2010年6月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
山梨の山林に住むカラスの胃から大量の人骨が発見された。同時期に姿を消した友人の真弓(まゆみ)を探し始めた享子(きょうこ)の周囲で不吉なことが重なって起きるようになる。

開始わずか数ページで、赤子の遺体を破砕機にかける、という、久しく味わっていなかったと思えるような怖いシーンから始まり、ひょっとしたら「リング」のようなホラーかも、と思わせてくれるが、その後は、失踪した友人を探す、享子(きょうこ)を中心とする物語に落ち着く。

失踪した真弓(まゆみ)が占星術などのスピリチュアルな分野を担当していたため、その足取りを追う過程で、チベットのダライラマや前世との因縁など、非科学的な分野へと物語は広がり、最初は抵抗を見せていた享子(きょうこ)自身も、霊能者などと言葉を交わすことで次第に、そんな不思議な物の存在を受け入れ始める。

いくつかの非科学的な話が語られる中で、本作品では「第三の眼」の存在が鍵となっている。見えないものを見る第三の眼。それは人間が進化した形なのか、それとも人間が進化する過程で捨てたものなのか。物語の本筋と関連して描かれる不思議な逸話が非常に面白い。

個人的には「2つの目で見る世界が3次元なら、3つの目では4次元の世界が見えるかも」という言葉が、明らかに飛躍しすげてはいるが印象的だった。

若干、物理的な展開を多くしすぎて、また登場人物も多くなりすぎた感があるが、昨今こういう現実の物語と、非現実の話をバランスよく盛り込んだ作品にはなかなか出会えないだけに新鮮さを感じた。物語のややわかりにくい部分は著者の経験不足ということとして受け止めると、今後の作品での成長に注目したいところだ。

トレパネーション
頭皮を切開して頭蓋骨に穴を開ける民間療法の一種とされる。頭蓋穿孔ともいう。(Wikipedia「頭部穿孔」

カンブリア爆発
古生代カンブリア紀、およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の「門(ボディプラン、生物の体制)」が出そろった現象であるとされる。(Wikipedia「カンブリア爆発」

参考サイト
Wikipedia「ダライ・ラマ」

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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
目を覚ますと隣に全裸の男性が寝ていた。男の名前どころか自分の名前も思い出せない。どうやら記憶を失ってしまったらしい。

そんな意外と物語ではよく使われる記憶喪失を題材にした作品。本作品が他の作品と違うのは、その主人公となる記憶を失った女性だけでなく、そこにいた男性も「前向性健忘」という記憶の障害を抱えている点だろう。

「前向性健忘」は「博士の愛した数式」で有名になった病気で、ある時期以降の記憶を蓄積できないというもの。本作品でも冬樹(ふゆき)という男性は小一時間ごとに新しい記憶をリセットしてしまうために、そのたびに目の前にいる女性の名前どころかそこにいる理由さえも忘れてしまう。

それが本作品の面白さであり、布石なのだが、記憶を失ったもの同士のちぐはぐなやりとりがやや不必要に長く、また、あまりにも使い古された(そのわりに現実ではあまり見ない)「記憶喪失」という題材にかなりのチープさを感じてしまう。

しだいに女性は自分の記憶を取り戻して、自分の持っている醜い過去と直面していくわけだが、物語はそれだけでは終わらない。帯に「必ずもう一度読みたくなります」というのは決して嘘ではないが、それは「面白いから」ではなく、「よくわからないから」であり、もう少しシンプルな構成にできなかったものか、という印象が強かった。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
洞爺湖サミットを間近に控えているなか。勤務中の警察官が拳銃を所持したまま行方をくらました。その警察官の目的はなんなのか。津久井(つくい)巡査部長がその調査に充てられる。

「笑う警官」「警視庁から来た男」に続く、北海道警の大規模な汚職事件に続く物語の第3弾である。前2作と同様に、津久井(つくい)のほか、佐伯(さえき)警部補、そして、小島百合(こじまゆり)は本作品でも登場し、それぞれがそれぞれの任務を遂行しながらも、再び相互にかかわりあうことになる。

本作品は、途中かなり過去の事件に触れられて物語が進んでいくために、前2作品を読んでいないと少々着いていくのは厳しいかもしれない。とはいえ、複雑な捜査や内部事情だけでなく、このシリーズの独特なテンポも大きな魅力ではある。

さて、実は今回あとがきを読むまで本シリーズは完全なるフィクションだと思っていたのだが、どうやら実際にあった北海道警の汚職事件を題材にしているらしい。ひょっとしたら僕が無知だけだったのかもしれないが、ここにいたってようやくそれに気付き、最初からそれを知っていたら本シリーズは何倍も楽しめただろう、と反省している。


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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第6回本屋大賞受賞作品。
娘を生徒に殺された女性教師は、最後の日のホームルームである告白をする。自分の行ったことに苦悩する生徒。子供の行動に悩む親や兄弟。一つの事件を機に見えてくる人の心を描く。

映画がヒットしているそのまっただなかで読むことになってしまった。基本的に告白や日記という形で物語は進むため、ややスピード感に欠け、単調な印象を受けてしまう。

娘を殺された教師の告白から始まり、その殺人に関わった生徒二人の目線、その親の日記と続く。物語に必要とはいえ、中学生が日記に書くにはあまりにも長く、描写が上手すぎるという点は、残念ながら目を潰れる程度以上のものだった。
最後まで非難と復讐の物語。世の中必ずしも救いがあるわけではないので、必ずしも希望の見出せる作品である必要はないのだが、もう少し上手い描き方はなかったのだろうか、と感じてしまう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アフガニスタンに住む古い友人から連絡を受けたAmir。その連絡によって子供のころから長い間悔やんでいた古い心の傷と向き合うことになる。

読み始めて気付いたのだがどうやら本作品は「君のためなら千回でも」という邦題で映画化された作品の原作ということである。アフガニスタンで幼少期を過ごし、やがてその国の歴史的混乱からアメリカに移住するAmirと、その親友Hassanの物語で、その大部分が回想シーンで展開する。

なんとも本作品を深いものにしているのは、やはりアフガニスタンという多民族国家を舞台にしているせいだろう。Amirは多数派のパシュトゥン人、一方のHassanはハザラ人。

Hassanの父親がAmirの家の使用人だったために、気付いたときにはすでに仲がよかったAmirとHassanだが、Amirは少しずつ2人の立場の違いに気付き、その事実に抗えない自分を責める。そんな幼少期から深い人種的差別と向き合わなければならないその生活が序盤の印象的な部分である。

どうして僕は、周りに誰もいないときしかHassanと遊ばないんだろう?

AmirがHassanを探して町を走り回っているとき一人のクラスメイトの言葉が刺さった。

Hassanを見なかったか? 君のハザラのこと?

タイトルとなっている「Kite runner」。これはAmirとHassanが凧揚げの大会に参加して、その大会が大きな2人の思い出だったことから名づけられているのだろうだろう。

さて、やがてAmirは遠い地アメリカで結婚し、夢を実現させつつある。そこで受けた電話によって再びアフガニスタンに向かうのである。

僕らは9.11以降のアフガニスタンには比較的知識を持っているが、それ以前にどのようなことがあったのかを知らない。本作品からは、人種的な問題はあったにせよ、少年たちが凧揚げに熱中できるような平和な国だったことは伝わってくるだろう。

そんな歴史的背景だけでなく、AmirとHassanの悲しいけどなんとも素敵な信頼関係にうらやましくもなる。そんな作品である。読んだらみんなきっと凧揚げしたくなるはず。

ザーヒル・シャー Zahir Shah
アフガニスタンの国王(在位1933年 - 1973年)。共和制への政変が起こってのちも王党派の支持を集めた。(Wikipedia「ザーヒル・シャー」

ペシャーワル Peshawar
パキスタンの北西辺境州の州都。アフガニスタンとの国境に非常に近い。(Wikipedia「ペシャーワル」

Jimmy Carter
第39代アメリカ合衆国大統領。2002年 ノーベル平和賞受賞。(Wikipedia「ジミーカーター」

Inshallah
insh' Allah 「インシャーラー」アラビア語で「アラーの神の御心のままに」という意。

ファイサル・モスク Faisal Mosque
パキスタンの首都イスラマバードにあるモスク。世界で6番目に広いモスクで1986年から1993年までは世界一のモスクだった。(Wikipedia「Faisal Mosque」

参考サイト
Wikipedia「君のためなら千回でも」

君のためなら千回でも

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーケティングについて全体的に広く浅く、わかりやすく解説している。僕のように普段マーケティングなんてほとんど考えていない人間が、軽く広く知識を身につけるのにまさにぴったりの一冊。いろんなマーケティングの考え方の間に、その手法を採用している代表的な企業や、例えとして用いられる小話がまた面白い。

また、本書ではマーケティングは必ずしも企業の営利目的だけでなく、昨今では大学など人のニーズを知る必要があるものすべてに適用されるべきだと書いている。そう考えると、人と人とのプライベートな人間関係にまで応用できるのかもしれない。

僕自身は言ってみれば製造過程に関わっているため、あまりマーケティングを意識することはないが、AIDAモデルや4つのPぐらいは自然と口に出てくるようになっておくべきなのかも、と思った。

コモディティ化
所定の製品カテゴリー中において、メーカー(製造元企業)ごとの差・違いが不明瞭化したり、なくなること。(Wikipedia「コモディティ化」

アメリア・イアハート
アメリカ合衆国の女性飛行士。1927年のリンドバーグの快挙に続き、女性として初めての大西洋単独横断飛行などをした。(Wikipedia「アメリア・イアハート」

参考サイト
Wikipdaia「ザ・ボディショップ」
ゆたか倶楽部
3M

【楽天ブックス】「マーケティング」

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