2009年11月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ゲリラ豪雨に襲われている能登半島で岬美由紀(みさきみゆき)はノン=クオリアのステルス機に出会う。ゲリラ豪雨はノン=クオリアが意図して起こした災害だった。

今回は「シンガポールフライヤー」で登場した人の感情の存在を否定しする集団ノン・クオリアの陰謀を阻むことが主な目的となる。

序盤は美由紀(みゆき)の小学生時代のエピソードが描かれており、小学生でありながら日経を読むことを習慣にしていたりその異質な存在感も面白いが、美由紀(みゆき)をライバル視するクラスメイトの黒岩裕子(くろいわゆうこ)のエピソードにも楽しませてもらった。

また家族思いの美由紀(みゆき)の父親が、まだ幼くいながらも現在と同じように暴走しがちな美由紀(みゆき)の行いを優しく諭すシーンが温かい。

こんなことを言ってはどうかとも思うけど、人間少しはみ出してもいいと、お父さんは考えてる。それが絶対に正しいことだと自分が感じるのなら

上巻の中盤以降は舞台を現代に戻して話は進む。例によって時事ネタを取り入れた物語展開は期待を裏切らないが、かといって、世の中の問題点などを浮き彫りにするような内容の深さがあったかというと、今回はその点ではやや物足りなさを覚えた。

僕の記憶ではノン・クオリアは「シンガポール・フライヤー」から本作品までの間には登場していないように感じているし、松岡圭祐のサイトを見てもその認識で間違いないようだが、内容からは別のエピソードがその間起こっているような表現が見られた。小学館から発刊されていた初代千里眼シリーズと、角川から発刊されている千里眼シリーズで、多くの過去の作品が「完全版」の名を持って書き直されることによって若干の混乱を感じている。

カクテル・パーティ効果 たくさんの人が雑談している、カクテルパーティーのような雑踏のなかでも、自己に興味のあるヒトの会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる。(Wikipedia「カクテルパーティー効果」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホームレスとして生きていた「ボク」はある日、小学生の女の子と出会う。彼女が持ってきてくれる食べ物と引き換えに、彼女の言うことを聞くことになった。

ホームレスである「ボク」目線で物語は進む。生まれ育った街から遠く離れた場所でホームレスになった「ボク」は小学生の女の子から食べ物をもらいながら生活し、あるとき一人の年配の女性と遭遇する。その人は顔見知りであり過去つらい体験を共有した女性であった。

中盤以降は、その女性目線で物語は展開し、少しずつその女性と「ボク」の関係が明らかになっていく。「ボク」もその女性も、慣れ親しんだ街や友人たちと決別して遠く離れた都会でひっそりと生きることを選んだ。彼らの体験からは、僕ら男性が普段無関心だったり「大した問題ではない」と軽んじている、女性ならではのいさかい、子育て、人づきあいなどの、人の心に深い傷を刻みかねない深刻さが見えてくる。

何もかも話せる相手がいるというのは恐ろしいことだ。言葉にした瞬間、曖昧にしておきたかった事実がはっきりとした輪郭を表す。気づかずにいたほうがいいことまで、気づかされてしまう。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中は血液型診断ブーム。さらにドラマの影響で白血病は不治の病という考えが広まる。そんな中で、岬美由紀(みさきみゆき)の同僚の嵯峨敏也(さがとしや)は白血病を再発する。

本作品はそのタイトルからもわかるように「血液型」を大きく扱っている。血液型ブームは、日本を含む世界的に見ればわずかな国にのみ根付いている文化である。日本でその文化が根付いているのは、各血液型があるていど存在するという説や国民性という説など諸説あるが、日本では多くの人が、「血液型診断は信憑性がないもの」と知りながらも人と出会ったときに血液型をたずねるのを自然なコミュニケーションとして受け入れているのだ。

本作品は、日本の血液型診断に対する意識をさらに誇張したような世界で展開される。たとえば、学校では特定の血液型に対するイジメが起こり、病院では患者が、特定の血液型の輸血を拒むことで、命の危険にまでさらされているのだ。そんな誤解を、世の中に根付いて危険の思想と位置づけ、それを解決するために、美由紀、嵯峨、一之瀬絵里かが奔走する。

そして、血液型だけでなく白血病に対しても世の中の人々は偏見を抱く。その大きな原因としてテレビドラマが挙げられている。視聴者の涙を誘うために、悲劇の主人公を描いた悲しいドラマをつくり、それがヒットすれば他の局も似たような悲劇のドラマを作る。時に過剰なまでに病気のつらい部分を強調することで、主人公の置かれた悲しい状況を視聴者に伝えて涙を誘うのだが、その繰り返しによって、視聴者は少しずつ病気に対して間違った先入観を刷り込まれていく。この辺の描き方は、明らかに一昔前の「世界の中心で…」を連想させる。

世の中に溢れかえる情報に対して常に疑ってかかる、中立でいることの大切さを改めて意識させてもらった。相変わらず突飛な展開にはやや辟易する人もいるかもしれないが、個人的にはいつもどおり楽しむことができた。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
企業のリストラを代行する会社で面接官として働く真介(しんすけ)の目を通じて、多くの人の人生を描く。

待ちに待った文庫化である。本作品は「君たちに明日はない」の続編である。前作も、主人公である真介(しんすけ)が、面接でリストラ対象者を絞ったり、早期退職を勧めて人員削減の手伝いをする中で、多くの人の人生が見える点が非常に面白かったのである。

続編である本作品もまったく期待を裏切らない出来である。妙に心にしみる言葉がたくさんあった。

今までにいろんな会社の社員に接してきたが、出来る人間ほど、会社を自ら辞めてこうとする。そして出来ない人間ほどクビを嫌がり、組織にしがみ付こうとする。

そして、本作品を読み進めていて思ったのは退職を決意する人間のその理由の多様性である。

「人間関係が上手くいかない」、「給料が安い」、「楽しい仕事がしたい」…。よく聞く退職の理由はこの程度であるが、実際には人間の気持ちは決してそんな単純なものではない。

「お金がすべてじゃない」って言葉を「現実を知らない理想主義者」と、馬鹿にする人もいるのかもしれないけど、人とは違う価値観を胸に抱きながら、その基準を基に自分自身にしか判らない人生の幸せを見つけようとしている人もたくさんいるのじゃないだろうか。

本作品は大きく5つの章に分かれているが、中でも表題の「借金取りの王子」の章はよかった。「こんな風に誰かを想ってみたい」って久しぶりに思った。

たぶん、自由ってこういうことだ。 自分の将来をあれこれ考えられることだ。

本当に、人生を考えさせてくれる。今も一生懸命生きているつもりだけど、「もっともっと一生懸命生きよう」って思わせてくれる作品である。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
かつては報道カメラマンだった柴田雄司(しばたゆうじ)はアフガニスタンで拘束された学生時代の恋人とその娘の救出に向かう。

本作品の魅力は同時多発テロの後に世界から多くの関心を向けられることとなったアフガニスタンに焦点を当てていてている点だろう。柴田(しばた)はかつての恋人、優子(ゆうこ)を救うため、アメリカから懸賞金をかけられているアフガニスタンの英雄、ヘーゲルに会いに行く。

その道程で柴田(しばた)が出会う数々の試練の数々に、僕らが新聞などの報道を通じては知ることのないアフガニスタンの現実が見えてくる。ただ単に一人の人間に会うためだけに、大量の武器を購入し、地雷を避けることに神経を擦り減らし、ゲリラの襲撃を恐れながら進まなければならないのだ。僕ら日本人のうち、いったいどれほどの人がこの国の現実を知っているのだろうか。

そして、単に現在の悲惨な現実を訴えるだけでなく、この悲惨な状況が、アメリカ、ソ連などの大国のエゴによって引き起こされたということを訴えてくる。

ほとんど単一の民族が絶対多数として生活するがゆえに長く平和が維持されている日本。僕らはその平和をもはや当たり前のこととして受け止めている。その一方で、アフガニスタンは、地理的にアジアの中央であり多くの民族が集まる場所。多くの民族が集まればそこには多くの考え方の違いが存在する。そこにさらに大量の武器やお金を提供して諸外国が介入してくるのである。場所が違うだけでこんなにも平和を維持することが難しくなるのである。

生まれる場所を選ぶことのできないがゆえに、あの地に生まれ恐れおののきながら生きている人々に、僕らは安全な場所から同情することしかできないのだろうか。

柴田(しばた)に対してヘーゲルが語った言葉。これを聞くと今も細かい差別や偏見が残っているとはいえ、日本という国に生まれた幸せを感じずにはいられない。

私には夢がある。それは、いつの日か私の子供たちが、彼らの肌の色によってではなく、人格の深さによって評価される国に住めるようになることである

目を逸らせてはいけない現実問題を取り入れながら、それでいて物語として読者を飽きさせない展開を交えてフィクションとして完成された作品である。新聞やテレビの報道からは知ることのできないなにかを感じることができるのではないだろうか。

北部同盟
1996年9月のターリバーンのカブール制圧ののち、反ターリバーン政権として北部アフガニスタンを統治した勢力。アフガニスタンの45%を占める民族であるパシュトゥーン人主体のターリバーンに対して、タジク人・ハザラ人・ウズベク人などの諸民族の連合という側面もあった。(Wikipedia「北部同盟」

ムジャーヒディーン
一般的には、イスラム教の大義にのっとったジハードに参加する戦士たちのことを指す。最近はイスラム過激派の民兵を指すことが多い。(Wikipedia「ムジャーヒディーン」

エシュロン
アメリカ合衆国を中心に構築された軍事目的の通信傍受( シギント)システムの俗称であり、アメリカ国家安全保障局(NSA)主体での運営とされる[1]。ただしエシュロンの存在が公式に認められたことはない。(Wikipedia「エシュロン」

アフリカトリパノソーマ
ツェツェバエが媒介する寄生性原虫トリパノソーマによって引き起こされる人獣共通感染症である。病状が進行すると睡眠周期が乱れ朦朧とした状態になり、さらには昏睡して死に至る疾患であり、これが名前の由来となっている。(Wikipedia「アフリカ睡眠病」

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