2005年1月アーカイブ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ロサンゼルスの日系企業で働く探偵のサム永岡(ながおか)は、一人の日本人の若者を安田真吾(やすだしんご)を探すように依頼を受ける。安田を探すウチに彼の冷酷な性格が見えてくる。という話。

人はどうやって人間性を形成するのか。人や動物や虫どの命の尊さを生きているどの過程で知るのか。そして、生まれつきの犯罪者などいるのか。そんな周囲の環境が与える人の性格の難しさを考えさせてくれる。永岡が真吾の父親の英明(ひであき) に語るシーンは印象的である。

「空っぽな連中ほど、仲間と群れたがり、一人になるのを忌み嫌う。一人ぽっちで時を過ごすのは辛いですからね、嫌でも自分ってものを見つめざるをえなくなる。そんな勇気すら持ち合わせちゃいない連中ばかりが増えて、街にあふれている」

一人暮らしで、人を部屋にいれたがらない僕には勇気の出るメッセージ。この本を読んで、僕は自分と向き合える中身のある人間だ。そう思えるようになった。


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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第23回吉川英治文学新人賞受賞作品。

編集者に勤める主人公の山崎隆二(やまざきりゅうじ)の元に、昔の恋人である由紀子(ゆきこ)から電話がかかってきたところから物語は始まる。過去の二人の出会いや別れ、二人の間に起きた出来事。そして今の二人の生活を描く。

タイトルとなっている「パイロットフィッシュ」とは、他の魚が生活しやすいように水槽の水を奇麗にする魚のことである。人との出会いや別れ、そしてその人との間に起きた出来事が今の自分の言葉や行動に確かに根付いていることを意識させてくれる作品。僕のパイロットフィッシュは一体誰なのだろう。僕は誰のパイロットフィッシュになれるのだろう。いろんな人と出会い、いろんな経験をすることがしっかりしたオリジナリティのある人間をつくる礎であることを再認識させられた。


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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
倒産寸前の旅行代理店が「王妃の館」の宿泊ツアーとして、2つのツアーを組んだ。1つは149万8千円のポジツアー、もう一つは19万8千円のネガツアー、しかも客に部屋を共有させるという無謀なツアーである。そんなツアーの様子がコメディタッチで、ルイ14世時代と絡んで展開していく。

正直「中途半端」な印象を受けた。設定的にはかなりコメディタッチで進みながらも、コメディとして読むととてもおもしろいとは言えない。ルイ14世時代の物語も興味を惹かれたが浅い部分までしか掘り下げられていない。この物語全体としてのテーマが感じられなかった。作者もこの作品を実験的に書いたのではないかという印象を受けた。


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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第121回 直木賞受賞作品。

失踪した5才の娘、有香を探して、カスミは生活する。娘の失踪から4 年後、内海という元刑事の男が捜索に名乗り出る。内海は胃ガンですでに余命わずかと宣告されていて、その余生を、有香を探すことに費やそうと考えたのだ。こんな物語である。

娘の有香がいなくなった謎を解こうとするではなく、どちらかというと、娘が失踪した事実と向かい合って、どうやって生きて行こうか探しているカスミ。自分の死が迫っていて、どうやって現実を受け入れて生きて行くか悩む内海。そんな2人の姿が強烈だった。

僕が余命を宣告されたらどんな生き方を選ぶだろうか。
真実を知るために「今」を犠牲にできるだろうか。
幼い頃、僕はどこまで周囲の出来事を把握していたのだろうか。

この本を読んで実際に直面しないと答えの出ない疑問が僕の周りにわきあがってきた。


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