野球の物語そのものも結構面白くて、感動的だったりするのはうれしい驚きだった。

さて、結局本作品ではそうやって高校野球を例にとって「マネジメント」の考え方はどんな組織にも応用できる、という内容なのだが、個人的には、組織に関わらず「個人」にも応用できると思った。

たとえば僕自身という「個人」に当てはめて、「われわれの事業は何か」との問いに、「人生を楽しく生きること」と定義するなら、その顧客は、生きるために必要なお金を与えくれる勤務先や、楽しい機会を与えてくれる友人だったりする。多少の悪行では見放さない親や兄弟は、筆頭株主といったところだろうか。

そうなるとマーケティングとはどういうことだろう。顧客が僕自身の商品である、「発言」や「雰囲気」や「外観」に何を求めているのか。個人にあてはめたときマーケティングだけが突然難しくなるのだが、それはきっと、飲み会のような砕けた場所に出向いて意見を聞いたりすることなのだろうか、自分の言動の直後の周囲の人の表情の変化、つまり「空気を読む」というのもマーケティングになるのだろう。

結局「マネジメント」なんて自分には縁のないもの、と切り捨てるのも読者次第。個人的にはただの話題性だけでなく、内容もオススメできる作品だと感じた。

ピーター・ドラッカー オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系経営学者・社会学者。(Wikipedia「ピーター・ドラッカー」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
FBIの特別調査官であるKimberly Quencyを指名して助けを求めてきた女性は毒蜘蛛を飼いならす男性による暴力の支配から逃れたい、というものだった。

その女性によって、何人かの売春婦たちが殺されていることが告げられる。そこには、売春婦ゆえに、いなくなっても誰も気にかけない、という世の中の悲しい仕組みが指摘されているのだろう。

そして少しずつ犯人とその協力者の少年の姿が描かれていく。幼さゆえに人生の意味すら知らずにひたすら犯人に命じられるまま協力し続ける少年。その少年目線の記述もまた見所のひとつだろう。また犯人が毒蜘蛛を愛している点も好奇心を書き立ててくれる。

そんな犯人を次第に追い詰めていく、という、よくある面白さのほかに興味深いのが、物語の中心となるKimberlyが第一子を妊娠していて、これから母親になろうとしている点だ。FBIの第一線で仕事に没頭しながらも、子供を身ごもったばかりに、今までどおりに働くことができない。おなかの中の子供を危険にさらすことができない。そんな不自由や、自分の仕事を妨げる子供というわずらわしさに、自責の念を抱いたり、母親になるということに自信を持てない、そんな葛藤が物語の随所に見えて来るのである。

そんなKimberlyが同じく刑事である父親に自分が生まれたときのことをたずねるシーンが印象に残った。

お父さんが1年に100件もの捜査に関わっている中に、私たちはいた、家に帰ってきて一緒に食事を取ることを求め、学校の演劇に参加してくれることを求め、一緒にタレントショーを見ることを求めていた。どうやってそれにストレスを感じずにいられたの?そんなつまらない要求にどうやって答えられたの?

そして最後はなんとも切ない展開。世の中の犯罪のいくつかはきっと、本作品の彼ら、彼女らのように、簡単に、被害者と加害者の区別が簡単にはできないものなのだ。悲しい負の連鎖、犯罪の連鎖はきっと僕らの気づかないところで進んでいるのだろう。

ACLU(アメリカ自由人権協会, American Civil Liberties Union)
主に米権利章典で保証されている言論の自由を守ることを目的とした、アメリカ合衆国で最も影響力のあるNGO団体の一つ。1920年設立。2005年度の会員数は約500,000人。政府などにより言論の自由が侵害されている個人や団体に弁護士や法律の専門家によるサポートを提供している。(Wikipedia「アメリカ自由人権協会」

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