2006年2月アーカイブ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第4回大藪春彦賞受賞作品。今回で二回目の読了である。

過去に最愛の妻を事故で亡くした九野薫(くのかおる)は現在警部補として所轄勤務をしている。同僚の花村(はなむら)の素行調査を担当し、逆恨みされる。及川恭子(おいかわきょうこ)はサラリーマンの夫と子供二人と東京郊外の建売住宅に生活している。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先で起きた放火事件を期に揺らぎ始める。

30代半ばという人生の中間地点。それは「もはや人生にやり直しが効かない」という事を少しずつ実感する世代なのか。そんな中で人はどう現実と折り合いをつけて生きてくのだろう。

自分はいつから現実をみないようにしてきたのだろう。心の中にシェルターをこしらえ、そこに逃げ込むようになったのだろう。

現実を直視しないようにすることも幸せに生きる術なのかもしれない。中には、目の前にある幸せに気づずに生きている人もいるのかもしれない。

先月までは何不自由ない暮らしをしていた。家計を助ける程度のパートをして、家で子供や夫の帰りを待っていた。退屈だが特に不満はなかった。それがどこで歯車が狂ったのか。

幸福とはこんなにも儚いものなのか。リアルに描かれるその様子はただただやりきれない。九野薫(くのかお)と及川恭子(おいかわきょうこ)の二人を中心としながらも、いろんな要素を絡めて展開するこの物語には読者を夢中にさせるに十分な力があった。

【Amazon.co.jp】「邪魔(上)」「邪魔(下)」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
妻の深雪(みゆき)と長女の亜美(あみ)を残して松岡邦夫(まつおかくにお)は失踪した。友人の村上史郎(むらかみしろう)は松岡(まつおか)の行方を捜すことになり、次第に宗教組織の存在が明らかになっていく。という物語。

失踪した松岡(まつおか)を捜すというメインのストーリーの過程で、自分の仕事にやり甲斐を感じていない史郎(しろう)や男に頼らないと生きていけない深雪(みゆき)を題材として、人としての生き方や存在意義などにしばしば触れていて、そんなテーマ自体は個人的には好きなのだが、残念ながらそれによってこの物語を通じて著者の訴えたい部分がぼやける印象がある。登場人物の心情を効果的に描いたとは言い難い。全体的にもう一つアクセントが欲しかった。

【Amazon.co.jp】「神々のプロムナード」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
時代は17世紀から20世紀。時間と空間を超えた、エリザベスとエドワードの不思議な出会いと別れを描く。

物語の展開に慣れ始めた中盤以降はすべての章で、エリザベスとエドワードの登場が待ち遠しく、章が終わるのが寂しく、次の章の始まりがまた楽しみ。夢の中の出来事と記憶の中の出来事を豊かな描写で描くことで、読者を物語の舞台となる時代に引き込んでいく。久々にそんな気持ちにさせてくれる物語であった。ただ、最後だけはもう少し納得のいく解釈を用意してもらいたかった。

【Amazon.co.jp】「ライオンハート」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
昭和43年、イコマ電子工業社長の生駒洋一郎(いこまよういちろう)は息子の生駒慎吾(いこましんご)を誘拐された。そして約20年後の昭和62年、また一つの誘拐事件が発生する。最新の技術を用いた犯罪が警察の追跡を翻弄する様子を描く。

物語全体としては謎解きの部分が非常に少なく、読者に推理を楽しませようという意図あまり感じられない。また、登場人物の背景についての記述が少なく、キャラクターとして薄い存在のまま犯罪の動機についても納得できかねる部分がある。最新の技術を駆使した誘拐という大それた犯罪を行う様子はこの物語の見せ場で一気に読ませるだけのスピード感を持った部分ではあるのだが、登場する技術について詳細な説明の多くが省かれているために、残念ながらリアルさがあまり伝わってこない。(もちろん詳細に書きすぎると実際の犯罪に応用する輩が存在してしまうと言うことも考慮した結果ではあるだろうが)その結果、どこをとっても物足りなさを覚えてしまう作品であった。

【Amazon.co.jp】「99%の誘拐」

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