2008年10月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松島早紀(まつしまさき)巡査部長とその上司の永倉(ながくら)警部補の所属する所轄警察署は、拉致事件と中国人によるキャバクラ強盗事件を扱っていたる。その一方で、落ちこぼれの高校生3人組みは日々の鬱憤をナンパなどで晴らしていた。

高校生三人組の生活と、警察の捜査を交互に見せることで、いつかこの2つの物語が重なっていくのだろうという期待を持たせる。そして、高校生三人組の目線でも、他の二人の行き過ぎた悪さに戸惑う博史(ひろし)、自分を他の二人のおろかな行為の尻拭いをしなければならない被害者としか思わない、亮(あきら)など常に目線は移り変わり、一見自分勝手にしか見えない人間にもそれぞれポリシーがあり言い分があるのだということを認識させられる。

そして、捜査の忙しさによって家庭のケアに時間を割けない永倉(ながくら)とその高校生の娘、絢子(あやこ)のやりとりも重要な要素となっていく。そして、キャバクラ強盗事件から、中国人組織と、日本国内における、中国人、日本の暴力団、警察組織の駆け引きにも触れられている。

そんな捜査の過程で刑事達は嘆く…

オレたちが若いときは犯罪は貧困から始まると教えられた。貧乏と差別。それに当てはまらないものは、犯罪以前の”異常”の範疇だったんだ。それがどうだ。いまはぜんぶが”異常”だよ。

終盤の、目の前で起こる出来事に戸惑い暴走する少年と、恐怖によって判断力を失った少女の行動を共にするシーンは個人的にはもっとも印象に残っている部分である。前半の展開の遅さにはややストレスを感じたが、後半は十分によみごたえがあった。

ただ、個人的には、松島(まつしま)巡査部長の女性被害者を守る立場と、犯人を逮捕したいという気持ちや、女性蔑視がはびこる警察組織内ゆえの葛藤をもっと表現して欲しかったと感じる。


ユトリロ
近代のフランスの画家。(Wikipedia「ユトリロ」

ニール・セダカ
アメリカ合衆国のポピュラー音楽の シンガーソングライター。森口博子のデビュー曲でもある「機動戦士Ζガンダム」のテーマ曲「水の星へ愛をこめて」などを作曲。(Wikipedia「ニール・セダカ」

ポール・アンカ
カナダ出身のポピュラー・シンガーソングライター。(Wikipedia「ポール・アンカ」

【楽天ブックス】「ロンリー・ハート(上)」「ロンリー・ハート(下)」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
以前から名作とは聞いていたが、そのタイトルから「人生を考えさせよう」という意図が見えるような説教臭い物語をイメージを抱いていたことも確かだ。しかし、実際読み始めてみると、描かれているのは、やや勝気ではありながらも一生懸命生きている自分と同年代の女性、亜紀(あき)の生活である。

亜紀(あき)は仕事や恋に悩み、理想と現実との間のギャップに違和感を覚えながら生きている。20代後半という年齢ゆえに、周囲は結婚という道を選び、そして自分の目の前にもそういう運命の選択が訪れるにもかかわらず、違う何かを求めて踏み出せない。女性だけでなく、将来を悩むすべての人に共感できるのではないだろうか。

そして人生には多くの喜びや悲しみがある。亜紀(あき)の人生も例外ではない。親しい友人の恋愛や、弟の結婚、そして身近な人の死、時に、空気の読み方すら知らない不条理な運命が襲いかかってくる。そしてあまりに不条理だからこそ、「運命」と思わずにはいられない。「何か意味があるのではないか」と願わずにはいられない。

そして亜紀(あき)の周囲で起こる小さな偶然。それは30年、40年と生きていれば誰でも数回は目にするような偶然ではあるが、運命を信じる者にはその偶然は運命として受け止められる。

死んだらどうなるんだろう?
運命って信じる?

誰でも一度は考えたことがある問いかけに対して、本作品もいくつか答えを提供している。

運命を信じるって、決して、あきらめたり我慢したりすることばかりじゃないでしょう?

恋人を失ったがゆえの答え。
死を常に意識して生きてきたがゆえの答え。

その考え方はみんな少しずつ異なるけれど、それでもみんな見えない何かの力を信じている。

運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなるのだ。

一体、何度この作品の中に「運命」という言葉が出てきただろう。読む前に心配したような説教臭さは微塵もなく、読んでいるうちにいろんな考え方が僕の中に優しくしみこんでくる。読む人によっては人生のバイブルにさえなりかねない作品である。


ベルガモット
ミカン科の常緑低木樹の柑橘類。イタリア原産。(Wikipedia「ベルガモット」

【楽天ブックス】「私という運命について」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
カメラマンの矢島拓海(やじまたくみ)は一枚の絵葉書を受け取った。その差出人は2年前南極で死亡したはずの義理の兄だった。期を同じくして拓海は南極越冬隊への仕事の依頼を受ける。

この作品の魅力は、その舞台を南極という地に設定している点だろう。その土地自体がすでに僕らにとっては未知の土地であるし、常に雪に覆われている点や、時に太陽さえも昇らないその場所はそれだけで十分に魅力的な素材となっている。しかし、本作品の仔細な描写と通じて、その生活の様子を知ることによって、南極という地に対して、僕ら一般の人間がどれほど偏見と幻想を抱いているか知るだろう。

昭和基地には郵便局、水道局、歯科を含めた病院施設など、人間が生活に必要なあらゆるものがあるのに、警察と刑務所だけがない。

物語は、南極へ向かう航路から不可解な事件が起こり始め、次第に2年前の義理の兄の死亡の裏に隠された真実に迫っていく、という流れであるが、個人的にはミステリーや謎解きの色合いよりも、南極という地特有の厳しさや不思議。そして、少人数社会ゆえに起こる諍いや各人が感じる存在意義などに焦点を当てているように感じた。

とはいえ、物語展開としての面白さが欠けているというわけでもなく、特に、鍵となる登場人物の背景がしっかり描かれていることに好感が持てる。そして、もちろん南極で過ごし、少しずつ義理の兄の生きてきた足跡に触れることによって変化する拓海(たくみ)の心情も描いている。

美しい景色をフィルムの中に閉じこめ、永遠に自分の物にしたいと思って、今までカメラを握ってきた。だが、誰かに何かを伝えたくて写真を撮りたいと思ったのは、初めてのことだった。

南極という地特有の出来事を要所要所に小道具として盛り込んでいるため、ややイメージしにくい部分もあるが、本作品を通じて得られる知識や、歓喜された好奇心という点では十分に満足のいく作品である。



ルッカリー
ペンギンやアザラシが、みんなで集まって子育てをする場所。(Weblio「ルッカリー」

アデリーペンギン
中型のペンギン。南極大陸で繁殖するペンギンはこの種とコウテイペンギンのみである。(Wikipedia「アデリーペンギン」

サスツルギ
風が作る雪の模様こと。

タイドクラック
潮の干満により海氷が動いてできる割れ目。

インマルサット
国際移動衛星機構(International Mobile Satellite Organization)という名称の組織で、 4つの静止衛星を運用して船舶や地上のインマルサット端末へさまざまな通信サービスを提供いる。(Wikipedia「インマルサット」

太陽フレア
太陽の大気中に発生する爆発現象。(Wikipedia「太陽フレア」

デリンジャー現象
電離層に何らかの理由で異常が発生する事により起こる通信障害の事。(Wikipedia「デリンジャー現象」

参考サイト
南極観測のホームページ
南極-ANTARCTICA

【楽天ブックス】「サスツルギの亡霊」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第9作。スマトラ島自信で記憶を失った女性を治療するためにインドネシアに趣いた岬美由紀(みさきみゆき)はそこで、世界を操る闇の集団メフィスト・コンサルティング・グループのダビデと出会う。因縁の戦いが再び始まる。

例によって、時事ネタや、感心するような小話を随所に散りばめて展開しており、物語の面白さ以外にも楽しめる作品に仕上がっている。

本作品は、小学館の千里眼シリーズからたびたび登場するメフィスト・コンサルティング・グループのダビデと「千里眼 ファントム・クォーター」などで登場するジェニファーレイン、そして「千里眼 シンガポールフライヤー」で表に出てきた人の心を信じない集団、ノン=クオリアの間で繰り広げられる争いを描いており、角川文庫のシリーズの大きな区切りとなるような構成となっている。

中盤から利害が一致したことによってダビデと美由紀(みゆき)は行動を供にして、ジェニファーレインの悪事を阻もうと試みる。美由紀(みゆき)はいつのもとおりその正義感から、そして、ダビデは、かつての部下だったジェニファーレインを思ってか、仕事としてか…、今まで、そのおどけた表情の裏に隠されたダビデの本性だが、本作品ではダビデ目線で描かれるシーンもあり、過去のシリーズの流れとは少し違った空気を感じる取ることができるかもしれない。

きみが過食症の女性のカウンセリングをしているとき、地球の裏側では五人の子供が飢えによって死んでいる。

本作品では、登場人物だけでなく、過去の事件などが何度か引用される。僕自身この千里眼シリーズは小学館と角川文庫で10年近く、ほぼすべてを読んでいるが、それでもその引用される登場人物や事件の前後関係が思い出せない。このあたりに松岡圭祐のおごりを感じてしまう。

物語的にはやや物足りない印象も受けるが、今後の展開に対する期待を感じさせる作品である。

参考サイト
メフィストフェレス
ドイツにて民間に伝えられる悪魔。(Wikipedia「メフィストフェレス」

タリホー
アメリカ合衆国のメーカーであるU.Sプレイング・カード社によって製造されているトランプのひとつ。バイスクルと並ぶ同社の人気商品。(Wikipedia「タリホー」

マホガニー
センダン科の広葉樹で、古くから知られる世界的な銘木のひとつ。

参考サイト
エレベーターのキャンセル技

【楽天ブックス】「千里眼 優しい悪魔(上)」「千里眼 優しい悪魔(下)」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
夢を支える仕事がしたいという思いから、ディズニーランドでの勤務が決まった青年、後藤大輔(ごとうだいすけ)の職場での姿を描いている。

松岡圭祐の初期の作品ということで、ずいぶん前からタイトルだけは耳にしていたが、なかなか触れる機会がなく、今回ようやく書店で目に止まり読むことができた。

本作品はもちろん、ディズニーランドを扱った作品である。物語中にはたくさんのアトラクション名が出てくるため、ディズニーランドに何度も足を運んだことのある人には非常に楽しめる作品かもしれない。残念ながら僕は2度しか行ったことがないので、そのイメージが湧いたのは、シンデレラ城、カリブの海賊、ビッグサンダーマウンテンなどわずか数点で、ディズニーシーに話が及ぶとまったくイメージできない、という具合であった。とはいえ物語はディズニーランドの舞台裏もかなり詳細に描いているので、夢は夢のままでとっておきたかった、と後悔する人もいるのかもいれない。

物語中でも、夢の世界の舞台裏に入ったことで、現実を突き付けられ、失望する後藤(ごとう)の姿が描かれる。

夢のディズニーキャラクターを演じる者たちの葛藤。そんなものが存在するなんて、できることなら知りたくなかった。夢は夢のまま、そのほうがどれだけよかったかわからない。

それでもやがて後藤(ごとう)は、周囲の人に支えられて、夢を支える仕事に自分の存在意義を見出していく。

物語の過程で描かれる、キャストたちの着付けの様子や、来場者の夢を壊さないためにキャストに強いられるさまざまなルールに、ディズニーランドの成功の秘訣を見ることができる。

また、物語の中で描かれる複雑な人間関係や、そこで発生する諸問題によって、東京ディズニーランドという、世界で唯一ディズニーカンパニーが経営権を持たないディズニーランドという企業としての利害関係についても理解を深めることができるだろう。

夢の舞台の裏側を描いたという展では本作品を読む意義はあっても、物語としてはややありきたりな印象を受けた。

【楽天ブックス】「ミッキーマウスの憂鬱」

カテゴリ