オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自衛隊の航空祭で最新ヘリが盗まれた。六本木にそびえるミッドタウンタワーには毎晩侵入者が現れる。中国大使館の敷地で企てられた陰謀に岬美由紀(みさきみゆき)が挑む。
今回も話題のオープン間近のミッドタウンを舞台に設定しており、最近の話題や社会問題を物語に取り入れようとしている姿勢が松岡圭祐らしい。山場の一つとなるギャンブルのカードゲーム「愛新覚羅」は物語を盛り上げ、同時に中国の歴史にまで興味を向けさせてくれる。また、そんな知識欲を刺激する内容以外で、本作品の中で印象的だったのが、岬美由紀(みさきみゆき)、雪村藍(ゆきむらあい)、高遠由愛香(たかとおゆめか)という、一見どこにでもいるような女性の仲良し三人組の人間関係についての描写である。
高遠由愛香(たかとおゆめか)は精神的に追い詰められて、美由紀(みゆき)に本音をぶつける。
人間関係は必ず双方によってなんらかのメリットがあってこそ成り立つもの。それは僕自身が常々思っていることであるが、世間の人は「無償の愛」が存在すると考えたがり(もちろん「無償」が「金銭的のやり取りのない」を意味するのであればそれは存在するのだが)、この事実を認めたがらないようだ。本作品では美由紀(みゆき)の友人である高遠由愛香(たかとおゆめか)がそれをはっきりと表現しており、もちろんそれは世間一般的には受け入れられ難い行動なのだろうが、僕はその潔さは逆に良い印象を受けた。
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masato (2007年4月25日 23:18) | コメント(0)オススメ度 ★★★★★ 5/5
受験に失敗して首吊り自殺を図った主人公の高岡裕一(たかおかゆういち)は、現世と天国の間で、同じく自殺を図って天国に行きそびれた3人の男女に出会う。4人は神と名乗る老人から、天国に行くための条件として、100人の自殺志願者の命を救うことを命令される。
この現実離れした設定から、正直あまり期待していなかったのだが、その内容は期待を大きく裏切るすばらしいものだった。
物語は裕一(ゆういち)を含む4人の幽霊が、自殺志願者達の悩みを知り、自殺に向いたその心を救う。ということを繰り返すのだが、裕一(ゆういち)達は幽霊となって現世に降りたために、自殺志願者に直接触れることはできない、その代わりに、自殺志願者の考えていることを理解し、彼等の心に直接訴えることができる。
彼等の救助劇を目の当たりにする過程で、人が持つ悩みの数々に触れることが出来る。悲観的だからこそ、悩む必要のないことで悩む人。法律に無知だからこそ救われる手段があるのに追い詰められる人。完璧を求めるがゆえに他人を信じられない人。そして同時に、人を自殺に追い込む一つの原因として、責任感の強い者が損をする、日本の社会の不平等さを訴えている。
また、死ぬことを美とする日本の文化にも疑問を投げかけている。
そして、裕一たちは、そんな自殺志願者たちの救助作業を繰り返すうちに、「死」というものが決して美しくないこと、自分たちが大切な命を粗末にしたことに気付く。裕一(ゆういち)が、遺された自分の家族の心に触れるラストは涙無しでは読めないだろう。以前から、自殺という人間の心理に興味を持っていた僕にとっては非常に満足の行く作品であった。
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masato (2007年4月23日 11:33) | コメント(0)オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第二グリーンハイツで殺人事件が起きた。物語はその事件に関連する出来事を、5人の男女がそれぞれの視点からワープロで綴る。
井上夢人が新たなミステリーの手法に挑戦した物語といった印象を受ける。ミステリーを読み慣れている読者は恐らく半分も読まずに、物語を包み込んでいる謎の正体に気付くことだろう。そして、ありふれたその題材に対して、作者がどうやってこの物語を終わらせるか、というところに興味を抱くのかもしれない。
ある程度実績を積んだ作家にしばしば見られる実験的手法の物語。同様に実験的手法を用いた物語で思い浮かぶものといえば、恩田陸の「三月は深き紅の淵を」、桐野夏生の「グロテスク」、宮部みゆきの「長い長い殺人」などがあるが、未だその特異な手法で物語を何倍も面白くした作品に出会ったことはない。
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masato (2007年4月16日 22:42) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
三人組のコンビニ強盗が総合病院に人質をとって立てこもった。交渉人の石田修平(いしだしゅうへい)警視正が現場に到着するまでの間、遠野麻衣子(とおのまいこ)は現場を守る任務に就く。
海外では一般的となりつつあり、日本でも「踊る大捜査線」のシリーズ「交渉人 真下正義」などによって認知されつつある交渉人という職業。この物語では交渉人の第一人者とされる石田修平(いしだしゅうへい)が犯人との巧みな交渉を中心に展開されていく。
仕事でもプライベートでも、社会は人間関係を無視して生きることなどできない。多くの読者は物語中で展開する交渉術を自身の淀みない人間関係を構築するために役立てたいと思うことだろう。
また、捜査の合間に触れている警察の最新技術もまた非常に興味を掻き立てられる。
圧倒的なスピード感、一切中だるみすることなく終わりまで完結する作品である。そして、スピード感だけでなく現代社会を蝕み見過ごされている大きな問題もしっかりと物語中に取り入れているところを評価したい。
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masato (2007年4月13日 13:29) | コメント(0)オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
旧日本軍の生物化学兵器、冠摩(かんま)が温暖化によって猛威を振るいだした。岬美由紀(みさきみゆき)の友人、雪村藍(ゆきむらあい)もそのウイルスに感染され命の危険にさらされる。
地球温暖化と極度の潔癖症という現代の社会が生む問題を重要な鍵として物語を展開している。
悪意と罪に対する社会の対処の仕方について深く考えさせられる。物語中では小さな悪意が結果的に、ウイルスを広めて人々を恐怖に追いやることとなるのだが、小さな悪意が、その人の思惑以上に多くの人に被害を与える結果になった場合、その罪と責任はどこにあるべきなのだろうか。
世の中の多くの犯罪者は、現代の社会が生み出した犠牲者なのである。しかし、昨今増え続ける凶悪犯罪に対して、その犯罪者を裁判にかけて、被害者と世間を納得させるだけ。決して凶悪犯罪が減っているとは思えない。本当に目を向けるべき場所は他にあるのだということをみんな気付いているはずだ。
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masato (2007年4月12日 11:36) | コメント(0)オススメ度 ★★★★☆ 4/5
阪神淡路大震災の混乱の中、主人公の雅也は、地震で両親を亡くして天涯孤独となった新海美冬(しんかいみふゆ)と出会う。二人は協力して平成不況の世の中を生き抜いていく。
この作品は昨年ドラマにもなった「白夜行」の続編とされている。「白夜行」の登場人物であった雪穂(ゆきほ)と亮司(りょうじ)のような、その善悪は別として、法律や世間の常識に対して決して揺らぐことのない強い生き方に触れたくて手に取った。その期待にはしっかりと応えてくれた言えるだろう。
物語の展開のみを頼りにし、舞台や題材は想像で補うことの多い東野圭吾にしては珍しく、物語の舞台となる時代や、鍵となる細かい題材が現実に基づいており、展開以外にも今まで知らなかった世の中の一面を僕に見せてくれた。
平成不況の中、その大きな影響を受ける町工場で働く人たちの気持ちや、美しくなることにこだわリ続ける女性は、現代の社会の病を象徴しているようだ。
「白夜行」の続編ではありながらも一つの作品としてしっかりと成立しており、「白夜行」を知らなくても十分楽しめるが、「白夜行」の読者であれば読み進めるににしたがってその関連に気付くことだろう。
人以上に不幸な境遇に育ったからこそ、人以上に幸せ求める。そんな彼らの行き着いた先は他人を蹴落としてでも幸せになろうという生き方。富と美しさを手に入れても決して人に心を開くことのできない生き方はやはり悲しいくつらい生き方でしかない。世間で言われる幸せの大きな要素、富と美しさ。それは本当に必要なものだろうか。そんな問いかけこそがこのシリーズで東野圭吾が伝えたいテーマなのかもしれない。
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masato (2007年4月11日 10:48) | コメント(0)





