2009年3月アーカイブ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
クラスメートの運転するバイクに撥ねられて死んだ姉、野々村涼子(ののむらりょうこ)の死の真相を知るために、妹の結花は、姉と同じ高校への入学を決め、姉と同じ写真部へ入部することを決める。

すでに死んでしまった姉、野々村涼子(ののむらりょうこ)の人物像が、物語を進めるうちに明らかになっていく。その過程ももちろん興味深いが、むしろ涼子(りょうこ)をバイクで撥ねてしまったクラスメイトの菅井清彦(すがいきよひこ)の、その悲しい生い立ちゆえにその心の中にはぐくまれた世の中に対する敵対心のようなものに心を揺さぶられるものがあった。

孤独、不安、諦め。確かにそういうのあったよ──

そしてだからこそ、涼子(りょうこ)の強い生き方も際立つのだろう。

何かを嫌うよりも、好きになることの方が、ずっと大切なんだって、思ってきた。少しくらいつらくても、嫌なことでも、それを乗り越えるのが大事なんだって……

ミステリーとしての要素だけでなく、学園を舞台とした青春小説のような色合いも持っている。「青春小説」なんて言葉を使ってしまうと、なんか恋愛とか、努力とか、すごい薄っぺらく現実とかけ離れた理想の物語のような印象を与えてしまうかもしれないが、本作品には、受け入れるべき自分の弱さや、生きるうえで持つべき信念のようなものを考えさせてくれる作品だった。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
沖縄でお店を営む明青(あきお)の元に幸(さち)という女性から手紙が届いた。「私をお嫁さんにしてください。」それからしばらくして、幸(さち)と名のる女性が明青(あきお)の元に現れた。

典型的な恋物語という感じだが、舞台が沖縄ということもあって、ユタや模合(もあい)など沖縄の文化が取り入れられている。その恋物語はもちろんすべてがすんなりいくわけでもなく、恋に必要な障害もあり、温かいが排他的な沖縄の離島の様子も描かれている。

僕の好む小説とは明らかに異なる路線であるが、こんなすっきりとした読書もたまには悪くない。そう思わせてくれた。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
若き女性社長である麻生陶子(あそうとうこ)は、引きこもりの妹である久恵(ひさえ)と一緒に暮らしていた。やがてそんな2人の関係も崩れ始める。

物語は1つの部屋で共同生活を送る2人の女性の生き方を描いている。冒頭は会社を経営する陶子(とうこ)の姿から入り、自らの求める理想の生活を自分の力で得ようとする世の中に対する姿勢のかっこよさに引き込まれていくだろう。そしてやがて、陶子(とうこ)と同居しながら家事の全般を担いながらも、過去の辛い経験から働くことができずに悩む久恵(ひさえ)の内面も徐々に描かれるようになる。

異なる生き方をしているからこそ、時に互いに羨み、時に互いに蔑みもする。そしてそんなやりとりが双方の生きるエネルギーへと変わっていく。

面白いのは陶子(とうこ)の経営する会社のくだりだろうか。顧客のニーズに応じて、現実の世界の演技者を派遣するビジネス。それは、真実か虚構かに関わらず、たとえ一時的なものであっても、自分の求めている環境や人に囲まれていたいという世の中の人々の心を風刺しているようだ。

人は完全に一人では決して満足できない。観客が要る。それが盛大な拍手を贈ってくれる観客ならばなお喜ばしい。自我はそれによって満たされる。

2人の生き方に共感できるか否かは別にして、その生き方の逞しさは昨今の女性たちにぜひ学んでほしい部分でもある。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
女性警察官殺人の容疑者として挙げられた津久井(つくい)巡査部長。組織はその容疑を利用して津久井(つくい)の射殺許可を出す。かつて津久井(つくい)と苦難をともにした佐伯(さえき)警部補は独自に津久井(つくい)の潔白を証明しようと動き出す。

多くの人が理解しているとおり、警察というのは決して清廉潔白な組織ではない。単純に私腹を肥やしている警察官もいるだろうが、世の中の平和を維持するための行動ではあっても必ずしも規則に則っていることばかりではない。軽微な犯罪を見逃す見返りとして裏の情報を得ることで、より大きな犯罪を防いだりするのはその1例だろう。

そして時には大きな犯罪を防ぐために犯罪者に協力することもあるらしい。最終的に「平和を守る」という点では一致していても、どこまでが赦される行為か、という点ではそれぞれの警察職員によって異なる。

本作品では、公の場で、警察内部の真実を語ることを正義と信じて行動しようとする津久井(つくい)巡査部長と、その行為を「警察に対する裏切り」と受け止める派閥との争いである。個人の利益に直結するものではなくそれぞれの信念に委ねられるものだからこそ、どこに敵がいるかわからない。そんな環境の中で友人である津久井(つくい)を守ろうと行動する佐伯(さえき)の周到で機敏な判断と、その良きパートナーとを果たすことになる女性警察職員、小島百合(こじまゆり)の知性溢れる言葉の数々がなんとも魅力的である

もし、正義のためには警官がひとりふたり死んでもかまわないってのが世間の常識なら、おれはそんな世間のためには警官をやっている気はないね。

警察小説は、おそらく小説の中でももっとも多く書かれている小説だろうが、そんな警察小説の中でも際立って個性のある作品に仕上がっている。

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ミチオは欠席した友人の家を訪れた際、首を吊って死んでいるその友人を見つける。しばらくしてその友人はミチオの元に、蜘蛛に姿を変えて現れる。蜘蛛になった友人の訴えを元にミチオは妹のミカとともに真相を知ろうとする。

幾ページも読まないうちに、その荒唐無稽さ、過去に読んだことのない不思議っぷりに戸惑った。自殺した友人が蜘蛛に生まれ変わってミチオの前に現れた時点で、かなりしんどくなったが、それでも読み続けたのは、物語をそこまで現実離れしたものにしてさえも訴えたい何かが最後にあるのではないか、そう思ったからだ。

最終的にその期待に応えてくれたかというと首をひねらざるを得ないが、まあ、こんな物語もありかな、と納得することはできた。

往々にして誰かの心に深く突き刺さる何かは、ほかの人から見ると逆にひどくくだらなく見えたりする。だから、僕がこういう評価をしたこの作品が、誰かの心を鷲掴みにする可能性もないとはいえないだろう。


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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
釣り人が上半身を引きちぎられた状態で発見された。目撃者は「河童を見た」という。ルポライターの有賀は真相を突き止めるために沼を訪れる。

前作「TENGU」が傑作だったゆえに、同じ未確認生物を題材とした本作品にも自然と手が伸びた。

本作品はそのタイトルが示すとおり沼にひそんだ謎の生物を追うことがメインであるが、大きな沼を舞台にしているため、その沼と長い間関わってきた地元の人々の生活の様子も描かれている。中でも放流されたブラックバスが与えた影響についてのくだりは印象深い。

内容については、やはりどうしても前作「TENGU」と比較してしまうのだが、「TENUG」ほど話の広がりは残念ながらないが、ルポライターで自由に生きている有賀(ありが)や、地元警察署の阿久沢(あくざわ)、沼でずっと生きてきた源三(げんぞう)の人間性に焦点を当てている。

そんな中、正反対の生き方を歩んできた、有賀(ありが)と阿久沢(あくざわ)が語りあうシーンはいろいろと考えさせてくれる。

おれも以前は、自由でいることは男の強さの証明だと考えていた時期もあった。つまり家庭とか、財産とか、社会的な信用とか、守るべきものがひとつずつ増すごとに男は少しずつ弱くなっていく。攻撃よりも守備に徹せざるを得なくなるからな。

タイトルこそ未確認生物として共通しているが前作「TENGU」とはかなり趣の異なる作品。期待値が高かっただけにやはり評価は厳しくなってしまう。


レッドテールキャット
体長は最大で約120cm。熱帯産大型ナマズの人気種であり、ペットショップでは5?程の幼魚が出回っている事が多い。(Wikipedia「レッドテールキャットフィッシュ」

キシラジン
麻酔前投与薬として使用される。牛、馬では鎮静薬や鎮痛薬としても用いられる。犬や猫ではケタミンと併用されることが多い。(Wikipedia「キシラジン」)

ケタミン
フェンサイクリジン系麻酔薬のひとつで、三共エール薬品[1]から塩酸塩としてケタラール®の名で販売されている医薬品。(Wikipedia「ケタミン」

参考サイト
熱川バナナワニ園ホームページ
Wikipedia「ミシシッピアカミミガメ」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「ジウ」シリーズの完結編。「ジウII」でジウと出会い、黒幕のミヤジなる人物と出会った伊崎基子(いさきもとこ)はそれまでになかった言動を見せるようになる。一方門倉美咲(かどくらみさき)は引き続きジウの足取りを追う。そんな中、新宿の歌舞伎町が封鎖される。
「ジウ」シリーズは常に2人の女性警察職員に焦点を当てて展開される。人の気持ち、ときには凶悪犯罪を犯した犯罪者の気持ちさえも理解しようと努める門倉美咲(かどくらみさき)と、闘いと危険な状況を好む伊崎基子(いさきもとこ)である。

完結編である本作品では、世の中を裏で操るミヤジとの出会いによって、人を殺すことさえ躊躇わなくなった伊崎(いさき)の心の変化が描かれている。

前作を読んだときに予想したとおり、三部作というのは常に全作品を上回らなければ、読者は満足しない。物語を完結させるためとはいえ「ジウI」「ジウII」とじっくりと時間をかけて作り出したこの不穏な空気を、まんぞくさせるような形で完結させるには、「ジウIII」のわずか1冊は少なすぎたといえるだろう。

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